- すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
厚労省が示す認知症ケアの基本方針
厚労省は2015年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定し、認知症の方が意思を尊重され、住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会の実現を目指しています。
新オレンジプランには以下の7つの柱があります。
- 認知症への理解啓発
- 適切な医療・介護提供
- 若年性認知症対策
- 介護者支援
- 認知症に優しい地域づくり
- 研究開発の推進
- 認知症の人と家族の視点重視
特に「本人と家族の視点を重視する」考え方は、現場でも非常に大切なポイントです。
また、介護保険制度でも認知症ケアは重要な位置づけとなっており、2021年度の介護報酬改定では「認知症専門ケア加算」が導入されました。
専門研修を修了した職員が配置されることで加算が算定でき、ケアの質向上が期待されています。
ケアプランの作成時にも、本人の生活歴や好みを反映した支援方針が重視されています。
介護職に求められるのは、作業者ではなく「専門的な支援者」として本人の尊厳を守る姿勢です。
例えば、混乱している利用者さんには否定せず、「そう感じたんですね」と共感的に声をかけることが安心感につながります。
さらに、穏やかな目線やゆっくりとした話し方で接することで、不安や興奮を和らげられます。
こうした「受け止める姿勢」と「安心感を大切にする関わり」は、認知症ケア研修でも基本として強調されており、現場でもすぐに実践できる重要な対応です。
認知症ケア研修で学ぶべき主要テーマ
認知症ケア研修では、まず「認知症の基本理解」から学びます。
認知症の症状は大きく「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」に分けられます。
中核症状:
脳の神経細胞の障害による認知機能の低下(記憶障害・見当識障害・理解力低下・実行機能障害・失語・失行・失認など)
周辺症状(BPSD):
中核症状が、性格や生活環境と作用して現れる行動・心理症状(妄想・興奮・不安・抑うつ・徘徊・拒否・幻覚・意欲低下など)
BPSDは認知症高齢者の60〜90%に見られ、現場対応の重要なテーマです。
厚労省のガイドラインでは、非薬物療法を第一選択とし、必要に応じて医師と連携して薬物治療を検討するとされています。
非薬物療法の例:
- 環境調整(安心できる空間、静かな雰囲気)
- 好きな音楽を流す・日課の活用
- 多職種での情報共有と個別ケア
他にも「生活リハビリ」も重視しましょう。
- 回想法:昔の写真や音楽で記憶を引き出し情緒を安定
- 音楽療法:懐かしい曲を聴いたり歌ったりして緊張を緩和
- 役割づくり:水やりや片付けなどで自己効力感を維持
また、ご家族との連携も重要です。
ご家族は生活歴や価値観をよく知るため、ケア方針を決める上で大切なパートナーです。
厚労省も「家族の視点重視」を掲げており、連絡調整や情報共有によって家族の不安軽減とケアの質向上が図れます。
中核症状(記憶・理解・実行機能障害など)が土台にあり、その影響によってBPSD(徘徊・妄想・不安など)が現れる構造を理解することが、認知症ケアの基本です。
現場で役立つ実践的な関わり方
認知症ケアでは、特別な技術よりも「日常の接し方の基本」が何より大切です。
とくに重要なのが、「否定しない・受け止める」姿勢です。
例えば利用者さんが「家に帰らなきゃ」と言ったとき、「ここは家じゃありませんよ」と事実を突きつけるのではなく、「今は施設にいましょうね。一緒にここで少し過ごしましょうか」とやさしく寄り添う声かけをします。
事実よりも本人の安心感を優先することで、不安が和らぎ信頼関係が深まります。
声のトーンは穏やかに、言葉はゆっくり、目線を合わせて話すことも効果的です。
BPSDが見られるときも、状況に合わせた柔軟な対応がポイントです。
- 不穏(興奮)時:刺激を減らして静かな環境に移動し、深呼吸を促す。
- 徘徊時:無理に止めず、「お散歩しましょうか」と声をかけ、安全な場所に誘導する。
- 拒否や抵抗があるとき:理由を探りつつ、選択肢を提示して本人の意思を尊重する。
このような対応は、利用者さんの不安や混乱を抑え、穏やかに過ごせる時間を増やす効果があります。
さらに、記録と情報共有も大切です。
対応後は「どのような場面で」「どんな声かけをしたか」「どう反応したか」をできるだけ具体的に記録します。
例:「毎朝同じ時間にトイレ誘導の声かけをすると安心して応じた」
このような記録があれば、次の担当者も同じ方法でケアを引き継げ、チーム全体で一貫した支援が可能になります。
認知症ケアは一人の努力ではなく、チームの連携がカギです。
多職種連携とチームケアの重要性
認知症ケアは、介護職だけで成り立つものではありません。
看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・医師など、多職種が連携して支援方針を統一することが欠かせません。
例えば、内服薬の管理や合併症の有無は看護師や医師と確認し、認知症の中核症状やBPSD(行動・心理症状)の変化にもチームで迅速に対応します。
厚労省は令和6年度から「認知症チームケア推進加算」を導入し、BPSDの予防・軽減に向けたチーム体制づくりを推進しています。
この加算に対応する研修では、BPSDのとらえ方、評価尺度の活用、PDCAサイクルによる計画的なケアが学べる仕組みになっています。
連携の具体例としては、
- 介護職が日常の様子を細かく観察・記録
- 看護師がその情報をもとに医師と連携し、必要に応じて検査・薬物調整
- ケアマネジャーが情報をまとめ、支援計画を全職種で共有
特に医療機関との連携が必要になるのは、
- BPSDが強く症状が悪化しているとき
- 疼痛や不眠など他疾患の可能性があるとき
- 若年性認知症など専門的対応が必要なとき
といったケースです。
厚労省のガイドラインでは、BPSDの治療はまず非薬物療法を優先し、それでも改善しない場合に限って、医師が抗精神病薬や抗不安薬の投与を検討する手順が示されています。
チームケアでは、こうした基本方針(非薬物療法の優先、情報共有の徹底など)を職員間で共有し、「共通認識」を持って支援することが何より重要です。
連携の質が上がることで、利用者の安心と症状の安定、そして現場の負担軽減にもつながります。
認知症ケア研修を現場に活かすための工夫
研修で学んだことを現場に活かすには、日常業務との結びつけが重要です。
学んだ声かけやケア方法を実際の事例と照らし合わせて共有し、ロールプレイで練習すると理解が深まり、職員全体のスキルが統一されます。
新人やパート職員にも伝えやすいよう、短時間の動画視聴や少人数のワークショップも効果的です。
また、ケアプランや記録に研修成果を反映することで、実践の継続につながります。
例えば、共同作業療法を取り入れた場合は、効果を具体的に記録して次の支援に生かします。
さらに、参加者同士の気づきの共有がモチベーションを高め、認知症ケアの改善策を全職員で考える風土づくりにもつながります。
研修を「一度きり」で終わらせず、日常のケアに根付かせることが大切です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
認知症ケアは、特別な技術よりも「日々の関わり方」が基本です。
そして、介護職だけでなく看護・リハビリ・医療・家族など多職種との連携が、安心と信頼のある支援につながります。
研修は単なる知識習得の場ではなく、実践力とチーム力を高める貴重な機会です。
研修で学んだ考え方や技術を現場に根づかせることで、利用者さん一人ひとりに寄り添う質の高いケアが可能になります。
厚労省の方針を理解し、共通認識を持つことが、これからの認知症ケアにおける大きな一歩となります。
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