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【介護施設】緊急時・急変時対応マニュアル【研修にも使える内容】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設で必ず必要な【緊急時・急変時対応マニュアル】を記事にしました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

研修動画

本ブログ記事と同じ内容の動画です。

研修等で役立ててください。

【前編】⇩

緊急時・急変時対応 前編【後編】⇩

緊急時・急変時対応 後編

読者さんへの前おきメッセージ

介護現場では利用者さんの急変時や緊急時が必ず生じます。

普段からのマニュアルの整備やそれに伴う研修によって、利用者さんの生命を左右することもあります。

本記事は、介護職全般に使えるような内容になっています。

そのままコピペで施設のマニュアルにもできますが、具体的なことは自施設に合った内容を取り入れていただけると良いマニュアルになります。

施設運営に少しでもお役立てできれば幸いです。

この記事を読む価値

  • そのままマニュアルとして施設に保管できるような内容です。
  • 研修資料としても役立てれます。
  • 難しい表現は省いているので、誰でも理解できる内容です。

 

早速、見ていきましょう。

緊急時・急変時の対応の流れ

高齢者が浴室で滑って転倒しそうなところ

利用者又は入居者(以下、利用者と省略)の体調が急変したときにの、職員の対応は以下の通りです。

緊急時・急変時の対応の流れ
  1. 状況の把握をする
  2. 名前を呼び、反応の有無を確認する
  3. 応援を呼ぶ
  4. 意識レベルを確認し、場合によっては救急処置を行う
  5. 家族に連絡
  6. 記録する

① ➡ ⑥の順に対応します。

それぞれ解説します。

① 状況の把握をする

一番重要なのは状況の把握です。

  • 利用者はどのような状況か
  • どのような症状がでているか
  • 周りに誰がいるか(助けを求められそうな人)

