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- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
グループホームなどの介護施設は、災害や感染症発生時にも入居者さんの生活と安全を守り、必要なケアを継続する責務があります。
BCP(事業継続計画)は、防災マニュアルにとどまらず、非常時でも業務を続けるための包括的な計画であり、入居者さんと職員の安全確保、ケアの質維持、施設の信頼保護に不可欠です。
2024年4月からは介護施設での策定が完全義務化され、未策定は報酬減算の対象となりました。
特に少人数制のグループホームは夜間人員が少なく、自力避難困難な高齢者が多く暮らすため、有事に備えた平時からの準備と計画が重要です。
災害別のリスクと対応方針
グループホームが直面しうる主な災害ごとに、考慮すべきリスクとBCP上の対応方針を整理します。
それぞれの災害に合わせた準備と対策を平時から講じておきましょう。
地震
大地震では建物の損壊や家具の転倒、停電・断水などで入居者さんの生活基盤が脅かされます。
対応方針としては、まず家具の固定や耐震補強など建物・設備の安全対策を実施し、非常用備品(飲料水・食料・簡易トイレ・懐中電灯等)を少なくとも3日~1週間分備蓄します。
地震発生時の初動では職員・入居者さん全員の安全確認を最優先とし、揺れが収まったら出入口を開けて避難経路を確保する、倒れた家具や落下物に注意しながら安全な場所へ誘導するなどの行動が重要です。
とっさに誘導が難しい場合には、例えば入居者さん自身に布団で頭を覆ってもらい頭部を防護するよう声かけするといった対応も有効です。
避難が必要な場合に備えて複数の避難ルートと避難先を事前に決めておき(ハザードマップで津波・崖崩れなどの危険区域を把握)、施設内に経路図を掲示しておきましょう。
台風・水害
台風や集中豪雨による水害では、浸水や土砂災害、ライフライン寸断に備える必要があります。
建物の防水対策(排水口の点検、土嚢の準備等)や非常用電源の確保を進め、重要書類や物資は浸水しにくい場所へ保管します。
気象情報を常に確認し、自治体から避難情報が発令された場合は、早めに入居者さんを安全な場所へ移動させる判断も求められます。
例えば近隣の高台施設や福祉避難所への受け入れ協定を結び、二次避難先を確保しておくことが有効です。
水や食料、薬剤などライフラインが途絶えても一定期間持ちこたえられるよう備蓄を徹底し、万一孤立した際にも入居者さんの生活を維持できるよう対応方針を定めます。
また、暴風の接近時にはベランダ・庭の飛散しそうな物を室内に収容し、窓の養生テープ貼付やシャッター閉鎖を行います。
停電に備えて非常灯・発電機・充電池を用意し、復旧までの間も照明や医療機器が使える体制を整えてください。
火災
グループホームの火災は夜間発生時の人員不足が最大のリスクです。
一人夜勤など最小限の職員で複数の入居者さんを避難させねばならない場合に備え、防火設備の整備と避難訓練が極めて重要です。
自動火災報知機やスプリンクラーの設置(法令上義務がなくても自主的に導入を検討)、消火器や防火扉の適切な配置・管理を行い、職員は初期消火と通報手順を習熟しておきます。
火災時はまず出火場所の扉を閉めて煙と炎の拡大を遅らせることが鉄則です。
その上で出火室周辺の入居者さんから順に迅速に避難誘導し、避難が難しい入居者さんは毛布等を使って搬送します。
避難の優先順位や役割分担を平時から決めて訓練し、夜勤帯を想定した図上訓練や時間計測訓練も行いましょう。
鍵付き居室がある場合は職員が短時間で一斉開錠できる仕組み(マスターキーの常備や自動連動解錠システムの導入)を検討します。
また、近隣住民にも非常ベルの音や非常時の協力依頼について周知し、近隣から119番通報や避難支援を仰げる体制づくりも有効です。
感染症
新型コロナウイルスや季節性インフルエンザなど、集団生活を営むグループホームでは感染症のリスクも見逃せません。
感染症流行時の対応方針として、まず感染予防策の徹底を図ります。
日頃から手洗い・アルコール消毒やマスク着用、換気を習慣づけ、職員と入居者の健康状態を毎日チェックして体調不良者を早期発見する体制を整えます。
BCPには感染者発生時の具体的手順を定めておきましょう。
