近頃、私は介護施設で働く介護職員の一人として、日々認知症の利用者さんと接する中で、「もっと適切なケアの方法を知りたい」「困った行動への対応方法を学びたい」という思いが強くなっていました。
新人として現場に飛び込んだ頃は手探りで対応していましたが、経験を積む中で自分のケアに不安や疑問を感じることが増えてきました。
例えば、利用者さんが突然怒り出したり、「家に帰りたい」と訴えたりする場面で、どう声をかければ良いのか戸惑うことが度々あったのです。
そこで先日、施設で開催された「認知症および認知症ケア研修」に参加しました。
この研修は、現場で明日からすぐ使える知識と技術を身につけることを目的としたものです。
現場で働く介護職員が対象で、私も「基本を見直し、より良いケアを提供したい」という思いで参加しました。
研修で学んだこと
研修では、認知症ケアの基本から応用まで幅広い内容が網羅されていました。
特に印象に残ったポイントを、4つに整理して記載します。
①認知症の基礎理解
まず最初に、認知症そのものの理解が深められました。
認知症には中核症状と呼ばれる記憶障害や見当識障害などの症状と、それに付随して現れるBPSD(行動・心理症状)と呼ばれる症状があることを学びました。
中核症状は脳の変化によって誰にでも起こりうる基本的な症状ですが、それに対してBPSDは環境や心理状態など様々な要因で人それぞれに現れる症状であると教わりました。
例えば、昼夜逆転や興奮、不安、幻覚・妄想、徘徊(意味もなく歩き回る)など、その内容や現れ方は人によって大きく異なります。
「BPSDは本人のわがままや性格の問題ではなく、脳の変化と周囲の環境要因が絡み合って生じるもの」という説明は、特に心に残りました。
つまり、認知症の方の困った行動には必ず何かしらの理由や背景があるのです。
②BPSDへの柔軟な対応
BPSDが起こる背景には、身体的・心理的・社会的・環境的な要素が複雑に関係していると学びました。
研修では「ある利用者さんが怒りっぽくなった裏には、実は痛みや体調不良(身体的要因)と、新しい環境への戸惑い(環境的要因)があった」という具体例が紹介され、様々な角度から原因を考えることの大切さを痛感しました。
一つの行動だけを見て「問題行動だ」と決めつけるのではなく、「この行動にはどんな不安や混乱が隠れているのだろう?」と考え、寄り添う視点を持つことが重要です。
講師の方は「ケアをする側の関わり方次第で症状が和らいだり予防もできる」と強調しており、柔軟で創造的な対応が求められることを改めて認識しました。
③コミュニケーション技術の重要性
認知症ケアでは、言葉がけ(声かけ)や接し方ひとつで利用者さんの反応が大きく変わります。
研修では、認知症の方との基本的なコミュニケーションのコツも改めて確認しました。
例えば「必ず相手の名前を呼んでから話しかける」「難しい言葉は避けて短く優しい言葉で伝える」「何か行動してもらうときは一つひとつ段階を追って声をかける」といった基本的なポイントです。
また、後述するように具体的な声かけの例や、現場で陥りがちなNG対応についても学ぶことができ、自分の日頃の言動を振り返る良い機会になりました。
④研修の進め方
内容だけでなく研修の進行も工夫されており、グループワークやロールプレイを通じて実践的に学べたのも大きな収穫でした。
単に講義を聞くだけでなく、自分たちでケーススタディを考えたり、介護者役・認知症高齢者役に分かれて模擬的な声かけを試したりしました。
最初は戸惑いましたが、実際にやってみると思った以上に難しく、言葉遣いや表情ひとつで相手の反応が変わる体験はとても印象的でした。
参加者同士でフィードバックし合うことで、「こう言われると安心する」「この対応は不安を煽ってしまうかも」といった具体的な気づきも得られました。
以上が研修全体を通して学んだ主なポイントです。
次は、特に重要だと感じたBPSDの理解と対応方法、そして声かけの工夫について詳しく振り返ります。
BPSDの理解と対応方法
BPSDは周囲の関わり方次第で軽減できる可能性があることも学びました。