などを確認し、把握するします。

緊急時や急変に遭遇した時、慌ててしまうのが普通です。

でもまずは冷静になり、状況を確認をするようにしましょう。

② 名前を呼び、反応の有無を確認する

利用者が急変した場合は無理に動かさず、まず名前を呼び反応を確認します。

名前を呼び、「大丈夫ですか?」「分かりますか?」と言って意識を確認しましょう。

確認ポイントは、以下の5項目です。

  • 意識の有無
  • もうろうとしていないか
  • 会話はできるか
  • 呂律は回っているか
  • 呼吸は荒くないか

一つでも当てはまる場合は、即座に救急車を手配します。

意識レベルを確認する際は、腕や手を軽くつまんで反応を確かめる方法もあります。

転倒の場合は、出血や骨折の有無も確認します。

救急の時には119番通報して救急車を呼びます。

救急車を呼ぶべきか、それとも病院に直接向かうべきか判断に迷った場合には、救急安心センターの電話相談サービス「#7119」を利用します。

③ 応援を呼ぶ

利用者から反応がある場合は、他の職員に応援を求めます。

緊急時や急変の対応は職員の協力が必要です。

絶対に一人ですべて対応しないようにしましょう。

応援に来た職員に、看護師や医師を呼んでもらいます。

そして急変する場合もあるため、利用者を一人にしないようにします。

急変した場合や意識レベルが徐々に低下したり、また骨折など職員のみで対応が出来ないと判断した場合にはすぐに救急車を呼びます。

④ 場合によっては救急処置を行う

反応がない場合は、救急車の要請を依頼してからAED(自動対外式除細動器)を使用します。

AEDは、電源を入れ、正しくパットを貼ることができれば、自動で心電図の解析が始まり、電気ショックの適応かどうかをAEDが診断してくれます。

AEDの音声ガイダンスに従い、安全確認をした後に、ショックボタンを押すことで電気ショック(除細動)をかけることができます。

AEDの使用方法は、こちらの動画をご覧ください。【一次救命処置(BLS)~心肺蘇生とAED~ 】:日本赤十字社

救急車が到着した後は、救急隊には以下の内容を聞かれます。

  • 利用者の個人情報
  • 急変するまでの様子
  • 現病歴や既往歴
  • 服薬状況
  • 現在のバイタル
  • 現在の意識の状態

普段から利用者の情報はこまめに更新しておき、救急隊が到着したら的確に情報を伝えられるよう準備しておきましょう。

⑤ 責任者等への連絡

その後は管理者・責任者等へ連絡をとり、増強を伝え適切な指示を仰ぎます。

情報の連携がうまくできるように【緊急連絡フローチャート】を作成しておきましょう。

責任者が不在で連絡が取れない場合、次に誰に連絡するべきなのか、そこもつながらない場合は本部の誰に連絡すればよいのかなどを整備しておく必要があります。

報告の仕方としては、5W1Hを心がけます。

5W1Hとは、「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」のことです。

5W1Hを使えば情報は整理されて、漏れなく報告することができます。

⑥ 関係機関への連絡

事故の場合は関係機関に連絡や報告を行う必要があります。

骨折等の事故の場合は、自治体へ状況を報告します。

自治体によっては、報告書は指定のフォーマットがあります。事前に確認しておきましょう。

死亡事故の場合は警察署に連絡ます。

食中毒の発生の場合は保健所に報告します。

⑦ 家族への連絡と説明

家族に対しても早急に連絡を取り、事故の概要や利用者の状況について説明を行います。

状況によっては病院に搬送されることもあるので、救急車要請と同時に家族にも連絡を入れます。

救急車要請を行わない場合も、いつ、どのような体調の変化、またはケガをしたのかを報告します。

ただし、基本的には責任者から連絡するものです。

家族への連絡は責任者へ確認した後に行うようにしましょう。

⑧ 記録する

急変の内容は介護記録へ、事故の場合は事故報告書へ記録します。

どのような状況で、どのような緊急事態が起こったのか。その時の環境、状態、対応内容を細かく正確に記録します。

その後、その記録をもとに事故発生の原因や経緯、再発防止策を職員皆で考えます。

緊急時・急変時の職員の対応方法

緊急時・急変時を9つの項目にわけました。

ここでは状況に合わせた職員の対応を紹介します。

緊急時・急変時の種類
  1. 転倒
  2. 発熱
  3. 嘔吐
  4. 頭痛
  5. 胸痛
  6. 誤飲
  7. 誤嚥
  8. 誤薬
  9. 利用者の行方不明

それぞれ解説します。

① 転倒

利用者の転倒を発見した場合は、以下の① ➡ ⑥順で対応いたしましょう。

  1. 声をかける
  2. 他の職員を呼ぶ(医師や看護師が在中していれば、専門職を呼ぶ)
  3. 転倒が発生した瞬間の様子・時間・場所をメモしておく(特に頭部を打ったかどうかは大事)
  4. バイタルを確認する
  5. 全身チェックを行う
  6. 状況に応じて救急要請をする

まずは慌てないことが重要です。

そしてすぐに応援を呼びます。

応援が来るまでは、声掛けを続けます。

看護師や医師が到着したら、バイタル測定を行います。

その際、転倒の状況を伝えましょう。

骨折の疑いも考えられるので、全身チェックをし、痛みの訴えや腫れがないか確認します。

ちなみに転倒での骨折で多いのは、腰・尾てい骨・股関節・手首です。

もし頭部をぶつけている可能性があるなら、意識レベルや呼吸状態を確認し、医療機関への受診しましょう。

その時は大丈夫でも、衝撃で脳内出血していることもあるので、その時は意識がはっきりとしていても、時間が立ってから意識不明になることも考えられます。

② 発熱

発熱者が出た場合は、まず新型コロナウイルス感染症の可能性を考え、感染拡大防止の観点から迅速に対応しなければなりません。

では利用者が発熱した場合のフローチャートをお伝えします。

フローチャート

1、発熱以外の症状も確認

  • 強い倦怠感
  • 息苦しさ、咳など呼吸器症状
  • 風邪の症状(のどが痛いなど)

2、情報報告→共有→連絡

  • ただちに施設管理者へ報告
  • 施設内で情報共有
  • 感染拡大防止策(下記記載)を開始
  • かかりつけ医または各地の「受診・相談センター」に連絡し、指示に従う
  • 家族、ケアマネジャーへ連絡

