先日、「災害時BCP研修」を受講しました。
私は介護職として現場に立って○年になりますが、正直なところ「BCP(事業継続計画)って何だろう?自分には関係あるのかな?」と思っていた部分もあります。
それが2024年4月から全ての介護事業所でBCP策定が義務化されていると知り(※法改正により必須)、研修に臨む前から少し緊張と責任感を感じました。
今回の研修では災害時の情報伝達、復旧に向けたBCP対策マニュアル、夜勤中の地震対応シナリオ、そして災害対応シミュレーション演習まで幅広く扱われ、盛りだくさんの内容でした。
それだけに学ぶことも多く、終えてみれば「受けて本当に良かった!」と心から思えた研修でした。
以下、現場の介護職員として感じたリアルな感想と学びをレポートします。
災害時の情報伝達の重要性
まず最初に学んだのは災害時の情報共有についてです。
講師の方から開口一番、「災害時には『情報の伝達・判断・行動』がスムーズにできるかどうかが対応の成否を分ける大きな鍵になります」と強調され、ハッとしました。
平時には当たり前に感じる報告・連絡も、非常時には途端に難しくなるものです。
研修では、現場職員がどの情報を誰に伝えるか、そして管理職側がどう判断して指示を出すかという情報フローを事前に明確にしておく必要性を学びました。
実際に厚労省のガイドラインでも「平時と緊急時の情報収集・共有体制や伝達フローを整備すること」がポイントと記載してあるようで、あらかじめ意思決定者や連絡手順を決めておくことが強調されています。
私自身、「とりあえず上司に電話すればいいかな?」くらいにしか考えていなかったので、具体的な連絡網や判断基準づくりの大切さを痛感しました。
さらに非常時の通信手段についても述べられていました。
災害で停電・断線すれば電話もスマホも不通になるかもしれません。
そこで事前に緊急連絡網を整備し、非常時用の通信手段(災害用伝言ダイヤルや無線機、衛星電話等)を用意しておく必要があります。
東日本大震災の際には通信網の遮断で、現場からの報告・支援要請が滞り、対応が大きく遅れた教訓があると聞きました。
「備えあれば憂いなし」、平時から情報共有の流れを見える化し、全職員がお互い誰に何を伝えるか理解しておくことが何より命を守ることにつながると感じました。
BCP対策マニュアルで見直した「7つの準備」チェックポイント
研修の中盤では、講師が用意した「災害時BCP対策マニュアル」に沿って、私たちの施設の備えをみんなで点検する時間がありました。
そのマニュアルで特に印象的だったのが「今すぐ見直すべき7つの準備ポイント」です。
- 安否確認体制の整備(利用者・職員の安全確認手順の明確化)
- 情報伝達体制の確立(非常時の情報収集ルート・連絡網づくり)
- 避難誘導計画の策定・実施(避難ルートや方法の事前決定と共有)
- 備蓄品・設備管理の徹底(非常食・水・発電機など物資の備蓄管理)
- 施設点検・ハザード対策(建物設備の安全点検と災害リスク対策)
- 利用者家族や他機関との連携(平時からの連絡体制と協力体制づくり)
- 訓練・教育・記録体制(定期的な訓練実施と職員教育、記録の整備)
これら7項目を一つひとつチェックしていく中で、「うちの施設ではどうかな?」と何度も考えさせられました。
例えば安否確認体制については、「非常時にまず全員の無事をどう把握し報告するか」がテーマです。
講師から「平時から利用者一人ひとりの安否確認シートを準備し、担当者も決めておきましょう」という具体例が紹介され、早速うちの管理者と相談しよう、とメモを取りました。
また職員同士の安否確認も、館内放送や点呼だけでなく災害用伝言板サービス(NTT171)やWebツール、SNSなど複数の手段を用意しておくべきと知りました。
考えてみれば、自宅が被災して出勤できない職員もいるでしょうし、連絡がつかない状況もありえます。
「連絡方法は一つとは限らない。ダメなら次、の引き出しを増やしておく」ことが大事だと痛感しました。
