夜眠らず昼に寝る(昼夜逆転)利用者への対応【認知症ケア研修】
- 夜間に何度も起きる利用者さんへの対応に悩んでいる方
- 日中に居眠りが多く、活動につなげにくい方
- 昼夜逆転の原因や観察ポイントを知りたい方
- 夜間の見守りや転倒予防について学びたい方
- 認知症ケアの職員研修を担当している方
この記事を読むメリット
- 昼夜逆転が起こる主な理由と、観察するポイントがわかる
- 日中・夜間に介護職ができる具体的な対応を学べる
- 個人ワークとグループワークで、現場の対応を考えられる
それでは早速みていきましょう。
昼夜逆転とは?認知症の方に起こる理由

昼夜逆転とは、夜に何度も目が覚めて日中に活動できない、本来は日中に行うことを夜間に行う、といった状態です。
認知症の方は、睡眠と覚醒のリズムを整える体内時計の働きが変化し、昼と夜のメリハリが弱くなることがあります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、認知症によりリズムの乱れが進む場合があり、日中の光や運動、社会的な交流が調整に役立つことがある一方、難しい場合は医師への相談が勧められています。
夜間の行動をただ止めず、本人の目的や不安を考え、安全を守りながら生活リズムを整えます。
夜眠れず昼に寝てしまう主な原因
昼夜逆転には、認知症による体内時計の変化だけでなく、生活習慣や体調なども関係します。
次のような視点で確認しましょう。
体内時計や加齢による変化
高齢になると夜間の睡眠が短くなったり、途中で目覚めたりします。
そして認知症では昼夜の区別がつきにくくなるのも重なり、日中に眠って夜間に活動することが生じてしまいます。
日中の活動や昼寝の影響
日中の活動が少ない、昼寝が長い、起床時間が一定しない場合、夜間の眠りに影響することがあります。
まずは長時間の昼寝を避け、日中の活動や太陽光を取り入れることを勧めてみましょう。
体調・薬・環境の変化
痛み、便秘、頻尿、発熱、息苦しさ、室温、照明、騒音、寝具も確認します。
薬の開始・変更が関係することもあるため、自己判断で調整せず看護職や医師に共有しましょう。
急な変化や発熱・痛みがあれば、認知症の症状と決めつけず看護職・医師へ相談します。
まずは睡眠と生活の様子を記録する
「夜眠れない」だけでは対応を考えにくいため、施設の記録方法に沿って次を観察します。
- 何時に寝床へ入り、何時ごろ眠ったか
- 夜間に目覚めた時間、回数、起きていた長さ
- 起きたときの様子や本人の言葉、目的
- 日中の昼寝の時間と活動内容
- 食事・水分・排泄・痛み・発熱などの変化
- 薬の変更、部屋や担当者など環境の変化
記録は眠りを妨げる要因を探すために行います。
「夜中に起きた」だけでなく、「2時にトイレへ行き、その後『家に帰る』と話した」のように具体的に共有しましょう。
昼夜逆転の利用者への具体的な対応方法
ではここで、具体的な対応方法を4つご紹介します。
朝は本人のペースを見ながら日中の光を取り入れる
朝はカーテンを開け、自然な光を取り入れます。
夜間ほとんど眠れていない場合は顔色やふらつきを確認し、本人の状態に合わせます。
起床や食事の時間をできる範囲で整えましょう。
日中は楽しめる活動と人との交流を増やす
散歩、体操、洗濯物たたみ、園芸、音楽、会話など、本人が楽しめる活動を提案します。
体力や持病に合わせて無理なく行いましょう。
眠気が強いときは体調を確認し、昼寝を一律に禁止せず休息をとってもらいます。
長時間にならないよう様子を見て声をかけ、対応をチームで共有します。
夜間は不安を受け止め、安全に過ごせる環境を整える
「寝てください」と繰り返すと、不安が強くなることがあります。
「目が覚めたんですね」「何か気になることがありますか」と声をかけ、トイレ、痛み、室温などを確認します。
足元灯を使い、通路の障害物を片づけて転倒を予防します。
活動を無理に止めず、本人の安全と他の利用者さんの休息に配慮した過ごし方を考えます。
