筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
「倫理」と聞くと、難しいイメージがあります。
この記事では「倫理」や「法令」をわかりやすく説明し、誰でも理解できるように解説しています。
そして介護現場でどのように活かせるかを、イメージしやすい内容にもなっています。
この記事が、施設運営に少しでもお役立てできれば幸いです。
研修動画
本ブログ記事と同じ内容の動画です。
研修等で役立ててください。

この記事を読む価値
- そのまま読むだけで研修にすることができる内容です。
- 最後にグループワークもあるので、自施設に落とし込むことができます。
- 難しい表現は省いているので、誰でも理解できます。
早速、見ていきましょう。
倫理とは

まず【倫理】という言葉の意味を確認しておきます。
「倫」は仲間や人の輪のことを指し、「理」はことわりや筋道のことを指します。
社会を生きる上で一人一人が正しい行いをするための考え方、規範を倫理と呼びます。
善いことや悪いこと、正しいことを正しくないこと、こういう場合にはこうするべきであるという、人の内面的な規範のことです。
そして利用者さんの生活と密接にかかわる介護現場では、倫理的判断が必要となる場面が多いため、職業倫理と法令遵守の理解を深める必要があります。
それぞれ解説していきます。
職業倫理について
まずは、介護職の職業倫理についてです。
職業倫理とは、以下のような内容です、
【職業倫理とは】
特定の職業に就いている者が、その専門職として社会的役割・義務・責任を果たし、社会に貢献するために取るべき行動の基準・規範
そして日本介護福祉士会は、介護分野における職業倫理を次のように定めています。
【日本介護福祉士会が掲げる職業倫理】
1、利用者本位・自立支援
介護福祉士は、すべての人々の基本的人権を擁護し、一人ひとりの住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます。
2、プライバシーの保護
介護福祉士は、プライバシーを保護するため、職務上知り得た個人の情報を守ります。
3、利用者ニーズの代弁
介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。
4、後継者の育成
介護福祉士は、すべての人々が将来にわたり安心して質の高い介護を受ける権利を享受できるよう、介護福祉士に関する教育水準の向上と後継者の育成に力を注ぎます。
5、専門的サービスの提供
介護福祉士は、常に専門的知識・技術の研鑽に励むとともに、豊かな感性と的確な判断力を培い、深い洞察力をもって専門的サービスの提供に努めます。
また、介護福祉士は、介護福祉サービスの質的向上に努め、自己の実施した介護福祉サービスについては、常に専門職としての責任を負います。
6、総合的サービスの提供と積極的な連携、協力
介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します。
7、地域福祉の推進
介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるよう努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。
引用:日本介護福祉士会倫理綱領
法令遵守について
介護事業所は、介護保険法などの法令に基づいて事業を行っています。
介護保険法とは、介護や支援の必要な人に、介護費用の一部を給付する制度である介護保険制度の根拠となる法律のことです。
この法律には次のようなことが含まれています。
【介護保険法(一部)】
「人員基準」「設備基準」「運営基準」を満たす必要があります。
これらの基準は、サービスの種類や事業所・施設規模などによって異なります。
人員基準:
事業所の利用者に対して配置 すべき職種と職員の人数を定めたルール
設備基準:
事業所を運営する上で必要な 最低限準備する設備などのルール
運営基準:
事業所を運営する上で求められる、事業所が行わなければならないルール
また、介護事業所に必要なのは介護保険法だけでなく、以下のような法令があります。
1、労働基準法
就業規則・雇用契約書類・労働時間・労働安全衛生などの正しい整備が必要です。
2、高齢者虐待防止法
近年、高齢者の虐待が増えています。
したがって、介護職は虐待防止に対する高い意識を持つことが求められます。
高齢者虐待防止法で定義されている虐待には、次の5種類があります。
3、個人情報保護法
介護職は守秘義務があります。
業務で利用者さんの個人情報を扱うことが多々ありますが、得た情報は慎重に取り扱い、外部に漏らしてはいけません。
4、消防法
消防訓練の実施・防火管理者の設置・防火点検の実施などが必要です。
5、道路交通法
送迎等で車を運転する機会が多いのも介護職の特徴です。
運転する際は、スピード違反・歩行者妨害・携帯電話・車両安全管理義務の放棄などに気をつけましょう。
そして2023年からは、業務で車を使用する前後のアルコールチェックが義務化されています(安全運転管理者の選任が必要。社用車を5台以上所有している事業所)。
6、その他
薬剤の取扱・提供する食事に関わる食品衛生など、自施設に関係のある法律もチェックしておきましょう。
介護保険事業の収入の多くは介護保険料や税金です。
そのため、常日頃から法令を守り、健全で適正な運営を行わなければなりません。
尊厳の保持
介護保険法では、第一章第一条で利用者の尊厳を保持することを掲げています。
【介護保険法】
第一章総則(目的)
第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
従って、私たち介護職員は、利用者さんの尊厳を損なわないよう適切にかかわらなければなりません。
しかし、そもそも尊厳とは何なのでしょうか?!