他にも備蓄品の項目では、「最低3日分、可能なら1週間分の食料・水・衛生用品・医療用品を備蓄しましょう」とあり、「うちは非常食3日分あったかな?利用者さんの薬やおむつは…?」と頭の中で在庫を思い浮かべたりもしました。
避難誘導計画では、ハザードマップで津波・浸水想定区域の確認や、避難経路は複数確保しておくことなど具体的な対策に言及があり、「そういえば非常階段の鍵って夜間はどうなってたっけ?」など細かい点にも思い至りました。
また訓練・教育では、「年に1回やればOK」ではなく定期的に全職員が参加する訓練を行い、記録して見直すというPDCAサイクルが求められると知りました。
こうして挙げられた7つのポイントはどれも重要で、「いつか時間のあるときに準備しなきゃ」ではなく「今すぐ見直すべき」内容ばかりです。
研修を通じて、自施設の災害対策を総点検する良いきっかけになりましたし、同僚とも「ここはもっと強化しよう」と意見交換する貴重な場となりました。
夜勤中の地震シナリオ研修
今回の研修で私が特に胸に刺さったのは、「夜勤中に大地震が起きたら?」というシナリオを使った実践的な講義です。
夜勤帯は少人数で多くの入居者さんを見守るため、常々「もし夜中に大地震が来たら私たちだけで対応できるのだろうか…」と不安に感じていたんです。
研修ではまさにそのシチュエーションを想定し、深夜2時に震度6強の地震発生、特養で利用者80名を2名の介護職員(+宿直警備1名)で対応というケーススタディが示されました。
想像しただけで血の気が引くような状況ですが、講師の助言のもとで私たちは落ち着いて行動シミュレーションを行いました。
まず教わった鉄則は「自分の身の安全確保が最優先」ということです。
揺れている最中は無理に動かず頭を保護し、まず自分が怪我をしないようにする。
プロとして当たり前のようですが、咄嗟の時にパニックにならないために意識しておかねばなりません。
その上で、揺れが収まったら即座に同僚や宿直者と連絡を取り合い、お互い無事か確認します。
今回のシナリオでもAさん(夜勤リーダー)が無線で「全員無事ですか?」と呼びかけ、Bさん(新人職員)や警備員さんとの安否確認を真っ先に行っていました。
停電で館内が真っ暗との設定でしたが、懐中電灯や非常灯の明かりを頼りにヘルメットを着用し、すぐに各フロアの利用者さんの安否確認に走るという流れです。
研修では実際に懐中電灯を手に持って館内想定の部屋を巡るロールプレイも行い、「○○さん大丈夫ですかー!」「怖かったですね、もう大丈夫ですよ」といった声かけまでシミュレーションしました。
【幸い大きな負傷者はいない想定】でしたが、動揺している入居者さんには手を握って安心してもらうなど利用者さんの心のケアも忘れずにとアドバイスがあり、ハッとさせられました。
この夜勤想定の演習で感じたのは、事前準備とシナリオ訓練の大切さです。
いざという時、人は頭が真っ白になりますが、「まず自分の安全→同僚の無事確認→入居者の安否確認→建物被害の確認→応急対応」という初動の優先順位が叩き込まれていれば体が動きます。
研修では厚労省ガイドラインに沿って「①利用者・職員の安全確保・安否確認、②建物設備の点検、③職員の参集」が基本動作だと教わりました。
今回のケースでは参集できる職員が限られているため、「応援を呼ぶ判断はいつ誰が行うのか」「ご家族への連絡はどのタイミングで誰がするのか」といったことも議論しました。
私は新人時代に一度夜勤中の地震(幸い震度3程度)を経験したことがありますが、そのときは何をすればいいのか頭が混乱してしまいました。
ですが今回の研修でシミュレーションを体験したことで、もし次に大きな地震が来ても以前より落ち着いて対応できる自信がつきました。
「夜勤は人数が少ないから不安だよね…」と同僚同士でよく話していましたが、BCP研修を通して不安が少し“備え”に変わった気がします。
災害対応シミュレーション演習で得た気づき
研修の最後には、様々な災害ケースを想定した総合シミュレーション演習が行われました。
