【デイサービス】入浴介助マニュアル(最低限おさえておくべきポイント)
筆者
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
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読者さんへの前おきメッセージ
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。
デイサービスで介護職が入浴介助を実施する上で大切なのは、以下の3つです。
細かく分けると、以下のようになります。
1、心がけ
- 感染対策
- 表情や声かけに対する反応
- 過介助にならない
- 羞恥心への配慮
2、注意点
- 全身の観察
- 浴室と脱衣室の温度設定
- 水分補給
3、手順
- 入浴前
- 入浴中
- 入浴後
ではそれぞれを具体的に解説していきます。
1、心がけ
「心がけ」は、どんな時でも常に意識しておくべき点です。
入浴介助には必ず必要なことなので、しっかり意識できるよう何度も読みなおしましょう。
感染対策
「感染対策」とは介助者自身の感染予防対策です。
利用者さんによっては、C型肝炎・B型肝炎・梅毒・水虫(白癬菌)など様々な感染症を持っておられる場合があります。
もし介助者が「昨日、指を怪我してしまって…」と傷をそのままの状態にしたまま介助をすると、感染してしまうリスクが上がります。
感染対策としては、
- 防水テープをはる
- スリッパを必ずはく
- 手袋をつける
- 介助後は入念に洗浄する
等が考えられます。
標準予防策(スタンダードプリコーション)をご存じでしょうか。
標準予防策は、汗を除くすべての血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜は伝播しうる感染性微生物を含んでいる可能性があるという原則に基づいて行われる標準的な予防策です。感染が疑われる、または確定しているかどうかに関わらず、医療が提供される場においてすべての患者さんに対して行われるものです。
(日本看護協会HPより)
つまり、全ての入浴介助に感染の危険性はあります。
意外と手袋を着用していない介助者がいますが、陰部も粘膜です。
また排泄物に触れてしまう場合もあります。
素手でそれらを触るというのは、非常に感染リスクが上がり危険です。
表情や声かけに対する反応
入浴はかなりエネルギーを使います。
エネルギーの指標に「METS」というものがありますが、入浴は1.5METSの身体活動で、これは、ウォーキング10分程度の消費カロリーになります。
加えて入浴は、気温が変化したり水分が奪われたりと、高齢者の身体にとって負担になることが多い場面です。
よって「急に意識がなくなった」とか「足の運びが悪くなった」などの症状が出る場合もあります。
入浴前、入浴中、そして入浴後は、普段よりも増して表情や声掛けに対する反応に意識しておく必要があります。
過介助にならない
入浴介助は、人数が多いほど短時間で終わらせる必要が出てきます。
そのため、利用者さんのペースに合わせていると時間がかかり、どうしても手伝いたくなることがあります。
それでも、できる限り利用者さんにできるところはやっていただくようにしましょう。
「手伝ってほしい」と言われるてもすべてを手伝うのではなく、生活リハビリとして、できる限り自分で洗っていただけるような関わりが重要と言えます。
その際は、「説明と同意」が非常に大事になってきます。
「この部分は手伝わせていただきますので、こちらはご自身でお願いできますか」と声をかけ、同意を得ます。
また他のスタッフと情報を共有して「あの利用者さんは、ここまでは自分でやってもらっている」という情報を得ておくことも大事です。
そうしていないと「あの人はやってくれるのに、あなたはやってくれないの」とクレームにつながる可能性も出てきます。
羞恥心への配慮
入浴介助の際は、介護職員は服を着ていますが利用者さんは裸です。
そのため「利用者さんは他人に裸を見せて、恥ずかしい思いをしておられる」という意識を常に持っておく必要があります。
特に新規の利用者さんや体験で入浴をご利用いただく方は、慎重にしましょう。
全く知らない赤の他人に、いきなり「では服を脱いで裸になってください」と言われると抵抗があるのは当たり前です。
認知症の利用者さんならなおさらです。
その為、衣類を脱ぐ際はタオルをかけたり、入浴後はすぐに服が着られるよう早めに体を拭くといった配慮が大事になってきます。
また、異性に裸を見られることに抵抗がある利用者さんもいるので、本人やご家族、生活相談員などに確認して、必要であれば同性介助で対応することも考えましょう。
2、注意点