3、感染拡大防止策を実施

①各スタッフの役割を確認

  • 発熱者への対応スタッフ
  • 連絡スタッフ
  • 消毒スタッフ
  • 換気スタッフ
  • 他の利用者への説明スタッフ等

②スタッフの感染防護具着用や手指衛生を徹底

  • サージカルマスク
  • ガウン
  • 使い捨て手袋
  • フェイスシールドなどの装着

③個室への移動と隔離

個室がない場合は、他との間隔を2m以上空けます。

あるいはベッドの間をカーテンで仕切るなどで対応します。

  • 室内を十分に換気する
  • 対象利用者専用の体温計を用意
  • ドアノブ、手すり、利用した共有スペースなどを徹底して消毒

④PCR検査が陽性だった場合

情報の整理と記録の準備をします。

  • 発熱5日前からの行動履歴
  • 出勤職員名簿
  • 席の配置
  • その日ご利用だった利用者の名簿
  • ケア記録
  • 施設の感染予防方法など

その後は保健所や自治体へ所定報告書に従って報告します。

37.5℃以下でも風邪症状があれば注意が必要

高齢者は体温の調節機能が低下しています。

たとえ肺炎などを起こして、状態が悪い場合でも熱が上がらない可能性もあります。

37.5°C以上を発熱といいますが、高齢者の場合は平常時の体温との差を考慮しましょう。

平熱から1℃以上高い、

風邪症状が続いている、

だるさ(倦怠感)がある、

こんな場合でも、必要に応じてフローチャートの対応を実施しましょう。

③ 嘔吐

利用者が激しい嘔吐や下痢を起こしたら、まずノロウイルスを疑いましょう。

冬に起こる食中毒の原因の約80%はノロウイルスです。

ノロウイルスは感染力が強です。

嘔吐物は迅速かつ適切に処理し、感染拡大防止に努めなければなりません。

嘔吐物の処理方法

嘔吐物の処理は以下の手順で行います。

嘔吐物処理の手順
  1. 顔を横に向け、膝を立てて仰向けに寝かせる
  2. 近くにいる人を移動させる
  3. 窓を開ける
  4. 嘔吐物処理セットを準備する
  5. 防護具を着用する
  6. 嘔吐物をペーパータオルで覆う
  7. 嘔吐物に消毒液をかける
  8. 嘔吐物の処理をする(ペーパータオルで覆った吐物を外側から内側によせながら包み込み,ビニール袋に捨てる)
  9. 床の消毒を行う(消毒液を付けたまま10 分間置いておく)
  10. 靴底の消毒をする
  11. 汚染物を廃棄する
  12. 手洗い,消毒を行う

順番を間違えると、感染が広がってしまいます。

感染症の場合、嘔吐物や排泄物などの汚物にはウイルスが大量に含まれています。

汚物を触った手で他の物を触ると、いっきに感染は広がってしまいます。

手順通りに進めていきましょう。

迅速に汚物を処理するには、普段から嘔吐物処理セットを整備しておく必要があります。

嘔吐物処理セット
  • 使い捨てエプロン(防護具)
  • 使い捨て手袋
  • マスク
  • ポリ袋
  • ペーパータオル
  • 塩素系消毒液(家庭用塩素系漂白剤10mlと水500mlを合わせたもの)
  • バケツ
  • 新間紙

ノロウイルスだった場合は1週間は隔離が必要です。

情報収集

利用者の様子を観察するとともに、以下の情報収集を行いましょう。

  • 嘔吐・吐き気はいつから始まったか:ノロウイルスの場合、強烈な嘔吐・吐き気が突然起こる
  • 吐いた物に血が混じっていないか
  • 頭をぶつけていないか
  • 発熱はあるか:ノロウイルスでは発熱が軽度な場合が多い
  • 嘔吐の回数や量、状態の確認
  • 最後に食事をした時間と食事内容
  • 頭痛やひどいめまいはないか
  • 腹痛がないか。ある場合はどのあたりが痛むか
  • 呼吸が止まったり、不自然にゆっくりになっていないか
  • いつもと違う薬を服用していなかったか
  • ご家族に感染者はいるか
  • 下痢をしているか:下痢の場合はトイレに行った回数、状態も確認
  • 意識はあるか:意識がない場合は緊急対応

