近年、地震や台風、豪雨といった自然災害に加え、停電や感染症など、さまざまな非常事態が発生しています。
訪問介護は、利用者さんの自宅を訪れてサービスを提供するという特性上、災害時に職員が単独で判断・対応する場面も少なくありません。
そうした中で、利用者さんと自分自身の命を守るために必要なのが「BCP(業務継続計画)」に基づく備えと行動です。
本記事では、災害の種類ごとの対応ポイントや、訪問介護ならではの注意点、日頃の準備と訓練の大切さについてわかりやすく解説します。
主要な災害の種類と特徴
日本は地震や台風、大雨など自然災害の多い国です。
これらに加えて停電や火災、感染症(新型コロナなど)といった緊急事態も想定しておく必要があります。
各災害の特徴と、訪問介護における対応のポイントは以下の通りです。
地震:
突然大きな揺れが発生します。
発災直後はまず自分と利用者さんの安全を確保し(身を低くする、落下物から身を守る等)、揺れがおさまったら状況を確認します。
建物の倒壊や家具の転倒、火災など二次災害にも注意しながら、避難経路の安全も確かめましょう。
地震対策・対応について詳しく知りたい方は、コチラの記事をご参照ください。
台風・大雨・洪水:
強風や豪雨による浸水・土砂災害が発生します。
災害発生前には利用者さん宅をできる限り片付け、豪雨時は避難勧告を確認するなど準備しておきます。
大雨警報・土砂災害警戒情報が出た場合、現場訪問の可否を慎重に判断し、安全が確保できなければ利用者さんやご家族に連絡して対応を検討します。
夜間や風の強い時間帯の移動は極力避け、安全なタイミングを待ちます。
台風・大雨・洪水への対策・対応について詳しく知りたい方は、コチラの記事をご参照ください。
停電:
地震や台風で電力が止まると、エレベーター停止、通信不通などが起きます。
懐中電灯や乾電池、モバイルバッテリーなどを常備し、業務連絡手段(携帯電話、無線機、伝言ダイヤル等)を複数準備しておきます。
サービス提供中に停電が発生したら、照明確保と避難行動を優先し、その後の業務をどう継続するか事業所と相談します。
火災:
訪問先で火災が起きた場合、迷わず避難誘導を最優先します。
自分と利用者さんが安全な場所へ避難したら直ちに119番通報し、建物が危険な状況であれば無理に消火せず逃げることを優先します。
火災報知器の設置確認や、利用者さん宅にある消火器等の位置を日頃から把握しておきましょう。
感染症:
新型コロナウイルスのような感染症拡大時には、職員全員の健康管理と衛生対策を徹底します。
訪問時にはマスク着用や手指消毒、距離確保などを行い、体調不良の職員は出勤停止とします。
利用者さんにも感染防止策を協力していただきます。
感染症BCPでは必要に応じてサービスの見直し・中断も検討しつつ、生活を維持するための最低限の支援を継続します。
災害発生時の基本的な行動フロー
災害が発生したら、慌てずに以下の ① ⇨ ⑦ ような順序で対応します。
時系列でまとめると分かりやすいです。
①自身の安全確保
災害直後はまず自分の身を守ります。地震なら「低く、頭を守り、動かない」などの安全行動を実施します。
②災害情報の収集
揺れや状況がおさまったら、テレビ・ラジオ・スマホ等で地震情報や警報・気象情報を確認します。二次災害(津波・土砂災害など)の情報も把握しておきます。
③事業所への報告
まず電話やLINEで上司・事業所に自分の安否を報告し、今後の指示を仰ぎます。事業所は安全確認や初期対応の判断(BCP発動の基準)を行います。
④職員間の安否確認
可能であれば他の職員や登録ヘルパーの無事も確認します。LINEグループや電話・災害用伝言ダイヤルなどで互いに連絡を取り合い、全員の安否を把握しましょう。
⑤利用者さんの安否確認
当日の訪問予定がある利用者さんや独居の利用者さんから優先的に連絡し、電話や訪問で安否を確認します。特に優先度の高い利用者(独居寝たきり、高齢者で一人暮らしなど)があればリスト順に迅速に確認を進めます。連絡がつかない場合は、家族やケアマネジャーにも連絡して協力を求めます。
⑥サービス提供の判断
利用者さんの状況を聞いて、緊急を要する場合はすぐに訪問または避難支援を行います。一方で道路が寸断されていたり二次災害の恐れがある場合は、訪問を控える判断も必要です。場合によっては一時的にサービスを中断し、行政や地域包括支援センターと連携して避難所支援などを行うこともあります。どちらの場合でも、利用者さんの安全を最優先に考え行動します。
⑦情報共有・報告
安否確認やサービスの中断・再開状況は、必ず記録して上司や関係機関に報告します。訪問後には状況をケアマネジャーやご家族にも連絡し、情報を共有しましょう。必要に応じて行政や他事業所と連携し支援を依頼します。
上記のように、災害発生後はまず自分と利用者さんの安全確保・安否確認を行い、その後にサービス継続の可否判断や支援活動を進めます。
平時に「安否確認シート」や「連絡方法リスト(携帯カード)」を用意しておくと、緊急時でもスムーズに対応できます。
訪問介護ならではの留意点
訪問介護特有の課題について考えていきましょう。
訪問介護は利用者さんの自宅にお伺いする形態のため、利用者さんの居場所が多様で職員は単独行動になりがちです。
例えば、事業所にスタッフ全員が集まるデイサービスなどと違い、ヘルパーは各自移動中または訪問先にいるため指示が届きにくい面があります。
そこで平時から以下の点に気をつけておきます。
携帯電話・連絡先の携帯:
全職員が利用者さん・ご家族・ケアマネ・地域包括・同僚などの連絡先をまとめたリストを常に携帯できるようにします。市町村によっては、災害時に介護事業所で連携して安否確認を行う協定を結んでいる場合もあります(例:藤沢市では震度5弱以上の地震や洪水特別警報時に安否確認依頼が行われます)。
