- すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
あるデイサービスで、利用者22名分の氏名・住所・電話番号が記載された送迎表が紛失する事故が起きました。
送迎後に車内のバインダーから送迎表2枚が消えていることに気づき、スタッフ総出でルートを捜索しましたが見つからず、警察にも届け出る事態となりました。
このような現場の失敗例は珍しくなく、デイサービス利用者141名分の情報が載った送迎確認ファイルを車内に置いたまま紛失したケースも報告されています。
後者では「送迎表を助手席に置いて使用し、紛失防止のルールがなかった」ことが原因とされました。
情報漏えいが起これば利用者さんやご家族の信頼を損ね、事業所は説明と謝罪に追われます。
こうした実例から、「自分の職場でも起こり得ること」と捉えて注意を払う必要があります。
個人情報保護の基礎知識
まず研修の基本として、個人情報とは何かをおさらいします。
法律上、個人情報とは「生存する特定の個人を識別できる情報」を指します。
典型的な例として、氏名・生年月日・住所・顔写真などはそれ自体で個人を特定できる個人情報です。
さらに運転免許証番号やマイナンバーといった個人識別符号も含まれます。
介護現場で作成・使用する利用者基本情報、ケアプラン、介護記録、アセスメントシートなどの記録類はほとんどすべて個人情報に当たります。
特に介護サービスでは、健康状態や障がいの有無、介護度、病歴、生活状況といった非常にセンシティブな情報(要配慮個人情報)を扱います。
これらは利用者さん本人が「他人に知られたくない」と思うプライバシー情報そのものであり、慎重な取り扱いが求められます。
次に、個人情報保護法上のルールを平易に押さえておきましょう。
介護職員は業務上、多くの利用者さんやご家族の個人情報に触れるため、法律やガイドラインで以下の3つの基本原則が定められています。
- 利用目的の特定と同意取得
- 安全管理措置の徹底
- 従業者への教育・研修
具体的にみていきます。
①利用目的の特定と同意取得
個人情報を集める際は、その情報を何に使うか目的を利用者さんやご家族にしっかり説明し、同意を得なければなりません。
例えば、「緊急連絡のために電話番号が必要です」といった説明と了承です。
また得た情報は説明した目的の範囲内でのみ利用し、不必要に他へ使い回さないことが求められます。
特にデイサービスでは、利用開始時に契約書と一緒に個人情報の取り扱いに関する同意書を取り交わすのが一般的です。
利用者さんの写真や名前を施設だより・ホームページ等に掲載する可能性がある場合は、事前に書面で許可を得ておき、同意した方のみ掲載する運用が望まれます。
認知症などで本人の判断が難しい場合は、ご家族や後見人に判断を仰ぐことになります。
②安全管理措置の徹底
介護事業者は、紙の書類であれPC上のデータであれ、個人情報が漏えい・紛失・不正アクセスされないよう適切な安全管理を行う義務があります。
例えば施錠できる書庫に保管する、アクセス権のある職員を限定する、ウイルス対策ソフトを導入するなど、物理的・技術的セキュリティ対策が必要です。
現場では、書類を持ち出すときは必要最小限にし、持ち出した資料は必ず持ち帰るか施錠管理する、個人情報入りの書類はシュレッダーで廃棄する、といった基本を徹底しましょう。
③従業者への教育・研修
個人情報保護は一度研修を受ければ終わりではありません。
厚生労働省の定めで、介護事業所では毎年「プライバシー保護に関する研修」を実施することが義務付けられています。
法改正や新たな事例も踏まえ、定期的に職員全員で知識をアップデートし、意識合わせを図ることが重要です。
特に昨今の個人情報保護法改正(2022年4月施行)では、情報漏えい時の報告義務などが強化されています。
万一個人データが漏えいした場合、事業者は個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化されました。
罰則も厳しくなっており、うっかりミスでは済まない時代です。
研修では最新のルールと事例を学び、「自分ごと」として日頃の業務を見直すきっかけにしましょう。
デイサービス特有の個人情報リスクと対策
介護現場全般に共通する注意点に加え、デイサービス特有のシーンではどんな個人情報リスクがあるでしょうか。
現場で起こりがちな具体例(成功例・失敗例)を通じて確認します。
利用者名の掲示や共有に関するリスク
デイサービスでは、利用者さん同士の交流や日々のケアの中で名前を扱う場面が頻繁にあります。
例えば、フロアのホワイトボードに当日の利用者名を書き出していたり、作品展示に利用者さんの氏名を添えたり、送迎時にフルネームで呼び上げたりすることが考えられます。
しかし氏名は個人情報の最たるものであり、「誰がデイサービスを利用しているか」が他者に漏れること自体がプライバシー侵害につながりかねません。
