- すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
あるグループホームの介護職員が、入居者さんと一緒に写った写真を何気なく自分のSNSに投稿してしまいました。
ところが後日それが発覚し、施設は「コンプライアンス違反」として対応に追われることになります。
該当の職員は退職し、施設側も再発防止を約束する事態となりました。
同様の情報漏えいトラブルは他の介護施設でも起きており、決して他人事ではありません。
ちょっとした気の緩みや「これぐらい大丈夫だろう」という油断が、重大な個人情報漏えいにつながりかねないのです。
こうした事態を防ぐためには、個人情報保護の基本ルールを正しく理解し、現場で起こりやすいケースを知った上で適切に対処することが必要です。
本記事では、グループホームで働く介護職に向けて、個人情報保護研修マニュアルとしての基本知識と具体的な実践例をわかりやすく解説します。
グループホームで働く皆さんが日々のケアを振り返り、安全に情報を扱えるよう、一緒に確認していきましょう。
個人情報保護の基本知識:法律とルール
まず、介護職として押さえておきたい法律に「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)があります。
個人情報保護法は、氏名・住所・生年月日といった基本情報から、病状や介護度、サービス利用状況など特定の個人を識別し得るあらゆる情報を対象とし、個人の権利やプライバシーを守るために制定された法律です。
2005年の全面施行以降、デジタル化の進展に合わせて何度か改正され、2017年以降はグループホームを含めほぼ全ての介護事業者がこの法律の適用対象となっています。
つまり小規模な施設であっても例外ではなく、すべての介護現場で個人情報保護法を守らなければならないわけです。
個人情報保護法では、事業者(施設や法人)に対し個人情報の適切な管理と保護を義務づけ、違反時のルールや罰則も定めています。
具体的には「勝手に使わない!なくさない・漏らさない!勝手に人に渡さない!」といった基本ルールを守ることが求められ、万一漏えいが起きた場合には関係機関への報告や本人への通知も義務化されています。
たとえば入居者さんやご家族から「情報を漏らされた」と訴えがあれば、個人情報保護委員会などにより調査や指導が行われ、違反が認められれば是正命令の対象となります。
この命令に従わないと6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあるなど、法律に基づく責任は非常に重いのです。
さらに民事上の損害賠償や、事業所の信用失墜といったリスクも生じます。
加えて、介護保険制度の運営基準など業界固有のルールにも目を向けましょう。
介護現場では「守秘義務」が強く求められており、例えば介護保険法に基づく訪問介護の運営基準では「事業所の従業者は、正当な理由なく業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならない」と明記されています。
この守秘義務は在職中はもちろん、退職後も継続すると法律上も定められています。
言い換えれば、「仕事で知り得た入居者さんやご家族の情報は、たとえ家族や友人相手であっても第三者に話してはいけないし、職場を離れた後も口外してはダメ」ということです。
介護福祉士等の資格法でも同様の秘密保持義務が規定されており、これは介護職として必ず守るべきプロのルールです。
法律や制度の話は少し堅く感じるかもしれませんが、要するに「入居者さんの個人情報は業務で必要な場合に限り使用し、厳重に管理して、無断で他者に見せたり渡したりしないこと」が大前提です。
そして情報の扱いについてご本人やご家族から問い合わせや苦情があれば、誠実かつ迅速に対応する、この意識が重要です。
法律を正しく理解し遵守することは、入居者さんの信頼を守るだけでなく、自分たち職員自身をトラブルから守ることにもつながります。
「ちょっとぐらい平気だろう」は禁物だと心得ましょう。
グループホームで起こりやすい情報漏えいの事例
次に、グループホームの現場で実際に起こりがちな情報漏えいのケースをいくつか具体的に見てみます。
「こんな場面で本当に漏えいになるの?」と思うような何気ない行動が、後で大きな問題につながることがあります。
それぞれのケースごとにリスクと、介護職員が取るべき対応策を考えてみましょう。