例えば「発熱など感染疑いが出た場合の隔離方法」「保健所や協力医療機関への連絡基準」「感染エリアと清潔エリアのゾーニング方法」「面会制限や消毒の強化手順」などです。
実際に感染者が出た際は、ただちに個室等に隔離し施設内でゾーニングを実施、他の入居者さんやスタッフへの二次感染防止を最優先します。
同時に入居者さんご家族への連絡や行政機関への報告を速やかに行えるよう、誰が何を連絡するか役割を決めておくことも重要です。
感染拡大で職員が大幅減員する事態も想定し、最低限継続すべき業務(食事・排泄介助等)を洗い出して優先順位を明確にしておきます。
必要に応じて他事業所との人員応援協定や派遣制度を利用できるよう、平時から行政・他施設との連携ルートを作っておくと安心です。
BCP策定のステップ
BCPを策定する際は、闇雲に作成を始めるのではなく、順を追って検討することが大切です。
以下のようなステップで進めると効率的に実効性の高い計画を作成できます。
- リスク評価
- 重要業務の特定
- 対応計画の策定
- 訓練と見直し
それぞれ、具体的にみていきます。
①リスク評価
まず起こり得る災害や事故のリスクを洗い出し、その発生可能性と影響度を評価します。
ハザードマップ等で地域の自然災害リスクを確認し、過去の災害事例も参考に想定し得る事態をリストアップしましょう。
例えば地震・台風・水害・火災・感染症といったカテゴリごとに、自施設ではどんな被害が考えられるかを整理します。
リスクごとに発生頻度(可能性)と影響度(被害の深刻さ)を評価し、マトリクスで分析すると優先的に対策すべきリスクが見えてきます。
影響が甚大なリスクは頻度が低くても重点対策が必要です。
こうしたリスク評価によって、「何が一番起こりやすく、何が起これば致命的か」を見極めます。
②重要業務の特定
次に、非常時でも最優先で継続すべき業務は何かを明確にします。
グループホームの業務の中でも入居者さんの生命と健康に直結するもの(例:食事提供、排泄介助、服薬管理、医療的ケア等)を洗い出し、それらが中断すると入居者さんにどんな影響があるか想定します。
例えば「食事提供」が止まれば栄養補給ができず健康悪化、「排泄介助」が止まれば衛生状態の悪化、「服薬管理」が滞れば持病の悪化につながる、といった具合です。
このように重要業務とそれを脅かす要因をセットで整理しておくと、どの業務を何としても守るべきか優先度がはっきりします。
同時に各業務について非常時に代替手段はあるか、最低限の人員でどう回すか、といった検討も行います。
③対応計画の策定
続いて、上記で特定した優先度の高いリスクや重要業務に対して具体的な対応策を計画します。
リスクごとに「予防・被害軽減策(発生前の備え)」「緊急時の対応策(発生直後の行動)」「事業再開策(復旧に向けて)」を時系列で考えると整理しやすくなります。
計画を立てる際は絵空事にならないよう、自施設の人的・物的リソースで実現可能な対策を検討することが大切です。
例えば停電対策として「非常用発電機を導入し定期点検する」、安否確認策として「職員と家族の連絡網を整備し、SNSのグループ機能も活用する」、避難対策として「複数の避難経路を確保し地図にまとめ定期的に点検する」、感染症対策として「個人防護具(PPE)の備蓄と隔離手順を明文化する」等、具体策を盛り込みます。
計画した内容は文書化(マニュアル化)して全職員に共有しましょう。
さらに定期的に計画を見直し更新することで、非常時に実際に機能する計画へとブラッシュアップできます。
④訓練と見直し
BCPは机上で作っただけでは不十分です。
定期的な訓練によって職員が非常時対応を実践的に身につけてこそ、計画は効果を発揮します。
年1回以上の防災訓練・避難訓練はもちろん、感染症想定のシミュレーション訓練、安否確認訓練なども織り交ぜて実施します。
夜間想定訓練や他施設・地域との合同訓練も有効です。
また、訓練の結果や施設環境の変化を踏まえてBCPを定期的に見直すことも重要です。
例えば新たな入居者さんが増えた、建物設備が更新された、周辺に新たなリスク要因(工事現場や感染症流行など)が生じた、といった場合には計画をアップデートし、最新の状況に適合させます。
訓練と見直しを繰り返すことで、常に最新・最適なBCP体制を維持でき、いざという時に職員全員が迷わず行動できるようになるのです。
災害発生時の具体的な行動マニュアル
