緩和ケアの視点で考える「その人らしい看取り」とは│ターミナルケアに関する研修資料
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日本は超高齢社会を迎え、人生の最終段階(いわゆる看取り)のケアがますます重要になっています。
「その人らしい看取り」とは、一人ひとりの人生観や希望に寄り添い、尊厳を持って最期を迎えられるように見守り支援することです。
本記事では、緩和ケアの視点から、この「その人らしい看取り」を実現するために知っておきたいポイントを、やさしく丁寧に解説します。
この記事を読むメリット
- 緩和ケアの大切な考え方を学び、最期までその人らしさを守れるようになる
- 実践例やACP(人生会議)の進め方がわかり、日々のケアに自信が持てる
- 家族支援や多職種連携のポイントを知り、チームで看取りができる
それでは早速、みていきましょう。
緩和ケアとは何か(定義と基本的な考え方)

緩和ケアとは、命にかかわる病気になった人と、その家族を支えるケアのことです。
体の痛みをやわらげるだけでなく、心のつらさや不安、生活の困りごとにも目を向けます。
できるだけ安心して、その人らしく過ごせるようにすることが目的です。
もともとは、がんの治療の中で広まった考え方ですが、今では病気の早い段階から行われることもあります。
緩和ケアで大切にしていることは、次のような点です。
- 体の痛みや苦しさをやわらげる
- 不安や落ち込みなど心のつらさを支える
- 家族の悩みや負担にも目を向ける
- できるだけ普段に近い生活を守る
医師や看護師だけでなく、介護職や相談員などがチームになって支えます。
みんなで協力しながら、その人が安心して毎日を過ごせるようにしていくのが緩和ケアです。
看取りケアにおける緩和ケアの重要性
人生の最期が近づいたとき、大切なのは「苦しまず、安心して過ごせること」です。
そのために必要なのが、緩和ケアの考え方です。
国の指針でも、最終段階では次の2点が大切だと示されています。
- できるだけ痛みをやわらげる
- つらい症状をしっかり軽くする
痛みだけでなく、吐き気、息苦しさ、体のだるさなどもやわらげることで、利用者さんの負担を減らせます。
さらに大事なのは、心のケアです。
不安やさみしさに耳をかたむけ、「心残りがないようにしたい」という思いを支えることも、看取りでは欠かせません。
ただ医療的な処置をするのではなく、その人の気持ちに寄り添うこと。
それが、残された時間をよりよいものにし、「その人らしい最期」を支える力になります。
利用者本人の意思や価値観を尊重するケア
「その人らしい看取り」を行うために大切なのは、利用者さん本人の気持ちを何よりも大事にすることです。
そのためには、医師や看護師、介護職がわかりやすく説明をし、利用者さんが自分で選べるようにすることが必要です。
そして、その選んだ内容をみんなで支えていきます。
役立つ取り組みが、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)「人生会議」と呼ばれる話し合いです。
これは、将来もしものときのために、ご家族や職員と前もって、以下のような内容を話しておくことです。
- どこで最期を迎えたいか
- どこまで治療を望むか
- 何を大切にして生きてきたか、など
話し合いは一度で終わりではなく、体調や気持ちが変われば何度でも行います。
また、認知症などで本人の気持ちを聞くことが難しい場合もあります。
そのときは、これまでの生活や大切にしてきたことを知ることが手がかりになります。
ご家族の話を聞きながら、その人らしさを考え、できるだけ思いに沿ったケアを目指します。
一人ひとりの人生を尊重する姿勢こそが、安心できる看取りにつながります。
「その人らしい看取り」の具体的な考え方と実践例
「その人らしい看取り」を実践するためには、利用者さんの人生観や日常のこだわりを最期の時まで可能な限り反映させる工夫が必要です。
具体的には以下のようなポイントが挙げられます。
好きなこと・習慣の継続
利用者さんがこれまで楽しみにしていた習慣や活動を、体調の許す範囲で続けられるよう配慮します。
例えば音楽が好きな方には病室や居室で好みの音楽を静かに流したり、思い出の写真や愛用していた品物を手元に置いて安心感を持ってもらうことができます。
季節を感じられる飾り付けをしたり、窓から外の景色を眺めてもらったりするのも有効です。
また、お話ししたいという気持ちがある方には、昔の思い出話に耳を傾けるなどして「その人らしさ」に触れる時間を大切にします。
言葉が出にくい場合でも、手を握ったり背中をさするなどスキンシップで気持ちを伝えることができます。
食の希望を尊重
終末期になると食欲が低下したり飲み込みが難しくなったりしますが、可能な範囲で「美味しい」と感じる瞬間を持ってもらうことも大切です。
例えば、医師の許可が得られるなら、本人が好きだった食べ物を少量でも味わってもらう工夫も考えられます。
実際にあるグループホームの看取りケアでは、「甘いものが好き」な利用者さんに対し、糖尿病があっても終末期には好物のアイスクリームやカフェオレを楽しめるよう支援したケースがあります。
制限よりもその人の喜びを優先し、「最後まで○○さんらしく」いられる時間を作ることが、本人の満足感につながります。
ケアの方針を共有
ケアチーム全員が「その人らしさを大切にする」という方針を共有することも重要です。