脳の変化そのものは治せなくても、例えば環境を整えたり安心できる声かけをしたりすることで、不安を和らげ症状を和らげる工夫ができるというのです。
研修では具体的な事例に沿って、以下の4つのBPSDへの対応法について教えてもらいました。
①徘徊(歩き回り)への対応
認知症の方が落ち着かずに歩き回ってしまう「徘徊」は、不安や居場所のなさから起こることが多いそうです。
研修では「無理に止めようとせず、安全を見守りつつ付き合う」ことが鉄則と教わりました。
「危ないから動かないで」と制止するのでは逆効果になる場合があり、可能であればお話を傾聴しながら一緒にゆっくり歩くことで、利用者さんが落ち着くきっかけをつかみやすくなるそうです。
実際、研修中のロールプレイでも、歩き回る役の人に対し介護者役が隣を一緒に歩き「どうしましたか?お散歩ですか、一緒に歩きましょうか」などと声をかけると、それまでそわそわしていた「利用者」役の同僚が「じゃあ一緒に…」と穏やかに応じていたのが印象的でした。
また、利用者さんが少し疲れてきた様子があれば、「こちらで少し休みましょう」と馴染みの椅子に誘導してお茶や水分を勧めるなど、適宜休息を促すことも効果的だと学びました。
大切なのは、本人の不安を受け止めて安心できる場所に導いてあげることだと感じました。
②攻撃的な言葉・行動への対応
認知症が進行すると、怒りっぽくなったり暴言・暴力といった攻撃的な言動が見られる場合もあります。
不穏な状態にあるときに下手に刺激すると、さらに興奮がエスカレートしてしまうこともあるため注意が必要です。
研修では「もし利用者さんが興奮して攻撃的になっているときは、無理に説得したり大声で叱ったりしないこと」と教わりました。
具体的には、しつこく声をかけ続けたり強引にケアを進めようとすると逆効果なので、いったん距離を置いて見守り、相手が落ち着くのを待つことが勧められました。
私たち介護職員に向けて「“危ないからやめて”ではなく、“少し離れて見守りましょう”くらいの気持ちで」と講師が言っていたのが印象に残っています。
また、特定の職員にだけ攻撃的になるケースもあるため、対応するスタッフを替わるのも有効な対策だそうです。
実際、研修では「自分ばかり対応しようと抱え込まず、チームで助け合うことも大事ですよ」というアドバイスがあり、現場でも焦らず周りに助けを求める勇気を持とうと思いました。
③物盗られ妄想への対応
認知症の方によく見られる症状の一つに「物盗られ妄想」があります。
これは、本当は自分でしまい忘れたり無くしてしまった物について、「誰かが盗んだ」と思い込んでしまう症状です。
研修でも、「大事にしていた財布が無い!きっと誰かが盗ったんだ!」と利用者役の方が怒る場面を想定し、どう対応するか話し合いました。
講師から教わったポイントは「決してして頭ごなしに否定しない」ことでした。
「盗まれてなんかいませんよ!」と否定すると、ご本人の不安や怒りはますます強くなってしまいます。
そうではなく、「それは心配ですね。一緒に探してみましょうか?」と共感して寄り添う声かけが有効だと学びました。
研修では実際に「一緒に探しましょう」と声をかけるロールプレイを行い、「それなら頼むよ…」と少し落ち着く様子を確認できました。
ただし注意点もあります。
それは、あまりにもすぐ目的の物が見つかると、「探してくれた職員が盗んだ犯人だ」と逆に疑われてしまう可能性があるということです。
そのため、見つけた場合もすぐ手渡さず少し一緒に探す素振りを続ける、あるいは別の職員に引き継いで対応してもらうといった工夫も必要と教わりました。
妄想に対峙するときは、ご本人の「不安な気持ち」にフォーカスして安心感を与える対応を心がけることが大切だと感じました。
④「家に帰りたい」(帰宅願望)への対応
施設にいらっしゃる認知症の利用者さんから頻繁に聞かれるのが「家に帰ります」「帰らせてください」といった帰宅願望です。
私自身、日々この対応には頭を悩ませていました。
研修ではまず、「帰宅願望=困った問題行動ではない」と捉えることが大切だと教えられました。
慣れない環境に不安を感じ、安心できる自宅や家族のもとに戻りたいという気持ちは、誰にでも起こりうる自然な感情です。