いざ災害が発生した際、グループホーム職員が取るべき行動のポイントを初動から復旧まで順を追って解説します。
- 初動対応
- 入居者の避難誘導
- 連絡体制
- 復旧手順
日頃から流れをイメージトレーニングし、実際の非常時にも落ち着いて対応できるように備えておきましょう。
①初動対応
非常時にはまず「人命第一」です。
地震でも火災でも状況を問わず、その場にいる入居者さんと職員の安全を最優先に確保します。
具体的には、周囲にいる入居者さんにけががないか確認し、倒れやすい家具やガラスから離れた安全な場所へ誘導します。
職員自身もヘルメットを着用するなど自身の安全を確保してください。
揺れや火災の衝撃で入居者がパニックに陥らないよう落ち着いた声掛けを行い、「大丈夫です、一緒に安全な所へ行きましょう」など安心感を与える対応を心がけます。
また、医療的ケアが必要な入居者がいれば機器の電源や作動状況を確認し、異常があれば速やかに応急対応します。
負傷者がいる場合は応急手当を施し、必要に応じて看護師や医師に連絡を取ります。
この初動の段階では「逃げ遅れゼロ」を目標に、居室・トイレ・浴室など館内の全ての場所を職員同士で声を掛け合いながら巡回し、人が取り残されていないか確認することが大切です。
②入居者の避難誘導
続いて、状況に応じて入居者さんを安全な避難場所へ誘導します。
地震直後で建物が無事な場合は慌てて屋外に出ず建物内の安全な場所(落下物のないホール等)に一時避難させ、火災時や建物倒壊の危険がある場合は速やかに屋外へ避難します。
避難の際は職員間で役割分担を発動し、誘導係は「○号室のAさんを避難開始」、補助係は車椅子や歩行器を押す、など誰が誰を連れ出すか明確に決めて動くことが重要です。
あらかじめ決めた避難経路を使用し、非常口や通路の扉は揺れの直後に開放しておくとスムーズです。
避難中は余震や二次災害にも注意しつつ、安全な経路を迅速に移動します。
例えば地震で家具が倒れて通路を塞いでいる場合は別経路に切り替える、火災で煙が充満している場合は濡れタオルで口鼻を覆い低姿勢で移動するといった判断が求められます。
集合場所(避難先)に全員誘導できたら再度点呼を行い、入居者さん・職員の安否を最終確認します。
避難先では天候など状況に応じて毛布や簡易トイレ等の非常物資を活用し、入居者さんの体調に配慮して落ち着かせます。
なお、避難そのものに支障が出ない範囲で初期消火やガス元栓の遮断なども可能な限り実施し、被害拡大防止に努めてください。
③連絡体制
安全確保と避難が一段落したら、速やかに関係各所へ状況を連絡します。
まず必要に応じて119番通報し(火災発生時や負傷者発生時など)、消防・救急の指示を仰ぎます。
次に、施設管理者や本部への報告を行いましょう。
同時に入居者さんのご家族へ無事を連絡します。
ご家族が迎えに来たいと申し出る場合もありますが、周囲の道路状況や二次災害の危険性も考慮し、施設に留まった方が安全な場合は丁寧に説明して状況を共有します。
緊急連絡網は平時から整備しておき、職員・入居者さん家族の連絡先だけでなく、消防・警察、地域包括支援センター、協力医療機関、保健所、自治体担当部署などの緊急連絡先も一覧にしておきます。
固定電話が不通の場合に備え、公衆電話の場所や非常用携帯電話の準備、施設用スマホの常時充電なども確認しておきましょう。
また、非常時には情報が刻一刻と変化するため、職員間で無線機やSNSグループを活用してリアルタイムに情報共有する体制も有効です。
なお、避難所へ移動する場合には受け入れ先の担当者へ事前に連絡し、入居者さんの障害・疾患や必要物品について情報提供しておくと受け入れがスムーズになります。
④復旧手順
災害直後の危機対応が落ち着いたら、早期復旧に向けた対応に移ります。
まず施設の建物や設備の被害状況を確認し、安全に利用できるか評価します。
被害箇所は写真に記録し、破損があれば応急処置(ガラス窓にベニヤ板を打ち付ける等)を行いましょう。
その後、電気・水道・ガスなどライフライン復旧の見込みを自治体や業者に確認します。
不明な場合や長期化しそうな場合は、自治体や福祉避難所、他の協力施設との連携を検討します。
平時に結んだ相互援助協定があれば、それに基づき他施設からの物資提供や入居者さんの一時受け入れを依頼できます。
医療が必要な入居者さんについては協力医療機関と連絡を取り、必要なら入院や受け入れを相談します。
