『注意不足』が原因じゃない?!誤薬を根絶する『ダブルチェック』の落とし穴と仕組みの作り方
- 誤薬を減らしたいと本気で考えている方
- ダブルチェックに限界を感じている方
- ヒヤリハットが続いて悩んでいる方
- 「注意しても変わらない」と感じている方
- 仕組みで安全を守りたいリーダーや職員
「ちゃんと確認して」と言っているのに、なぜ誤薬はなくならないのか。
そう感じたことはありませんか。
実は原因は、注意不足ややる気ではなく、人の脳の仕組みや現場の環境にあります。
慣れや中断によって確認は簡単に抜けてしまい、さらにダブルチェックも思わぬ落とし穴になることがあります。
この記事では、誤薬が起きる本当の理由を分かりやすく解説し、誰でも実践できる「ミスを防ぐ仕組み作り」のコツをお伝えします。
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この記事を読むメリット
なぜ「気をつけて」では誤薬が減らないのか?

私たちはロボットではありません。
体調、気分、周囲の環境によって、脳のパフォーマンスは常に変動します。
誤薬の原因を「不注意」の一言で片付けてしまうと、本当の対策は見えてきません。
「慣れ」という最大の敵:脳のショートカット
人間は同じ作業を繰り返すと、脳がエネルギーを節約するために「自動操縦モード」に入ります。
これが「慣れ」です。
毎日、決まった時間に決まった利用者さんの薬を配っていると、脳は「いつも通りだから大丈夫」と勝手に判断します。
その結果、目は薬袋を見ていても、脳は情報を処理せず、名前の違いを見落としてしまうのです。
これは「不注意」というより、生物学的な「脳の仕組み」です。
「中断」による脳のリセット
介護現場は常にマルチタスクです。
配薬をしている最中に「〇〇さんが転倒しました!」「ナースコールです!」と声をかけられることは珍しくありません。
人間の脳は、作業を中断された後に元の作業に戻ると、「どこまで確認したか」という記憶が曖昧になる性質があります。
中断が多ければ多いほど、確認のプロセスは穴だらけになり、エラーの確率は跳ね上がります。
盲点!「ダブルチェック」が逆に事故を招く3つの理由
多くの施設が「一人が確認し、もう一人が再確認する」というダブルチェックを導入しています。
しかし、実はこのダブルチェックには、単独確認よりも危険な「心理的な落とし穴」が3つ存在します。
① 「誰かがやってくれる」という責任の分散
心理学では「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」と呼ばれます。
「二人で見る」という安心感が、皮肉にも一人ひとりの確認の強度を下げてしまいます。
「自分が万が一見落としても、後ろの人が気づくだけだろう」という無意識の油断が、すり抜けを生みます。
② 「前の人が正しい」と思い込む確認の形骸化
後から確認する人は、無意識に「前の人が正解を出している」という前提で物事を見てしまいます。
これを「確証バイアス」と言います。
前のスタッフが「〇〇さんの朝食後です」と言いながら薬を出せば、後の人はその言葉に引きずられ、名前が違っていても「〇〇さんのものだ」と思い込んでチェックを通してしまいます。
これでは、二人で一つのミスを共有しているに過ぎません。
③ 「上下関係」による心理的障壁
ベテランと新人がペアになった場合、新人は「ベテランの先輩が間違えるはずがない」と思い込みがちです。
たとえ「あれ? 名前が違うかも」と違和感を抱いても、「自分の勘違いかもしれない」「指摘して機嫌を損ねたらどうしよう」と口を閉ざしてしまうことがあります。
心理的安全性が確保されていない現場のダブルチェックは、ただの「ハンコ押し作業」に成り下がります。
根性論を卒業!誤薬を防ぐ仕組み作りのコツ
スタッフに「死ぬ気で確認しろ」と迫るのではなく、環境をデザインしましょう。
「中断」を物理的に遮断するルール
配薬中のスタッフには、緊急時以外、絶対に話しかけてはいけないというルールを徹底します。
配薬専用の「たすき」や「腕章」を着用する:
周囲に「今は集中モードです」という視覚的な合図を送ります。
配薬エリアの固定:
周囲の雑音が入りにくい場所で準備を行い、他のスタッフもそのエリアには立ち入らないようにします。
「視覚情報」の徹底的な整理
「読む」のではなく「見て直感的にわかる」工夫を凝らします。
顔写真付きトレイの活用:
氏名という「文字」だけでなく、「顔写真」という画像情報で本人確認を行います。
色の活用:
朝・昼・夕・眠前で薬袋の色を分ける、食前薬は目立つシールを貼るなど、視覚的な違和感に気づきやすくします。
氏名フォントの巨大化:
薬袋の名前を、老眼のスタッフでもパッと認識できるほど大きく表示します。
「指差し呼称」の本当の力を引き出す
単に指を指すだけでは不十分です。
「指を指す」「声を出す」「耳で聞く」という複数の感覚を同時に使うことで、脳を強制的に「覚醒状態」にします。
「氏名、よし!」「食前、よし!」と一つずつ区切って発声する。
「よし!」と言う瞬間に、脳は初めて「本当に正しいか?」を再確認します。
この動作を仕組みとして組み込みます。
事故・ヒヤリ時のリーダー対応
どれだけ仕組みを整えても、ミスをゼロにすることは至難の業です。
大切なのは、ミスが起きた後のリーダーの対応です。
「犯人探し」は組織を滅ぼす
「誰が間違えたのか」を吊るし上げ、反省文を書かせても、誤薬は減りません。
それどころか、スタッフはミスを隠すようになり、隠蔽されたミスが将来の重大事故に繋がります。
問いを「Who」から「How」へ変える
リーダーが発すべき言葉は「なぜあなたが間違えたのか(Who)」ではなく、「どういう状況がミスを誘発したのか(How)」です。
「あの時はナースコールが鳴り止まなかった」
「薬袋の文字が重なって見えにくかった」
「ダブルチェックの相方が急ぎの用事で焦っていた」
こうした現場のリアルな要因を吸い上げ、それを仕組みの改善に繋げる。
これこそが、スタッフを守り、利用者様を守るリーダーの役割です。
比較表:個人の努力 vs 組織の仕組み
| 項目 | 個人の努力(根性論) | 組織の仕組み(システム論) |
| 原因の捉え方 | 本人の注意不足、やる気 | 作業環境、プロセスの不備 |
| 対策 | 「気をつける」という決意 | 物理的な遮断、視覚化、IT活用 |
| 事故後の対応 | 叱責、反省文、再教育 | 原因分析、仕組みのアップデート |
| 効果の持続性 | 短期(すぐに忘れる・疲れる) | 長期(誰がやっても同じ結果) |
| スタッフの心理 | 恐怖、萎縮、隠蔽 | 安心、報告のしやすさ、改善意欲 |
おわりに
いかがだったでしょうか。
「注意して」と伝えるのは簡単ですが、その言葉はスタッフに強いプレッシャーを与え、ミスが起きたときに孤立させてしまいます。
大切なのは、人は必ず間違えるという前提に立ち、「間違えにくい仕組み」を整えることです。
仕組みはスタッフを守り、結果的に利用者様の安全にもつながります。
例えば、配薬中は話しかけない空気づくりなど、小さな工夫が大きな事故防止になります。
できることから一つずつ見直していきましょう。
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