ノロウイルス以外の原因

ノロウイルスなどの感染症や食中毒以外でも、さまざまな原因から嘔吐が起こります。

高齢になると食道や胃の機能が低下します。

また円背の方は、前傾姿勢状態が続くことで胃が圧迫され嘔吐を繰り返してしまうことがあります。

便秘が続くことで嘔吐しやすくなる場合もあります。

中には脳や消化器官の病気によるものなど対応の緊急性が高い場合もあります。

嘔吐の原因となる疾患をあげてみるとこんな感じです。

  • 胃潢瘍
  • 十二指腸漬瘍
  • 狭心症
  • 髄膜炎
  • 胆石
  • 片頭痛
  • メニエー Jレ病
  • 腸閉塞
  • 胆囊炎
  • 薬(抗がん剖など)によるもの
  • 胃がん
  • 脳腫瘍
  • 脳出血
  • 急性胃腸炎
  • くも膜下出血
  • 心筋梗塞
  • 急性虫垂炎(盲腸)など

嘔吐した場合、要注意な方

次のような方は、特に注意が必要です。

  • 最近、頭部外傷を受けた
  • 腹部の手術を受けたことがある
  • 腸閉塞を起こしやすくなっている
  • 糖尿病や腎疾患の基礎疾患がある:血液中の電解質(ミネラル)のバランスが崩れやすい
  • 胆石症の基礎疾患がある:胆嚢炎や胆管炎を起こしやすくなっている

また嘔吐物に血が混じっている場合は、気管または胃からの出血が考えられます。

出血量の多少にかかわらず、顔を横向きにして寝かせ、救急車を要請しましょう。

喀血、咳とともに鮮血を吐く:呼吸器(気管)からの出血が原因

吐血と共に黒っぽい血液を吐く:消化器(胃)からの出血が原因

④ 頭痛

頭痛は、症状の軽い片頭痛から命の危険のあるものまで様々です。

まずは、危険が高い症状からお伝えします。

以下のような症状も伴った場合は、かなりリスクが高いです。

  • 麻痺を伴う
  • 手足に力が入らない
  • しびれがある
  • つじつまの合わないことを話す
  • どんどんひどくなる頭痛
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 発熱を伴う
  • 突然の激しい頭痛
  • ろれつが回らない、うまく話せない
  • 意識を失う、気が遠くなる
  • めまいがする
  • 今まで経験したことがない頭痛
  • いつもと様子が異なる頭痛

このような症状がある場合は、脳出血、脳腫瘍、くも膜下出血、髄膜炎などが考えられます。

【寝かせる、歩かせない、 頭を高くしない、頭を揺らさない(特に前に曲げない)】を心掛け、迷わず救急車を要請しましよう。

情報収集

高齢者に頭痛の訴えがあった場合は以下の項目に注意します。

緊急性の高い頭痛を見逃さないようにしましょう。

  • とこを痛がっているか:おでこ、頭頂部、目の奥、こめかみ、後頭部、うなじなど
  • どんな痛みか:ズーンっと重い感じ、バットで殴られたよう、血管の拍動に合わせてズキンズキンとするなど
  • 最近、頭部外傷や転倒をしたことがあるか
  • いつから、どんな時にいたくなるか:時間(朝起きたとき、夕方、寝る前)、動作(運動前後、じっとしていても)、環境(寒い日、デイのある日)
  • 頭痛の時に一緒にみられる症状はないか:目の前がチカチカ光る、吐き気があるなど

よくある頭痛

最後に、比較的リスクの低いよくある頭痛を紹介します。

片頭痛:

血管が拡張することでズキズキとした拍動性の痛みが生じる頭痛です。

主にこめかみから目のあたりが痛みます。

痛みの発作は4時間~数日間続きます。

片側に現れることが多いですが、両側から痛むこともあります。

女性に多く、20~40代女性に起こりやすい頭痛とも言われています。

痛みが出る前に目の前がチカチカ光ったり肩こりを自覚することもあります。

緊張型頭痛:

頭や後頭部から首にかけての筋肉の緊張により起こると考えられている頭痛です。

夕方に現れやすい特徴があります。

身体的ストレスや精神的ストレスが重なることによって症状が悪化すると考えられています。

一時的な頭痛:

風邪・二日酔いなどの原因な場合です。

数時間が経てば自然に改善します。

群発頭痛:

目の奥の辺りの激痛が起こるほか、目の充血、涙や鼻水が止まらないなどの症状を伴う頭痛です。

20~40歳代の男性に多いです。

症状は1~2か月間ほど毎日のように起きます。

⑤ 胸痛

胸痛で最も怖いのは、狭心症と心筋梗塞です。

次のような方は心筋梗塞のリスクが高いため、特に注意が必要です。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 喫煙者

