利用者さんからのお願いを断るときの方法【倫理及び法令順守研修】
- 上手くお願いを断ることができない方
- 「できません」と伝えた後の声かけを知りたい方
- 介護サービスの範囲や職員の役割を確認したい方
- どうしても断ることができない方
- 倫理及び法令順守研修の題材を探している方
筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として病院に6年間勤務し、その後、デイサービスの管理者を4年間務めました。
現在は、グループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。介護福祉士、ケアマネジャーの資格を保有しています。
読者さんへの前おきメッセージ
利用者さんからお願いをされたとき、「希望をかなえてあげたい」と思う一方で、安全面やサービスの範囲を考えると、そのまま対応できないことがあります。
そんなとき断ることに申し訳なさを感じたり、どう説明すればよいか迷ったりしませんか。
お願いを断るときも利用者さんの気持ちを受け止め、理由と代わりの方法を伝えることが大切です。
この記事では、現場で使いやすい考え方と声かけをまとめます。
この記事を読むメリット
- 利用者さんのお願いを断る前に確認することがわかる
- 相手の気持ちを大切にした断り方を学べる
- 現場の事例や研修ワークを通じて、対応方法を考えられる
それでは早速みていきましょう。
利用者さんのお願いを断る前に考えたいこと

利用者さんのお願いは、すぐに「できる・できない」で判断せず、まず何を望んでいるのか、なぜそのお願いをしたのかを確かめましょう。
たとえば「今すぐ外に出たい」という希望の背景には、散歩をしたい、買い物に行きたい、落ち着かないなど、さまざまな思いがあるかもしれません。
本人の言葉を聞き、表情や様子にも目を向けます。
希望をそのままかなえることが難しい場合も、本人の意思を確かめ、できる方法を探す姿勢が大切です。
お願いに応じられない主な場面
利用者さんの希望を大切にすることと、どんなお願いにも応じることは同じではありません。
安全面や職員の役割を確認し、必要に応じて上司やチームに相談します。
安全面から、そのまま対応できない
一人での移乗や歩行に転倒の危険がある場合、職員の人数や本人の状態を確認せずに介助することはできません。
安全な方法を確認し、必要な職員を確保してから対応しましょう。
サービスの範囲を確認したい
利用者さんやご家族から、普段の介護サービスとして想定されていない依頼を受けることがあります。
対応できるかどうかは、サービスの種類や契約、ケアプラン、事業所のルールによって異なります。
職員個人で判断せず、管理者やケアマネージャーに相談しましょう。
法令や施設のルールに反する
他の利用者さんの個人情報を教えてほしい、職員個人のお金を貸してほしいなど、応じることが適切でないお願いもあります。
理由を簡潔に伝え、事業所の手順に沿って対応します。
なお、個別のお願いに応じられないことと、事業所が介護サービスそのものの提供を断ることは別の問題です。
事業所としてサービス提供を拒む場合は、職員だけで判断せず、運営基準や個別の事情を踏まえて管理者が検討します。
気持ちに配慮した断り方の5つの手順
断るときは、短くはっきり伝えながら、本人の希望を受け止める言葉を添えます。
①まず話を聞く
「そうしたいのですね」と、お願いや気持ちを受け止めます。
②希望の内容を確かめる
「今すぐ散歩に行きたいということですか?」など、何を望んでいるのかを確認します。
③できない理由を具体的に説明する
「今は職員が一人なので、安全に付き添うことができません」のように、理由をわかりやすく伝えます。
④代わりにできる方法を提案する
「職員がそろう午後に一緒に行きませんか」「管理者に確認して、対応できる方法を一緒に考えましょう」など、可能な選択肢を示します。
⑤本人の反応を見て、必要な人に共有する
納得できたか、気持ちが落ち着いたかを確認します。繰り返し起きるお願いや対応に迷う事例は、記録してチームで検討します。
「無理です」「決まりだから」とだけ伝えると、本人には拒絶されたように感じられることがあります。
受け止める・理由を伝える・代案を考える流れを意識しましょう。
現場で起こりやすい事例と声かけ
ここではよく現場で直面する事例を3つ紹介します。
事例1:一人で歩いて外へ出たいと言われた
本人が「外に行く」と立ち上がりましたが、歩行が不安定で、すぐに付き添える職員がいません。
「外に行きたいんですね。今は安全にご一緒できる職員がいないので、少し待っていただけますか。職員がそろったら、どこへ行きたいか一緒に相談しましょう」と伝えます。
待つことが難しい場合は、本人の様子を見ながら、安全に過ごせる場所や気分転換の方法を検討します。
事例2:送迎時に、はがきの投函やゴミ出しを頼まれた
