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利用者さんは体調や環境の変化により、急に血圧が低下してしまうことがよく起こりますます。
現場で働く私たちは、血圧が急激に下がった場合の原因を理解し、適切な優先順位で対応できる知識が必要です。
本研修資料では、血圧低下の主な原因と緊急時対応の手順、場面別の注意点、そして現場職員がすぐに使える観察ポイントについて解説します。
血圧が急激に下がる主な原因
血圧が急激に下がる原因は、主に4つあります。
- 起立性低血圧(Orthostatic hypotension)
- 脱水(デヒドレーション)
- 薬の副作用
- ショック
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
①起立性低血圧(Orthostatic hypotension)
横になった状態から起き上がったり、座位から立ち上がったりした際に血圧が低下する状態です。
自律神経の調節がうまく機能せず、下半身にたまった血液が心臓に戻りきらないことなどが原因で起こります。
急な血圧低下によって立ちくらみが生じ、転倒や失神の危険があります。
起立性低血圧を認めたら速やかに利用者さんを横にすることが大切です。
予防策として、立ち上がる動作はなるべくゆっくり行うようにしましょう。
②脱水(デヒドレーション)
体内の水分が不足すると循環血液量が減少し、それに伴って血圧が低下します。
特に高齢者は喉の渇きを自覚しづらく、脱水になりやすいため注意が必要です。
脱水により血圧が下がると、代償的に心拍数が増加する(頻脈になる)こともあります。
夏場や発熱時にはこまめな水分補給を行い、利用者さんの水分バランスに留意しましょう。
③薬の副作用
一部の薬剤は血圧低下を引き起こすことがあります。
例えば降圧薬(血圧を下げる薬)では、利尿剤の作用が強く出過ぎると脱水症状を招き、結果的に血圧が下がるケースがあります。
またα遮断薬は副作用としてめまいや起立性低血圧(立ちくらみ)を起こすことがあり、高齢者では特に注意が必要です。
服薬中の利用者さんで血圧低下が見られた場合、薬の影響を疑い、医師に相談して処方内容の見直しを検討することも重要です。
④ショック
ショック(shock)状態とは、血圧が急激に低下し重要臓器や全身の細胞に必要な血液が供給されない危険な状態を指します。
ショック状態では緊急の処置が必要で、対応が遅れると命に関わる場合もあります。
ショックの原因としては、大量出血(循環血液量の減少)や心臓のポンプ機能低下(心筋梗塞など)、重篤な感染症(敗血症性ショック)、重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)、神経系の障害(脊髄損傷による神経性ショック)などが挙げられます。
血圧低下を確認した際にはこれらショックの可能性も念頭に置き、重篤な症状があればただちに医療機関へ繋げる判断が必要です。
血圧低下時の対応・優先順位
血圧が急に下がった利用者さんに遭遇したとき、慌てずに優先順位を押さえた対応を取ることで、利用者さんの安全を守り状態悪化を防げます。
基本的な対応手順は、次の①→⑤です。
- 利用者の安全確保
- 体位の調整
- バイタルサインの測定
- 上司・看護師への報告
- 救急要請の判断
それぞれ、具体的にみていきましょう。
①利用者の安全確保
まずは利用者さんの安全を最優先します。
立位や座位でふらついている場合は、すぐに支えて転倒を防ぎましょう。
可能であればその場で腰掛けさせるか、床やベッドに寝かせて安静にさせます。
周囲の障害物をどけ、必要に応じて他の職員にも協力を求め、安全な環境を整備してください。
②体位の調整
安全を確保したら、適切な体位に調整して血流を保ちます。
ショック状態や重度の低血圧が疑われる場合には、脳への血流を確保するため利用者さんの頭部を低くし、足を挙上した仰臥位(ショック体位)にします。
意識がある場合でも、平坦な場所に寝かせて足元を少し高くすると血液が脳に戻りやすくなります。
起立性低血圧であれば座位から背もたれを倒して臥床させるだけでも効果的です。
③バイタルサインの測定
利用者さんの体位を整えつつ、可能な限り速やかにバイタルチェックを行います。
