否定は逆効果!認知症ケアで絶対避けたい『声かけNG例』と、BPSDを落ち着かせる共感のコツ
- 認知症ケアの声かけに悩んでいる方
- 否定してしまい関係が悪くなった経験がある方
- BPSDへの対応に自信がない方
- 新人や指導に関わる職員の方
- 研修の資料を探している方
認知症ケアで特に悩むのがBPSDへの対応です。
急に怒る、何度も同じ訴えをする、帰宅願望や入浴拒否など、戸惑う場面は多いですよね。
そんな時、つい「さっき言いましたよね」「今は無理です」と否定してしまいがちです。
しかしその一言が、症状を悪化させてしまうことがあります。
私も何度も、良かれと思った声かけで興奮が強まったケースを見てきました。
この記事では、否定が逆効果な理由と、現場ですぐ使える共感のコツをお伝えします。
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この記事を読むメリット
否定は逆効果?認知症の「恐怖」の正体

認知症の方に「事実」を突きつけたり、行動を否定したりすることは、火に油を注ぐ行為です。
なぜ、私たちの「正しい説明」は届かないのでしょうか。
「感情の記憶」だけが鮮明に残る
認知症が進むと、直近の出来事や具体的な言葉の記憶(エピソード記憶)は失われていきます。
しかし、その時に感じた「悲しい」「怖い」「バカにされた」「怒られた」という「感情の記憶」は、脳の深い部分にいつまでも鮮明に残ります。
あなたがどれほど論理的に「ご飯はさっき食べましたよ」と説明しても、本人には「空腹という事実」と「目の前のスタッフに冷たく拒絶されたという不快感」だけが蓄積されていきます。
自分自身の正解が否定される恐怖
「財布を盗まれた」「家に帰らなきゃいけない」という訴えは、本人にとっては揺るぎない「100%の真実」です。
それを「誰も盗んでいません」「ここはあなたの家ですよ」と否定されることは、私たちに例えれば「今、あなたが立っている地面は存在しません」と言われるような、世界が崩れるほどの恐怖に近いのです。
この恐怖や不安が、防衛本能としての「怒り」や「興奮(BPSD)」を引き起こします。
無意識に言ってない?避けたい声かけNG3つ
現場の忙しさの中では、つい口にしてしまいがちな言葉たち。
しかし、これらは利用者さんの自尊心を傷つけ、不信感を植え付ける「毒」となります。
NG①:現実を突きつける「正論攻め」
- 「もうご飯はさっき食べましたよ」
- 「ここにお財布はないですよ。勘違いじゃないですか?」
- 「今は夜中の3時です。寝てください」
これらはすべて「事実」ですが、本人には届きません。
私の施設でも、新人スタッフほど「正しく説明しよう」としてしまい、結果的に関係がこじれてしまう場面がよく見られました。
事実を突きつけられるたびに、本人は「自分がおかしくなったのか?」という不安に襲われるか、あるいは「この人は嘘をついている」という敵対心を抱きます。
NG②:自尊心を傷つける「幼児語・命令」
- 「ほら、ちゃんとしてくださいね」
- 「お利口さんに座っていましょうね」
- 「ダメですよ、勝手に動いちゃ」
人生の大先輩である利用者様に対し、子供に接するような言葉遣いは厳禁です。
言葉の意味は分からなくても、スタッフの「見下したような態度」や「支配的なトーン」は敏感に伝わります。
これは「不適切ケア」の入り口でもあります。
NG③:記憶の欠落を責める「クイズ攻め」
- 「私の名前、覚えてる?」
- 「今日のお昼、何食べたか言ってみて」
- 「さっき言ったこと、もう忘れちゃったの?」
良かれと思って「脳トレ」のつもりで聞いている場合もありますが、思い出せない本人にとっては「自分の欠点や失敗を繰り返し突きつけられる苦行」でしかありません。
これは親密な関係を築くどころか、心を閉ざさせる原因になります。
BPSDを落ち着かせる共感と受容の3ステップ
BPSD(暴言、徘徊、拒否など)が起きた時、大切なのは「静止」させることではなく、その方の「心の火」を消すことです。
そのためには、以下の3ステップが有効です。
ステップ①:まずは「オウム返し」で丸ごと受け止める
「家に帰る!」と言われたら、「帰れませんよ」ではなく「お家に帰りたいんですね」と返します。
「財布がない!」と言われたら「ないんですね」と返します。
良い・悪いの判断をせず、まずは相手の言葉をそのまま鏡のように返すことで、本人は「この人は自分の言葉を聞いてくれた(味方だ)」という安心感を得ます。