辞典で調べると「とうとくおごそかなこと。気高く犯しがたいこと。また、そのさま。出典:デジタル大辞泉」となっています。
介護現場で考えると、ケアスタッフが利用者さんひとりひとりのプライドを尊重する姿勢でかかわります。
例えば、利用者さんの意向より作業をこなすことを優先しすぎたり、何でもかんでも手助けしたり、子供扱いするようなことをしないことを意味します。
「尊厳の保持」を実現するために
「でも具体的に、どのように尊厳を保持すればよいの?」と思うかもしれません。
尊厳の保持は、「身体面」「精神面」「社会面」の3つの視点から考えるようにしましょう。
身体面
「けがや病気の予防」という視点で尊厳の保持に取り組みます。
例えば、以下のようなことを意識しましょう。
- 転倒、誤嚥、誤飲、誤薬、褥瘡などの発生を予防する
- 雑な介助、たたく、つねるなどはしない
- 感染症(ウイルス・食中毒など)を予防する
また「機能低下の予防」という視点で、以下のようなことを意識しましょう。
- できることはやっていただく
- 活動量をあげるような取り組みをする
- 外出の機会を設ける
精神面
「不信感や怒りなどを感じさせない」という視点で尊厳の保持に取り組みます。
例えば、以下のようなことを意識しましょう。
- 排せつした状態で放置したり、我慢させたりしない
- 怖がらせたり驚かせたりしない
- 嘘をつかない
- 約束を忘れない
- ばかにしたり子ども扱いしない
- 無視しない
社会面
「権利を奪わない」という視点で、以下のようなことを意識しましょう。
- 言論の自由、選挙権、男女平等、基本的人権などの権利を守る
「経済的損失を防ぐ」という視点で、以下のようなことを意識しましょう。
- 無駄な消費や買い物、高価な買い物をさせない
- 非効率的な介護サービスを導入しない
引用:介護現場のお助けBOOK 月刊DAY
最後に、グループワークをするなら次のような議題ですすめてみてはいかがでしょうか。
【グループワーク】
普段も業務の中で「利用者さんの尊厳が守られていないかもしれない」と感じることはありますか?
それはどんなことですか?
改善策はありますか?
おわりに
いかがだったでしょうか。
「倫理」とか「法令」と聞くと難しく敬遠されがちですが、実はすごく重要であることが理解できたかと思います。
職員や施設を守るために「倫理」や「法令」への知識は必須です。
この研修記事が、「倫理」や「法令」に対する知識を深るきっかけとなり、適切な運営をしていく上で少しでもお役立てできれば幸いです。
「他の【倫理及び法令遵守に関する研修】の資料も見てみたい!」という方は、コチラの記事も参考にしてみてください。【介護施設】倫理及び法令遵守に関する研修の資料【尊厳と自立支援について】
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