成年後見制度と虐待防止│介護職が理解しておくべきポイント【高齢者虐待防止研修】
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高齢者虐待の対応を考えるとき、「成年後見制度」という言葉を聞いても、「むずかしそう」「自分の仕事とは少し遠い」と感じる介護職の方は少なくありません。
しかし実際の現場では、お金の管理ができない、契約が進まない、家族が協力してくれないといった場面で、成年後見制度が支援の選択肢になることがあります。
本記事では、制度の細かい仕組みを覚えることよりも、「どんな場面で関係してくるのか」「介護職として何を押さえておけばよいのか」に焦点を当てます。
成年後見制度を、虐待防止や支援を止めないための“実務の道具”として理解することを目的に、現場目線で整理していきます。
この記事を読むメリット
- 成年後見制度が「どんな場面で関係するのか」を現場目線で理解できる
- 虐待防止の中で、介護職が担う役割と相談のポイントが整理できる
- 制度に振り回されず、支援を止めないための考え方が身につく
それでは早速、みていきましょう。
成年後見制度の基本

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が十分ではない人に対して、本人を支える人(後見人等)を家庭裁判所が選び、法律面から生活を支える制度です。
その方の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」があり、あわせて、元気なうちに契約しておく「任意後見制度」というものもあります。
成年後見制度で行われる支援は、整理すると主に「お金」と「契約」に関わるものです。
- 預貯金や不動産などの財産管理
- 介護・福祉サービス、施設入所や入院の契約
- 悪質商法などの被害防止
ただし、申立てから開始までに時間がかかることや、後見人候補者を書いても必ず選ばれるとは限らないこと、場合によっては鑑定が必要になることなども留意しておく必要があります。
また、制度はいったん始まると、本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで原則として続き、ご家族の希望だけで簡単に終了できない点も重要です。
そしてもし、後見人等が不適切な事務処理を行った場合には、解任だけでなく、損害賠償や刑事責任が問われる可能性があります。
制度には監督と是正の仕組みがある一方で、現場としても「すべて任せきりにしない」視点を持つことが大切です。
参考資料:厚労省HP
成年後見制度が虐待防止につながる理由
高齢者虐待は、家庭内(養護者)でも、介護現場(施設・事業所)でも起こり得ます。
特に養護者による虐待は、相談・通報件数そのものが非常に多いです。
こうした中で、成年後見制度が虐待防止の場面で注目される理由の一つが、養護者との間で「お金」や「契約」をめぐるトラブルが起きやすい点にあります。
実際、裁判所の統計で成年後見制度の申立て理由として多いのは、次のような内容です。
- 預貯金の管理や解約ができない
- 年金や支払いの管理が難しくなっている
- 生活や福祉サービスを安定して受けるための支えが必要
これらは、経済的虐待や世話の放任と問題が重なりやすい場面です。
さらに現場でよくあるのが、「支援につなげたいが、本人が契約できない」「家族が協力せず、手続きが進まない」というケースです。
厚労省の虐待対応マニュアルでも、「本人の判断能力が不十分な場合には、成年後見制度を活用し、後見人等が代理して介護保険の申請やサービス契約を進められることがある」と整理されています。
このように成年後見制度は、単なる制度説明にとどまらず、虐待を防ぎ、必要な支援を切らさないための「実務上の選択肢」として位置づけられています。
虐待のタイプ別にみる成年後見制度の効き方
成年後見制度は、すべての虐待に使える「万能な制度」ではありません。
現場で効果を発揮しやすい場面と、注意が必要な場面があります。
まず前述のように、経済的虐待や金銭搾取が疑われるケースでは、成年後見制度が役に立ちやすいといえます。
厚労省の虐待対応マニュアルでも、年金の搾取などがある場合には、口座の扱いについて市町村や金融機関と連携して対応する必要があると示されています。
ここで大切なのは、
- 口座を凍結するかどうかを現場で決めないこと
- 市町村や金融機関と相談しながら、安全策を組むこと
次に、「家族が契約をさせない」「本人が契約できず、サービスが止まっている」といった場面です。
この場合、後見人等が代理して介護保険の申請やサービス契約を進められる可能性があり、放任(ネグレクト)の悪化を防ぐ入口になります。
一方で、特に注意が必要なのが医療同意です。
医療行為の同意は本人に強く帰属し、成年後見人であっても同意が難しい場面があることが、ガイドラインに書かれています。
そのため、後見人だけに任せるのではなく、医療・介護の関係者が連携して意思決定支援を行う必要があります。
また、分離保護や面会制限が行われている場合でも、後見人が選任されたからといって、すぐに解除や契約変更を行うべきではありません。
あくまで、本人の安全を最優先に判断することが重要です。
介護職が押さえる実務ポイント
私たち介護職が成年後見制度を考えるとき大事なのは、制度をくわしく説明できることではありません。
「いま、何が起きているのか」を整理して、助けてくれるところにつなぐことです。
まず、虐待を防ぐための基本は、メモを残すことと、職員皆で考えることです。
「いつ」「どこで」「だれが」「何を見たか」を、思い込みを入れずに客観的に書き出し、そして一人で決めず、職場全体で対応することが大切です。
本人のようす、ご家族のようす、契約やお金で止まっていることを、メモをもとにみんなで共有します。
そして、次のことを集めて、相談先(主に地域包括支援センター)に伝える役目が大切です。
- どんな契約や支払いで困っているか
- 本人は何をしたいと思っているか
- 家族は手伝えそうか、トラブルはないか
- いま急いで助けが必要か
私たちは「成年後見制度」という制度があることを知ることで、現場で虐待を発見した時の対応がとりやすくなるかもしれません。
市町村長申立と費用支援を理解する
「助けてくれる家族がいない」「家族が虐待をしていて、頼れない」「すぐに助けが必要」というケースは、たまに遭遇します。
このようなときに大切になるのが、市町村長申立という方法です。
これは、本人や家族の代わりに、市町村のトップが成年後見制度の手続きをすることです。
裁判所のデータ(令和6年)を見ると、成年後見制度の申立てのうち、約4分の1は市町村長が行っています。
件数も約1万件あり、この方法は特別なものではなく、実際によく使われていることが分かります。
ただし、制度を使うにはお金がかかるという問題があります。
申立てには、書類代や手数料、郵送代が必要になり、場合によっては専門家の費用がかかることもあります。
制度が始まったあとの後見人の報酬は、原則として本人が払うことになっています。
そこで、お金が理由で制度が使えなくならないように、「成年後見制度利用支援事業」という助けの仕組みがあります。
厚労省は、市町村に対して、この仕組みをしっかり使うように伝えています。
この支援では、次のような費用が助けの対象になります。
- 申立てにかかるお金や後見人の報酬
- 収入が少ない人への費用の助け
- 後見人をチェックする人(後見監督人)の報酬
私たちが制度の細かいことまで知る必要はありません。
でも、「お金が足りなくて止まりそう」という情報に気づき、相談の場に伝えることは、利用者さんを助けを進めるうえでとても大切です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
成年後見制度は、すべての虐待を解決する万能な制度ではありません。
しかし、お金や契約の問題が重なり、支援が止まりそうな場面では、重要な選択肢の一つになります。
介護職に求められるのは、制度を完璧に説明することではなく、「何が起きているのか」「どこで詰まっているのか」を整理し、適切な相談先につなぐことです。
記録を残し、職場で共有し、地域包括支援センターや市町村と連携することで、本人の安全と権利を守る支援につながります。
本記事が、成年後見制度を“遠い制度”ではなく、現場で活かせる知識として考えるきっかけになれば幸いです。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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