ステップ②:背景にある「感情」を言語化する
言葉の裏にある「不安」や「寂しさ」を推測し、代弁します。
「お家に帰って、何か気になることがあるんですね」「大切なものがなくなって、とても不安ですよね」
このように、感情を言葉にして共有することで、利用者様は「分かってもらえた」と感じ、興奮の波が引いていきます。
ステップ③:別の「安心」に意識をそらす(方向転換)
感情が少し落ち着いたタイミングで、全く別の、しかし本人にとって心地よい話題や活動に誘います。
「ところで、〇〇さんはお料理が得意だと聞きました。隠し味は何ですか?」「温かいお茶が入ったので、少しお話ししませんか?」
無理に忘れさせるのではなく、「安心できる別の居場所」を提示するイメージです。
私の現場では、この“オウム返し→共感→方向転換”を意識するだけで、興奮が落ち着くケースが明らかに増えました。
現場で今すぐ使える!「魔法の言い換え」フレーズ集
具体的なシチュエーション別に、NG例とOK例(魔法の言い換え)を整理しました。
| シチュエーション | 避けたいNG例(否定・命令) | 魔法の言い換え(共感・受容) |
| 帰宅願望(夕暮れ症候群) | 「もう夜だから帰れませんよ」 | 「お家に帰って、何か心配事があるんですね。まずは夕飯を食べて、一緒に作戦を練りましょう」 |
| 物取られ妄想 | 「誰も盗んでいませんよ!」 | 「それは大変!お気に入りのものでしたよね。私も一緒に探させてください」 |
| 入浴・着替え拒否 | 「汚いからお風呂に入りましょう」 | 「少し肩が凝っていませんか?温かいお湯で流すと楽になりますよ。ちょっと見に行ってみませんか?」 |
| 食事の催促(さっき食べた) | 「さっき食べたでしょ!」 | 「お腹が空きましたね。今は板前さんが一生懸命作っているので、先にお茶を飲んで待っていませんか?」 |
| 何度も同じ質問をする | 「さっきも言いましたけど……」 | (初めて聞くかのように)「〇〇のことですね。不安ですよね、何度でも聞いてくださいね」 |
完璧を目指さない。リーダーがスタッフに伝えたいこと
認知症ケアに「100点満点の正解」はありません。
どれほど完璧な声かけをしても、BPSDが収まらない時はあります。
そんな時、真面目なスタッフほど「自分の対応が悪いからだ」と自分を責めてしまいがちです。
リーダーの皆さんは、ぜひスタッフにこう伝えてください。
「声かけのテクニックよりも、あなたが寄り添おうとした『姿勢』こそが、一番のケアなんだよ」と。
スタッフが笑顔で、心にゆとりを持って接することができれば、その穏やかな空気は必ず利用者様に伝わります。
言葉という「テクニック」の根底にあるのは、お互いの「心理的安全性」です。
スタッフが失敗を恐れず、色々な声かけを試行錯誤できる。
そんな温かなチーム作りこそが、認知症ケアの質を上げる最短距離になります。
【ワーク】声かけを振り返る
(個人ワーク3分+共有5分)
これまでのケアを振り返り、「つい否定してしまった声かけ」や「関係がうまくいかなかった場面」を1つ思い出して書き出してください。
そのうえで、「共感に変えるならどう言い換えられるか」を考えてみましょう。
・責めずに「あるある」として共有する
・うまくいかなかった理由を一緒に考える
・実際に使えそうな言い換えを持ち帰る
日々の何気ない一言を見直すことで、現場の空気は大きく変わります。
おわりに
いかがだったでしょうか。
認知症の方にとって、スタッフの言葉は、混乱した世界を照らす「光」にもなれば、追い詰める「凶器」にもなります。
「否定」を「共感」に変える。
「正論」を「安心」に変える。
今日から一つ、まずは「オウム返し」から始めてみませんか?
あなたのその一言が、利用者様の不安を溶かし、現場の空気を変える第一歩になるはずです。
応援しています。あなたの優しさと専門性が、今日も誰かの安心を守っています!
お知らせ①【介護事業所の必須研修資料一覧(2026年度版)】
介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。
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下記のブログは、そんな不安を解消するために実践すべき7つの方法です。
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