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緊急時対応

利用者さんが「けいれん」した場合の初期対応ガイド【緊急時の対応に関する研修】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設の【緊急時の対応に関する研修】の研修資料をタイとのような内容で記事にしました。
こんな方におすすめ
  • すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
  • 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
  • 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
  • 去年と同じ内容じゃまずいよな…
  • 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

けいれん(痙攣)は突然起こるため、介護現場では特に慌てやすい症状の一つです。

原因は脳の病気や発熱、低血糖、薬の副作用などさまざまで、決して珍しくありません。

でも発作が起きた際に正しい知識と手順を理解していないと、利用者さんの安全が守れないだけでなく、重大な事故につながる恐れもあります。

実際、発作中に無理に体を押さえつけたり口に物を入れたりすると、かえって危険を増やしてしまうことがあります。

そのため、介護職員としては「慌てず冷静に」「安全を最優先に」「観察と記録を確実に」という三つの基本姿勢を持つことが重要です。

本記事では、けいれん発作の主な原因と、発生時にどのような初期対応を取るべきか、また救急要請の判断基準について具体的に整理しました。

日頃から対応手順を理解し備えておくことが、いざという時に命を守る大きな力になります。

けいれんの主な原因

全身の痙攣

けいれん(痙攣)は脳の異常な電気活動によって生じる発作症状で、その原因はいろいろです。

今回は、主な7つの原因をお伝えします。

①てんかん

脳の慢性的な疾患で、繰り返し発作が起こる病気です。

②高熱(発熱)

小児に多い熱性けいれんのように、38℃以上の高熱が引き金となる場合があります。高齢者でも重度の発熱は発作の誘因になりえます。

③低血糖

血糖値が低下しすぎると神経細胞のエネルギー不足により発作を起こすことがあります(※糖尿病患者でインスリンや薬の過剰投与時などに注意)。

④脳出血

脳卒中(脳梗塞や脳出血)に伴い脳にダメージが生じると、その急性期症状としてけいれんが起こることがあります。

⑤感染症

脳炎や髄膜炎など脳・中枢神経の感染症、あるいは全身の重篤な感染症により高熱や代謝異常が起き、けいれんを誘発することがあります。

⑥薬の副作用・中毒

抗生物質や解熱鎮痛薬など一部の薬剤は発作を誘発することが知られています。また薬物やアルコールの過剰摂取・離脱によっても痙攣が生じる場合があります。薬の過剰や相互作用で低血糖状態となり発作に至るケースもあります。

⑦その他

外傷による頭部損傷、脳腫瘍、電解質異常、強いストレスや心因性の発作など、原因がはっきりしない場合もあります。

けいれん発生時の初期対応手順

利用者さんがけいれんを起こした際は、慌てずに次の①→⑦の手順で対応します。

  1. 周囲の安全確保
  2. 身体を押さえつけない
  3. 発作の観察と時間の計測
  4. 呼吸と意識の確認・気道確保
  5. 周囲への応援要請・情報共有
  6. 発作後のケアと観察継続
  7. 記録と医療者への報告

それぞれ具体的に解説していきます。

状況に応じて同僚とも連携し、利用者さんの安全を最優先に行動しましょう。

①周囲の安全確保

発作による二次事故を防ぐため、利用者さんをその場で横に寝かせ、周囲の危険物(家具や硬い物、尖った物など)を素早く取り除きます。

可能であれば頭の下に柔らかいタオルやクッションを入れ、頭部を保護します。

衣服の襟やベルトを緩め、メガネやヘアピンなど外せるものは外しましょう。

転倒していた場合は怪我の有無も確認します。

②身体を押さえつけない

痙攣している体を無理に固定したり揺すったりせず、自然に発作が収まるのを見守ります。

大声で呼びかけたり叩いたりする必要もありません(刺激を与えても発作が早く止まることはないため)。

また「舌を噛まないように」などと口に物を入れるのは厳禁です。

口に指やスプーン等を入れると歯が折れたり口腔内を傷つけ、嘔吐や窒息の原因になります。

発作中は安全に配慮しつつ静かに見守りましょう。

③発作の観察と時間の計測

発作が始まった時刻を確認し、痙攣の様子と持続時間を計測します。

可能であれば時計で秒数・分数を測り、痙攣の程度や体のどの部分がどのように動いているか(全身か一部か、手足の突っ張り具合、顔色や呼吸の状態など)注意深く観察します。

