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介護現場では転倒事故が最もよく起こる事故です。
特にデイサービス(通所介護)やグループホームのような施設では、利用者さんの転倒による怪我が頻繁に発生します。
事故後に、「お見舞金」を含めた誠意ある対応ができるかどうかは、その後の利用者さん・ご家族との信頼関係を左右します。
そこで本記事では、転倒事故発生時のお見舞金対応について、施設職員が理解すべき制度上の位置づけやルール、実務上のマナーを網羅的に解説します。
職員全員でを共有し、万一の事故時にも信頼を損ねない適切なケア継続につなげましょう。
この記事を読むメリット
- お見舞金・損害賠償・保険の違いが一発でわかる
- 転倒事故発生~家族連絡~行政報告~保険対応までの実務フローが身につく
- お見舞金の“正しいマナー”とNG対応がわかる
では早速、みていきましょう。
お見舞金の制度的な位置づけと損害賠償・保険との違い
まず「お見舞金」とは何か、その制度上の位置づけを確認します。
お見舞金とは文字どおり、利用者さんやご家族への「お見舞い」の気持ちとして支払われる金銭です。
法律上の賠償責任による損害賠償金(例えば治療費や慰謝料)とは異なり、事故の過失責任の有無にかかわらず任意で支払われるものです。
つまり、事故が起きたからといって必ず支払わねばならない法的義務はなく、あくまで施設側の誠意の表れとして状況に応じて支払うものになります。
一方、損害賠償は施設側に法的な責任(過失)がある場合に発生するもので、事故について施設に「故意または過失」が認められる場合に初めて支払い義務が生じます。
例えば施設の不注意で床が濡れたまま放置され、その結果利用者さんが滑って骨折したようなケースでは、施設の過失に基づく賠償責任が問われ、治療費や慰謝料など損害額に応じた賠償金を支払う必要があります。
賠償金額は怪我の程度や後遺症の有無等によって数百万円以上になることもあります。
では施設の保険(賠償責任保険等)はどのように関与するでしょうか。
多くの介護施設は万一の賠償に備えて保険に加入していますが、基本的に保険金は施設側の法的責任(過失)が認められた場合にしか支払われません。
過失がなければ保険は降りず、その場合施設として法的な賠償義務もないため、本来は賠償金を支払う必要はありません。
しかし実際には過失の有無にかかわらず、施設が治療費や少額の見舞金を負担して円満に事故を収めようとするケースも多くみられます。
この「施設が任意に支払う見舞金」をカバーするため、保険会社によっては法律上の責任を問わない事故でも見舞金や事故対応費用を補償する特約を用意している場合もあります。
それぞれの違いを以下の表にまとめます。
項目 | お見舞金 | 損害賠償(賠償金) | 施設の保険 (賠償責任保険) |
---|---|---|---|
支払う目的・性質 | 利用者・家族へのお見舞いの気持ちとして渡す任意の金銭。慰謝料など精神的損害への補償とは異なる。 | 施設側に過失がある場合に生じる法的賠償責任に基づく支払い(治療費・慰謝料等)。 | 施設が負う損害賠償責任に備える保険契約。過失による賠償金支払いに対して保険金が下りる。 |
法的義務の有無 | なし(支払必須ではないが、状況に応じ誠意で支払う)。 | あり(施設に過失責任が認められた場合は支払い義務が発生)。 | なし(契約上の義務。事故発生時に報告義務はあるが、賠償責任がなければ保険金支払いなし)。 |
過失(責任)との関係 | 過失の有無に関係なく支払われる(無過失事故でも支払うことがある)。法律上の責任とは無関係。 | 施設側の過失(注意義務違反)がある場合のみ発生。過失なしの場合は本来賠償不要。 | 施設側に法的責任がある事故でないと保険金は通常支払われない。※見舞金特約があれば無過失事故でも見舞金費用を補填。 |
金額の目安 | 明確な規定なし(任意額)。比較的少額であることが多い。目安:死亡事故なら5~10万円程度、骨折など怪我なら数万円程度。 | 損害に応じて高額になる可能性。治療費実費や慰謝料は被害内容により数十万~数百万円以上になる(判例で500万円以上の支払い例もあり)。 | 保険契約の支払限度額内で保険金が支払われる(契約によるが数千万円以上の補償枠もあり)。免責金額(自己負担)設定がある場合も。 |
