介護の現場では、食中毒の予防がとても大切です。
利用者さんの体は抵抗力が弱く、少しの油断が命にかかわることもあります。
そして感染症は、利用者さんだけでなく介護職員自身の健康も脅かします。
この記事では、介護現場で特に注意したい「食中毒」について、原因となる細菌やウイルス、予防の基本をわかりやすく解説します。
勉強会の資料としてもそのまま活用できますので、ぜひ現場でご活用ください。
食中毒とは
食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、げりや腹痛、発熱、はきけなどの症状が出る病気のことです。
細菌やウイルスによって、病気の症状や食べてから病気になるまでの時間はさまざまです。
時には命にもかかわるとてもこわい病気もあります。
食中毒にかかる人が多くなるのは気温が高く、細菌が育ちやすい6月から9月ごろで、ウイルスによる食中毒は冬に流行します。
また、キノコや魚のフグなどには、自然に有毒な物質を含んでいるものがあり、そういったものをまちがえて食べることによって食中毒になることもあります。
食中毒を起こす細菌は、土の中や水、ヒトや動物のひふや腸の中にも存在していて、とくべつな菌というわけではありません。
そのため、食品を作る途中で菌がついてしまったり、家庭で料理したものを、あたたかい部屋に長い時間置いたままにしておくと、細菌が増えてしまいます。
食中毒を起こす主な細菌とウイルス
それでは細菌やウイルスを種類別で説明していきます。
サルモネラ菌

十分に加熱していない卵・肉・魚などが原因となります。
例えば生卵、オムレツ、牛肉のたたき、レバ刺しなど。
乾燥(かんそう)に強く、熱に弱い特徴があります。
食後、6時間~48時間で、はきけ、腹痛、げり、発熱、頭痛などの症状が出ます。
黄色ブドウ球菌

ヒトのひふ、鼻や口の中にいる菌です。
傷やニキビを触った手で食べ物を触ると菌が付きます。
そのため、食べ物を加熱した後に触ってしまうことが原因となります。
例えばおにぎり、お弁当、巻きずし、調理パンなどを作るときに菌がつきやすくなります。
この菌が作る毒素は熱に強く、一度毒素ができてしまうと、加熱しても食中毒を防ぐことはできません。
食後30分~6時間で、はきけ、腹痛などの症状が出ます。
腸炎ビブリオ菌

引用画像:有限会社エコサンテ物産
生の魚や貝などの魚介類(ぎょかいるい)が原因となります。
例えば、さしみ、すしなど。
塩分のあるところで増える菌で、真水や熱に弱い特徴があります。
食後4時間~96時間で、激しいげりや腹痛などの症状が出ます。
カンピロバクター

十分に加熱されていない肉(特にとり肉)や、飲料水、生野菜などが原因となります。
また、ペットから感染することもあります。
例えば十分に火が通っていない焼鳥、十分に洗っていない野菜、井戸水(いどみず)やわき水など。
乾燥に弱く、加熱すれば菌は死滅します。
食後2~7日で、げり、発熱、はきけ、腹痛、筋肉痛などの症状が出ます。
腸管出血性大腸菌 O157・O111など
十分に加熱されていない肉や生野菜などが原因となります。
例えば、十分に加熱されていない肉、よく洗っていない野菜、井戸水やわき水などです。
菌には、O157やO111などの種類がありますが、十分に加熱すればふせげます。
食後12~60時間で、はげしい腹痛、げり、血が多くまざったげりなどの症状が出ます。
症状が重くなると、死ぬこともあります。
ノロウイルス

カキ、アサリ、シジミなどの二枚貝を生や十分加熱しないで食べた場合や、ウイルスに汚染された水道水や井戸水などを飲んで感染することもあります。
熱に弱いので、85度以上で1分間以上加熱すれば大丈夫です。
食中毒にかかった人の便や、はいたものから感染することもあるので、さわったら石けんでよく手を洗います。
食後1~2日ではきけ、ひどいげり、腹痛などの症状がでます
E型肝炎

