介護記録の書き方(例文あり)|すぐ使える記録のコツを解説
- 介護記録に時間がかかって悩んでいる方
- 何を書けばいいか分からない方
- 主観的な記録になってしまう方
- 読みやすい記録を書きたい方
- 新人指導や記録チェックをする立場の方
介護記録は、利用者さんの状態共有に欠かせない大切な業務です。
しかし「書くのが遅い」「何を書けばいいかわからない」と悩む方は多く、主観的で読みにくい記録になりがちです。
本記事では、13年の現場経験をもとに、記録のスピードと質を同時に高める「型」と「コツ」を解説。
誰が読んでも伝わる客観的な書き方を、すぐ使える例文とともに紹介します。
この記事を読むメリット
記録を書く理由│「ただの作業」から「ケアの武器」へ

業務の終わりにパソコンに向かい、「ええと、何を書こうかな……」と手が止まってしまう。
これは多くの介護職が経験することです。
しかし、介護記録は単に「義務だから埋める作業」ではありません。
私たちが日々書く記録には、極めて重要な3つの目的があります。
①多職種・チーム間の確実な情報連携
24時間体制の介護現場では、自分がいない時間の利用者さんの状態を正確に把握する必要があります。
②適切なケアの根拠(エビデンス)の証明
「なぜこのケアを行ったのか」を第三者(ご家族や監査機関)に説明するための公的文書になります。
③スタッフ自身の身を守る防衛策
万が一、転倒事故などのトラブルが起きた際、記録が正確に残っていれば「適切な観察と対応を行っていた」という最大の証拠になります。
「良い記録」が残せるようになると、次のシフトの仲間に最高のバトンを渡せるだけでなく、自分の「書く迷い」が消えて大幅な時短に繋がります。
やってはいけない「3つのNG記録」
まずは、現場で無意識に使われがちですが、今すぐ見直すべき「3つのNG表現」を確認しましょう。
❌ NG例1:【主観と感情の垂れ流し】
「夕食時、わがままを言ってスタッフを困らせる」
「わがまま」というのはスタッフ側の主観であり感情です。
これではご本人の状態が全く伝わりません。
❌ NG例2:【状況がイメージできない抽象表現】
「日中はいつも通り穏やかに過ごされる。変わりなし」
「いつも通り」は人によって基準がバラバラです。
体調低下やBPSD(周辺症状)の初期サインを見落とす原因になります。
❌ NG例3:【専門職らしからぬ言葉遣いや感情論】
「トイレを促すも、頑固に拒絶されたので諦めた」
「頑固に」「諦めた」といった言葉はプロの記録として不適切です。
ご家族が開示を求めた際に不信感を生む原因になります。
主観記録が招いたヒヤリハット
私がフロアリーダーをしていた頃の、苦い失敗談をお話しします。
ある日、若手スタッフが残した記録に「午後から機嫌が悪く、理由なく介護拒否あり」とだけ書かれていました。
次の夜勤帯のスタッフもその記録を見て「あぁ、今日は機嫌が悪いんだな」と思い込み、腫れ物に触るような対応をしていました。
しかしその夜、その利用者さんは居室で大声を上げて激しく暴れ、壁を叩くほどの大不穏に陥ってしまったのです。
翌朝、看護師がバイタルチェックと触診を行ったところ、実は「極度の便秘による激しい腹痛」が原因だったことが判明しました。
もし、最初のスタッフが「機嫌が悪い」という主観で片付けず、「3日間排便がない」「お腹を気にする仕草がある」という事実を記録していれば、夜勤帯で下剤の服用や排便コントロールができ、ご本人にこれほどの苦痛を与えずに済んだはずです。
この経験から、私は「主観の記録は、利用者さんのSOSを握りつぶす」ということを痛感しました。
すぐ使える「記録の3大鉄則」
プロフェッショナルとして、誰が読んでも10秒で状況が理解できる記録を書くための「3つの鉄則」です。
鉄則1:事実と主観の完全分離
「見たこと・聞いたこと(事実)」と、「自分の推測(主観)」を明確に分けます。
推測を書く場合は「〜の可能性あり」「〜と推察される」と言い回しを区別します。
鉄則2:5W1H(特に「なぜ:Why」の具体化)
「誰が、いつ、どこで、何を、どうしたか」を明確に。
特に「介護拒否」の際は、「スタッフが何を提案した時に、どういう拒否反応を示したか」というプロセスを省かないことが重要です。
鉄則3:「客観的な数値」と「生の声」の活用
「たくさん食べた」ではなく「主食8割、副食完食」。