支払い元 | 施設(法人)の負担。保険の見舞金特約があれば保険で補填される場合も。 | 施設(法人)の負担。ただし加入保険から保険金が支払われ、最終的に保険で賄われることが多い。 | 保険会社から施設に保険金が支払われ、施設が被害者へ賠償金を支払う形。示談交渉は施設が当事者となり、保険会社は助言支援に留まる。 |
お見舞金はあくまで「気持ち」としての金銭であり、法的な責任を認めるものではない点が重要です。
そのため、お見舞金を支払っても賠償責任を免れるわけではなく、過失があれば別途法的賠償を行う必要があります。
また金額も少額で、「受け取ってしまうと示談(和解)と解釈される可能性がある」ことから、支払う側としてもご家族との認識合わせが大切です。
転倒事故発生時の対応フロー
ここでは、デイサービスやグループホームで利用者さんが転倒して怪我をした場合を想定し、事故直後からの具体的な対応手順を説明します。
事故対応は迅速かつ的確に行うことが重要です。
以下の①⇒⑥のステップに沿って行動しましょう。
①緊急対応と利用者の救護
事故直後は利用者さんの生命・身体の安全確保が最優先です。
転倒を目撃した職員は、まず落ち着いて以下の初期対応を行います。
状態観察と応急手当:
倒れた利用者さんの意識・呼吸の有無、出血や痛みの有無、怪我の部位を素早く確認します。頭部や腰部などを強打した可能性があれば特に注意し、必要に応じて止血や安静保持などの応急処置をしてください。利用者さんが「大丈夫!」と言っても判断が難しい場合もあるため、引き続き観察を続けることが肝要です。認知症の方は痛みを正確に訴えられない可能性もあるので注意しましょう。
医療機関への連絡:
怪我の程度によって救急車を手配します。骨折の疑いがある場合や頭を打った可能性がある場合は、迷わず原則として救急搬送を検討します。「痛くない」「平気」と本人が訴えても油断せず、少しでも異常が疑われれば医師の診断を受けるようにします。特に頭部外傷の可能性があるときは必ず医師や看護師に連絡を取り指示を仰ぎます。軽微な擦り傷程度で本人も問題なさそうな場合でも、念のため看護職員等に報告し経過観察を行ってください。
安全の確保:
周囲に転倒の二次被害となるような危険があれば速やかに取り除きます。他の利用者さんが近くにいる場合は別の職員が対応し、安全を確保しましょう。また、負傷した利用者さんはむやみに動かさず安静にします。骨折が疑われる部位は可能な限り固定し、痛みを和らげるために氷などで冷やすなどの措置も有効です。
②管理者への報告と事故の記録
緊急処置を行いつつ、可能な限り早く施設内での報告連絡体制を稼働させます。
現場職員はサービス提供責任者や上長(管理者)に事故発生を迅速に報告してください。
報告には「いつ(日時)・どこで(場所)・誰に(利用者)・何が(転倒・受傷状況)・どのように(状況経緯)」といった基本情報を盛り込みます。
特に緊急搬送した場合は、その旨も併せて伝達します。
管理者は報告を受けたら、その日のうちにご家族やケアマネージャーへ事故の概要を連絡する必要があります(この後のステップ③で詳述)。
また同時並行で、事故の記録を残し始めます。
職員間で事故当時の状況を共有し、可能であれば転倒の再現や現場写真の記録を行います。
事故現場の床の様子(滑りやすかったか等)や介助方法など、後で原因分析に必要となる情報はできる限り集めましょう。
事故発生直後は動揺しがちですが、記憶が新しいうちに記録することが大切です。
③家族への迅速な連絡と謝罪
初期対応と社内連絡が一段落したら、ご家族への連絡を速やかに行います。
デイサービスの場合は利用者さんのご家族とケアマネージャーに、グループホームの場合はキーパーソンとなっているご家族に対し、電話で状況を報告するのが一般的です。
連絡のポイントは以下のとおりです。
事実関係の説明:
まず事故が発生した日時・場所・状況、利用者さんの様子や怪我の程度、現在講じている対応(例:〇〇病院に救急搬送中等)を手短に正確に伝えます。情報は隠さず、分かりやすく伝えることが重要です。「転倒して骨折の疑いがあるため病院へ向かっています」など、ご家族が知りたい基本事項を漏れなく報告しましょう。まずはご家族が利用者さんの状況を把握できるよう努めます。
謝罪と気遣い:
