介護施設での「身体拘束ゼロ」を目指す取り組みは、利用者さんの尊厳と安心を守るために欠かせません。
本記事では、環境整備、認知症ケア、ご家族との連携、法人全体での方針づくりなど、実際に成果を上げている施設の具体的な取り組み事例を紹介します。
現場で働く職員一人ひとりが、学び、工夫し、支え合うことで、身体拘束に頼らないケアは実現できます。
研修や日々の業務の参考に、ぜひ活用してください。
この記事を読む価値
- 簡潔にまとめられていて、スラスラ読めます。
- 読み進めることで、30分程度の研修にすることができます。
- 極力、難しい表現は避けてあります。
では早速、見ていきましょう。
環境整備で転倒リスクを減らした施設の取り組み
「転倒や転落を防ぐために身体拘束が必要」と考えられることがありますが、実は身体拘束には事故を防ぐ効果がはっきりしておらず、かえって無理に動こうとして転倒の危険が高まることもあります。
また、体を動かせないことで筋力が低下し、寝たきりになるリスクも指摘されています。
そのため、事故を防ぐには拘束ではなく、安全な環境づくりが大切です。
たとえば、床に近いベッドを使ったり、クッションマットを敷いたりすることで、万が一の転倒でも大きなけがを防げます。
居室の家具配置を見直して動きやすくしたり、手すりを設置したり、体に合った車椅子を使うといった工夫も効果的です。
このような環境整備は、職員一人でできるものではなく、みんなで協力して進める必要があります。
他職種が集まって会議を開き、情報を共有したり、「身体的拘束等適正化検討委員会」のような場で事例ごとに話し合うことが大切です。
また、日々の記録を通じて情報を蓄積し、学習会で知識を深めることも、良いケアにつながります。
「この対応で合っているかな?」と迷ったときには、周りの職員に声をかけて相談することも重要です。
このように、身体拘束ゼロを目指すためには、安全な環境づくりと、それを支える職員同士の協力体制が欠かせません。
それが結果的に、利用者さんの安心や笑顔、そしてその人らしい生活を支えるケアへとつながっていきます。
認知症ケアを強化し、徘徊に対応したグループホーム
家族と連携して拘束ゼロに成功した特養
認知症ケアや徘徊対応など、現場での工夫と同じくらい、ご家族の理解と協力が必要です。
ある施設では、車椅子の腰ベルトを外すことにご家族が不安を感じていたため、見守り専門のスタッフを配置し、事故防止の工夫をしながらご家族の理解を得ていきました。
結果的に、利用者さんの表情が明るくなり、ご家族も「やってよかった」と喜ばれました。
また、ミトン型の手袋を使うかどうかの判断でも、ご家族と何度も話し合い、代わりの方法を試す中で拘束を避けることができた事例もあります。
地域でも、ご家族がオレンジカフェや認知症家族会に参加することで気持ちが軽くなり、「本人のために何ができるか」を前向きに考えられるようになった例があります。
「閉じ込める」代わりに、「見守りや地域との連携で安心を作る」ことも促します。
ご家族には、身体拘束が本人の尊厳を損ない、体力や意欲の低下を招くリスクがあること、そして代替策をとることでむしろ本人の生活が安定することを、丁寧に伝えることが大切です。
話し合いの場を設け、共に考える姿勢が信頼につながります。
日々の変化やケアの工夫は記録に残し、施設内で共有するだけでなく、ご家族にも定期的に報告することが信頼関係の維持に役立ちます。
「身体拘束廃止委員会」の活動紹介
身体拘束ゼロを組織方針にした法人の取り組み
身体拘束をしない介護を実現するためには、施設単位の努力だけでなく、法人全体としての明確な方針が欠かせません。
ある法人では、「身体拘束ゼロ」を全施設の共通方針として掲げ、トップの強い決意のもと、全職員が一丸となって取り組む体制を築いています。
まず、組織のトップである理事長や施設長が「身体拘束はしない」と明言し、事故が起きた際は責任を負うことも表明することで、職員が安心して取り組める土台を作っています。
このような法人では、
- 身体拘束廃止委員会の設置
- 研修への積極的な参加
- 会議を通じた情報共有
などが、制度として組み込まれています。
研修制度も充実しており、新人研修では理念の共有や介護を受ける側の体験を通じて、利用者さんの気持ちを理解する場が設けられています。
内部の学習会や、外部研修の伝達講習を通じて、全職員が身体拘束のリスクや代替方法について学ぶ機会を得ています。
日々のケアを確認するチェックシートも活用され、実践と理念が結びつく工夫も見られます。
こういった取り組みによって、「問題行動=拘束」ではなく、「なぜその行動が起きたのか?」を考えるようになり、利用者さんの気持ちに寄り添うケアが広がっています。
このように、「身体拘束ゼロ」をトップが決断することで、職員の学びと意識の変化、そして法人全体の仕組みづくりが実現されていきます。
現場で使える!身体拘束を防ぐ工夫アイデア集
ここでは、明日から現場で取り入れられる10の工夫をご紹介します。
①問題行動の背景を丁寧にアセスメント
おむついじりや徘徊には理由があります。
「なぜその行動をするのか?」を探る視点が大切です。
②生活リズムと基本ケアの見直し
「食べる」「排泄」「清潔」など、基本的なケアの徹底で安心感を。
自分のペースで食事できる環境、随時おむつ交換などがポイント。
③環境整備で転倒・転落のリスクを減らす
低床ベッドや手すり、ジョイントマットの活用。
動線に配慮した家具配置も事故防止に効果的です。
④安心できる声かけとコミュニケーション
スピーチロック(「動かないで!」など)ではなく、
認知症の方には表情やしぐさからも気持ちをくみ取りましょう。
⑤その人らしい活動(アクティビティ)の工夫
音楽、園芸、体操など…本人の好きなことを活かして関わる。
活動の充実が不穏や問題行動を和らげます。
⑥福祉用具や代替手段を上手に使う
ミトンの代わりに視界からチューブを隠すなど、
「拘束以外の選択肢」を常に考える習慣を持ちましょう。
⑦職員間で情報を共有し、対応を統一する
ユニット会議でケアの方針を共有。
「この人にはこう関わる」と全員が同じ対応をすることが大切です。
⑧多職種・外部と連携する
看護師、リハビリ職、ケアマネ、地域包括などと連携して支援体制を強化。
専門的な助言で視点が広がり、安心できるケアが実現します。
⑨ご家族との連携と情報共有
身体拘束ゼロの方針を説明し、ご家族の不安にも丁寧に対応。
一緒に考えるスタンスが信頼につながります。
⑩本人の意思を最大限に尊重する
表情・しぐさ・声にならない思いも「意思表示」として受け取る。
ご本人が「どうしたいか」を常に中心に据えたケアを。
身体拘束をなくす取り組みは、簡単なことではありません。
でも、職員一人ひとりの「目の前の利用者さんにとって何が最善か?」というまなざしが、確実に現場を変えていきます。
「問題行動→即拘束」ではなく、「なぜ?」を考える文化を育てましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
身体拘束ゼロへの道のりは、簡単ではありません。
しかし、目の前の利用者さんのために「なぜこの行動が起きるのか?」を考え、チームで工夫を重ねることが、確実に現場を変えていきます。
環境づくり、声かけ、家族との連携、法人方針の整備——小さな積み重ねが、大きな安心と信頼につながります。
今後も一人ひとりが主体となり、利用者さん本位のケアを追求していきましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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