ケース1:送迎表の掲示や書類の放置による個人情報漏えい
グループホームでは、入居者さんの通院送迎やイベントの送迎表などを扱うことがあります。
この送迎表に入居者さんの氏名や住所、連絡先、ケア上の留意事項などが記載されていますが、取り扱いを誤ると情報漏えいにつながります。
例えば、送迎車の車内に入居者さんの名前が載った送迎スケジュール表を無造作に置いてしまい、外から誰でも見られる状態になっていたケースがあります。
もし通りがかった第三者がその表を目にし、スマホで写真に撮られてしまえば、入居者さんの個人情報が本人の知らないところで流出してしまうことになります。
実際、「車に置いていた送迎確認表を紛失し、数百名分の氏名・住所が漏えいした」という事故も報告されています(※横浜市のデイサービス事例など)。
このような掲示物や書類の管理ミスによる漏えいリスクに対して、職員が取るべき基本対応は「他人の個人情報が書かれた紙を無防備に人目に触れる場所に置かない」というシンプルなものです。
送迎表や入居者一覧、連絡帳などは業務で使用する間だけ手元に出し、使用後は速やかに所定の場所にしまう習慣をつけましょう。
掲示が必要な情報は、部外者の立ち入らないスペース(例えばスタッフルーム内)に限定し、内容も必要最小限に留めます。
「これくらい平気だろう」と思わず、常に最悪の事態を想定して管理することが大切です。
また不要になった書類はシュレッダーにかけて廃棄し、ゴミ箱に直行させないことも基本中の基本です。
書面で持ち出す情報は最小限にし、紛失リスクにも注意しましょう。
ケース2:スマホでの無断撮影・SNS投稿による情報漏えい
昨今、スマートフォンの普及により、写真や動画の扱いにも注意が必要です。
介護現場でも記念行事の写真を撮影したり、入居者さんの笑顔を残したいと思う場面があるかもしれません。
しかし、入居者さん本人やご家族の明確な同意なくプライベートな写真を撮影したり、それをSNSに投稿すると、重大な個人情報漏えいにつながります。
冒頭で紹介したように、グループホーム職員が入居者さんの写真をインスタグラムに投稿して問題となった事例では、投稿が外部から指摘されコンプライアンス違反と判断されました。
発覚後、投稿は削除されましたが職員は退職し、施設も再発防止に追われています。
このようなケースは決して珍しいものではなく、過去にも他施設で同様のSNSへの写真流出事件が起きているのが実情です。
では、職員は具体的に何に気をつければ良いのでしょうか。
まず大前提として、業務中に個人のスマホで入居者さんの写真をむやみに撮らないことです。
たとえ「SNSには投稿しないから」と言って自分のスマホに写真を保存したとしても、そのスマホを紛失したり第三者に見られたりすれば漏えいになります。
また入居者さんの容姿が写った写真や動画はそれだけで個人情報です。
本人が特定できる映り込みがあれば、たとえ名前を書かなくても立派な個人情報漏えいになり得ます。
どうしても記録や広報のために写真を撮る必要がある場合は、事前に入居者さん本人とご家族から書面で同意を得るようにします。
特にホームページやパンフレット、SNSなど不特定多数の人が目にする媒体に掲載する場合は、その都度メディアごとに明確な許可を取ることが必要です。
過去には、利用開始時の契約書に「広報用の写真利用に同意します」という項目をまとめて入れてしまい問題になった例もあります。
写真や動画の利用目的は介護サービス提供とは別扱いですから、通常の利用契約とは分けて同意書を作成するのが正しい手順です。
職員個人がプライベートでSNSを使う際も十分な注意が必要です。
例えば職場の何気ない風景写真を自分のSNSに載せた際、背景に入居者さんの顔や氏名が写り込んでいれば、それだけで個人情報の漏えいトラブルに発展しかねません。
現場のルールとして、入居者さんやご家族に関する内容はSNSに一切書かない・載せないことを徹底しましょう。
施設として公式SNS等を運用している場合でも、投稿してよい情報の範囲を細かく定め、職員間で共有することが重要です。
「写真くらい問題ないだろう」「フォロワーしか見ないから平気」といった油断が命取りになると認識してください。
ケース3:職員の会話から広がる個人情報漏えい
介護現場ではスタッフ同士で入居者さんの情報を共有する場面があります。
しかし、会話の内容や場所にも十分な配慮が必要です。
特に怖いのが、職員の何気ない私語や雑談から情報が漏れてしまうケースです。
