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介護現場で高齢者虐待を防ぐには、「日々の関わり方の質」が大きな鍵を握っています。
中でも注目されているのが「パーソン・センタード・ケア」という考え方です。
これは、利用者さん一人ひとりの人生や価値観を大切にし、その人らしさに寄り添ったケアを行うことを重視します。
この記事では、パーソン・センタード・ケアの基本的な意味から、虐待防止につながる実践方法、そして現場での具体的な対応の工夫までをやさしく丁寧に解説していきます。
この記事を読むメリット
- 高齢者虐待を未然に防ぐ視点が身につく
- パーソン・センタード・ケアの実践方法がわかる
- 介護職としてのやりがいや自信が深まる
パーソン・センタード・ケアとは何か

パーソン・センタード・ケアとは、利用者さんを「一律の患者」や「ただの利用者」として扱うのではなく、その人自身の個性や人生の背景、価値観を大切にしながら支援するという考え方です。
もともとは1980年代末にイギリスの心理学者トム・キットウッド氏が提唱し、特に認知症ケアの理念として広まりました。
たとえ認知症の方であっても「何もわからない人」と決めつけず、これまでの暮らしや好みをふまえたケアを行います。
具体的な関わり方としては、以下のようなものがあります。
- 利用者さんを「ひとりの人間として尊重する」ことを軸にする
- 過去の暮らしや価値観に耳を傾け、「本当の気持ち」や背景を理解しようとする
- 認知症の症状も「何かを伝えたいメッセージ」として受け止め、先入観を持たずに対応する
このように、その人の「らしさ」に寄り添うことで、利用者さん自身が「自分は周囲から大切にされている」「尊重されている」と感じられるようになります。
この実感は「パーソンフッド(その人らしさの尊重)」と呼ばれ、心の安心感や生きがいを持った生活につながっていきます。
虐待防止とパーソン・センタード・ケアの関係
介護現場で虐待が起きる背景には、さまざまな要因が重なっているといわれています。
例:
- 人手不足や過重労働
- 教育・知識の不足
- 職員の精神的ストレス
- 利用者への無意識な偏見(例:「認知症だから仕方がない」など)
このような環境では、疲れや苛立ちから感情的な対応になりやすくなります。
またケアが雑になり、利用者さんの思いやニーズを無視してしまうことなども生じます。
パーソン・センタード・ケアの実践は、こうしたリスクを防ぐ考え方の一つです。
実際の調査でも、虐待が起きた理由として多く挙げられているのは「介護知識や技術の不足(6割以上)」と「職員のストレスや感情コントロールの困難」です。
つまり、職員が適切な知識を持ち、落ち着いた姿勢でケアできれば、無意識の偏見や感情的な対応による虐待を未然に防ぐことが可能です。
パーソン・センタード・ケアは、「どんな行動にも意味がある」と考えるため、信頼関係の構築にもつながり、利用者さんへの支援がより丁寧で温かいものになります。
パーソン・センタード・ケアの実践ポイント
パーソン・センタード・ケアを実践するうえで大切なのは、「その人らしさ」を尊重する姿勢です。
次のようなポイントを日々のケアで意識してみましょう。
声掛けの工夫:
目を見て名前を呼びながら声をかけることは、相手の存在を大切にする基本です。たとえば「○○さん、今日は気持ちいい天気ですね」といった言葉がけだけでも安心感につながります。急かしたり命令口調にならないよう、穏やかでやさしい話し方を心がけましょう。
尊厳を守る配慮:
プライバシーや本人の意志を尊重しながらケアを行うことも大切です。体位変換や着替え、食事介助などの場面では、利用者さんのペースや希望を優先し、「~しましょうか?」と確認を取りながら進めることが、敬意ある関わりにつながります。
意思確認と選択肢の提示:
「どちらがよいですか?」と選んでもらう場面を意識的に増やしましょう。服の色や入浴のタイミングなど、小さなことでも選択肢を示すことで主体性を支えられます。反応が鈍い場合はゆっくり話す、言葉を区切るなどの工夫も有効です。
