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介護予防の視点から見る「塗り絵」の効果
塗り絵には、次のような4つの効果があります。
- 認知機能の活性化【前頭葉・視覚野・運動野の連動】
- 手指の巧緻動作の維持
- 情緒安定・ストレス軽減
- 会話や交流を促す社会参加効果
それぞれ、具体的にみていきましょう。
①認知機能の活性化【前頭葉・視覚野・運動野の連動】
塗り絵は一見シンプルな遊びですが、実は脳を広く刺激する効果的な活動です。
絵柄を認識し、色を思い出し、指先で塗る過程で、視覚野・側頭葉・前頭葉・運動野といった脳のさまざまな領域が活性化します。
特に指先を使う細かな動作は前頭葉の運動野を刺激し、脳の血流を増やすことで認知機能の維持に役立ちます。
色の組み合わせを考えることで創造力も鍛えられ、大人向けの細かい塗り絵ほど脳への刺激は大きくなります。
こうした活動を続けることで、判断力や記憶力の維持、さらには要介護度の進行を遅らせる効果が期待できます。
②手指の巧緻動作の維持
高齢になると関節の動きや指先の器用さが低下し、日常生活に支障が出やすくなります。
塗り絵で細い鉛筆を握り、線に沿って力を調整しながら塗る動作は、自然な手指のリハビリになります。
指先を使うことで運動野が活発になり、脳全体にも良い刺激を与えます。
リハビリの専門資料では、手指の細かな運動が前頭葉にも影響し、思考や感情のコントロールに役立つとされています。
こうしたトレーニングは、筋力と脳機能の両方を鍛えることにつながり、塗り絵は身体と認知の両面に効果的な活動といえます。
③情緒安定・ストレス軽減
塗り絵に集中する時間は、心身のリラックスにもつながります。
アートセラピーとしても注目されており、絵に集中することで心拍数が落ち着き緊張が和らぎます。
介護施設向けの記事でも、塗り絵によって脳の活性化が進み自律神経が整うことでリフレッシュ効果やストレス解消につながるとされています。
また、大人向け塗り絵は細部にこだわるため没入しやすく、思考が雑念から離れる「マインドフルネス」に近い状態を作り出します。
色を完成させた後の達成感や作品を他者に見せて認められる経験も自己肯定感を高め、情緒の安定に寄与します。
④会話や交流を促す社会参加効果
塗り絵は個人で取り組める一方、グループで行うことで互いに色遣いや作品を見せ合い、自然な会話が生まれます。
季節の風景や懐かしい風物を題材にすると、過去の思い出が引き出されて回想法の効果も期待できます。
介護の現場でよく利用される季節の題材は、春なら花見やひな祭り、夏は花火、秋は紅葉やお月見、冬はお正月といった行事が挙げられます。
このような作品を選ぶことで「昔こんな景色を見た」「子どもの頃にこんな経験をした」といった会話が広がり、他者との交流や社会参加のきっかけになります。
交流が増えると孤立感や抑うつが緩和されるだけでなく、脳への刺激が増え認知機能の低下予防にもつながります。
要介護度進行予防につながる塗り絵プログラムの設計
「塗り絵なら何でもよい」というわけではありません。
ここでは塗り絵を提供する際の3つのポイントをお伝えします。
①「できることを活かす」活動設定の考え方
介護予防プログラムを設計する際は、利用者さんが「できないこと」を補うのではなく「できること」を活かして成功体験を積むことが重要です。
塗り絵でも、難易度や題材を利用者さんの能力に合わせて調整することで、無理なく楽しく続けられます。
認知症リハビリの記事では、リハビリとして行う塗り絵は当人のレベルに合わせることが大切で、簡単すぎると自尊心を傷つけ、難しすぎるとパニックに陥り意欲を失う可能性があると述べられています。
初級・中級・上級と複数の絵柄を用意し、自分で選べるようにすることや、見本を参考に色を選べるようにする工夫が効果的です。
②目的別プログラム例(手指機能・認知機能・交流促進)
塗り絵は目的に応じて設計を変えることができます。
手指機能の維持:
線の太さや塗り面積の大きさを段階的に変え、握力や指先の巧緻性を鍛える。太めの線や大きな塗り分けから始め、慣れてきたら細部の多い絵柄に挑戦する。ペンの太さや色鉛筆の硬さも手指の筋力に合わせて選ぶ。
認知機能の活性化:
複雑な模様や幾何学模様、計算付き塗り絵(足し算塗り絵など)を取り入れ、数の計算と色付けを同時に行うとより多くの認知機能を刺激できる。季節の行事に関する絵柄を用いて記憶を呼び起こし、回想法の要素を取り入れると効果的。
交流促進:
共同作品や壁画づくりなど、複数人で一つの作品を完成させるプログラムを用意する。パーツを分担して色を塗り、最後に一つの大きな絵に仕上げることで協力関係が生まれる。また完成作品を展示し、利用者さん同士で感想を話し合う時間を設けると交流が深まる。
③個別機能訓練計画書との関連付け方法
要介護の方には個別機能訓練計画書の作成が必須です。
塗り絵プログラムを計画書に位置づける際には、訓練目標(例:指先の巧緻動作向上、集中力持続、社交意欲の向上)と評価基準(例:一定時間集中して塗り絵ができる、声かけに応じて配色を説明できるなど)を明確に記載します。