時間を測ることで、長引く発作への適切な対処(救急要請など)に役立ちます。

また、この観察情報は後述する記録・報告にも重要です。

④呼吸と意識の確認・気道確保

けいれん発作は通常数分以内に自然に治まります。

発作がおさまったら、利用者さんの呼吸状態を確認し、必要に応じて気道を確保します。

具体的には顎を軽く上げて気道を真っ直ぐ保つ、嘔吐物がある場合は横向きにして口腔内の内容物を出しやすくするなどの処置を行います。

特に食事中の発作で嘔吐があった場合は、顔や体を横向きにして吐物が喉に詰まらないようにすることが重要です。

発作直後は呼吸が乱れていることがありますが、通常は1~2分程度で正常に戻ります。

呼吸が戻った後も、意識がはっきり回復するまで安静に寝かせておきます。

大声で無理に起こそうとせず、自然に意識が戻るのを待ちましょう。

⑤周囲への応援要請・情報共有

発作対応中は可能な限り他の職員を呼んで協力を仰ぎます。

一人で対応している場合も、近くに職員がいれば助けを求め、必要なら看護師や上司にも速やかに連絡します。

緊急時はチームワークが大切です。

役割分担(誰が観察・記録するか、誰が救急連絡するか、他の利用者さんへの対応は誰が見るか等)を臨機応変に決め、周囲と連携して対応しましょう。

⑥発作後のケアと観察継続

痙攣がおさまって意識が戻った後も、しばらくは体調の変化を観察します。

発作後は眠気や混乱、身体のだるさが見られることが多いです。

そのまま眠ってしまった場合は、楽な姿勢を保ちつつ安全を見守ります。

頭部を打っていないか、ケガはないか、麻痺や言葉のもつれなど後遺症状が出ていないか確認します。

必要に応じて水分補給を促すなどケアします。

ただし、意識が朦朧としている間に飲食物を与えるのは厳禁です(誤嚥の恐れがあります)。

⑦記録と医療者への報告

落ち着いた後は、発作の状況をできるだけ詳しく記録します。

記録すべき内容は「発生日時」「発作の持続時間」「けいれんの様子(全身か一部か、どんな動きか)」「意識消失の有無とその時間」「呼吸の状態」「発作後の様子(会話の可否、麻痺の有無、眠り込んだか等)」「発作に至る直前の状況(活動や体調)」などです。

介護職員による客観的な観察記録は医師の診断・治療に非常に貴重です。

記録した内容を基に、看護師や主治医へ速やかに報告しましょう。

特に医師には発作の様子をできるだけ詳しく伝え、今後の対応(受診の要否や投薬の指示など)を仰ぎます。

介護記録やヒヤリハット報告書としても、今回の状況と対応を整理して残しておきます。

救急車要請の判断ポイント

けいれん発作時にどのタイミングで119番通報すべきか判断することも重要です。

以下のようなケースでは迷わず救急車を要請してください。

  1. 発作が5分以上続いて止まらない場合
  2. 発作が繰り返し起こり意識が回復しない場合
  3. 意識が長く戻らない場合
  4. 初めて発作を起こした場合
  5. 発作により負傷した場合

それぞれ、具体的にみていきます。

①発作が5分以上続いて止まらない場合

通常、てんかん発作の多くは数分以内に自然停止します。

しかし長時間にわたり痙攣が止まらない場合(目安として5分以上)、発作が重積している可能性が高く、速やかな医療介入が必要です。

脳や全身へのダメージを防ぐため、すぐに救急搬送を検討します。

②発作が繰り返し起こり意識が回復しない場合

最初の発作が治まった直後に意識が戻らないまま次の痙攣発作が起きるような時は、てんかん重積状態(status epilepticus)の疑いがあります。

短い間隔で次々と発作が続く場合も同様です。

このように発作が連続する状況は非常に危険なので、ただちに救急車を呼び医療機関で止める処置を受けさせてください。

③意識が長く戻らない場合

発作自体は止まっても、発作後に意識がいつまでも回復しない場合も緊急対応が必要です。

通常は発作後数分~十数分で意識は徐々にはっきりしてきます。

それにもかかわらず明らかな意識障害が続く場合や呼びかけに全く反応がない場合は、脳に何らかの異常が起きている可能性があります。

念のため医療機関で評価を受けるため救急要請を検討します(発作後に昏睡状態が続く、呼吸が回復しない等も同様)。

④初めて発作を起こした場合

利用者さんがこれまでにけいれん発作を起こした既往がなく、今回が初めての発作である場合は、念のため救急車で医療機関を受診することを優先します。

初回の発作は原因疾患が不明であることが多く、脳卒中や感染症など重篤な原因の可能性もあります。

医師による詳しい検査・診断が必要になるため、速やかに専門医療を受けられるよう手配します。

⑤発作により負傷した場合

発作中の転倒で頭を強打した、切創・骨折などの外傷を負った、あるいは発作による熱傷(ストーブに触れた等)や誤嚥の疑いがある場合は、怪我の治療や状態確認のため救急搬送を検討します。