したがって「またその話か…」とうんざりした様子を見せたり、「今は帰れませんよ!」と頭ごなしに否定したりするのはNG対応です。
講師いわく、帰宅願望が出た時には「どうして帰りたいのかな?」と理由やお気持ちを聴くことが大事とのことでした。
その上で例えば、「お家が心配なんですね。大丈夫ですよ、お家のことは私たちが確認しておきますね」とか「○○さん、今日はここでゆっくりしていきませんか?少しお茶でも飲みましょう」といった声かけが効果的だそうです。
ポイントは、不安な気持ちを受け止めて安心できる言葉をかけること、そして可能であれば話題をうまく逸らして気分転換してもらうことです。
研修のグループ討議では「夕方になると“帰らなきゃ”とソワソワされる利用者さんには、カーテンを閉めて外の暗さが目に入らないようにすると落ち着くことがある」という現場の工夫も紹介されました。
このように環境面での配慮と安心感を与える声かけの両面からアプローチすることが大切だと学びました。
以上、研修で取り上げられた主なBPSDの具体例と対応策をご紹介しました。
他にも夜間せん妄(夜中に混乱や興奮が強まる症状)や介護拒否への対応なども扱いましたが、基本となる考え方は同じです。
それは「症状の背景に目を向け、その人の気持ちに寄り添うこと」と「身体的な安全確保をしつつも、できるだけ本人の尊厳を守った対応をすること」です。
例えば「危ないからダメ!」と頭ごなしに制止するのではなく、「一緒に〇〇しましょう」「どうしましたか?」というように、共感やサポートを感じられる声かけに置き換えるだけでも利用者さんの反応は大きく変わると実感しました。
今回学んだ方法を現場でも取り入れることで、少しでも利用者さんやご家族の安心につながればと感じています。
声かけの工夫と実践例
研修でもう一つ重要なテーマとなっていたのが、認知症の方への声かけ(コミュニケーション)の工夫です。
言葉の選び方や話し方次第で、利用者さんの安心感や信頼は大きく変わります。
私は日々の業務の中で「どう声をかけたらいいんだろう?」と悩む場面が多かったので、このパートの学びはとても実践的で役立つ内容でした。
まず、講師の方が強調していた基本的な声かけのポイントを紹介します。
研修資料にもまとめられていた内容ですが、改めて列挙すると以下の通りです。
①最初に必ず名前を呼ぶ
いきなり用件を言うのではなく、「○○さん、こんにちは」のように相手の名前を呼んで注意をこちらに向けてから話しかけます。
急に話しかけられると認知症の方は混乱しやすいので、まずは「あなたに話しかけていますよ」と伝える合図になります。
名前を呼ばれることで安心感や親しみも生まれやすくなります。
②短くわかりやすい言葉で伝える
長く複雑な説明は混乱のもとです。
一文はできるだけ短く区切り、優しい単語を使ってゆっくり話します。
「今からこれから○○しますのでどうのこうの…」と一度に伝えるのではなく「今からご飯の時間です。一緒に食堂へ行きましょう」というように、一つひとつ丁寧に伝えるよう心がけます。
研修でも「一文に一つのことだけ伝えるイメージで」とアドバイスがありました。
④一つひとつの動作に対して声をかける
例えば更衣や移乗など介助をする際、次に何をするのか分からないとご本人は不安になります。
「では靴を履きますね」「次は立ち上がりますよ」といった具合に、動作のたびに声かけと説明を行うことが大切です。
私たち介助者にとっては当たり前の流れでも、都度お声がけすることで安心と信頼を築いていく工夫になります。
特に身体に触れるケアの際は突然触らず、「今から〇〇しますね」と声かけして同意を得る姿勢が大事だと学びました。
⑤表情と態度にも気を配る
声の内容だけでなく、優しい表情や視線の合わせ方も大切な要素です。
研修ではお互いにビデオカメラでロールプレイを撮影し、自分の表情が思った以上に硬かったことに気づかされました。
認知症の方は言葉だけでなく表情や雰囲気にも敏感です。
笑顔で、落ち着いた声のトーンで語りかけることで安心感を与えられると実感しました。
また、話すときはできるだけ相手の目線の高さに合わせて正面からゆっくり近づき、驚かせないようにすることも教わりました。