また、行政(市町村や都道府県)の災害福祉担当部署へ被害状況を報告し、人的・物的支援を要請します。
厚生労働省は大規模災害時に被災地の介護施設へ他地域から職員を派遣する仕組みを発動することがあるため、必要に応じて情報収集しましょう。
復旧作業では、まず重要業務の再開を優先します。
例えば調理設備が使えない場合は非常食で食事提供を継続する、トイレが使えない場合は簡易トイレを設置する、といった形で最低限のサービス提供を途切れさせない工夫をします。
その上で専門業者による建物点検や修理を順次依頼し、施設機能の全面復旧を目指します。
復旧段階でも職員の連携と役割分担を明確にしておき、誰が業者対応をするか、誰が入居者対応にあたるか等を決めておくと混乱を防げます。
こうした被害評価から復旧までの手順をあらかじめBCPに定めておくことで、実際の災害時にも迅速かつ適切なアクションが可能となり、入居者と職員の安全を確保しつつサービスを再開できます。
すぐに使えるチェックリスト・テンプレート
「いざBCPを作ろう」と思っても、何から書けば良いか戸惑う場合は、厚生労働省が公開しているBCP雛形(ひな形)やガイドラインを活用しましょう。参考:厚労省HP
厚労省のウェブサイトには、介護施設・事業所向けに「感染症編」「自然災害編」それぞれのBCP策定ガイドラインとひな形が掲載されています。
入所系(特養・老健・GH等)、通所系、訪問系など事業形態ごとに様式が用意されており、自施設の種別に合ったものを参考にできます。
雛形には基本的に盛り込むべき項目が網羅されていますが、そのまま使うのではなく各施設の実情に合わせて追記・修正することが大切です。
たとえば非常用備蓄品の量や避難先の詳細、職員の連絡網などは施設によって異なるため、雛形の該当欄に自施設の情報を書き込みカスタマイズしてください。
また、多くの自治体や業界団体も介護施設向けのBCP策定支援ツールや様式集を提供しています。
例えば静岡県ではチェックリストやBCP作成例をセットにした支援ツールを公開しており、誰でもダウンロード可能です。参考:静岡県HP
このようなチェックリストを使えば、自施設の備えで不足している点を洗い出す助けになります。
【チェックリスト項目の例】
- 非常用電源は確保しているか
- 安否確認の手段は複数用意しているか
- 想定する災害ごとに職員の役割分担は決めているか
- 感染症発生時の隔離室は確保しているか、等
漏れなく準備・計画ができるよう、ひな形やチェックリストを積極的に活用しましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
BCPの策定と災害時マニュアルの整備は、決して形式的な「書類作り」ではなく入居者さんの命と暮らしを守るための最前線の備えです。
近年の大規模地震や風水害、新型感染症の流行などを教訓に、介護現場では平時から最悪の事態を想定した綿密な準備が求められています。
非常時にも入居者さんの安全と生活を継続するには、職員一人ひとりが平常時から意識を高く持ち、訓練を通じて自分の役割と行動手順を身につけておくことが不可欠です。
幸い、国もBCP策定を支援するガイドラインや雛形を示しており、多くの施設で既に取り組みが進んでいます。
まだBCPを整備できていない施設も、本記事で述べたポイントや提供された雛形類を参考に、ぜひ職員皆さんで話し合いながら策定を進めてください。
計画策定後も定期的な訓練と見直しを続けることで、計画は実践力を持ったものへと成長します。
いざという時に備えた地道な努力は、入居者の安心・安全につながり、職員自身の命と生活をも守ることになります。
グループホームの職員一丸となってBCP策定と防災力向上に取り組み、万が一の災害時にも「いつも通り」の暮らしをできるだけ維持できるよう備えておきましょう。
それではこれで終わります。
「他にも【非常災害時の対応に関する研修】の資料をみてみたい!」という方は、コチラの記事をご覧下さい。【介護施設】非常災害時の対応に関する研修【研修資料一覧】
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
お知らせ①介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。
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