心臓の病気は命にかかわる症状です。

心筋梗塞や狭心症は、虚血性心疾患とも呼ばれ、発作に起因して突然死してしまうケースも少なくありません。

利用者に胸痛の訴えがあった場合は、以下の情報を収集しながら、同時に医師か看護師を呼びましょう。

  • 痛みがどのくらい続くか(瞬間的、数分など)も確認:急性心筋梗塞の場合、痛みが30分以上持続する
  • 胸を押さえて苦しそうにしている
  • 汗(冷や汗)をかいている
  • 食欲の低下や吐き気はある
  • いつから痛い
  • どのような(例:刺すような、圧迫されるような、締めつけられるようななど、胸から背中にかけて)痛みか
  • 痛みが出た時の環境:暖かい室内、寒い脱衣所、寒い浴室 、熱めのお湯、寒い脱衣所

胸痛の訴えがあった場合は、すぐにバイタルを測定します。

高齢者のバイタルサイン(目安)を載せます。

下記はあくまでも基準になります。

日々の数値と異なる場合は、目安内の数値であっても要注意です。

  • 体温:35℃後半〜36°C台
  • 血圧:最高血圧150mmHg 未満/最低血圧90mmHg未満
  • 脈拍:60〜80回/分
  • 呼吸:14〜20回/分(呼気・吸気で1回)