例えば、ある特別養護老人ホームで職員が勤務外のプライベートな時間にファミレスで友人と話していた際、会話の中で「うちの施設の●●さんは重篤な病気で余命わずからしい」と口にしてしまいました。
偶然その場に居合わせたのは、なんと●●さんの親族。
その親族は医師からも聞かされていなかった病状を他人の雑談で知る羽目になり、激怒して施設に怒鳴り込みました。
このケースではご家族が深く傷ついただけでなく、「一体どういう教育をしているのか!」と施設全体への不信にも発展しています。
最終的には法人として謝罪・対応するとともに、該当職員は守秘義務違反で処分を受けることになりました。
場合によってはご家族が職員個人や施設を訴え、損害賠償を求める事態にまで発展することもあります。
このように職員の会話から情報が漏れるパターンは、実は身近に潜んでいます。
プライベートだけでなく勤務中でも、例えば休憩室や更衣室などで入居者さんの話をしていた内容が他の入居者さんの耳に入ってしまった、というケースも考えられます。
「○○さんは認知症が進んでいて会話が難しい」などと大声で話していれば、周囲の入居者さんやご家族に聞かれてしまうかもしれません。
また他の入居者さんに対し、「△△さんはもう余命が長くないらしいよ」などと勝手に病状を伝えてしまうのも論外です。
こうした言動は入居者さんの尊厳を傷つけ、周囲との信頼関係を損ねる重大な結果を招きます。
対策としては、職員一人ひとりが強い守秘意識を持つことに尽きます。
業務上知り得た情報は、職場の外ではたとえご家族相手でも話さないよう徹底しましょう。
これは先述のとおり法律上の義務でもあります。
また職場内でも、他の入居者さんや来客のいるオープンスペースで個人情報の話題を出すのは避け、どうしても共有や引き継ぎが必要な場合は周囲に聞こえない配慮をしてください。
例えば入居者さん同士が居るフロアでは具体的な疾病名を口にしない、机上に記録を広げっぱなしにしないなど、細かな気遣いが漏えい防止につながります。
新人職員や実習生にも、雑談の内容にも注意するよう先輩が指導すると良いでしょう。
万一、「うっかり口を滑らせてしまったかも…」という場合は隠さず上司に相談し、早めに対処することも大切です。
情報漏えいを防ぐための対策と職員研修の重要性
ここまで見てきたように、グループホームでの情報漏えい事故の多くはヒューマンエラー(人為的ミス)によって発生しています。
裏を返せば、職員一人ひとりの意識と工夫で防げるものがほとんどです。
では具体的に、施設や職員はどのような対策に取り組めば良いのでしょうか。
ここでは4つのポイントをご紹介します。
- 定期研修の実施とマニュアル整備
- 情報管理のルールづくり
- SNSや写真の取り扱いポリシー
- ヒヤリハットの共有と改善
では具体的にみていきましょう。
①定期研修の実施とマニュアル整備
個人情報保護に関する研修を定期的に行い、知識をアップデートしましょう。
新人研修はもちろん、年に1回は全職員を対象に研修を行うことで意識が高まります。
研修用のマニュアル(手引き)を整備し、具体的な事例や対処法を盛り込んでおくと効果的です。
マニュアルがあれば新人もベテランも共通の基準で学べますし、万一トラブルが起きた際も落ち着いて対処しやすくなります。
適切な個人情報の取り扱いを徹底することは入居者さん・ご家族との信頼関係構築につながり、ひいては事業所自体を守ることにもなります。
②情報管理のルールづくり
施設内での個人情報の扱いについて、具体的なルールを定めて共有しましょう。
【例】
- 書類やPC・タブレットは施錠管理し、閲覧権限のある人以外見られないようにする
- 入居者さんの個人情報について、ご家族や知人を含め第三者に聞こえる場所では話さない
- 掲示物・配布物・SNSなど不特定多数が目にするものに入居者情報を載せる場合は、その都度本人・家族の許可を得る
- 入居者さんの情報を第三者に提供する際は必ず事前に書面で同意をもらう、など
これらは個人情報保護のガイドラインにも沿った原則であり、難しいことではありません。
ルールは作っただけでなく、周知徹底と定期的な見直しが大切です。
スタッフみんなでチェックし合い、「こうした方が安全では?」という改善提案があれば取り入れていきましょう。
③SNSや写真の取り扱いポリシー
現代ならではのリスクであるSNS投稿や写真・動画データの扱いについて、施設ごとに明確なポリシーを策定しましょう。