安心できる環境づくり:
居室や共用スペースは、本人が落ち着けるよう配慮しましょう。思い出の品や好きな写真を置くことで安心感が得られ、混乱や不安の軽減にもつながります。照明や時計の位置にも配慮し、見当識を助ける工夫も忘れずに。
記録とチーム内の情報共有:
ケア記録には、性格・趣味・好み・関係性など、その人に関する情報も詳しく書き残します。「どんな声かけが効果的か」「どんな言葉を避けた方がよいか」などもチーム内で共有すれば、職員ごとの対応にムラが出ず、安心した支援が続けられます。
こうした小さな積み重ねが、利用者さんの安心と信頼を生み、虐待の予防にもつながっていきます。
事例紹介:パーソン・センタード・ケアで防げた虐待
ある特別養護老人ホームでの出来事。介護職員のAさんは、認知症の田中さん(84歳)の朝の入浴介助を担当していました。しかし、田中さんは突然強く拒否し始め、大声を出して抵抗しました。焦ったAさんは「早く浴室に来て!」「大丈夫だから座って!」と強い口調になってしまい、田中さんはますます混乱し、転倒しそうになりました。
そのとき、Aさんは以前先輩に言われた「名前を呼んで、目を見て話すだけでも相手の尊厳を大事にできる」という言葉を思い出します。そこで大きな声をやめ、田中さんのそばにしゃがみ、穏やかな声で「田中さん、どうしたの?つらいことがある?」と呼びかけました。田中さんは徐々に落ち着きを取り戻し、安心した表情を見せました。話を聞くと、実は腹痛とシャワーの冷たさが不安だったとのこと。Aさんはすぐに処置を行い、田中さんには少し休んでもらい、体調が落ち着いてから入浴の希望を聞いて再対応しました。
Aさんは「今日はお粥ですよ。食べたら、お風呂どうするか一緒に決めましょうね」と優しく声をかけ、田中さんは「お腹が痛かったんだよね」と自分でも納得し、笑顔で入浴することができました。
一方で、田中さんも「最初は怒鳴られて怖かったけれど、名前で呼ばれ、目を見て話しかけてもらったことで、私の気持ちをわかろうとしてくれていると感じた」と心を開くことができたそうです。Aさんが選択肢を提示してくれたことで、自分がまだ主体的な存在であると実感でき、安心して判断を任せられたと話しています。
このように、パーソン・センタード・ケアの視点を取り入れることで、ストレスや怒りが先走りそうな場面でも、虐待に至らずに利用者さんの尊厳を守るケアへと転換することが可能になります。
介護職自身が感情に気づき、対応を変えることが、虐待防止の大きな鍵となります。
虐待防止は「関わり方の見直し」から始まる
虐待を防ぐカギは、介護職一人ひとりの小さな関わりにあります。
日々の声かけや気遣いを積み重ねることで、問題行動が起こりにくい安心できる環境がつくられ、虐待的な対応を未然に防ぐことができます。
とくに大切なのは、「利用者さんを一人の人として尊重する」という姿勢を持ち続けることです。
例:
- 「認知症だから理解できない」と決めつけず、どう伝えればわかってもらえるかを工夫する
- 表情やしぐさ、反応からその人の思いや不安に寄り添おうとする
- ゆっくり丁寧に声をかけることで、相手との信頼関係を築いていく
こうした丁寧な配慮が、利用者さんの安心につながり、その人らしい暮らしを支えることになります。
おわりに
いかがだったでしょうか。
高齢者虐待の防止は、特別な方法ではなく、日々の小さな積み重ねから始まります。
「この人はどんな人生を歩んできたのか」「今、何を感じているのか」と想像し、尊重の気持ちをもって関わることで、自然と温かいケアが生まれます。
パーソン・センタード・ケアの視点を取り入れることで、利用者さんの安心感だけでなく、介護職自身のやりがいや喜びにもつながります。
これからも「その人らしさ」を大切にした関わりを実践し、虐待のない現場づくりを一緒に進めていきましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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