具体的には、血圧測定を行い現在の血圧値を確認するとともに、脈拍(頻脈や徐脈の有無)、呼吸状態(呼吸数や呼吸の深さ)、体温などを測定します。
顔色や皮膚の冷湿状態(冷汗の有無)も観察しましょう。
バイタル測定結果は後の報告や医療機関への引き継ぎに重要な情報となります。
④上司・看護師への報告
バイタルサインや利用者さんの様子を把握したら、ただちに上司や施設の看護職員に報告します。
報告時には「いつもと何がどう違うのか」「どのような状況で血圧が低下したのか」「いつから現症状が出ているか」「直前に何をしていたか」などを具体的に伝えます。
加えて、測定したバイタル値や利用者さんの持病・服薬状況も共有しましょう。
看護師が不在の場合は、施設の提携医やかかりつけ医に連絡し指示を仰ぎます。
報告を受けた看護職や医師の指示に従い、必要な処置(酸素投与や点滴準備など)があれば速やかに対応します。
⑤救急要請の判断
利用者さんの状態を観察し、緊急度に応じて119番通報(救急車要請)するか判断します。
次のような状況では迷わず救急車を呼びます。
- 呼びかけや刺激に反応がなく意識がない、または意識がもうろうとしている場合
- 呼吸状態に異常がある(極端に速い・遅い、呼吸が弱い、呼吸困難がある 等)
- 脈拍が異常に速い/弱い、または極端に遅い場合(ショックや不整脈の疑い)
- 顔面が蒼白で冷汗が多量に出ており、血圧低下が著しく改善しない場合
- 強い胸痛や腹痛を訴えている、または大量出血がある場合
これらの重篤症状があればただちに119番通報して医療介入を求めます。
一方、意識はあるものの血圧が普段より著しく低い、あるいは対応に迷うケースでは、各地域の「#7119」救急相談センターに電話をして指示を仰ぐことも有効です。
#7119では医師や看護師が症状の緊急度を判断する助言をしてくれます。
救急車を要請した場合は、到着までの間に可能な応急処置(必要なら保温、気道確保、嘔吐物の処理など)を行い、救急隊への引き継ぎ内容(状況変化、測定バイタル、既往歴・服薬情報など)を整理しておきましょう。
状況別:血圧低下が起きやすい場面と対応ポイント
血圧が急に下がる事態は特定の状況下で起こりやすい傾向があります。
以下に、介護現場で血圧低下が起きやすい場面ごとの原因と対応ポイントをまとめます。
食後に血圧が下がった場合(食事性低血圧)
食事のあと約20~30分で消化のために血液が消化管に集まる影響で、脳への血流が一時的に不足して血圧が低下することがあります。
これを食後低血圧といい、めまいや失神(気を失う)を引き起こす原因になります。
高齢者やパーキンソン病・糖尿病の利用者さんは自律神経の調節機能が低下しているため特に起こりやすいと言われています。
食後低血圧によるふらつきから転倒し、骨折や頭部外傷につながるケースもあるため注意が必要です。
食後に顔色不良やふらつきを訴えた場合は、無理に歩かせず椅子に腰掛けたまま休んでもらうかベッドで横になって休息を取ってもらいます。
可能であれば食後30分程度は安静に過ごす時間を設け、急に立ち上がらないよう声かけをしましょう。
また一度食後低血圧を起こした方には、入浴など血圧変動を招く行為は食後すぐ避け、食前に済ませるといったスケジュール調整も有効です。
食事内容の工夫(少量を複数回に分ける、水分もしっかり摂る等)についても検討し、必要に応じて栄養士や医師に相談します。
入浴後に血圧が下がった場合
温かいお風呂に入ると血管が拡張して血圧が下がりやすくなります。
特に湯船から急に立ち上がる動作は血圧の急降下を招きやすいため注意が必要です。
高齢者ではいわゆるヒートショック(温度差による血圧変動)も重なり、浴室での立ちくらみや失神が起こりやすくなります。
利用者さんが入浴後にめまいや立ちくらみを訴えた場合、すぐに近くの椅子や床に座らせ、転倒を防止します。
湯船から出る際は浴槽の縁に腰掛けて1分ほど休んでから立ち上がるように促しましょう。
介助者は利用者さんの傍に付き添い、必要なら支えながらゆっくりと立ち上がるのを補助します。
浴室には手すりを設置し、立ちくらみ時に掴まれるようにしておくと安全です。
入浴前後には血圧測定を行い、入浴で大きく血圧が変動する方は入浴時間を短めにする、あるいはシャワー浴に切り替えることも検討します。