説明とともに必ずお詫びの言葉を述べます。事故原因が判明していなくとも、道義的な謝罪は必要です。例えば電話口では「この度は○○様にお怪我をさせてしまい、誠に申し訳ございません」といった形で謝意を伝えます。この際、「転ばれたみたいです」「自宅でも起こりうることなので…」など、まるで他人事のような言い回しや責任回避とも取れる発言は厳禁です。事故対応では「謝るが勝ち」とも言われ、余程のことがない限り素直に非を詫びておく方が円満に進みます。真摯な態度で「ご心配とご迷惑をおかけしており大変申し訳ありません」と伝え、利用者さんとご家族の心情に寄り添った言葉がけを心がけましょう。
今後の対応の説明:
ご家族から「これは施設の責任なの?」「治療費は誰が負担するのか?」等の質問が出る場合があります。この時点で安易に過失を認めたり、費用負担を約束したりしてはいけません。事故直後では正確な原因究明や法的判断は不可能に近く、安易な約束は後々トラブルになるためです。適切な回答例としては、「申し訳ありません。法的な責任の有無については現在確認中で、保険会社等の調査結果を待つ必要がございます。事故の経緯は施設で詳細に調査いたしますので、必要な手続きにご協力いただけますでしょうか」といった形で、責任問題は調査後に正式回答する旨を伝えます。また治療費負担について聞かれた場合も、「現時点ではお約束できませんが、法人内で検討し必ず後日ご説明いたします」とし、即断は避けてください。「直ちに調査を進め、7日以内を目処に再度ご報告いたします」と具体的な期限を示すと、ご家族もひとまず安心します。
面会・フォローの提案:
デイサービスならご家族に病院へ来てもらうか施設で合流いただく段取りを、グループホームなら後日面会の調整などを行います。「今後も状況が分かり次第すぐにご連絡いたします」など、連絡継続の約束も伝えましょう。事故直後の家族対応で大切なのは、誠意ある態度と迅速な情報共有です。「嘘をつかない・隠さない・常に先手で動く・相手の気持ちに寄り添う」という原則を胸に対応してください。
④お見舞金の準備と贈呈
事故対応の過程では、ご家族への謝罪とともに「お見舞金」をお渡しするタイミングがあります。
お見舞金は前述のとおり任意の支払いですが、施設側の誠意を形で示すものとして、多くの施設で事故後に用意が検討されます。
金額と社内手続き:
お見舞金の金額に決まりはありませんが、骨折など入院を要する怪我の場合で数万円程度、不幸にもお亡くなりになった場合で5~10万円程度が一つの目安とされています。施設の規模や方針によっても異なりますが、「法人として〇万円を見舞金として支出する」といった社内決裁が必要な場合もあります。上長や施設長と相談の上、適切な金額を決めましょう。額が大きすぎるとかえってご家族が恐縮したり、「お金で解決しようとしている」と誤解する恐れもあります。一方で明らかに少額(数千円程度)では誠意が伝わらない場合もあります。過去の事例では骨折の後遺症が残ったケースで施設側が治療費と数万円の見舞金を提示したものの、後に弁護士介入で500万円の賠償金支払いとなった例もあります。このように見舞金額はあくまで実際の損害に比べ少額で、法的賠償とは別物である点も踏まえ、適切な範囲で検討します。
封筒の準備:
お見舞金は現金をのし袋(ご祝儀袋)に包んで渡すのがマナーです。入院のお見舞いの場合は赤白の水引が付いたご祝儀袋を用い、表書きは「御見舞」(3文字)と書きます。※「お見舞い」(4文字)は忌み数の「死」を連想させるため避け、「御見舞」にするのが一般的なマナーです。関西と関東で習慣が異なる場合もありますが、介護施設からの場合は白封筒に「御見舞」と毛筆で書けば問題ないでしょう。中袋には金額(大字)と送り主名を記載します。送り主名は施設長や法人名など施設側の代表名で構いませんが、現場職員の個人名で渡すより、公的な立場の者の名前で渡す方が責任ある姿勢が伝わります。また複数名で連名にする場合は筆頭者を中央に、他はその左に配置する書き方をします(ただしあまり大人数の連名は避け、必要なら「◯◯他一同」とします)。金額は不吉な「4」「9」を避け、例えば3万円なら3万円丁度を包みます(縁起を気にしすぎる必要はありませんが、慣例として偶数ではない金額が好まれます)。お札は新札は避けつつも極端に汚れたものは避け、できるだけ綺麗なお札を用意しましょう。
渡すタイミング:
お見舞金は事故当日の慌ただしい中ですぐ渡す必要はありません。むしろ適切なタイミングで、落ち着いてお渡しする方が良いでしょう。例えば利用者さんが入院した場合、容体が安定した頃合いに施設の責任者がお見舞いに訪問して渡すのが一般的です。デイサービスで軽傷だった場合は、後日ご家族が来所された際や改めて訪問する際に渡すこともあります。他のご家族や患者がいない静かな状況を選び、事前に訪問時間を調整して伺います。
渡し方と言葉かけ:
面会時には封筒を袱紗(ふくさ)に包んで持参し、相手の前で袱紗から出して両手で差し出します。その際に「心ばかりのものですが…」と切り出し、例えば「お見舞品の代わりです。どうぞ何かのお役に立ててください」と一言添えると、相手も恐縮せず受け取りやすくなります。他にも「一日も早いご快復をお祈りしています」や「大事に至らず何よりでした」など、相手を気遣う前向きな言葉を添えると良いでしょう。決して「今回はこれでご勘弁を…」のような不適切な発言はしないよう注意します。あくまで見舞いの気持ちとして渡す**ことを強調し、責任逃れのためでないことが伝わるよう誠意ある態度で臨みます。
受け取ってもらえない場合:
ご家族によっては見舞金の受け取りを遠慮されることもあります。その場合は「お気持ちだけありがたく頂戴します」と辞退されることが多いですが、施設側としては「お気持ちですのでどうかお納めください」と一度は勧め、それでも固辞されれば無理に渡さない判断も必要です。その際は後日改めて菓子折り等を持参し、再度謝意とお見舞いの気持ちを伝えるなど、別の形でフォローするとよいでしょう。
⑤事故報告と事後の対応策
事故対応の区切りとして、所定の事故報告書を作成し、必要に応じて行政へ報告する手続きを行います。
事故報告書の作成:
施設内の定められた書式や、自治体指定の様式に従って事故報告書を作成します。令和3年度より厚労省から統一様式が示されており、市町村への報告時はこの標準様式を使用することが推奨されています。報告書には事故の内容、発生時の対応、その後の経過、事故原因の分析、再発防止策等を記載します。書き方のコツは時系列に沿って箇条書きで簡潔に書くことで、客観性と分かりやすさを意識します。
行政への報告義務:
介護保険事業者(施設)は、一定の重大事故が発生した場合に市町村等へ報告する義務があります。具体的な報告基準は各自治体の要綱等に委ねられていますが、多くの場合利用者さんの死亡や骨折など医師の診断・治療が必要な重傷事故は報告対象となります。これら重大事故の場合、事故発生日から5日以内に第一報を電話またはメールで提出し、その後詳細が判明し次第追加報告を行うのが標準です。報告先は主に市町村の介護保険主管課(例:福祉課や高齢介護課)で、報告を怠ったり遅延したりすると指導の対象となります。「報告を要する事故か否かの正確な判断」が重要であり、事前に報告基準をマニュアル化して周知しておくとスムーズです。
家族・関係者への報告:
行政報告とは別に、ご家族に対しても事故の経過や原因・再発防止策の説明を行います。事故調査の結果判明したこと(原因分析の結果等)や、施設として講じる再発防止策を文書にまとめ、ご家族にお渡しすると丁寧です。例えば「事故発生状況の再現図」「原因の分析内容」「再発防止の具体策」などを盛り込んだ説明資料を面談時に説明し、質問にも答えます。ご家族としては「なぜ事故が起きたのか」「今後大丈夫か」という点が最大の関心事ですから、真摯に説明し理解を得ましょう。
再発防止策の実施:
事故原因に応じて、施設内の環境整備やケア方法の見直しを行います。例えば転倒事故であれば、滑りやすかった床材を改善するとか、夜間の見守り体制を強化するといった対策が考えられます。職員間で事故の情報を共有し、ケアプランや介護記録の見直しも検討します。関係スタッフで事故検証会議を開き、問題点と改善策を話し合ってください。対策を講じたら、継続的に実践されているか管理者がフォローしましょう。再発防止策自体も事故報告書に記載し、行政やご家族に示すことで「二度と起こさない」という施設の真摯な姿勢を示せます。
記録と保存:
作成した事故報告書は施設内で一定期間保管します。事故内容にもよりますが、少なくとも2~5年間程度は保存し、行政監査等に備えます。また、ヒヤリハット事例も含めて蓄積し、安全対策に役立てましょう。事故対応の一連の流れ(発生から家族・行政報告、見舞金贈呈、再発防止策まで)を事例教材として職員研修に活用することも有益です。
⑥保険対応と損害賠償への備え
