「新しい認知症観」とは
これまで認知症は「すべての能力が失われてしまう病気」と思われることが多く、その結果、本人や家族が必要以上に悲観的になってしまうケースが少なくありませんでした。
でも、「新しい認知症観」では、認知症になってもその人の持つ能力や個性に目を向け、やりたいことや可能性を大切にしていく考え方を基本にしています。
この考え方は、認知症の方が住み慣れた地域で家族や仲間とつながりを保ちながら、自分らしく希望を持って暮らしていける社会を目指しています。
また、この視点は認知症を「社会全体で支えるべき課題」として捉えており、地域コミュニティや家族の協力が重要であることも示しています。
4つの重点目標
基本計画では、「新しい認知症観」の普及を軸に、以下の4つの目標が示されています。
① 国民一人ひとりが「新しい認知症観」を理解すること
認知症に対する正しい知識や考え方を広め、偏見をなくすことで、認知症の人が社会の中で自然に生活できるようにします。
② 認知症の人の意思が尊重されること
認知症であっても、その人の意思や選択をできる限り尊重し、主体性を支える社会づくりを目指します。
③ 地域で安心して暮らせる環境を整えること
認知症の人や家族が孤立することなく、地域住民や支援者と助け合える仕組みを構築します。
④ 認知症に関する新たな知見や技術を活用できること
医療技術や福祉サービスの進歩を取り入れ、認知症の早期発見やケアに活用します。
2024年度から義務化される「認知症介護基礎研修」
2024年4月から、医療・福祉の資格を持たない介護職員に対し、「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されます。
この研修では、認知症の人への基本的な理解やケアの方法について学ぶことが求められます。
具体的な内容は次の通りです。
- 講義(3時間):認知症の基本的な理解と対応方法。
- 演習(3時間):実際のケアで注意すべきポイントや実践方法。
受講方法は、eラーニングや集合型研修が提供される予定です。
未受講の職員がいないか確認するとともに、新規採用の職員には採用後1年以内に受講させる必要があります。
「認知症介護基礎研修」について詳しく知りたい方は、コチラの記事をご覧下さい。
認知症関連の取り組み
認知症関連の厚労省の具体的な取り組みは、次の4つです。
- 希望大使(認知症本人が主体の取り組み)
- 認知症バリアフリー宣言
- 認知症カフェ
- 認知症サポーター
それぞれ、具体的にみていきましょう。
① 希望大使(認知症本人が主体の取り組み)
厚労省では、認知症本人が発信の主体となれるよう、7名を「希望大使(認知症本人)」として任命しました。
希望大使は、認知症に関する普及、啓発活動や国際会合への参加を通じ、認知症とともに生きる社会の実現を訴えています。
さらに、各都道府県で「地域版希望大使」を設置することも目指しています。
これにより、地域での啓発活動や講座がより活発になることが期待されています。
② 認知症バリアフリー宣言
「認知症バリアフリー」は、認知症の人々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、生活の障壁を取り除く取り組みです。
企業や自治体は、「人材育成」「地域連携」「支援制度」「環境整備」の4つの視点で宣言書を作成し、具体的な活動を推進しています。
この宣言制度は2022年に開始され、多くの企業や地域で採用が進んでいます。
③ 認知症カフェ
「認知症カフェ」は、認知症の人とその家族が地域の人々や専門家と交流し、相互理解を深めるための場です。
2022年度末時点で全国に8,182カ所が設置されており、通所介護施設や公民館などで定期的に開催されています。
特別なプログラムは必須ではなく、参加者が主体となり自由に過ごせることが特徴です。
④ 認知症サポーター
認知症サポーターとは、認知症に対する正しい知識を持ち、地域で認知症の人々やその家族を支える役割を担う人々のことです。
サポーターになるためには、市町村などが実施する「認知症サポーター養成講座」を受講する必要があります。
2024年6月末時点で約1,549万人が登録しており、社会全体での支援体制の充実に寄与しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「新しい認知症観」は、認知症を「すべてを失う病気」と考えるのではなく、本人の持つ力や個性、可能性を大切にする考え方です。
この視点を広めることで、認知症の方が家族や地域とつながりながら、自分らしく希望を持って暮らせる社会を目指しています。
計画では、「正しい理解を広める」「本人の意思を尊重する」「地域で支え合える環境をつくる」「最新技術を活用する」ことを目標にしています。
私たちのように介護に携る業種の者は、このような動向を注視しながら、できる限りの協力をしていきたいと思います。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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