急に後ろから肩を叩いたり大声で話しかけるのはNGです。
上記のような基本の他、「相手のペースに合わせる」ことや「否定せずに共感する」姿勢も繰り返し強調されました。
例えば会話で話が通じなかったり、事実と違うことをおっしゃっても頭から否定せず、「そうなんですね」「わかりますよ」と相槌を打ちながら傾聴することが大事です。
本人の言葉尻よりも、その奥にある感情に寄り添うよう心がける。
研修を通して、改めて「聴く」コミュニケーションの大切さに気付かされました。
一方で、研修では避けるべき声かけ・対応(NG対応)についても教わりました。
以下のような対応はどんな場面でもNGだと学びました。
①頭ごなしに否定する
「ダメです!」「違います!」など、いきなり否定から入る言葉かけは避けます。
ご本人の言い分を受け止めず否定すると、自尊心を傷つけ不信感を招きます。
②高圧的な態度や命令口調
大きな声で威圧したり、「早くして!」「静かにして!」といった命令調は厳禁です。
恐怖や反発心を生み、逆効果になります。
③細かい指摘や指示の押しつけ
間違いをいちいち指摘したり、あれこれと一度に指示を出すと混乱させてしまいます。
失敗しても大目に見て、なるべくシンプルに伝えましょう。
④行動を過度に制限する
「危ないからダメ!」「動かないで!」といった行動の制限は最後の手段です。
できるだけ自由と尊厳を尊重し、見守る姿勢を持つことが大切です。
⑤過剰な介助や子ども扱いをする
何でもかんでも手を出し過ぎたり、「○○でちゅね~」と赤ちゃん言葉で接するのはNGです。
尊敬と対等な姿勢を忘れず、ご本人の自立心も尊重します。
こうしたNG対応を聞くと「当たり前だよ」と思いがちですが、現場が忙しく余裕がない時ほどついやってしまいがちな行動だと研修で指摘され、ドキッとしました。
私自身も思い当たるところがあり、「忙しい時でも心にゆとりを持つ工夫を」と自分に言い聞かせました。
研修の中では、具体的な声かけフレーズの良い例・悪い例も紹介されました。
たとえば、食事を済んだのに「ご飯はまだか」と尋ねる利用者さんへの対応として、悪い例は「さっき食べたでしょ!」と叱ったり指摘すること。
良い例は「お腹が空いてしまったんですね。じゃあ少しお茶を飲みましょうか」というように、一旦気持ちを受け止めつつ別の提案をすることでした。
また別の例では、オムツ交換を嫌がる方に対し「早く替えないと臭いからダメですよ」と言うのは×、「気持ち悪くないですか?新しいものと替えるのお手伝いさせてくださいね」と声を掛けるのが○、といった具合です(これは私が実際に講師からフィードバックをもらった実例です…反省しました)。
言い回しを少し変えるだけで、相手に与える印象が大きく変わることを実感し、まさに目から鱗でした。
さらに研修では、認知症ケアのコミュニケーション技法として有名なバリデーションやユマニチュードについても触れられました。
バリデーションとは、「認知症の方の言葉や行動の背景には必ず本人なりの理由や思いがある」と考え、決して否定せずに受容・共感するコミュニケーションの技法です。
まさに前述の良い例の声かけのように、相手の現実をありのまま受け止める姿勢が基本となります。
一方、ユマニチュードはフランス発祥のケア技法で、認知症の有無に関わらずケアに広く用いられています。
「見る・話す・触れる・立つ」という4つの柱を通じて、人間らしさと尊厳を尊重するケア方法であり、特に認知症が進行して言葉での意思疎通が難しくなった方にも有効だとされています。
研修では時間の関係で詳細までは踏み込めませんでしたが、これらの技法について「興味があればぜひ書籍など読んでみてください」と紹介がありました。
私も今後ぜひ勉強してみたいと思っています。
以上のように、声かけ一つとっても多くの工夫やポイントがあることを学びました。
研修後は早速、日々のケアで意識することが増えました。
例えば朝の挨拶も、研修前より大きな声でハキハキと名前を呼ぶようにしたり、忙しいときほど一呼吸おいてから笑顔で話しかけるように心がけています。