排泄(トイレ)後に血圧が下がった場合
排尿や排便の際にも血圧低下が起こることがあります。
特に便を出すためにいきむ(強く力む)動作は副交感神経(迷走神経)を過度に刺激し、血管が拡張して血圧が下がることがあります。
これは迷走神経反射と呼ばれ、高齢者では排尿時より排便時に起こりやすい現象です。
大量の便通後などに排便失神といって意識を失うケースもあります。
トイレ内で呼び鈴を鳴らされたり応答がない場合は急いで様子を確認します。
排泄後に顔面蒼白で冷汗が出ている、めまいを訴えるといった異変があれば、トイレ内でもその場で座らせたままにして安静確保に努めます。
立ち上がらせる際は一人で立たせず介助し、必要なら車椅子を使用して移動します。
排泄ケアではできるだけ息まずにすむよう促すことも大事です(便秘がちな方には下剤の検討や、排便時の姿勢工夫なども検討します)。
排尿時についても、夜間トイレに一人で立つ際のふらつき防止のため、ポータブルトイレの活用や起床時の声かけなど事前の転倒予防策を講じましょう。
移乗中に血圧が下がった場合
ベッドから車椅子への移乗動作や立ち上がり動作の途中で急に顔色が悪くなったり、「くらっとする」と訴える場合は、起立性低血圧を起こしている可能性があります。
長く横になっていた利用者さんを急に座位・立位にすると血圧が追いつかないためです。
移乗中に利用者さんがふらついたら、ただちに動作を中止して座位か臥位に戻します。
無理に立たせ続けると転倒や失神につながるため危険です。
移乗の際は段階を踏んでゆっくり体位変換することが予防につながります。
例えばベッド上で少し体を起こしてしばらく待ち、次に足を床に下ろしてまた少し休む、といった具合に小刻みに体位を変えると血圧の順応がスムーズになります。
利用者さんにも「急に動くと目まいがするかもしれないのでゆっくり行きましょうね」などと声をかけ、協力してもらいます。
必要に応じてスタッフ二人以上で対応し、万一に備えて後ろから支える人を付けるなど安全を図りましょう。
移乗リフト等の福祉用具が使える場合は活用し、職員側も安全に介助できるようにします。
現場職員がすぐに使える観察・判断ポイント
血圧低下の兆候を早期にキャッチするには、日頃から利用者さんの様子の細かな変化に注意することが重要です。
以下のようなサインが見られたら、血圧が下がっている可能性を考えて対応しましょう。
①ふらつきやめまい
普段まっすぐ歩ける方が千鳥足のようにふらついて歩く、急に座り込んでしまう、立ち上がり時によろめく場合は、立ちくらみや脳への血流低下を起こしている可能性があります。
声をかけたときの反応が遅かったり「目の前が暗くなった」と訴える場合も要注意です。
②顔色の変化(顔面蒼白)
顔や唇の色が青白くなるのは末梢への血流が減少しているサインです。
ショックの症状としても皮膚の蒼白は典型であり、血圧低下時にはしばしば見られます。
普段の顔色との違いに気づいたら、「気分はどうか」「寒くないか」など様子を確認しましょう。
③冷や汗(冷汗)
額や頬、首筋に冷たい汗をかいている場合、血圧低下に伴う自律神経の反応である可能性があります。
特に顔色不良や手足の冷感を伴う冷汗はショック状態の兆候でもあります。
脈拍が速く弱い(触れにくい)ことも多いため、触診できる場合は確認してみます。
④意識レベルの低下
会話の受け答えが普段より緩慢、呼びかけに対する反応が鈍い、ぼんやりして焦点が合わない、といった意識レベルの低下も危険信号です。
意識消失に至る前段階として傾眠傾向(強い眠気)や興奮・不穏が現れることもあります。
これらの変化を感じたら早めに看護師に報告し、バイタルサインをチェックしましょう。
以上のポイントを踏まえ、日頃から利用者さんの「いつもと違う様子」にいち早く気づける観察眼を養ってください。
高齢者介護の現場では急な体調変化が避けられないこともありますが、原因を知り・優先順位を押さえた対応策を身につけておくことで、いざというとき落ち着いて対処できます。
本研修の内容を参考に、チーム全員で緊急時対応手順を再確認し、定期的なシミュレーション訓練を実施しておきましょう。
それではこれで終わります。
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