先ほどのグループホームの例では、支援チーム全員が「Aさんらしさを大切にする」という共通の目標を持ってケアに当たりました。
このように職員同士で方針を確認し合うことで、日常の小さなケアまで含め一貫した支援が可能になります。
また、その方に関する情報(好きなこと、嫌いなこと、価値観など)をスタッフ間で共有し、「○○さんは寒がりだから毛布をかけておこう」「今日は好きなお花を飾ろう」といった細かな配慮につなげていきます。
チーム全体で「その人らしい生活」を支える姿勢が利用者さんにも伝わり、安心感を与えるでしょう。
穏やかな看取りを実現する「2つの柱」
看取りの現場で、私たち介護職が特に意識したいポイントは以下の「2つの柱」です。
①ご家族への「心のケア」と「参画」
大切な人の最期を見守るご家族は、大きな不安の中にいます。
現状を分かりやすく共有:
今の容態や今後予想される変化を伝え、不安を和らげる。
「できること」を提案:
保湿やマッサージなど、ご家族もケアに加わることで、後悔のないお見送りをお手伝いする。
休息とグリーフケア:
ご家族の疲れに配慮して休養を促し、死別後も見据えた継続的な心のサポートを行う。
②多職種チームでの「主体的な連携」
看取りはチームプレイ。それぞれの専門性を活かした一貫した支援が必要です。
情報の即時共有:
カンファレンスを通じて、痛みや食事の状況に合わせたケア方針を常にアップデートする。
介護職ならではの「気づき」:
一番近くにいるからこそ気づける表情や呼吸の変化を、医師や看護師へ迅速に報告する。
包括的な支援体制:
医療・介護の枠を超え、チーム一員として「その人らしい最期」のために主体的に意見を出す。
現場での注意点と介護職にできること
実際に看取りのケアに携わる際、介護職員が注意すべきポイントやできることをまとめます。
利用者さんの状態観察
終末期の利用者さんは体調の変化が大きく、意思表示が難しくなることもあります。
顔の表情や声のトーン、手足の動きなどから痛みや苦しさのサインを見逃さないよう注意深く観察しましょう。
例えば、眉間にシワを寄せている、うめき声を出しているといった様子があれば、痛みがあるかもしれません。
気になる変化があればすぐ看護師や医師に報告し、適切な処置(鎮痛剤の追加投与など)につなげます。
日々のバイタルチェックや排泄の様子も丁寧に記録し、チームで情報共有することが大事です。
苦痛の緩和と安楽の工夫
介護職が直接できる医療行為は限られますが、身の回りのケアによって利用者さんの安楽さを高めることができます。
例えば体位変換をこまめに行って床ずれを予防したり、汗や排泄で汚れたらすぐ清拭やおむつ交換をして清潔を保ちます。
口から食べられない場合も、口腔ケアで口の中を潤し清潔にすると不快感の軽減になります。
室温や照明を整え、毛布を追加して寒くないようにする、足元に湯たんぽを入れるなど環境面での配慮も重要です。
些細なことに感じられるかもしれませんが、こうしたケアの積み重ねが利用者さんの穏やかな表情や安心感につながります。
コミュニケーションと傾聴
話す力が衰えてくると、コミュニケーションは一層ゆっくり丁寧に行う必要があります。
耳元で優しく声をかけたり、「寒くないですか?」「痛いところはありませんか?」と一つひとつ確認しながら関わりましょう。
返事が難しい方でも、表情の変化や瞬き、握った手に込められた力などから気持ちをくみ取る姿勢が大切です。
過去のエピソードを語ってくださる場合は否定せずに頷きながら最後まで耳を傾けます。
介護職員が忙しそうにしていると利用者さんは遠慮してしまうことがありますので、できる限り時間を取り、安心して思いを話せる雰囲気を作ってください。
最期の瞬間の対応
いよいよ旅立ちの時が近づいたら、できる限り穏やかな環境を整えます。
ご家族がそばにいることを望まれれば付き添いの時間を調整し、間に合わない場合でもスタッフが手を握って「○○さん、安心してくださいね」と声をかけ続けます。
息遣いや脈の変化など最期の徴候に気づいたら、落ち着いて医療者に連絡しつつ、ご家族にもそっと伝えましょう。
看取りの瞬間には、ご本人の尊厳を守るためプライバシーに配慮します。
息を引き取られた後は、「○○さんの安らかなお顔ですね」とお声がけし、ご家族と共に静かにお見送りをします。
介護職は悲しみに暮れる家族に寄り添いながら、必要に応じて看護師と共にエンゼルケア(ご遺体の清拭や着替え)を行い、最後まで丁寧に対応しましょう。
おわりに
介護職にとって看取りの場面に立ち会うことは決して容易ではありません。
しかし、「その人らしい最期」を支えるという尊い役割を担えることは、大きなやりがいでもあります。
チームや上司と気持ちを共有し、無理を抱え込まないようにしながら、自分自身の心のケアにも気を配ってください。
利用者さんが最期まで自分らしく過ごせるように、そしてご家族が「この人らしい穏やかな最期だった」と受け止められるように、緩和ケアの視点を持った温かな看取りケアを実践していきましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
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参考文献・参考資料
厚生労働省:
人生の最終段階における医療・ケアの考え方に関するガイドライン
国立がん研究センターがん情報サービス:
緩和ケアに関する解説資料
日本医師会:
アドバンス・ケア・プランニング(ACP/人生会議)に関する資料