小さなことですが、「○○さん、おはようございます!今日もいい天気ですね」と声をかけると、利用者さんもにこっと笑って「おはよう」と返してくださることが増えた気がします。
研修で学んだコミュニケーションの工夫を実践しながら、これからも利用者さんとの信頼関係を深めていきたいです。
受講しての気づきと反省
研修を通して、多くの気づきがありました。
その中でも特に大きかったのは、「自分はまだまだ利用者さんの気持ちを汲み取れていなかった」という気づきです。
日々の業務の中で、つい目の前の業務をこなすことに意識が向いてしまい、「どうしてこの方はこんな言動をされるのだろう?」という視点が不足していたと反省しました。
研修で講師の方が「認知症の方の不安や混乱は誰にでも起こりうる自然な感情。それが行動に表れているだけ」とおっしゃった時、ハッとしました。
思い返せば、私はこれまで徘徊や帰宅願望といった行動を「困った問題」と捉えるばかりで、その裏にある不安な気持ちにしっかり向き合えていなかったかもしれません。
研修を受けたことで、「行動の背景にどんな思いがあるのか」を考える大切さに改めて気付かされました。
もう一つの大きな学びは、自分自身のコミュニケーション態度への反省です。
研修中、NG対応の例として挙げられた中には、自分が無意識にやってしまっていたこともありました。
例えば、利用者さんに呼ばれたとき忙しさにかまけて「ちょっと待ってて!」とつい語調が強くなってしまったり、何度も同じ質問をされて「だからさっきも言いましたけど…」と半ば聞き流してしまったり…。
研修を受けて、それらの対応がどれほど利用者さんの不安を増幅させ、自尊心を傷つけてしまう可能性があるかを痛感しました。
「自分が反対の立場だったらどう感じるか」を考えると、反省しきりです。
特に、私は利用者さんから「家に帰りたい」と訴えられた際、「ここが○○さんの家ですよ」と現実を突きつけるような返答をしてしまったことがありました。
研修で学んだ視点から振り返ると、なんて冷たい対応をしてしまったのだろうと申し訳ない気持ちになります。
忙しさやストレスを理由に、思いやりのない対応をしてはいけないと深く反省しました。
また、チームワークや自分の心のケアの重要性にも気づきました。
研修の中で、「介護者自身がストレスを溜めないことも良いケアには必要」という話がありました。
確かに、自分に余裕がないと声かけが雑になったり、NG対応を無意識に取ってしまいがちです。
振り返れば、私自身疲れているときほど利用者さんの訴えをうまく聞き流してしまったり、「早く終わらせなきゃ」という気持ちが前に出て無表情で機械的な介助になってしまうことがありました。
これは利用者さんにとっても寂しい思いをさせてしまいますし、結果的にBPSDを悪化させる一因にもなりえます。
自分の心のゆとりと適切なケアは直結していると感じました。
研修では「困ったときは一人で抱え込まず周囲に相談すること、チームみんなで利用者さんを支えることが大事」と繰り返し言われ、自分ももっと先輩や同僚に助けを求めて良いのだと気づけました。
研修で得た知識や気づきを胸に、これからのケアに活かしていくことが私の課題です。
同時に、今回痛感した反省点を忘れず、常に利用者さん本位のケアを心がけたいと思います。
今後の現場での活かし方
研修で学んだことを、これから現場で具体的にどう活かしていくかを考えてみました。
明日からすぐにでも取り入れられそうなこと、継続的に取り組みたいことを5つ挙げます。
①笑顔と丁寧な声かけを習慣にする
どんなに忙しいときでもまず笑顔で利用者さんに接すること、声を荒げないことを徹底します。
名前を呼んでの挨拶や声かけを欠かさず行い、ゆっくりはっきり伝える基本を毎日の習慣にします。
例えば朝の着替え介助でも「○○さん、シャツを交換しましょうね。まず腕を通しますよ…」と一つひとつ優しく声をかけることを意識します。
小さなことですが、積み重ねが信頼関係につながると信じています。
②利用者さんの気持ちを想像して対応する
ケアの最中に利用者さんが見せる表情や言葉の裏に、「どんな不安や思いがあるのだろう?」と常に想像力を働かせるクセをつけます。
一見理解しがたい行動であってもすぐに否定せず、「この行動には何か理由があるはずだ」と自分に言い聞かせて対応します。