現に「名前を表示してほしくない」「名前を呼ばないでほしい」という希望が出るケースもあります。
実際、あるデイサービスセンターでは「氏名の呼び出しやルーム内掲示を望まない場合はお申し出ください」と利用者さんに周知し、希望者には配慮する取り組みを行っています。
【対策】
利用者名の掲示や共有は必要最小限に留めましょう。
例えば掲示板に名前を書く代わりに番号やイニシャルを使う、フルネームではなく下の名前だけ記載する、など工夫ができます。
また、行事の写真を施設内に掲示する際も、名前のキャプションを付けない、写り込んだ名札にぼかしを入れるなど配慮が必要です。
新規利用者さんの紹介時も、他の利用者さんにフルネームを知らせる必要はなく、「○○さんです」と苗字かニックネーム程度に留める方が無難です。
利用者さん本人やご家族に対して「お名前を掲示・紹介してもよいですか?」と事前に確認し、NGの場合は決して公にしないという姿勢を徹底しましょう。
送迎表や利用者情報を含む書類の取り扱い
冒頭の失敗例でも触れた通り、送迎表の紛失はデイサービスで特に注意すべき重大リスクです。
送迎表には複数の利用者さんの住所や連絡先、場合によってはご家族の情報や注意事項まで記載されています。
一枚でも紛失すれば外部に個人情報が漏えいする危険があります。
実際に「デイサービス送迎車内に置いてあった送迎表を紛失」「配食サービスの利用者リストを持ち出し中に紛失」「訪問介護の予定表を訪問先に置き忘れて他利用者の情報が漏れた」といったケースも少なくありません。
現場ではつい「すぐ戻るから大丈夫」「バインダーに挟んであるから平気」と油断しがちですが、一瞬のスキに紛失・置き忘れは起こり得ます。
【対策】
書類の持ち出しルールをチームで決め、遵守しましょう。
送迎表は必ず施錠できるファイルや袋に入れて携行し、車両内では助手席など見えやすい場所に放置しないよう徹底します。
利用者降車後はその場で名前をチェックして速やかに回収・施錠し、施設へ戻ったら担当者に返却する流れを標準化しましょう。
紛失防止策として、紙ではなくタブレットやスマホのアプリ上で送迎ルートや利用者情報を管理する方法も考えられます(ただし機器にもロック等セキュリティ対策必須)。
また、送迎表に限らず利用者情報を含む書類はコピーを減らし、一箇所にまとめて管理することが大切です。
不要になった書類はためずにこまめにシュレッダー処理し、「ゴミ箱に個人情報を書いた紙が捨ててある」などということがないようにします。
万一書類を紛失したり盗難に遭った場合の報告フロー(上長連絡・利用者への説明・保護委員会報告など)も事前に確認し、速やかに対処できる準備をしておきましょう。
家族対応で気をつけるべきポイント
デイサービスでは利用者本人だけでなく、そのご家族とも日々やり取りがあります。
家族対応における個人情報保護で注意すべきは大きく二点あります。
一つ目は、他の利用者さんの情報をご家族に漏らさないことです。
当たり前のようですが、現場ではつい会話の流れで「今日は○○さんがお休みで…」などと別の利用者さんの名前や状況を口にしてしまう恐れがあります。
また送迎時やフロアで家族同士が顔を合わせる場面では、第三者が近くにいる状態で特定の利用者の話題を出すと漏えいにつながります。
「利用者さんの情報は、その人本人かご家族以外には話さない」が鉄則です。
他の利用者さんやその家族に個人情報が知られないよう会話の場所や声の大きさにも配慮しましょう。
例えば面談や相談は必ず他の利用者・家族がいない個室で行う、送迎車内で利用者の話をしない、といった工夫です。
二つ目は、ご家族自身の個人情報保護です。
デイサービスでは緊急連絡先としてご家族の氏名・電話番号等を預かります。
これも大切な個人情報なので、利用者情報同様に厳重に管理しましょう。
送迎表や連絡帳にご家族の連絡先を書く場合は紛失リスクに注意が必要です。
また、利用者さんのご家族から相談を受ける際などに、こちらから不用意に他の家族構成やプライベートな話題に触れないことも心遣いです。
例えば「最近お孫さんはいらっしゃってますか?」程度でも、人によってはプライバシーに踏み込まれたと感じることがあります。
ご家族との雑談でも個人情報の範囲に留意し、「言わなくてもよいことは聞かない・話さない」姿勢を持ちましょう。
SNSやスマホ写真の取り扱いトラブル
昨今、介護施設でもSNSの活用が増えています。
デイサービスのイベント写真をFacebookやInstagramに載せたり、ブログや広報誌で利用者の様子を紹介したりすることもあるでしょう。
しかし、インターネットに一度情報を載せれば一瞬で拡散し得ることを忘れてはいけません。
紙の広報誌なら施設内や関係者内の配布で留まっていたものが、SNSに載せた途端に不特定多数の目に触れ、想定外の人にも広まる可能性があります。