これはグループワーク形式で、各テーブルごとに異なる災害シナリオが配られ、対応策を話し合うというものでした。
講師いわく、「災害はいつ起こるか分からないから、普段から職員一人ひとりが頭の中でシュミレーションし、判断・対応の訓練をしておくことが大事」とのことでした。
確かにマニュアルを読むだけでは実際には動けません。
こうした演習で自分ごととして疑似体験することが、いざという時の落ち着きにつながるのだと実感しました。
提示されたシナリオはどれも現実味があり、多岐にわたる内容でした。
例えばケース1は「夜勤中に大地震発生(特養・夜間)」で、少人数でも落ち着いて初動対応をする訓練(先述の夜勤シナリオと類似)。
ケース2は「早朝にグループホームで火災発生」で、通報・初期消火・利用者の避難誘導を的確に行うシミュレーション。
ケース3は「デイサービス送迎中に台風直撃」という想定で、運転中の職員が臨機応変に運行を中止し安全を確保する判断を考えました。
ケース4は「有料老人ホームで地域停電が発生(夕方)」という状況で、照明確保や非常電源の使用、長引く停電への対応策を検討しました。
私は台風直撃のケースを担当しましたが、「利用者さんを送迎中に急遽帰所せず施設待機に切り替える場合、ご家族や次の利用者さんへの連絡は誰がどうする?」といった細部まで考える必要があり、改めて現場で瞬時の判断を迫られる難しさと日頃の準備の大切さを痛感しました。
このシミュレーション演習で感じたのは、チームワークと共有の大切さです。
災害対応は決して一人では完結できません。
演習中、ある職員が出した「非常バッグに利用者全員分の名簿と緊急連絡先リストを入れておこう」という提案に皆が「それ良い!」となったり、逆に「この対応は現実には難しいかも…」と意見が割れたりする場面もありました。
しかし話し合いを通じて認識をすり合わせること自体が貴重な訓練だと感じました。
研修後半には各グループの発表もあり、他のグループの考えや工夫も共有できて非常に勉強になりました。
「災害時はとっさの判断+日頃からのチームの準備力だな」と痛感し、普段から職場で情報共有や訓練を積んでおく意義を再確認しました。
【災害時に利用者さんの命と生活を守るためには、日頃のシミュレーション訓練が不可欠】という講師の言葉の重みが、演習を経て腹落ちしました。
研修を終えて
約半日の研修を終え、私は心地よい疲れとともに大きな収穫を感じています。
研修前は「BCPなんて管理職が作る書類でしょ?」なんて思いも正直ありましたが、今は現場の一人ひとりがBCPを理解し行動できるようになることが何より大事だと痛感しています。
【BCPの策定・周知・訓練は義務化もされていますが、それ以上に利用者さんの命を預かる私たちの使命だ】と感じられました。
災害や感染症は起こってほしくないし、考えるだけで不安になります。
しかし研修を通じて得た知識やシミュレーション体験のおかげで、その不安が少し「よし、備えよう」という前向きなエネルギーに変わった気がします。
そして、残念ながら今回のBCP研修を受講できなかった職員の方にも「次回はぜひ参加してみてほしい」と伝えるつもりです。
きっと「知らなかった…!」という気づきや、「これなら自分にもできそう」という発見があるはずです。
災害はいつ起こるか分かりませんが、備えることは今すぐにでもできます。
今回学んだことを職場のみんなと共有しながら、利用者さんの安全と笑顔を守るため、私も明日からまた頑張っていきたいと思います。
いかがだったでしょうか。
レポートは文章の上手・下手よりも、あなたなりの学びと前向きな姿勢が伝わることが何より大切です。
このレポートが、少しでもあなたのお役に立つことができればうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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