例えばある方が急に立ち上がって出口に向かわれたら、「帰りたいのかな?それともトイレかな?」と考え、「どうしましたか?どこか行きたいところがありますか?」と優しく尋ねるような対応を心がけます。
背景を探りながら対応することで、的確なケアにつなげていきます。
③BPSDの予防策を取り入れる
普段の生活環境や日々の関わりの中で、BPSDを未然に防ぐ工夫も取り入れていきたいです。
研修で教わったように、環境要因で不安や混乱が起きやすいことを踏まえ、居室やフロアの環境調整にも気を配ります。
例えば夕暮れ時には早めに照明をつけて部屋を明るく保ち、不安を感じにくい雰囲気作りをする、居場所がわからなくならないようにわかりやすい案内表示や個人の思い出の品を飾って安心感を高める、といったことを実践してみます。
また、利用者さん一人ひとりのこれまでの生活歴や好みをチームで共有し、「○○さんは音楽が好きだから不安なときは一緒に歌を歌おう」「△△さんは夕方になると昔の習慣でそわそわするから話をよく聞こう」など、個別ケアの視点で対応策を考えていきたいです。
④チームで情報共有し支え合う
ケアは決して一人で抱え込まず、チーム全員で連携して行うものです。
現場では早速、今回学んだことを同僚たちとも共有し始めました。
朝礼や終礼の際に「今日こんな声かけを試してみたらうまくいきました」「○○さんが昨夜不安そうだったのでこんな対応をしました」など小さな成功例や気づきを話すようにしています。
そうすることでスタッフ間での知識共有が進み、より良いケアに繋がると感じます。
また、自分だけでは手に負えないと感じたらすぐ周りに相談し、困難なケースは皆で検討する風土を大切にしたいです。
チームで統一した対応ができれば、利用者さんも安心されますし、私たち職員の負担も軽くなります。
⑤継続的な学習と自己振り返り
認知症ケアの学びに終わりはありません。
今回の研修で得たものを糧に、これからも継続的に知識と技術の研鑽を積んでいきたいと思います。
具体的には、研修でも紹介された認知症ケアに関する書籍を読んでみたり、機会があればさらに高度な研修(例えば認知症ケア専門士の研修など)にも挑戦したいです。
また日々のケアの中で「今日は少しきつい言い方をしてしまったな」「この対応は良かったな」と自己振り返りを行い、小さな改善を積み重ねていきます。
こうした学習と振り返りを続けることで、自分のケアの質を少しずつでも向上させ、利用者さんにより安心してもらえる存在になりたいです。
おわりに
以上、私が研修で学んだことと感じたことを綴ってきました。
振り返ってみると、研修に参加したおかげで認知症ケアの基本と大切な心構えを改めて確認でき、自分のケアを見直す良い機会になりました。
何より、「認知症の方の行動には必ず意味がある」「関わり方次第でその方の笑顔を増やせる」ということを強く実感できたのが大きな収穫です。
もちろん、学んだからといって明日から全てがうまくいくわけではありません。
現場では予想もしないような場面に出くわすことも多く、戸惑うこともこれからあるかと思います。
でも、研修前の自分に比べて明らかに変わったのは、「困ったときはどう対応すれば良いかの引き出しが増えた」という安心感です。
頭ごなしに否定しない、共感の言葉をまずかけてみる、一人で抱え込まず助けを借りる。そんな基本に立ち返るための合言葉をいくつももらえた気がします。
介護の仕事は大変ですが、だからこそ学び続けることが大切だと改めて感じました。
研修で得た知識や仲間との共有を通じて、少しずつでも現場のケアの質を高め、認知症の利用者さんが穏やかに安心して過ごせる時間を増やしていきたいです。
私自身も利用者さんの笑顔を見ることが一番の喜びです。
その笑顔を引き出すために、今回学んだことを明日からのケアに活かしていく決意を新たにしました。
私もまだまだ勉強中の身ですが、これからも利用者さんに寄り添った優しいケアを目指して、一歩一歩成長していきたいと思います。
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