看取りと聞くと「医療の知識がないと無理」と感じる方もおられます。
しかし看取りケアは、毎日の生活支援が少しずつ積み重なった延長線上にあります。
大切なのは高度な医療技術よりも、目の前の利用者さんが安心してその人らしい最期を迎えられるよう寄り添う姿勢です。
本稿では、看取りの定義や身体変化の見かた、ご家族との関わり方、振り返りの方法までを丁寧に解説します。
難しい用語にはかならず噛み砕いた説明を添え、「こんなときどう声をかけるか」まで具体的に紹介するので、初めて看取りに関わる方でもスムーズにイメージできるはずです。
この記事を読む価値
- 簡潔にまとめられています。
- 最後にワークをすることで、30分程度の研修にできます。
- 極力、難しい表現は避けてあります。
早速、見ていきましょう。
看取りのキホンをおさえよう

看取りの基礎を整理します。
日本老年医学会は終末期を「最善の医療を尽くしても回復が期待できず近い将来死が避けられない段階」と定義しました。
つまり看取りケアの目的は、単に延命を諦めることではありません。
痛みや苦しみを和らげながら、自分らしい時間を最後まで保てるよう援助し、加えてご家族が納得と満足を得られる体験をつくることです。
「痛みを楽にし、不安を減らす」と置き換えて覚えると理解しやすいかもしれません。
看取りには、苦痛緩和、家族支援、そして多職種協働という三つの要素が常に重なり合っています。
自分一人で抱え込まず、看護師や医師、相談員、栄養士などと情報を共有しながら取り組む姿勢が大事です。
看取りケアの3つの特徴(やさしい言葉で)
- 痛みや苦しみを減らす:お薬や体位変換で「少しでもラク」に
- 家族も支える:ご家族も不安。説明や傾聴で“心のケア”を
- チームで動く:介護・看護・医師・相談員など、全部で支える“助け合い体制”
亡くなるまでの3つの道すじを知ろう
人が亡くなるまでの身体機能の変化を、三つのパターンに分類して説明します。
タイプ | 身体変化の流れ | イメージ | ケアのコツ |
---|---|---|---|
急激型(がん等) | 最後の1〜2週間で急に体力低下 | スキーの急斜面を一気に滑り降りる | 早めに痛み止め。ご家族へ情報をこまめに共有。 |
階段型(心・肺・肝不全) | 良くなったり悪くなったりを繰り返す | 階段を数段下りて止まる…を繰り返す | 増悪時は医療連携、落ち着いたら生活リズムを整える。 |
緩徐型(老衰・認知症) | ゆっくり体力低下 | なだらかな坂を下る | 小さな変化に気付き、安心できる環境づくり。 |
急激型は多くのがんで見られ、最後の一、二週間で体力が急降下します。
利用者さんは昨日まで自力で歩いていたのに突然衰弱することもあり、痛みや呼吸苦への迅速な対応と、ご家族へのこまめな情報提供が欠かせません。
階段型は心不全や慢性閉塞性肺疾患のような臓器機能不全でよく見られ、良くなったり悪くなったりを繰り返しながらゆっくり低下します。
緩徐型は老衰や認知症で多いタイプで、長い坂を下るように少しずつ全身が弱っていきます。
小さな変化を見逃さず環境を整えることが安心につながり、声かけや触れ合いによる安心感の提供が重要になります。
「急激型はスピード注意、階段型はアップダウン注意、緩徐型はのんびり見守り」と覚えると区別しやすいです。
看取り期に出るサインと“その時”の対応
看取り期に現れる身体サインを具体的にお伝えします。
食欲が落ち、体力が衰えるところから始まり、倦怠感が強くなり、意識がうつろになる様子が見られます。
末梢血流が弱くなると足先や指先が冷たく紫色になり、浅く不規則な呼吸が目立ってきます。
やがて尿量は減り、腎機能の低下で尿失禁が起きやすくなり、腸の運動も鈍るため便失禁が見られることもあります。
