とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。「気をつけて」では守れない現場を、“ミスしにくい仕組み”で変えるための実践向きの研修です。
この記事はこんな方におすすめ
  • 誤薬を減らしたいと本気で考えている方
  • ダブルチェックに限界を感じている方
  • ヒヤリハットが続いて悩んでいる方
  • 「注意しても変わらない」と感じている方
  • 仕組みで安全を守りたいリーダーや職員

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

「ちゃんと確認して」と言っているのに、なぜ誤薬はなくならないのか。

そう感じたことはありませんか。

実は原因は、注意不足ややる気ではなく、人の脳の仕組みや現場の環境にあります。

慣れや中断によって確認は簡単に抜けてしまい、さらにダブルチェックも思わぬ落とし穴になることがあります。

この記事では、誤薬が起きる本当の理由を分かりやすく解説し、誰でも実践できる「ミスを防ぐ仕組み作り」のコツをお伝えします。

動画視聴のご案内

本ブログ記事と同じ内容の動画です。

動画で見たい方は、画像をタップしてください。

誤薬とダブルチェックについての研修

この記事を読むメリット

  • 誤薬が起きる本当の原因がわかる
  • ダブルチェックの落とし穴に気づける
  • ミスを防ぐ具体的な仕組みが学べる

 

それでは早速みていきましょう。

なぜ「気をつけて」では誤薬が減らないのか?

失敗した女性介護士

私たちはロボットではありません。

体調、気分、周囲の環境によって、脳のパフォーマンスは常に変動します。

誤薬の原因を「不注意」の一言で片付けてしまうと、本当の対策は見えてきません。

「慣れ」という最大の敵:脳のショートカット

人間は同じ作業を繰り返すと、脳がエネルギーを節約するために「自動操縦モード」に入ります。

これが「慣れ」です。

毎日、決まった時間に決まった利用者さんの薬を配っていると、脳は「いつも通りだから大丈夫」と勝手に判断します。

その結果、目は薬袋を見ていても、脳は情報を処理せず、名前の違いを見落としてしまうのです。

これは「不注意」というより、生物学的な「脳の仕組み」です。

「中断」による脳のリセット

介護現場は常にマルチタスクです。

配薬をしている最中に「〇〇さんが転倒しました!」「ナースコールです!」と声をかけられることは珍しくありません。

人間の脳は、作業を中断された後に元の作業に戻ると、「どこまで確認したか」という記憶が曖昧になる性質があります。

中断が多ければ多いほど、確認のプロセスは穴だらけになり、エラーの確率は跳ね上がります。

盲点!「ダブルチェック」が逆に事故を招く3つの理由

多くの施設が「一人が確認し、もう一人が再確認する」というダブルチェックを導入しています。

しかし、実はこのダブルチェックには、単独確認よりも危険な「心理的な落とし穴」が3つ存在します。

① 「誰かがやってくれる」という責任の分散

心理学では「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」と呼ばれます。

「二人で見る」という安心感が、皮肉にも一人ひとりの確認の強度を下げてしまいます。

「自分が万が一見落としても、後ろの人が気づくだけだろう」という無意識の油断が、すり抜けを生みます。

② 「前の人が正しい」と思い込む確認の形骸化

後から確認する人は、無意識に「前の人が正解を出している」という前提で物事を見てしまいます。

これを「確証バイアス」と言います。

前のスタッフが「〇〇さんの朝食後です」と言いながら薬を出せば、後の人はその言葉に引きずられ、名前が違っていても「〇〇さんのものだ」と思い込んでチェックを通してしまいます。

これでは、二人で一つのミスを共有しているに過ぎません。

③ 「上下関係」による心理的障壁

ベテランと新人がペアになった場合、新人は「ベテランの先輩が間違えるはずがない」と思い込みがちです。

たとえ「あれ? 名前が違うかも」と違和感を抱いても、「自分の勘違いかもしれない」「指摘して機嫌を損ねたらどうしよう」と口を閉ざしてしまうことがあります。

心理的安全性が確保されていない現場のダブルチェックは、ただの「ハンコ押し作業」に成り下がります。

根性論を卒業!誤薬を防ぐ仕組み作りのコツ

スタッフに「死ぬ気で確認しろ」と迫るのではなく、環境をデザインしましょう。

「中断」を物理的に遮断するルール

配薬中のスタッフには、緊急時以外、絶対に話しかけてはいけないというルールを徹底します。

配薬専用の「たすき」や「腕章」を着用する:

周囲に「今は集中モードです」という視覚的な合図を送ります。

配薬エリアの固定:

周囲の雑音が入りにくい場所で準備を行い、他のスタッフもそのエリアには立ち入らないようにします。

 「視覚情報」の徹底的な整理

「読む」のではなく「見て直感的にわかる」工夫を凝らします。

顔写真付きトレイの活用:

氏名という「文字」だけでなく、「顔写真」という画像情報で本人確認を行います。

色の活用:

朝・昼・夕・眠前で薬袋の色を分ける、食前薬は目立つシールを貼るなど、視覚的な違和感に気づきやすくします。

氏名フォントの巨大化:

薬袋の名前を、老眼のスタッフでもパッと認識できるほど大きく表示します。

 「指差し呼称」の本当の力を引き出す

単に指を指すだけでは不十分です。

「指を指す」「声を出す」「耳で聞く」という複数の感覚を同時に使うことで、脳を強制的に「覚醒状態」にします。

「氏名、よし!」「食前、よし!」と一つずつ区切って発声する。

「よし!」と言う瞬間に、脳は初めて「本当に正しいか?」を再確認します。

この動作を仕組みとして組み込みます。

事故・ヒヤリ時のリーダー対応

どれだけ仕組みを整えても、ミスをゼロにすることは至難の業です。

大切なのは、ミスが起きた後のリーダーの対応です。

「犯人探し」は組織を滅ぼす

「誰が間違えたのか」を吊るし上げ、反省文を書かせても、誤薬は減りません。

それどころか、スタッフはミスを隠すようになり、隠蔽されたミスが将来の重大事故に繋がります。

問いを「Who」から「How」へ変える

リーダーが発すべき言葉は「なぜあなたが間違えたのか(Who)」ではなく、「どういう状況がミスを誘発したのか(How)」です。

「あの時はナースコールが鳴り止まなかった」

「薬袋の文字が重なって見えにくかった」

「ダブルチェックの相方が急ぎの用事で焦っていた」

こうした現場のリアルな要因を吸い上げ、それを仕組みの改善に繋げる。

これこそが、スタッフを守り、利用者様を守るリーダーの役割です。

比較表:個人の努力 vs 組織の仕組み

項目個人の努力(根性論)組織の仕組み(システム論)
原因の捉え方本人の注意不足、やる気作業環境、プロセスの不備
対策「気をつける」という決意物理的な遮断、視覚化、IT活用
事故後の対応叱責、反省文、再教育原因分析、仕組みのアップデート
効果の持続性短期(すぐに忘れる・疲れる)長期(誰がやっても同じ結果)
スタッフの心理恐怖、萎縮、隠蔽安心、報告のしやすさ、改善意欲

おわりに

いかがだったでしょうか。

「注意して」と伝えるのは簡単ですが、その言葉はスタッフに強いプレッシャーを与え、ミスが起きたときに孤立させてしまいます。

大切なのは、人は必ず間違えるという前提に立ち、「間違えにくい仕組み」を整えることです。

仕組みはスタッフを守り、結果的に利用者様の安全にもつながります。

例えば、配薬中は話しかけない空気づくりなど、小さな工夫が大きな事故防止になります。

できることから一つずつ見直していきましょう。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有