加熱不足のブタなどの肉や内臓を食べたことが原因となります。
また、海外の地域によっては生水や生ものから感染する場合もあります。
例えば十分に火が通っていないブタの肉やレバーなどです。
熱に弱いので、生食をさけ、中心まで十分に加熱すればふせげます。
ほとんど症状は出ませんが、一部の人は感染から平均6週間たつと、だるくなったり、ひふが黄色くなったり、発熱したりします。
病因物質患者数発生状況、原因施設別事件数
食中毒の多くは、ノロウイルスやカンピロバクターが原因です。
まずは、この2つの対策が重要になります。

引用画像:大阪府
また食中毒は、飲食店などの外食で発生しているだけでなく、家庭でも発生しています。
家庭における食中毒は、症状が軽かったり、家族のうち全員には症状が出なかったりする場合もあるため、食中毒であると認識されないケースも少なくありません。
下の画像の統計では、家庭での食中毒の発生件数は全体の1割程度となっていますが、実際にはもっと多く発生していると推測されます。
家庭にも食中毒の危険が潜んでいるのです。

引用画像:サニクリーン
食中毒の予防
食中毒の原因となる細菌やウイルスは目に見えないため、どこにいるか分かりませんが、私たちの周りの至るところに存在している可能性があります。
肉や魚などの食材には、細菌やウイルスが付着しているものと考えましょう。
また、いろいろな物に触れる自分の手にも、細菌やウイルスが付着していることがあります。
細菌やウイルスの付着した手を洗わずに食材や食器などを触ると、手を介して、それらにも細菌やウイルスが付着してしまいますので、特に注意が必要です。
きれいにしているキッチンでも、食中毒の原因となる細菌やウイルスがまったくいないとは限りません。
食器用スポンジやふきん、シンク、まな板などは、細菌が付着・増殖したり、ウイルスが付着しやすい場所と言われています。
食中毒予防の原則は、食中毒の原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」、原因ウイルスを「持ち込まない」「ひろげない」「つけない」「やっつける」です。
原因菌は「つけない」「増やさない」「やっつける」
「つけない」=手を洗う!清潔にするべきものは分ける!
手にはさまざまな雑菌が付着しています。
食中毒の原因菌やウイルスを食べ物に付けないように、必ず手を洗いましょう。
手洗いの方法を画像で載せておきます。

「増やさない」=低温で保存する!冷蔵庫等で保存しましょう。
「やっつける」=加熱処理!過熱により菌は死にます。
原因ウイルスは「持ち込まない」「ひろげない」
「持ち込まない」=同じ空間にいる方の健康状態の把握・管理は必須です!体温は必ず測るようにしましょう。
「ひろげない」=手洗い、定期的な消毒・清掃!
食中毒を防ぐ4つのポイント
食品の購入から食べるまでの過程で予防の原則を実践しましょう。
1、買い物
消費期限を確認する
肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる
寄り道をしないで、すぐに帰る
2、家庭での保存
下準備、調理、調理の前には石けんで丁寧に手を洗う
3、食事
食べる前にも石けんで手を洗う
4、残った食品
ラップをして冷蔵庫で保存する
食中毒かなと思ったら
おう吐や下痢の症状は、原因物質を排除しようという体の防御反応です。
医師の診断を受けずに、市販の下痢止めなどの薬をむやみに服用しないようにし、早めに医師の診断を受けましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
食中毒は、目に見えない細菌やウイルスが原因で、気づかないうちに広がってしまうことがあります。
だからこそ、日頃の手洗いや調理の注意、食材の管理がとても重要です。
介護現場で働く私たちは、利用者さんを守る立場として、正しい知識と意識を持つことが求められます。
この記事の内容が、現場での感染症予防に役立ち、利用者さんと自分自身の安心・安全につながれば嬉しく思います。
今後の研修や日常業務に、ぜひお役立てください。
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