「怒っていた」ではなく「『触るな!』との発言あり」と、数字と本人の発言をそのまま切り取ります。
【シーン別・すぐ使える】介護記録の書き方例文集
現場で毎日発生するシーン別の、そのまま使えるプロの例文です。
シーン1:食事・水分拒否
【状況】 昼食時、スプーンを押し返して一口も食べようとしない場合
例文: 11:45 昼食を提供。主食・副食ともにスタッフの手を押し返し、「いらない」と強い口調で拒否あり(生の声)。口内を確認するが傷や赤みは認められない(観察の事実)。「少し時間を置きましょうか」と声をかけ、12:15に再度食事を勧めると、主食5割、副食4割を自力摂取された。
シーン2:不穏・介護拒否
【状況】 夕方、おむつ交換を拒否してスタッフの手を叩こうとした場合
例文: 16:00 定時おむつ交換のため訪室。ズボンを下げようとした際、「触るな、泥棒!」と大声を出され、スタッフの右手を右手で叩く行為あり。環境を認知できていない様子(主観・推測)。一度布団をかけ直して退室し、15分後に担当スタッフを変更して訪室。「お腹が冷えていないか確認させてください」と声かけすると、抵抗なくおむつ交換に応じられた。
シーン3:転倒・体調変化(ナース・ドクター報告用)
【状況】 廊下で座り込んでいるのを発見し、怪我はなさそうな場合
例文: 03:15 巡視時、共用廊下にて〇〇様が尻もちをついて座り込んでいるのを発見。
【状態】意識は清明、自発語あり。「トイレに行こうとしたら滑った」と話される。外傷・出血・腫れは認められない。両足の自力挙上が可能で、関節の可動域にも制限や痛みの強い訴えはなし。
【対応】バイタル測定(BP: 132/78, P: 72, KT: 36.4℃)。看護師〇〇へ報告指示を仰ぎ、ベッドへ誘導。安休を促し、以降15分おきの訪室にて経過観察中。
ダメな記録をプロの記録へ!
現場のダメな記録を、鉄則を使ってプロの記録へブラッシュアップしてみましょう。
ワーク1
❌ ビフォー(ダメな例):
「夕方、帰宅願望がありウロウロされていて大変だった」
⭕️ アフター(プロの例):
17:00頃より「保育園に子供を迎えに行かなきゃ」とフロア内を早足で歩き回る様子(帰宅願望)あり。笑顔で「今、旦那様から『迎えに行った』と連絡がありましたよ」とお伝えし、お茶を勧めると「そうかい」と安堵され、ソファに座って15分ほどお茶を飲んで過ごされた。
ワーク2
❌ ビフォー(ダメな例):
「トイレで転びそうになって危なかったが、ケガはなかった」
⭕️ アフター(プロの例):
14:20 トイレ内での立ち上がり時、手すりを掴み損ねて前方へバランスを崩される。スタッフが後方から脇を支えて立位を保持したため、転倒は回避。壁や床への身体の衝突はなし。ご本人「あぁ驚いた」と言われるが、痛みや赤み、動揺の様子は見られないため、随時経過観察とする。
おわりに
介護記録の質を上げることは、決して「長くて立派な文章を書くこと」ではありません。
むしろ、余計な形容詞や主観を削ぎ落とした「短く、簡潔で、数字と事実が並んだ文章」こそが、最も美しいプロの介護記録です。
「型」が決まれば、パソコンの前で「どう書こう……」と頭を悩ませる時間はゼロになります。
サクサクと記録が終わり、定時でスッと帰れるようになれば、スタッフの心のゆとりが生まれ、結果として利用者さんへのより良いケアに繋がります。
正確な記録の積み重ねは、あなた自身の専門性の証明であり、施設全体の安全を守る大きな財産です。
ぜひ、今日のシフトの記録から「事実と主観の分離」を意識して、次の仲間に最高のバトンを繋いでいきましょう。
お知らせ①【介護事業所の必須研修資料一覧(2026年度版)】
介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。
お知らせ②【介護職の方へ!老後とお金の不安を解消する方法!】
介護職の仕事をしていると、低賃金や物価の高騰、そして将来に対する漠然とした不安がついて回ります。
特に独身の方は老後の生活費や年金に対する不安が大きいのではないでしょうか?
下記のブログは、そんな不安を解消するために実践すべき7つの方法です。
少しの工夫と努力で、将来の不安を減らし、安心した未来を作るための第一歩を踏み出してみましょう! 詳しくはこちらの記事をご覧ください。