個人差があるため、その人の「通常値」を把握しておくことが大切です。

もし異常を感じたなら、すぐに救急車を要請しましょう。

⑥ 誤飲

誤飲とは、食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。

例えば、洗剤などを飲んでしまうことです。

介護施設で認知症の利用者がおられる場合には、誤飲対策も重要です。

洗剤をペットボトルに入れた状態でテーブルに置いてあったり、薬の袋が利用者の手の届くところにある状態などは非常に誤飲リスクが高まります。

点検表を作成し、毎日確認しましょう。

万が一、誤飲事故が発生した場合は、まずは状況確認をします。

  • 利用者の状態
  • 誤飲した物
  • その量

吐かせることで症状が悪化する場合もあります。

むやみに吐かせず、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

⑦ 誤嚥

誤嚥とは、食べ物などを飲み込むときに食道を通らず気管に入ってしまうことをいいます。

飲み込みに障害がある人(嚥下障害)は、誤嚥するリスクが高くなるので、より注意が必要です。

誤嚥予防

まずは食事の姿勢です。

食事の際には、上体を少し後傾させて顎を引くことが重要です。

これは「うなずき嚥下」とも呼ばれ、誤嚥のリスクがある方に対して推奨されています。

食事速度にも注意しましょう。

口の中にいっぱい入っている状態で、更に口に入れて早く食べようとすると、誤嚥のリスクは上がってしまします。

また、食事形態を選ぶことも大切です。

パサパサしたパン、お餅、サラサラした汁物などは嚥下しにくいです。

このような食品は、適切な形状・柔らかさ・粘度などに調整することで食べやすくなります。

また、むせやすいお茶・コーヒー・ジュース類は、増粘剤を利用して、とろみをつけましょう。

そして食事は温かい状態で摂ることが誤嚥を防ぐポイントです。

食べ物が最もおいしいと感じられる温度で摂取しましょう。

窒息

窒息しやすい食品の代表は、餅ですが、その他にもパン、肉、ご飯、海苔など多彩な食品が原因で窒息を生じることがあります。

利用者の窒息時には、まずは口から物をかき出します。

そして奥の気道に入った物を取る(ハイムリック法を行う)をしましょう。

ハイムリック法は、腹圧を急激に上げて呼気を促し、異物が出ることを期待するものです。

普段から練習して習得しておきましょう。

ハイムリック法についてはこちらをどうぞ

⑧ 誤薬

誤薬とは、利用者が薬の種類を誤って飲むことです。

また薬の量、飲む時間や方法を過た場合も誤薬になります。

誤薬は基本的に、職員のミスにより発生することが多いです。

薬を取り扱う際には、管理する人を決める、または複数回のチェックを行う等をルール化することが重要です。

例えば下記のような対策を考えます。

配薬ボックスにセットするとき複数人で確認

配薬ボックスから取り出すときに、利用者の名前と薬袋の氏名が合っているかを複数人で確認

利用者の前で薬袋を開けるときに名前を読み上げる

薬が口腔内に残っていないか職員が目視でチェックする

最後は必ず包装内を確認する

⑨ 喘息の発作

喘息は時間が立つほどに悪化します。

喘息時は座位姿勢をとります。

仰向けに寝てしまうと、余計に悪化してしまうことが多いです。

発作止めの薬を処方されているのであれば、すぐに看護師に対応してもらいましょう。

もし薬がない場合はすぐに医療機関を受診するか、場合によっては救急要請が必要です。

⑩ 利用者の行方不明

施設には施錠をしたりして対策をしているとは思いますが、予期せぬタイミングで認知症の方などが職員が気づかないうちに施設から出て行ってしまい気付けないこともあります。

原因は、施錠の確認不足などがありますが、中には窓から出てしまった事例や、厨房やゴミ捨て場の通路などから出てしまうなどの事例もあります。

限られた職員で見守りすることは難しいので、施設の施錠を強化したり、窓や通路など目が届きにくい場所の扉などの開閉を制限するなどの対策が有効です。

また、来客が多い施設の場合には、来客で施錠を解除した一瞬の間に利用者がドアから出て行ってしまっていたという事例もありますので、施錠を解除した際には最新の注意を払うことが大切です。

利用者の行方不明時、まずすべきなのは利用者の保護です。

警察へ通報して捜索の協力を依頼しましょう。

また普段から地域の住民の方などとの関係性も大切で、万が一の事態になってしまった際、協力してもらえるような関係性を作っておきましょう。

事前にできる対策としては、下記のような項目があります。

  • 最寄りの警察や地域の方などへの連絡先もまとめておく
  • 利用者の容姿や特徴のわかる写真を撮っておく
  • 靴等にGPSをつけておく

急変時のバイタルチェックポイント

利用者が急変した際には、必ず血圧・体温・脈拍・呼吸を確認します。

ここでは、それらを測定をする際のチェックポイントを紹介します。

ぜひ参考にしてみてください。

血圧

血圧の基準値は以下の通りです。

  • 収縮期血圧:140mmHg以下
  • 拡張期血圧:90mmHg以下

参照:日本高血圧学会

収縮期血圧が100mmHg以下の場合は低血圧になります。

医療職に連絡しましょう。

意識混濁など他の症状も併発した場合は救急搬送を行います。

体温

発熱の有無の基準は37.5℃です。

ただし平熱には個人差があるため、通常の体温を知っておくことが重要です。

普段よりも1℃高い体温であれば、すぐに医療職に連絡しましょう。

体温だけでなく、血圧や呼吸数の異常の有無も確認しましょう。

脈拍

脈拍は1分間で60〜100回が正常値です。

60回未満や100回以上だと異変が疑われます。

血圧等の他の症状も確認し、医師や看護師に報告してください。

必要に応じて、医療移管に受信を促しましょう。

呼吸

呼吸を計測には、パルスオキシメーター(SPO2)を使用します。

パルスオキシメーターは「サチュレーション」や「サット」とも呼ばれています。

一般的な方は「99〜96%」という数値が表示されます。

ですが呼吸に異常が起こると95%以下になります。

90%以下になると呼吸不全となり、生命の危険を及ぼします。

数値が95%以下で呼吸が苦しそうな様子であれば、救急搬送を考える必要があります。

パルスオキシメーターで測定する際の注意点として、以下のポイントに気を付けてください。

  • 安静にしていること(運動直後では誤差が生じるため)
  • 体動がないこと
  • 冷感がないこと
  • マニキュアをしていないこと
  • 動脈の血流を検知していること
  • 指の位置が適正であること

緊急時・急変時に必要となる備品

以下の備品は、緊急時や急変時に必要なものです。

日ごろから整備し、どこに置いておくかを把握しておく必要があります。

緊急時・急変時に必要となる備品
  • 救急セット
  • AED
  • 感染対策セット
  • 簡易ベッド

それぞれ具体的にみていきます。

救急セット

救急セットは必須です。

以下の備品を整備しておき、一か所に保管しておきましょう。

  • 包帯
  • ガーゼ
  • サージカルテープ
  • 絆創膏
  • ピンセット
  • 軟膏
  • 綿棒
  • 手袋
  • 体温計
  • ハサミ
  • 救急法の基礎知識ブック