先述のとおり 「入居者さんやそのご家族に関わる内容は職員の個人SNSに一切投稿禁止」 とするのは基本です。
その上で、施設公式のブログ・SNSを運用する場合は掲載範囲や手順を細かく決めます。
「誰がチェックして許可するのか」「写真は必ず顔にボカシ処理をする」など具体的にルール化し、職員に周知してください。
また業務で使用するタブレットやスマホについては端末ごとにパスコードロックやリモートワイプを設定し、万一紛失しても第三者にデータを見られない対策を講じましょう。
私物の端末に業務データを入れるのは極力避けるか、どうしても必要なら上長の許可制にするなど管理を強化します。
これらのルールを新人研修やミーティングで繰り返し確認し合うことで、現場全体で情報保護の意識を高めることができます。
④ヒヤリハットの共有と改善
情報漏えいに限らず、「ヒヤッとした」「うっかりミスしそうになった」といった出来事は共有しましょう。
例えば「送迎表を一瞬車内に置き忘れたがすぐ回収した」「入居者さん同士の前でプライベートな話をしそうになった」等、ヒヤリとした経験をチームで話し合います。
責めるのではなく、起こり得るミスを事前に洗い出して対策する機会と捉えるのです。
そうすることで「自分だけじゃないんだ」と安心すると同時に、次から同じ場面で気をつけるようになります。
小さな気づきの積み重ねが、大きな事故の防止につながります。
以上のような対策を講じ、「情報漏えいゼロ」の職場づくりを目指しましょう。
入居者さんの大切な個人情報を守ることは、安心・安全なケアを提供する上で欠かせない土台です。
職員研修と日々の心がけによって、きっとリスクは大幅に下げられるはずです。
自分のケアを見直すチェックリスト
最後に、この記事を読んだ皆さんがご自身の業務を振り返るためのチェックリストを用意しました。
日頃のケアや情報の扱いについて、次の項目に心当たりがないか確認してみてください。
☑ 入居者さんの個人情報が記載された書類(送迎表や記録など)を、机の上や車内に放置したままにしてしまうことはありませんか?
第三者の目に触れる場所に書類を置きっぱなしにするのは情報漏えいの第一歩です。施錠できる引き出しやキャビネットにすぐ片付ける習慣をつけましょう。
☑ 入居者さんやご家族の写真・動画を無断でスマホ撮影したり、自分のSNSに投稿してしまったことはありませんか?
どんなに親しい入居者さんでも、許可のない撮影や公開はプライバシー侵害になります。
楽しい出来事ほど共有したくなりますが、グッとこらえて仕事中の写真は慎重に扱いましょう。
☑ 同僚との雑談や私生活での会話で、入居者さんの病状や家族情報など秘密にすべき内容をうっかり話してしまったことはありませんか?
「このくらい平気だろう」と油断しがちな私語が思わぬ漏えいを招くケースは少なくありません。
守秘義務は勤務時間外でも常に守るべきだと意識しましょう。
☑ 「自分は大丈夫」「うちの施設は問題ない」と情報管理を過信していませんか?
過去の事故を見ると、どこかに「これくらい大丈夫」という慢心が潜んでいます。
定期的にルールを見直し、第三者の視点でチェックする習慣を持つことが大切です。
いかがでしょうか。
もし一つでも「ドキッ」とした項目があれば、今日が改善のチャンスです。
幸い、気をつけるポイント自体は決して難しいことではありません。
大切なのは「入居者さんの大事な情報を預かっている」というプロ意識を常に胸に置くことです。
グループホームは入居者さんにとって生活の場であり、そこに関わる私たち介護職は信頼される存在でなければなりません。
個人情報保護の取り組みを通じて入居者さんやご家族との信頼関係をより強固にし、安心して任せてもらえるケアを提供していきましょう。
今日からぜひ、職場のみんなで声を掛け合いながら実践してみてください。
私たち一人ひとりの意識と行動で、情報漏えいゼロの安全・安心なグループホームを築いていきましょう。
それではこれで終わります。
「もっと【個人情報保護】や【プライバシー保護】に関する研修の資料をみてみたい」という方は、こちらの記事を確認してみてください。【介護施設】プライバシー保護・個人情報保護【研修資料一覧】
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
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