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入浴介助時に感染のリスクが高まる理由

入浴介助の現場は感染リスクが高まりやすい環境です。
その理由をいくつか見てみましょう。
高温多湿な環境
浴室内は温度・湿度が高く、細菌やカビ(真菌)、レジオネラ菌などの病原体が増殖しやすい環境です。
湿度が高いと菌やウイルスが繁殖しやすく、低温乾燥な場所に比べて感染の温床になりがちです。
また浴室は閉ざされた空間でもあるため、換気が不十分だと空気中の病原体も滞留しやすくなります。
たとえばインフルエンザなどは湿度が高い方がウイルスの生存に有利で、密室で人が接近する状況では飛沫が飛びやすくなります。
密接な身体接触
入浴介助では介護職員が利用者さんの身体に直接触れてサポートします。
洗身や移動の介助で肌と肌が触れ合う機会が多く、接触感染のリスクが高まります。
普段であれば肌に付着しても問題ない程度の菌でも、傷があったり高齢で免疫が低下していたりすると感染症を引き起こす可能性があります。
また、利用者さん同士は同時に入浴しなくても、同じ浴室や備品を順番に使うことで間接的な接触が生じます。
前の人の皮膚のフケや角質、菌などが椅子や手すりに残っていると、後の人にうつることも考えられます。
体液や傷口を介した感染
汗や皮脂だけでなく、尿や便、血液、分泌物など体液に触れる機会が多く、肝炎ウイルスやHIVといった感染症が皮膚や粘膜の傷口から侵入する可能性があります。
例えば、利用者さんの傷から出た血液が介助者の傷に付着すると感染リスクが生じます。
また、爪に汚れや菌が残っていると相手や自分への感染源となり、長い爪は肌を傷つける原因にもなります。
爪は短く清潔に保ち、傷がある場合はきちんと覆うなど事前準備が欠かせません。
入浴時は湿度・密室・密接な接触といった条件が重なるため、感染リスクが高まります。
「入浴だから安心」と思わず、しっかりとした予防意識を持つことが大切です。
肝炎(B型・C型など)の基礎知識と対応
肝炎ウイルスの主な感染経路は、血液や体液を介した接触感染です。
次の2つのポイントを覚えておきましょう。
- 握手や同じ浴槽に入る程度では感染しない
- ただし、血液や体液が傷口に触れると感染リスクがある
たとえば髭剃り中の出血や、皮膚をこすったときの小さな傷などが感染のきっかけになることもあります。
入浴介助では、出血があればすぐに手袋を着用して止血し、防水性の絆創膏やガーゼで覆います。
特にB型肝炎ウイルスは乾燥した血液でも感染力があるため、浴槽や洗い場に血液が付着した場合は、すぐに消毒処理を行うことが大切です。
皮膚が傷つきやすい部位(踵や褥瘡部位など)は、事前に保護して出血を防ぐ工夫も効果的です。
また、タオルや剃刀、歯ブラシなど血液が付く可能性のあるものは共用せず、個人専用とします。
特にカミソリや歯ブラシは洗浄が難しいため、使い捨てにするのが理想です。
感染症情報の共有と記録も重要です。
情報の記録と共有は、次の3つのポイントを覚えておきます。
- 職員間で必要な情報を共有(プライバシーには配慮)
- 入浴後に「出血なし」などの記録を残す
- ヒヤリとした場面があれば速やかに報告
万一、血液曝露があった場合は、すぐに報告・受診し、必要に応じて検査やワクチン接種を受けます。
職員自身もB型肝炎ワクチンを接種して抗体を持っておくと安心です。
過剰に怖がる必要はありませんが、基本を守ることが大切です。
正しい知識と対応で、入浴介助の安全性を高めることができます。
皮膚疾患(疥癬・とびひ・水虫など)の見分け方と対応
高齢者の肌は乾燥して傷ができやすく、皮膚感染症が起こりやすい特徴があります。
特に施設では「疥癬(かいせん)」「とびひ(伝染性膿痂疹)」「水虫(白癬菌感染症)」に注意が必要です。
入浴介助の場面は皮膚観察のチャンスでもあるため、早期発見・感染予防がポイントになります。
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニが皮膚に寄生し、強いかゆみと湿疹を引き起こす感染症です。
特に夜間にかゆみが強く、指の間・脇・腹部など柔らかい皮膚に発疹が出やすいのが特徴です。
- 入浴順番はできれば最後にする
- 入浴後は浴槽・床・マットを洗浄、タオル類は密封・別洗い
- 介助時は長袖ガウンやエプロン着用