さらに、塗り絵以外の訓練と連動させることで相乗効果を狙えます。
例えば、食事動作訓練での握力向上を図りつつ塗り絵で細かな動きを繰り返す、歩行訓練後のクールダウンに塗り絵を取り入れて自律神経の安定を促す、などです。
利用者さんやご家族にも目的を説明し、家庭で継続できるように無料の塗り絵素材を紹介すると、ご家族の協力も得やすくなります。
実践例|塗り絵プログラムの進め方(導入~振り返り)
安全面と感染対策のポイント
塗り絵は複数人で行うことが多いため、感染症対策を徹底することが安心・安全な活動の基本です。
厚生労働省の感染対策マニュアルでは、「1ケア1手洗い」「ケア前後の手指衛生」「同時間帯・同場所での人数制限」「換気の徹底」「マスク着用」「共有物の消毒」が重要とされています。
塗り絵を提供するときは、次の4つのポイントを意識しましょう。
①手洗い・手指消毒
- 参加前と終了後に利用者・職員全員が手洗いやアルコール消毒を行う。
- 飲食やトイレの後も再度手指衛生を徹底する。
②共有物の消毒
- 色鉛筆や机などの共有物は活動の前後に消毒。
- 流行期には個人用の道具を用意し、使用後にアルコールで拭き取る。
消毒液は有効期限と濃度を守る。
③人数の調整と換気
- 参加人数を制限し、席の間隔を広くとる。
- 定期的に窓を開け換気を行い、体調不良者には別室休養などの対応をとる。
④マスク着用
職員は必ず着用し、利用者さんにも可能な範囲で着用を勧める。
インフルエンザや新型コロナウイルスが流行する時期には、通常の対策に加えて、より丁寧な対応が求められます。
まず、発熱や咳などの症状がある利用者さんは無理をせず参加を控え、回復後に再開します。
職員も同様に体調管理を徹底します。
大人数でのレクリエーションは避け、2〜4人ほどの少人数グループで実施することで感染リスクを下げます。
人数を分けて複数回開催すれば、全員が参加する機会を確保できます。
外出や面会が制限される時期には、タブレット端末を活用してオンラインで自宅や居室から参加できるようにしたり、個別の塗り絵キットを配布して交流を保つ工夫も有効です。
また、教材はあらかじめ印刷して参加者ごとに配布し、スタッフの移動を最小限にします。
1回のプログラムは30〜60分を目安に区切り、途中で換気と休憩を入れることで安全性を高めます。
終了後は机や椅子を丁寧に消毒し、次のグループの準備を整えましょう。
感染対策を意識した運営によって、塗り絵を安心して楽しめる環境をつくることができます。
認知症予防への応用|回想法・音楽療法との組み合わせ
塗り絵を提供しながら回想法や音楽療法を取り入れると、相乗効果が期待できます。
ここでは、認知症予防への応用を深堀していきます。
塗り絵+回想法(季節・行事・思い出話を引き出す)
回想法は、過去の出来事を語ることで精神を安定させコミュニケーションを深める心理療法です。
会話や写真、映像などで過去を振り返る回想法は、精神の安定やコミュニケーション向上に効果があります。
季節や行事をテーマにした塗り絵を行い、その時代の食べ物や遊び、服装などを話題にすると自然に回想法を取り入れられます。
例えば、昭和の夏祭りや古い校舎の風景を描いた塗り絵を使い、参加者同士で「昔の縁日では綿菓子がいくらだった」などと語り合うと、記憶の賦活と社会交流の両方を促します。
塗り絵+音楽(BGMでリラックス・集中力UP)
音楽療法は音楽を聴いたり歌ったりすることで脳を活性化し、心身をリラックスさせる効果があります。
塗り絵の時間に利さんさんが好む懐かしい歌や季節の童謡をBGMとして流すと、リラックスしながら集中力を高めることができます。
完成後にBGMに合わせて簡単な体操を取り入れると、身体活動と認知活動のバランス向上を促せます。
五感を刺激する複合プログラム例
塗り絵に嗅覚や味覚の刺激を加えた複合プログラムは、より多面的な介護予防効果を狙えます。
例えば、春の桜を題材にした塗り絵と合わせて桜餅の香りを楽しんだり、秋の果物の塗り絵と合わせて実物の果物を試食したりすることで、五感を刺激します。
嗅覚や味覚への刺激は記憶と強く結びついており、回想法の効果を高めることができます。
また、完成した作品を使って季節の歌を歌うなど、塗り絵・音楽・回想法を組み合わせたプログラムに発展させることもできます。
塗り絵支援のコツ
おわりに
いかがだったでしょうか。
塗り絵は、前頭葉や運動野を刺激して認知機能を維持し、指先の巧緻性を高め、集中によるストレス軽減にも役立つ介護予防効果の高い活動です。
実施時は、利用者さんのレベルに合った題材選びや声かけ、感染対策が大切です。
さらに季節の話題や音楽療法と組み合わせることで、五感を刺激し認知症予防効果が高まります。
介護職員が効果を理解し、適切なプログラムを実践することで、利用者さんの笑顔や自立支援につながります。
施設や家庭で気軽に取り入れ、要介護度の進行を防ぐ一助にしましょう。
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