送迎時に「郵便ポストにはがきを入れてほしい」「ゴミを出してほしい」と頼まれた場合、まずその依頼が事業所のサービス内容やルールに含まれているか確認します。
事業所のサービスとして対応できない場合は、理由を説明します。
たとえば、「申し訳ありませんが、こちらのサービスで対応できる範囲を確認する必要があります。管理者に相談してみます」と伝える方法があります。
事例3:他の利用者さんの情報を聞かれた
「隣の人は、どうして入院したの?」と尋ねられました。
「気になっているのですね。ただ、ほかの方の体調や個人の情報はお伝えできません」と説明します。
本人の不安や心配が背景にある場合は、話を聞き、答えられる範囲で安心につながる対応を考えます。
筆者が経験したこと・考えていること
私自身、送迎時に利用者さんから「郵便ポストにはがきを入れてほしい」「ゴミ出しをしてほしい」と頼まれたことがあります。
どちらも介護保険サービスの範囲外となるお願いだったため、申し訳ない気持ちを感じながら「申し訳ないですが……」とお伝えしました。
利用者さんのお手伝いをしたい気持ちがあっても、職員個人の判断だけで引き受けることはできません。
断るときは、相手への申し訳なさだけで終わらせず、サービスの範囲や事業所のルールを確認し、必要なら管理者などに相談することが大切だと考えています。
断り方に迷ったときのチーム対応
職員によって説明や対応が違うと、利用者さんが混乱したり、不信感につながったりすることがあります。
難しいお願いを受けたときは、次の点をチームで共有しましょう。
- どのようなお願いだったか
- 本人はどんな様子で、何を望んでいるようだったか
- その場でどのように説明したか
- 本人はどのように反応したか
- 次回はどのような方法を試すか
また、職員への暴力や性的な言動、脅しなどがある場合は、一人で抱え込まず、管理者や事業所の窓口に相談します。
利用者さんやご家族からのハラスメントがあれば、どのような場合でも直ちにサービス提供を断れるということではありません。
事業所として状況を検討し、職員の安全を守りながら、必要なサービスの継続にも配慮して対応します。
利用者さんからのハラスメントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
研修ワーク:お願いへの対応を考える
ではワークです。
個人で考えた後に、少人数のグループで意見を共有します。
利用者さんの希望を大切にしながら、安全や職員の役割も踏まえた対応を考えましょう。
個人ワーク(5分)
次の質問について、自分の考えをメモしましょう。
- Aさんの希望や気持ちを知るために、どのような声をかけますか?
- すぐに一人で外出できない理由を、どのように説明しますか?
- 安全に配慮しながら、代わりにできる方法はありますか?
グループワーク(3〜5人、15〜20分)
個人ワークで考えた案を持ち寄り、Aさんの気持ちと安全の両方を大切にした対応を考えます。
進め方:
一人ずつ考えた声かけや対応案を共有します。次に「本人の希望を知る」「できない理由を伝える」「代わりの方法を考える」に分けて意見を整理し、グループの案を発表します。
話し合う質問:
- Aさんは、なぜ今すぐ買い物に行きたいのでしょうか。何を確認しますか?
- 「一人で外出できない」ことを、どう伝えるとわかりやすいでしょうか?
- 事業所として確認・共有しておくことは何ですか?
意見をまとめるポイント:
本人の行動だけを止めるのではなく、希望の背景を確かめます。安全上の理由は具体的に伝え、可能な代替案を検討しましょう。外出支援がケアプランや事業所の対応範囲に関わる場合は、職員だけで判断せず、管理者やケアマネージャーと相談します。
研修担当者向けの解説・回答例:
「買いたいものがあるのですね。何を買いに行きたいのですか?」と希望を確認します。そのうえで、「今は付き添える職員がいないため、一人での外出は安全を確認できません」と、理由を具体的に伝えます。
代案として、付き添える職員がいる時間を確認する、ご家族や関係者に相談する、事業所のルールやケアプランを確認するなどが考えられます。
実際にできる内容は施設・事業所や個別の支援計画によって異なるため、チームで確認して決めましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
利用者さんからのお願いに応じられないときは、まず希望や気持ちを聞き、できない理由をわかりやすく伝えましょう。
そのうえで、代わりにできる方法を一緒に考えることが大切です。
明日から、お願いを断る場面で「気持ちを受け止める」「理由を伝える」「代案を考える」を意識してみませんか?
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参考文献:
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)|厚生労働省