感染力があるため、看護職やご家族へ早めに報告し、皮膚科受診につなげます。
職員自身も症状がないか注意が必要です。
とびひ(伝染性膿痂疹)
水疱やかさぶたができ、引っかくことで広がる細菌感染症です。
- 感染拡大防止のため他の利用者さんとは別対応
- 入浴は可能だが、順番を最後にしたりシャワー浴に切り替える
- タオル共用は厳禁、患部はやさしく洗う
広がりや発熱がある場合は入浴を控え、清拭対応に切り替えます。
水虫(足白癬)
足の指の間が赤くなったり、皮がむける真菌感染症です。
- 感染は入浴中よりも入浴後の床やマットで起こりやすい
- 足拭きマットはこまめに洗濯・消毒
- タオルは利用者さんごとに分け、使用後はしっかり清掃
入浴後の乾燥が予防の基本です。
本人への声かけ・ケア指導も効果的です。
皮膚観察のコツ
入浴介助では普段見えにくい背中や足裏などを観察できます。
- 発疹、水疱、かさぶた、赤みがないかチェック
- 「痒い」「ヒリヒリする」などの訴えにも耳を傾ける
気になる症状を見つけたら、その場で看護職へ報告し記録しておきましょう。
皮膚感染症は早期発見と対応で拡大を防ぐことができます。
実践編|感染対策を強化するための入浴介助ルール
入浴介助の現場では、「感染対策を日常化すること」がとても大切です。
特別な時だけでなく、普段から意識してルールを徹底することで、感染のリスクを大きく下げることができます。
ここでは実践しやすい基本ルールを4つ紹介します。
① 個人防護具(PPE)の使い分
感染リスクに応じて防護具を上手に使い分けましょう。
- 手袋:排泄物・血液・湿疹部位などに触れるときは必ず着用。
- エプロン:衣服の汚染防止。汚れたら都度洗うか交換。
- マスク:咳・痰がある利用者さんの介助時や介助者が体調不良のときに着用。
湿疹や創部がある方の介助では、長袖ガウンと手袋・マスクを組み合わせてしっかり防護します。
自分と利用者さんを守る「バリア」として、PPEを活用しましょう。
② 浴室・備品の清掃と消毒
入浴後は毎回清掃し、清潔な状態に戻します。
- 浴槽の湯を抜き、浴槽・床・椅子・手すりなどを洗剤で洗浄 → よくすすぐ
- 汚染があった場合、消毒液(次亜塩素酸ナトリウムなど)でしっかり拭き取る
- 血液や排泄物汚染時は消毒後に水拭きして仕上げる
カビ対策も忘れずに。
湿気をためず、定期的な防カビ清掃で真菌の増殖を防ぎます。
毎日のこまめな清掃が、感染を防ぐ一番の近道です。
③ タオル・スポンジ類の個人管理
感染対策の基本は「共有しない」ことです。
- タオルやスポンジ、ブラシは利用者ごとに分ける
- 共用する場合は高温洗濯・消毒・乾燥を徹底
- 爪切り・カミソリ・歯ブラシは完全に個別管理
濡れたまま放置せず、使ったらしっかり洗って乾かす習慣をつけましょう。
清潔な備品は利用者さんの安心にもつながります。
④ 手洗いと安全意識
「感染症だけでなく安全も守る」という視点が大切です。
慌てず、丁寧なケアを意識しましょう。
- 介助の前後や汚れた手で他を触る前に必ず手洗い
- 1人介助ごとに手指を清潔に保つ
- 浴室内の転倒・スキンテア(皮膚剥離)なども感染リスクになるため注意
入浴介助は、利用者さんと介助者が密接に接する場面です。
小さなルールの積み重ねが、大きな感染予防につながります。
毎日の習慣として、チーム全体で徹底していきましょう。
情報共有と記録のポイント
感染症対策は「一人でがんばる」ものではなく、チーム全体で取り組むものです。
どれだけ丁寧に介助しても、情報が共有されなければ対策の抜けや遅れが生じます。
特にデイサービスでは、限られた時間・人員の中でいかに早く正確な情報を伝えるかが大切です。
ここでは、現場で実践しやすい情報共有と記録のコツを4つにまとめます。
① 「気づいたらその日のうちに」報告を
入浴介助中に「ちょっと気になる」と思ったら、遠慮せずその日のうちに看護職や管理者に報告しましょう。
- 「足に水虫のような症状がある」
- 「疥癬かもしれないかゆみを訴えた」
- 「洗身中に小さな出血があった」
看護職は医療的な視点から緊急性を判断できますし、必要があればご家族への連絡や受診対応も行ってくれます。
また、ケアマネジャーには利用者全体の情報が集まるため、感染拡大の兆しがあれば施設全体の対策にもつなげられます。
特に法定感染症やクラスターの可能性がある場合には、行政への報告も必要になるため、「早い段階での情報共有」が非常に重要です。