AED

AEDは、心臓が痙攣し血液を流すポンプ機能を失った状態に対して、電気ショックを与えることで正常なリズムに戻すために使用します。

2004年7月から医療従事者でない方でも使用が可能となりました。

利用者が意識消失して、心臓が正常なリズムで脈を打てていない状態にある場合はAEDを使用しましょう。

AEDの電極パッドは使用期限があり、1回使い捨てです。

いざというときの為、定期点検を怠らないようにしましょう。

感染対策セット

利用者が感染症を罹患している場合、感染対策は必須です。

以下の備品を事前に準備して、同じ場所に保管しておきましょう。

  • マスク
  • ゴム手袋
  • ガウン
  • 消毒液
  • ゴーグル
  • フェイスシールド
  • ヘッドキャップ
  • シューズカバー

簡易ベッド

利用者はどこで急変するかわかりません。

どこでも横になれるよう、簡易ベッドを準備しておきましょう。

簡易ベッドはキャスターがついており、折りたためるものが便利です。

保管の幅をとらず、楽に移動させることもできます。

NGとなる対応

利用者が急変した際にパニックになると、してはいけない行動をしてしまう場合があります。

事前に「NGとなる対応」を確認しておきましょう。

今回あげる「NGとなる対応」は5つです。

NGとなる対応

  • 勝手な判断で薬を服用させる
  • 頭や体をゆする
  • 素手で吐物や血液を触る
  • 自己判断で対応する
  • 報告や連絡を怠る

それぞれ具体的にみていきます。

勝手な判断で薬を服用させる

「痛いから薬をちょうだい」と利用者から言われる場面もあります。

もちろん、あらかじめ医師より「○○のような場合は服用してください」と許可があればOKです。

そうでない場合に服用を勧めると、それは違法行為になります。

それだけではなく、利用者自身を危険な状態にさせてしまう可能性もあります。

私たちは勝手な判断で服用を勧めることはできませんので、念頭に置いておきましょう。

頭や体をゆする

利用者が急変したとき、基本的に頭や体は動かしません。

脳に障害が起きていたり、骨折している場合もあります。

動かすことで、悪化させてしまう可能性もあります。

意識確認には、大きな声で呼びかけたり、皮膚をつねったりして反応をみます

素手で吐物や血液を触る

素手で吐物や血液に触れると、あなたへの感染のリスクが高まります。

そしてあなたから施設全体に感染症が広がる可能性もあります。

感染対策セットを施設内に常備しておき、緊急時にすぐに取り出せるように分かりやすい場所保管しておきましょう。

自己判断で対応する

急変や転倒などの事故の場合、症状が隠されている場合があります。

例えば転倒で頭を打った場合、その時は意識もはっきりしていても、後から危険な症状が出る場合もあります。

必ず看護師や医師の相談し、または医療機関を受診するようにしましょう。

報告や連絡を怠る

利用者の急変時には、管理職、看護師、ケアマネージャー、医療機関、家族などへ報告や連絡をしなければいけません。

今後の対応に関わってくる重要なことなので、正確な情報を共有することが大切です。

報告や連絡をせず、利用者に何かあった場合、すべてあなたの責任になってしまいます。

自分を守る為にも、報告や連絡は怠らないようにしましょう。

緊急時・急変に冷静に対応するには

介護現場では、利用者の急変や緊急時に対応しないといけない場合は多々あります。

場合によっては、大きな病気が隠れている可能性もあります。

いつ急変等が起こっても対応できるように心得ておく必要があります。

その為には施設側が定期的な研修やトレーニング機会を設ける必要があります。

医師もしくは看護師にも対応方法を学んでおくのも一つの方法です。

また新人職員なら、時間のある時にマニュアルを確認してくことも大切です。

そして普段から、利用者病歴や状態などを把握しておいたり、

AEDの場所を確認しておくことで、落ち着いて対応することができます。

おわりに

いかがだったでしょうか。

介護の仕事はマニュアル化が難しい部分もあります。

この記事で紹介した内容は、緊急時・急変時の一部です。

それ以外の事案もできる限りあらかじめ想定しておき、どのような場合に、どんな対応をするかをマニュアル化しておきましょう。

そして職員みんなで共有し、定期的に見直ししていくことが大切です。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有