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- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
私たちは日々多くの利用者さんと職員が関わります。
したがって、ひとたび感染症が発生すると施設全体に影響が及びます。
特に新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルスは高齢者の重症化リスクが高く、初動対応の遅れがクラスター発生につながる恐れがあります。
そのため、日常的な感染管理体制の整備と、発症直後からの迅速な行動が欠かせません。
本記事では、介護現場における感染症発症時の「初動(発症直後〜48時間)」「中期(3日目〜1週間)」「長期化(2〜4週間)」の各段階で、どのように対応すべきかをわかりやすく解説します。
現場での判断や職員研修の参考にご活用ください。
この記事を読むメリット
- 感染症発生時に慌てず行動できる知識が身につく
- 介護現場での感染拡大を防ぐ実践的なポイントを学べる
- BCP(事業継続計画)と連携した体制づくりの参考になる
では早速、みていきましょう。
基本的な感染管理体制と準備
ここでは「介護施設は絶対に必要」な、基本的な感染管理体制と準備について3つに分けてお伝えします。
①感染対策委員会の設置・BCP(事業継続計画)策定
厚生労働省の感染対策マニュアルやBCPガイドラインでは、感染症発生に備えて施設ごとに感染対策委員会を常設し、日常の予防策と発生時の行動計画を策定しておくことを求めています。事業継続計画には責任者や報告手順、代替体制を定め、従業員に周知します。
②基本的な予防策
手指衛生、マスク着用、こまめな換気、居室の清掃や消毒は通年で徹底します。インフルエンザ流行期には予防接種を早めに行い、ノロウイルス対策ではアルコール消毒が効きにくいため石けんと流水での手洗いを徹底します。
③健康観察と記録
日常から職員・利用者さんの体温や症状を記録し、異変があればすぐ報告する仕組みを作ります。以下の表は、発症の時期別に職員・利用者・家族への主な対応をまとめたものです。詳細は各章で解説します。
時期 | 主な対応(職員) | 利用者への支援 | 家族・関係者への対応 |
---|---|---|---|
初動(発症直後〜48h) | ・症状を報告し管理者と連携 ・感染者の居室隔離やゾーニング ・医療機関や保健所への連絡 | ・症状のある利用者を個室に移す ・必要なケアは専任職員が担当 ・飲食・排泄・入浴介助の変更 | ・発生状況を迅速に説明し、面会やサービス利用の制限について理解を求める |
中期(発症3日〜1週間) | ・継続的な健康観察と記録 ・汚染区域の環境清掃・消毒 ・必要に応じて人員補充やシフト調整 | ・利用者の心身の変化を観察し脱水や低栄養を防ぐ ・隔離生活のストレス緩和やリハビリ支援 | ・長期化の可能性や今後の見通しを説明。家族の不安に寄り添う ・面会は必要最小限としオンライン面会等を検討 |
長期化(発症2〜4週間) | ・職員のメンタルケアと交代要員の確保 ・後遺症や長引く症状への個別ケア ・通常業務との両立を図るためBCPを見直す | ・長引く症状(疲労・息切れ・味覚嗅覚障害など)に対し、医師やリハビリ専門職と連携しケア ・社会参加支援や生活機能の維持 | ・回復までの経過と支援策を随時共有 ・家族との連絡を密にし、必要に応じて在宅サービスや行政相談窓口を案内 |
初動(発症直後〜48時間)の対応
初動は、次の①⇒④の順で行動します。
①早期発見と報告
症状が確認されたら職員がすぐに管理者へ報告し、施設内の連絡体制に従って情報を共有します。
COVID‑19やインフルエンザは発症前日から感染性があり、発熱やだるさ、喉の痛み、頭痛、咳などの症状がみられます。
高齢者では典型的な発熱が出ない場合もあるため、呼吸器症状や食欲低下なども見逃さないようにします。
日頃から記録している健康情報をもとに発症時刻や症状を把握し、職員の体調不良も含めて記録・共有します。
②隔離・ゾーニングと感染拡大防止
隔離・ゾーニングには次のポイントを心がけましょう。
居室隔離:
発熱や咳嗽などの症状がある利用者さんは個室に移すか、同じ症状の利用者さん同士を同室にします。個室がない場合はベッド間を2m以上離すかカーテンで仕切ります。
ゾーニング・コホーティング:
感染者・濃厚接触者のエリアと未感染エリアを分け、専任の職員を配置する「ゾーニング」を行います。清潔区域と汚染区域の動線は完全に分け、物品の持ち出しを制限します。
個人防護具(PPE)の着用:
ケアに当たる職員はサージカルマスク、手袋、ガウン、アイシールドなどを着用し、ケア後は手洗いを徹底します。ノロウイルスの可能性がある場合は嘔吐物処理時に飛沫感染を考慮してマスクを着用します。
基本的なケア方法の変更:
食事介助は利用者の真正面を避け、排泄介助では専用トイレを使い使用後はアルコールや次亜塩素酸で消毒します。入浴は症状が落ち着くまで身体拭きに切り替えるか、最後に入浴させます。医療的処置は感染者から行い、移動は必要最小限にします。
清掃・消毒:
感染者が使用した部屋や共用部分をエタノールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、ドアノブや手すりなど高頻度接触面を重点的に清掃します。嘔吐物処理は濡れた布で覆って拡散を防ぎ、外側から内側へ拭き取り、次亜塩素酸で処理します。