② 口頭だけでなく「記録に残す」
口頭だけの伝達では、時間がたつと忘れてしまうことがあります。
申し送りノートや記録システムに書き残すことで、勤務時間が違う職員とも情報を共有できます。
- 「左肘に湿疹あり、掻痒感訴え。皮膚科受診予定」
- 「背中に赤みあり。経過観察とする」
朝礼や夕礼で口頭共有も併用すると、チーム全体の意識が高まります。
「誰でも気づいたら発信」が当たり前の雰囲気を作ることが、感染対策の第一歩です。
③ 感染症に関するヒヤリ・ハットも記録
ヒヤリとした出来事は、そのままにせず記録して共有しましょう。
- 入浴中に擦過傷を発見 → 止血・消毒 → 報告・記録
- 陰部の痒み・疥癬疑い → 看護師報告 → 入浴中止・清拭対応
- 職員に発疹→曝露の可能性 → 受診 → PPE徹底を再確認
「何が起き、どう対応し、今後どうするか」を残すことで、職員全員の学びになります。
新人への教育にも役立ち、チーム全体のレベルアップにつながります。
④ 隠さずオープンな雰囲気づくり
感染症のヒヤリは珍しいことではありません。
だからこそ「言いやすい空気」が大切です。
情報共有が早ければ、対策も早く打てます。
誰か一人が頑張るのではなく、チーム全員で支え合い、施設全体で感染対策を高めていきましょう。
チームで取り組む感染症対策
感染症対策は、一人の努力では限界があります。
デイサービスでは介護・看護・リハビリ・調理など多職種が関わるため、連携と情報共有が欠かせません。
それぞれの立場が協力し合うことで、利用者さんを守る力が何倍にもなります。
介護・看護・リハビリの連携体制
介護職は日常ケアの中心ですが、感染症の兆候が見られたらすぐに看護職へ報告します。
看護師は医療的な判断や医師・保健所との連携、家族への対応も担います。
また、リハビリ職は身体に直接触れる機会が多く、皮膚トラブルを早期に発見できる立場でもあります。
- 入浴で得た情報 → リハスタッフへ
- リハで気づいた皮膚異常 → 介護・看護へ
このように、情報を双方向に流すことがポイントです。
定期的な多職種ミーティングで課題を共有し、「利用者さん全員を守る」という意識を高めましょう。
定期的な感染症対策カンファレンス
感染症対策を日常業務の中に根付かせるには、定期的な話し合いが効果的です。
たとえば月1回のミーティングで、次のようなテーマを設定します。
- インフルエンザ流行期の注意点確認
- 嘔吐・発熱時の対応の振り返り
- 地域の感染情報の共有
嘔吐物処理や入浴介助時のヒヤリ体験をロールプレイするなど、実践的な訓練を取り入れると理解が深まります。
堅苦しい会議ではなく「学び合う場」にすることで、職員全体の意識とスキルが自然と底上げされます。
利用者・家族との連携
感染症対策には、利用者さん本人と家族の理解も不可欠です。
- 「疥癬のため入浴は個別対応します」
- 「とびひが治るまで入浴をお休みしましょう」
このような説明は、理由をきちんと伝えることで協力が得られやすくなります。
感染症に不安を感じるご家族には看護師が専門的に説明し、安心してもらうことも有効です。
一方で、感染症を隠すケースもあるため、日頃から「気になることがあれば教えてください」と声をかけ、ご家庭からの情報提供を受けられる関係づくりが重要です。
さらに、施設側が普段から行っている感染対策を「見える形」で発信すると、信頼感も高まります。
おわりに
いかがだったでしょうか。
入浴は利用者さんにとって大きな楽しみであり、気持ちよく過ごせる大切な時間です。
その喜びを守りながら、見えない感染リスクから利用者さんを守るのが私たち介護職員の役割です。
感染症対策といっても特別なことではなく、手袋の着用・傷の保護・掃除の徹底といった基本を習慣にするだけで、リスクは大きく減らせます。
大切なのは、毎日の小さな積み重ねです。
新人もベテランも関係なく、皆が一緒に取り組むことで、利用者さんが安心して過ごせる環境ができます。
「今日も気持ちよかった、ありがとう」という笑顔を守るため、安全第一の入浴介助を続けていきましょう。
それではこれで終わります。
「ほかの入浴介助研修の資料がみたい」という方はこちらの記事をご参照ください。
BCPについてに記事を探しておられる方は、こちらの記事をご参照ください。
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