最後に、事故後の保険会社対応と万一法的紛争に発展した場合の備えについて触れます。
保険会社への通知:
ほとんどの施設は「介護事業者向け賠償責任保険」に加入しています。事故が起きたら、できる限り早期に保険会社(または代理店)に事故の発生を報告しましょう。報告時には事故の概要(いつ・どこで・誰に・何が・どうなったか)を正確に伝えます。この際、事実関係は有利不利にかかわらず正確に伝えることが求められます。保険会社は報告を受けるだけでは判断が難しく、後日詳細調査を行います。例えば施設に聞き取り調査に来たり、医療記録(診断書やカルテ)の取得のためにご家族の同意書提出が必要になったりします。そうした調査についても事前にご家族へ案内し、協力を得られるよう施設側で調整しておきます。
保険金支払いの可否判断:
保険会社は調査結果に基づき、施設側に法的賠償責任があるか否かを判断します。施設に過失なしと判断されれば、保険金は支払われません。逆に過失ありと判断されれば、保険契約の範囲内で損害賠償金(治療費、慰謝料等)がカバーされます。ただし契約によっては免責金額(自己負担額)が設定されており、小額の損害は保険金が出ないこともあります。また保険契約の約款によっては、介護事故特有の事例(例:感染症や食事中の誤嚥事故等)が免責事項となっている場合もあるため注意が必要です。
示談交渉と保険会社の役割:
介護事故の場合、自動車事故とは異なり保険会社が施設に代わって示談交渉を直接行うことはできません。あくまで賠償交渉の当事者は施設(事業者)と被害者側(利用者本人または家族)であり、保険会社は後方支援としてアドバイスをする立場です。したがって、万一ご家族から損害賠償請求の申し出があった場合も、施設担当者が窓口となり誠実に対応する必要があります。保険会社には逐一相談しつつ、示談書の作成や賠償額算定について助言を受けながら進めます。ご家族との示談がまとまれば、保険会社所定の示談書に双方が署名し、保険会社から賠償金が支払われて解決となります。
法的トラブルへの備え:
誠意ある対応をしても、場合によってはご家族が納得せず訴訟に発展する可能性もゼロではありません。特に死亡事故や重大な後遺症が残ったケースでは、その傾向が高まります。ご家族が弁護士を立てると、施設の対応の不備(報告遅れや説明不足、隠蔽の有無など)も厳しく問われるでしょう。そうなる前に、施設側も早めに専門の弁護士に相談しておくことが望ましいです。介護事故に詳しい弁護士であれば、過失の有無や損害額の妥当性について専門的見地からアドバイスしてくれます。また、訴訟になった場合に備え事故記録や報告書、連絡履歴など証拠を適切に保全しておくことも重要です。不誠実な対応(虚偽報告や隠蔽)があれば裁判で不利になるのはもちろん、行政処分(指定取消し等)につながるリスクもあります。最後まで誠意と公正さをもって対応することが何より大切です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
介護現場で転倒事故が起きてしまうこと自体は、どんなに注意してもゼロにできない現実があります。
しかし、その後の対応次第で信頼関係の維持・修復は可能です。
施設として適切なルールに則り迅速に対応し、さらにお見舞金対応等の真心あるマナーを示すことで、利用者さん・ご家族の不安や怒りを和らげることができます。
今回解説したポイントを職員一人ひとりが理解し、平時から対応手順を訓練・共有しておくことが肝要です。
施設と利用者さん、ご家族が共に信頼を持って歩めるケアを継続するために、事故対応のルールとマナーをしっかりと身につけておきましょう。
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
お知らせ①介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。
【介護職の方へ!老後とお金の不安を解消する方法!】
お知らせ②介護職の仕事をしていると、低賃金や物価の高騰、そして将来に対する漠然とした不安がついて回ります。
特に独身の方は老後の生活費や年金に対する不安が大きいのではないでしょうか?
下記のブログは、そんな不安を解消するために実践すべき7つの方法です。
少しの工夫と努力で、将来の不安を減らし、安心した未来を作るための第一歩を踏み出してみましょう! 詳しくはこちらの記事をご覧ください。