「注意点」は必ず注意しておく必要があるという項目です。
おろそかにしてしまうと事故につながります。
しっかり読んで意識するようにしましょう。
全身の観察
入浴前に全身の観察をしましょう。
場合によっては浴槽へ入らない方が良い場合や、そもそも入浴事態を辞めている方が良い場合もあります。
観察する項目としては、以下のようになります。
- 乾燥、湿疹、皮膚の色などの皮膚状態
- 傷の有無
- 内出血や打撲痕の有無
- 腫れやむくみの有無
浴室と脱衣室の温度設定
浴室と脱衣室の温度差はできるだけ少なくしましょう。
浴槽に浸かり温まった体で、温度の低い脱衣室に出ると「ヒートショック」を起こす危険性があります。
気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こることをヒートショックといいます。
この血圧の乱高下に伴って、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気が起こります。
特に冬場ですが、入浴介助を始める1時間ほど前には、浴室と脱衣室を暖房などを利用し温めておきましょう。
水分補給
水分補給は入浴前、入浴後に必要です。
ご来所時にコップ一杯水分を補給していただき、入浴後にもコップ一杯の水分をとっていただく必要があります。
入浴前の水分補給は入浴直前よりも、15分〜30分前が適しています。
入浴前の水分補給が重要な理由は、入浴中の脱水を予防するためです。
入浴中は多くの水分を失うため、脱水症状のリスクが高まります。
そして脱水症状になると血液がドロドロになり、血栓症になる原因にもなります。
そうなると心筋梗塞や脳梗塞のリスクがかなり高くなってしまいます。
3、手順

「手順」は入浴前・入浴中・入浴後にわけてお伝えします。
あくまでもオーソドックスな手順になります。
利用者さんによっては、もっと項目を加えたり前後を入れ替えたりと柔軟な対応が必要になります。
入浴前の手順
- 本日入浴があることを伝えておく
- バイタルチェック
- 暖房で脱衣所を温めておく
- 浴槽にお湯を溜めて浴室を温めておく
- リフトやシャワーチェアに不備がないか確認しておく
入浴中の手順
- 脱衣(必要であれば手伝う)
- 準備物の確認
- 浴室に誘導
- シャワーチェアに先にお湯をかけて温める
- お湯の温度を確認してもらう際は指先や足先など末端からかける
- 洗身洗髪はできる限り自力でしてもらう
- 洗えていないところを注意してみておく(そして手伝う)
- 洗い終わったら足元もお湯で流す(床のシャンプー等の残りを流しておく)
- 浴槽へ移動する
- 5分~10分程度を目安にくつろいでもらう
- 浴槽から上がる際は疲労しているのでより注意しておく
入浴後の手順
- 滑らないように脱衣所まで移動する
- 体の水分をしっかり拭き取る
- 入浴後も体調を聞きながら介助する
- 保湿剤や塗り薬、水虫薬などを必要に応じて使用
- ドライヤーで髪の毛をしっかりと乾かす
- 脱衣所を出たら水分を提供
何よりも安全第一

入浴介助中は他の介助に比べて事故のリスクが高いです。
- 体調が変化しやすい
- 転倒しやすい
- 溺水
- ヒートショック
など命に関わる事故の危険性もあります。
浴室や脱衣室は事故が起きやすく危険であることを、入浴介助をする職員一人一人が認識することが大切です。
浴室内は滑りやすい
床は濡れていて滑りやすくなっています。
またシャンプーなどが床に残っており、より滑りやすくなっている可能性もあります。
利用者さんは必ず手すりを持ってもらい、介助者も十分注意をしながら移動する必要があります。
浴槽に入っている時間は目を離さない
利用者さんが浴槽に入っている際は、目を離さないようにしましょう。
溺水する場合は音もなく静かです。
また筋力も弱く、少しの姿勢の変化でおぼれてしまう可能性があります。
高齢者の肌は傷つきやすい
高齢者の肌は健康な方よりも弱く、傷つきやすくなっています。
そのため、ドアやシャワーチェアなどに直接肌が触れると怪我をする危険性があります。
滑りやすく狭い空間なので、移動する場合はより一層注意する必要があります。
おわりに

いかがだったでしょうか。
介護業界は人手不足であることもあり、新人にいきなり入浴介助をさせるところもあります。
ですが、入浴介助は注意すべきところが多く、多数のリスクが潜んでいます。
事故が起こってしまってからでは、遅いです。
利用者さんは重度な疾患を患ってしまったり、最悪の場合は亡くなってしまいます。
介助者も「自分のせいで…」と落ち込み、介護の仕事を続けられなくなってしまう可能性もあります。
介護施設はしっかりしたマニュアルを作成し、全スタッフに研修等で伝えていきましょう。
「他にも入浴介助研修の資料となるブログを見たい」という方は、コチラを参考にしてください。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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