特に頭部外傷の可能性があるときは、意識清明でも内出血の危険があるため念のため医療機関で診てもらうようにします。

上記の他にも、介護職員が少しでも「おかしい」「危ない」と感じた場合は躊躇せずに119番通報してください。

判断に迷う場合は先にかかりつけ医や看護師に電話で相談し、その指示を仰ぐ方法もあります。

発作が起こりやすい場面と注意点

けいれん発作は利用者さんの日常生活の様々な場面で突然起こり得ます。

特に以下のような場面では、発作時の事故リスクが高く注意が必要です。

  1. 入浴中
  2. 睡眠中
  3. 食事中

それぞれの状況ごとのポイントを押さえておきましょう。

①入浴中

浴槽内で発作が起きると溺水(おぼれ)事故につながる恐れがあります。

そのため、できるだけ一人で入浴させないことが原則です。

発作誘発の観点では入浴そのものが直接の原因となることは稀ですが、万一に備えましょう。

対策として、可能な場合はシャワー浴で済ませる、湯船に浸かる場合もお湯の量は少なめにして顔が沈まないようにするなどの工夫が有効です。

介助者は常に目を離さず見守り、発作が起こったら直ちに浴槽の栓を抜いてお湯を排水し、利用者さんの頭部が湯に浸からないよう支えます。

発作中は無理に体を動かさず、痙攣がおさまるのを待ってから安全に引き上げます。

入浴設備周辺の危険(浴槽の縁や蛇口で頭を打つ等)にも注意を払いましょう。

②睡眠中

就寝時にも発作は起こり得ます。

特に入眠直後(寝入りばな)に発作が起こりやすい利用者さんもいます。

発作中にうつぶせの姿勢になると気道が塞がり窒息する危険があるため注意が必要です。

対応策として、就寝前後の見守りを強化し、発作の兆候がないか確認します。

できれば利用者さんが入眠するまで誰かが様子を見守ることが望ましいです。

また、寝具は柔らかすぎず顔が沈み込まないものを使用する、必要に応じて体位交換や横向きで寝かせるなど窒息予防策を講じます。

ベッド柵や周囲のクッション材で転落防止とケガ防止の対策も行いましょう。

③食事中

食事中や食後すぐに発作が起こると、嘔吐による窒息や食物の誤嚥リスクがあります。

食事介助中に利用者さんが急に硬直・けいれんを始めたら、ただちに食事を中断し椅子の場合は安全に降ろすか寄りかからせ、頭を横に向けて吐物や唾液が気道に流れ込まないようにします。

義歯を使用している場合は外れて喉に詰まる恐れがあるため、可能なら発作前に外せると理想的です。

発作後、意識がはっきりするまでは飲食を再開させず、口腔内に残ったものがあれば除去してから姿勢を整えましょう。

また、食事中は誤嚥だけでなく誤嚥性肺炎のリスクも伴うため、発作が起きやすい利用者さんには食事形態の工夫(とろみをつける等)や見守り強化が必要です。

おわりに

いかがだったでしょうか。

けいれん発作は突然起きるため、現場では動揺や不安を感じることも少なくありません。

しかし大切なのは、利用者さんの命を最優先に「安全を確保する」「冷静に見守る」「状況を正しく伝える」という基本を守ることです。

発作自体は数分で自然に収まることが多いですが、中には重症の病気が隠れている場合や、緊急搬送が必要なケースもあります。

だからこそ、日頃から原因や対応を理解しておくこと、職員同士で連携できる体制を整えておくことが大切です。

また、けいれんは発作が起きた瞬間の様子や持続時間など、観察と記録が診断や治療に直結する貴重な情報となります。

介護職員の冷静な対応と丁寧な記録は、その後の医療につなげる橋渡しの役割を果たします。

日常の中で「もし起きたらどう動くか」を常にイメージしておけば、実際の場面でも落ち着いて行動でき、最悪の事態を防ぐことができます。

それではこれで終わります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有