【よく出るサイン】
- 食欲がない、体力が落ちる、強い眠気が続く
- 足先が冷たく紫色になる(血のめぐりが弱くなるため)
- 呼吸が浅く、速かったり遅かったりリズムが乱れる
こうした変化は利用者さん本人にとってもご家族にとっても大きな不安材料です。
「寒くないですか」「枕の高さを変えてみましょうか」など、身体の状態を気遣うシンプルな声かけが安心につながります。
また、口の乾燥を防ぐための口腔ケアや保湿、体位を整えて背中や踵の痛みを減らす工夫、室温や照明、音を調整して静穏環境を保つことも苦痛緩和に大きく貢献します。
「姿勢を整える」「乾燥させない」「環境を整える」「触れて安心を伝える」「必要に応じ医療と連携する」という五つの基本を意識すると行動に移しやすいです。
【五つの基本】
し=姿勢(体位変換)
ず=ずっと乾かさない(口腔・保湿)
か=環境を整える(室温・照明・音)
な=なでる(手を握る・背中さする)
い=医療と連携(痛み止め・酸素など)
「その人らしさ」を守る意思決定サポート
意思決定支援の具体的な進め方を紹介します。
本人が言葉で希望を伝えられない状態でも、日常の何気ない会話や表情、好みの食事や音楽、過去の生活歴からその人の価値観を推測できます。
たとえば「若い頃は味噌汁が大好物だった」と聞けば、最期の食事を温かい味噌汁で締めくくる提案ができるかもしれません。
【日常会話がヒントになる】
例:好きな食事を伺う→「最後まで○○を食べたい」に繋がる
例:よく聴く音楽を確認→枕元で流すと安心感UP
ご家族との面談では、現在の状態を専門用語を避けてわかりやすく説明し、ご家族の気持ちを十分に聞き取り、一緒にケアの方針を決める三つのステップを踏むと納得感が高まります。
そして、看取り同意書はご家族の迷いを減らす「安心の証明書」です。
もしあなたが新人職員であっても、面談時にそばに立ち、ご家族の表情や質問を記録してチームに共有すれば、大きな役割を果たせます。
【書類は“安心の証明書”】
- 同意書の役割:後から「聞いてない」を防ぎ、家族が迷った時の支えになる
- 新人ができること:説明時にそばに立ち、ご家族の表情や疑問をメモしてチームに共有
看取りが終わった後にすること
看取り後の対応と振り返りです。
利用者さんが旅立ったら、清拭で体を整え、好きだった洋服や音楽で最期の身だしなみを整え、ご家族とともにお別れの時間を持ちます。
声をかけるときは「お疲れさまでした。大切な時間をご一緒させていただきありがとうございます」と感謝の気持ちを添えると、ご家族の心が少し和らぎます。
【死後ケアと家族ケア】
- 体を清拭し、衣服を整える → “最後の身だしなみ”
- ご家族に「お疲れさまでした」と声をかけ、一緒に思い出話をする
ケアチームは数日以内に振り返りカンファレンスを開き、本人の苦痛緩和、家族対応、チーム連携がどうだったかを話し合い、次の看取りに活かします。
看取りは感情が大きく揺れる仕事です。
涙がこぼれても決して弱さではありません。
先輩や同僚と気持ちを共有し、自分の心を守るセルフケアを忘れずに続けてください。
【振り返りカンファレンス】
チェック項目:
- 本人の苦痛を減らせたか?
- 家族に納得感があったか?
- 職員間の協力は?
- 次への改善点は?
おわりに
いかがだったでしょうか。
看取りケアは「人生の締めくくり」をお手伝いする尊い仕事です。
迷ったときはチームに相談し、一歩ずつ学びながら経験を重ねてください。
あなたの温かいまなざしと行動が、利用者さんとご家族にかけがえのない安心をもたらします。
この研修が、皆さんの最初の一歩を支える羅針盤となることを願っています。
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