私自身の夜勤中の経験:
夜勤中、毎回起きてくる利用者さんがいました。当時は「ああ、またこの方か」と、理由を考えず同じ対応をしていました。しばらくするとご本人が疲れた様子になるので、それを待ってから居室へ誘導していました。
今振り返ると、起きる時間やその前後の様子を記録・観察し、対応方法を考えるべきだったと感じます。同じ行動が続くときこそ、慣れた対応を繰り返すだけでなく、本人の様子を見直すことが大切です。
チームで対応を共有し、必要時は専門職へ相談する
記録を日勤者、看護職、ケアマネジャーなどと共有します。本人や家族から以前の生活習慣や眠りやすい環境を聞くことも手がかりです。
改善しない、体調不良がある、安全確保が難しい場合は医師へ相談します。
睡眠薬の使用や調整は医師の判断が必要です。
現場で起こりやすい3つの事例
以下は、対応を考えるための事例です。
一つの参考として読んでくだいさい。
事例1:昼食後に長く眠り、夜中に起きている
午後にうとうとするAさんは、夜に何度も目を覚まし廊下を歩きます。
睡眠、体調、痛み、排泄を記録し、昼寝が長くないか確認します。
好きな作業や短い散歩を無理なく取り入れます。
事例2:「家に帰らなければ」と夜間に玄関へ向かう
Bさんは夜間に「家に帰る」と玄関へ向かいます。
「帰りたいんですね」と受け止め、トイレや不安を確認して落ち着ける場所へ案内します。
起こる時間やきっかけを記録し、生活歴や日中の活動と合わせて考えます。
事例3:急に夜間覚醒と落ち着かなさが増えた
眠れていたCさんが、急に夜中に何度も起きるようになりました。
発熱、痛み、便秘、排尿、薬や環境の変更を確認し、看護職・医師へ報告します。
急な変化は体調不良の可能性もあります。
ワーク:本人に合った支援を考える
個人で考えたあと、グループで意見を共有しましょう。
個人ワーク(5分)
次の質問を考えてメモしましょう。
- Dさんの安全を守るため、夜間にまず確認・対応することは何ですか?
- 昼夜逆転の背景を探るため、どのような情報を記録・共有しますか?
- 日中の過ごし方や声かけを、どのように工夫できそうですか?
グループワーク(3〜5人、15〜20分)
個人ワークの案を持ち寄り、Dさんに合った支援を考えます。
進め方:
一人ずつ意見を共有し、似た点・異なる点を整理します。夜間の対応、日中の過ごし方、記録・相談に分けて案をまとめ、発表します。
話し合う質問:
- 「仕事に行く」と話すDさんの不安を、どのように受け止めますか?
- 食事量の低下や長い昼寝について、誰に何を報告・相談しますか?
- 明日から試せる日中の活動と夜間の安全対策は何ですか?
意見をまとめるポイント:
本人の気持ちや目的を考え、夜間の安全と他利用者さんの休息にも配慮します。食事量などを記録して専門職へ共有し、昼寝を禁止せず休息と活動のバランスを検討します。実施後に様子を確認し、必要に応じて見直しましょう。
研修担当者向けの解説・回答例:
「お仕事のことが気になるんですね」と不安を受け止め、玄関へ向かう理由、トイレ、痛みなどを確認します。歩行時は足元を整えて見守ります。
夜間の睡眠、食事、排泄、体調を記録します。食事量の低下は看護職へ報告し、必要に応じて医師に相談します。活動は本人の好みと体調に合わせます。
意見が分かれたら、「安全」「不安」「体調確認」のどこに注目した案か整理します。正解を一つに決めず、実施後の様子を記録して見直しましょう。
おわりに
昼夜逆転には、睡眠リズムの変化に加え、日中の過ごし方、体調、薬、環境などが関係することがあります。
夜に眠ってもらうことだけを目標にせず、本人を観察しながら原因を探しましょう。
明日から、夜間に起きた時間や本人の言葉、昼寝、体調を記録してチームで共有しましょう。
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参考文献
認知症の精神行動症状の薬物治療に関する基本的な対応|国立長寿医療研究センター