実際、「職員が無断で利用者さんの写真を自身のSNSに投稿し、ご家族から“勝手に顔写真を載せないで”と苦情が出た」という事例も報告されています。
利用者さんやご家族によっては、自分(または家族)がデイサービスを利用している事実自体を知られたくない場合もあるのです。
【対策】
写真や動画を公開する場合は必ず事前に本人(または家族)の同意を得ることが大前提です。
同意を得ていない利用者さんが写っている写真は使わないか、顔が判別できないようモザイクやスタンプ処理を施します。
施設のホームページやSNS公式アカウントに掲載する際は、この同意の有無と加工処理を徹底的にチェックしましょう。
どうしても顔出しNGの方ばかりで写真掲載が難しい場合は、集合写真ではなく風景や手元の写真だけ載せるなど、無理に利用者さんの顔を載せない工夫も必要です。
また、職員個人のスマートフォンで利用者さんの写真を撮影することにもリスクがあります。
業務用であっても私物スマホの場合、端末紛失や他のアプリへの画像流出など危険がゼロではありません。
可能な限り施設の専用カメラや業務用スマホを使用し、撮影後は速やかにデータを移して端末から削除しましょう。
さらに職員の私的なSNS利用にも注意が必要です。
何気ない投稿に利用者や職場の情報が含まれていないか、今一度見直してください。
例えば「今日は○○さんが誕生日でお祝いしました!」など善意の内容でも、○○さんがデイサービス利用者であることを全世界に発信してしまうことになります。
利用者さんのプライバシーのみならず、職場の守秘義務違反にもなりかねません。
施設側も定期的に研修でSNSのリスク教育を行い、職員が軽率な投稿をしないよう周知することが大切です。
万一、SNS投稿による個人情報漏えいや炎上事件が起きれば、施設の信用は大きく傷つき、関与した職員は懲戒処分や損害賠償責任を問われる可能性もあります。
「SNSに利用者のことを書かない・載せない」は鉄則として肝に銘じ、プライベートでも節度ある行動を心がけましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
最後に、今日学んだポイントを踏まえて自身のケアや業務を振り返るチェックリストを用意しました。
日々の実践を見直し、情報漏えいリスクを減らすきっかけにしてください。
☑ 書類管理
利用者の個人情報を含む書類(送迎表、連絡帳、記録等)を持ち出すとき、きちんと施錠・管理していますか?業務後に書類を放置せず、確実に回収・施錠保管していますか?
☑ 会話の配慮
施設内外で利用者のプライバシーに触れる会話をするとき、周囲に第三者がいない場所・状況を選んでいますか?他の利用者やご家族に聞かれて困る内容をうっかり口にしていませんか?
☑ 掲示・表示物
利用者の名前や写真を施設内の掲示板やホワイトボードに表示するとき、必要以上の個人情報を晒していないか確認していますか?本人や家族の同意を得ていない情報を勝手に公開していませんか?
☑ SNS・写真投稿
利用者の写真やエピソードを、自分のSNSアカウントで投稿したり、無断で外部に共有したりしていませんか?施設の公式発信でも、同意のない写真を使ったり顔出しの配慮を怠ったりしていないか、チェックしていますか?
☑ 機器・デバイス管理
業務で使うパソコンやスマホに利用者の個人情報が入っている場合、端末にパスワードをかける、紛失しないよう管理する、ウイルス対策をするなど十分な対策を講じていますか?
☑廃棄・整理
個人情報が記載されたメモや書類を不用意にゴミ箱へ捨てたり、机の上に出しっぱなしにしたりしていませんか?不要書類は確実に裁断処理し、机上や車内に利用者情報が散乱しないよう整理整頓していますか?
☑研修への参加
個人情報保護やプライバシー研修に積極的に参加し、最新の知識を身につけていますか?研修で習ったことを自分の現場で実践に移し、周囲の職員とも注意喚起し合えていますか?
チェック項目にひとつでも「ドキッ」とするものがあれば、今日から是正に取り組んでみましょう。
デイサービスの介護職員全員が高い意識を持って個人情報保護に努めることで、利用者さんとそのご家族に安心してサービスを利用していただけます。
情報漏えいゼロの安全な現場を目指し、日々のケアと業務を今一度見直してみてください。
私たちの些細な配慮と心がけが、利用者さんの尊厳と信頼を守ることにつながります。
それではこれで終わります。
「もっと【個人情報保護】や【プライバシー保護】に関する研修の資料をみてみたい」という方は、こちらの記事を確認してみてください。【介護施設】プライバシー保護・個人情報保護【研修資料一覧】
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
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