連絡手段の多様化:
停電や通信障害に備え、携帯電話だけでなく災害用伝言ダイヤル(171)や無線機、衛星電話など代替手段を検討します。また、職員同士でLINEグループ(業務用でも個人用でも可)を作っておくと、災害時に互いの無事や状況を即座に共有できます。
利用者さんの特別な支援:
独居や要介護度の高い利用者さんは、特に災害に弱い場合があります。事前にこうした利用者さんをリストアップし、ご家族やケアマネジャーと避難計画を相談しておきます。訪問中に被災した場合は、利用者さんの身の安全を確保し避難誘導が可能かどうか判断します。必要ならば緊急時対応食の提供やトイレ誘導など、基礎ケアを優先して行います。
記録の徹底:
災害時には非常に多くの情報が飛び交うため、担当利用者さんの状態、行った支援内容はメモやスマホで記録しておきましょう。後からケアマネジャーに伝える際やサービス再開時の資料になります。
情報共有と連絡手段
災害時の報連相(報告・連絡・相談)は迅速かつ確実に行う必要があります。
以下、ポイントをお伝えします。
携帯カード・連絡チャート:
職員一人ひとりが胸ポケットに入る大きさの「携帯連絡カード」を作成し、自分の携帯電話番号や事業所の緊急連絡先をまとめておくと便利です。また、災害用伝言ダイヤル(171)やWeb171への登録方法、SNSやLINEーWORKSの使い方も日頃から確認しておきましょう。
連絡手段の使い分け:
電話がつながりにくい場合はSNSやメール、緊急時専用の一斉通報システム(「安否確認システム」等)がある事業所は活用します。なお、電話が完全に不通の場合は災害用伝言ダイヤルやアナログ無線機を活用することも検討します。
情報の集約と発信:
事業所では災害発生後に被害状況や対応状況をホームページ・SNS等で発信する体制を持つと地域住民にも安心感を与えられます。また行政や地域包括と連絡を密にし、地域の避難所で訪問介護サービスを提供する可能性なども早めに調整しておきます。
グループLINE・連絡網の整備:
普段から業務用のLINEグループやメールリストで情報共有する仕組みを作っておくと、災害時も全職員に一斉に連絡できます。例えば「BCP緊急連絡用」としてグループを用意し、災害時の動きや安否情報を共有するルールを決めておくと効果的です。
日頃からの備えと訓練
平時の準備こそ災害時の行動に直結します。
以下の対策を日頃から行っておくことで、いざという時の対応力が高まります。
緊急連絡リストの整備:
全職員が常に携帯できる緊急連絡先リストを作成し、利用者さん・ご家族・担当ケアマネージャー・地域包括支援センターなどの連絡先を必ず記載しておきます。定期的に内容を確認・更新し、新しい職員が増えたらすぐ共有しましょう。
ハザードマップと避難経路:
事業所には地域のハザードマップを掲示し、職員全員で避難場所や経路を共有します。利用者さんにもお住まいの地区の避難ルートを説明し、災害時の集合場所を確認しておくと安心です。
避難対象者の確認:
特にご家族のいない独居高齢者や身体の不自由な方は避難が難しい場合があります。そうした利用者さんをピックアップし、避難支援が必要かケアマネジャーと協議しておくことで、非常時にスムーズに支援できます。
備蓄(ストック):
最低でも被災後3日間を自力でしのげるよう、非常食・飲料水・生活用水・簡易トイレ・衛生用品(マスク、手指消毒液、トイレットペーパー等)を備蓄します。また、事業所にAEDや簡易救護セット、ヘルメットなどの緊急用具も用意しておきましょう。停電対策として乾電池・懐中電灯や携帯ラジオ、ガス復旧までの暖房・調理用具(カセットコンロとボンベ)も準備します。
設備・システムの点検:
事業所の耐震補強や家具の転倒防止策、サーバーのバックアップ体制の確認、非常用発電機の整備なども怠りなく行います。職員の自動車は常にガソリン満タンにしておくと、緊急時の移動手段になります。
研修と訓練:
BCPの内容を職員全員が理解し体得するため、定期的な訓練を行いましょう。具体的には救急救命講習の受講、災害想定の安否確認リハーサルや災害用伝言ダイヤルの利用訓練、避難訓練などです。実際の職員会議や研修の場でBCPの手順を確認し、課題を洗い出すことも重要です。地域の防災訓練に参加し、地元行政や他事業所との連携も深めておくと、災害時の動きがよりスムーズになります。
以上のような準備と訓練を平素から行っておけば、災害発生時にも戸惑わず対応できます。
訪問介護事業所の職員は災害時にも地域の大切な支え役です。
BCPに基づく対応を日頃から意識しておくことで、利用者さんの安全と安心した在宅生活を守り続けましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
災害はいつ起こるかわかりません。
特に訪問介護は、職員が現場で一人になることも多く、平時からの備えが安全確保のカギとなります。
BCPに基づいた行動手順や、安否確認・情報共有の仕組みを理解しておくことで、いざという時にも落ち着いて対応できるようになります。
また、利用者さんの命を預かる現場だからこそ、日頃の研修や訓練を通じて「自分がどう動くべきか」を常に意識しておくことが大切です。
地域の一員として、職員一人ひとりが災害対応力を高めていきましょう。
それではこれで終わります。
この研修資料が、御社の運営にお役立ていただければ幸いです。
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