③医療機関・保健所との連携
疑われる感染症に応じて協力医療機関や地域の相談窓口へ連絡し、検査や治療方針を確認します。
COVID‑19の場合は区市町村からの通知や厚労省の最新情報を参照し、必要に応じて公費検査を手配します。
医師は感染症法に基づき保健所へ報告し、重症化の恐れがある場合は入院や転院を検討します。
④家族・利用者への説明
感染の報告は早期に行い、施設内での対応策や面会制限について丁寧に説明します。
ご家族には電話やメール、オンライン面会で状況を伝え、過度な不安を軽減します。
利用者さんには感染症についてわかりやすく説明し、隔離や生活の変化に対する理解を得ます。
中期(発症3日目〜1週間)
初動対応後も数日間は新たな発症者が出やすく、施設内の環境管理と人員体制の維持が重要となります。
中期(発症3日目〜1週間)は、次の①⇒⑤の順で対応します。
①継続的な健康観察と記録
感染者・濃厚接触者やその他の利用者の体温・症状を少なくとも一日数回チェックし、状況を記録して職員間で共有します。
インフルエンザでは急な高熱や筋肉痛などが特徴ですが、高齢者は発熱が目立たないことがあるため、倦怠感や食欲低下にも注意します。
ノロウイルスでは嘔吐や下痢が強く、水分補給不足による脱水を防ぐ必要があります。
②環境整備・物品管理
感染エリアでは通常より頻繁に清掃・消毒を行います。
嘔吐物や排泄物があった場合は処理キットと次亜塩素酸を備え、処理後は十分な換気を行います。
リネン類や衣類はビニール袋に入れ、85℃以上で1分間以上加熱または塩素で消毒して洗濯します。
物資不足に備え、マスク・ガウン・手袋・消毒液を十分に在庫するよう確認します。
③人員確保とシフト調整
感染した職員は自宅療養を行い、解熱後も一定期間は勤務を控えます(インフルエンザでは発症後5日かつ解熱後2日経過後が目安。COVID‑19は5日間を目安に自宅療養し、症状が軽快した後もマスクを着用した上で勤務することが推奨されています)。
残る職員の負担が大きくなるため、法人内や地域から応援職員を依頼し、役割分担を明確にします。
また、持病や妊娠中など重症化リスクが高い職員は接触の少ない業務に配置転換します。
④利用者の心身への配慮
隔離生活が続くと利用者さんは不安や孤独を感じやすく、認知症のある方は混乱することがあります。
感染拡大防止を徹底しつつ、気分転換できるレクリエーションやリモート面会を導入し、心のケアを行います。
食事・排泄・睡眠のリズムを保つため、栄養士や看護師と連携し必要なエネルギーと水分補給を支援します。
ノロウイルスでは脱水が進みやすいため、こまめな水分摂取を促します。
⑤家族・行政との連携
感染状況や解除の見通しを家族へ継続的に報告し、利用者さんの状態を共有します。
複数の感染症が疑われる場合やクラスター発生の恐れがある場合は、保健所や行政と相談し、必要に応じて感染拡大防止策の強化やサービス利用制限の同意を得ます。
面会制限の継続やオンライン面会への切り替えは、家族の理解を得ながら行います。
長期化(発症2〜4週間)と後遺症への支援
最後に、長期化(発症2〜4週間)と後遺症への支援についてお伝えします。
次の4つのポイントを意識して行動しましょう。
①感染症の長期化・再発への備え
COVID‑19やノロウイルスは通常1〜2週間で回復しますが、高齢者や基礎疾患がある場合は症状が長引いたり再発したりすることがあります。
ノロウイルスでは症状が収まっても最大4週間程度便にウイルスが残り、入浴は最後に行うなど注意を続けます。
施設全体として新たな発症者が1週間出なければ終息とみなしてよいが、最終判断は感染対策委員会で行います。
②長引く症状(後遺症)への対応
COVID‑19では発症から3か月後も疲労、息切れ、関節痛、記憶障害、味覚嗅覚障害、睡眠障害など多様な症状が続くことがあります。
後遺症はWHOも「症状が少なくとも2か月持続し、他の原因がないもの」と定義しています。
長期化が疑われる場合は、主治医やリハビリ専門職と連携し、症状に応じた対応(呼吸リハビリ、栄養指導、心理支援)を行います。
本人の希望や生活背景を尊重し、社会参加や運動機能維持を支援します。
③職員のメンタルケアと業務継続
感染症対応が長引くと職員の疲労やストレスが蓄積します。
厚労省は通常時からストレスマネジメントの研修や相談窓口を設置するよう提案しており、長期化時には休息の確保や外部の応援体制を整えます。
BCPを見直し、感染者対応と通常業務が並行して行えるよう役割分担や交替勤務を検討します。
④家族への長期支援
長期化した場合や後遺症が残る場合、ご家族への情報提供と協力が不可欠です。
介護サービスの継続や在宅療養への切り替えの際には、地域包括支援センターや医療機関と連携して在宅サービスを案内します。
また、感染症状が軽快しても数週間は他の利用者さんへの感染リスクが残ることを説明し、外出や面会の際の注意点(マスク着用、手洗い、換気など)を伝えます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
介護施設で感染症が発生した際には、初動から48時間の迅速な対応がクラスター発生を防ぐ鍵です。
症状の早期発見と報告、隔離とゾーニング、PPEの着用、正しい消毒・清掃、ご家族への迅速な情報提供が基本です。
中期には、継続的な健康観察、環境整備、適切な人員配置、利用者さんの心理支援、行政との連携が必要です。
長期化した場合や後遺症がある場合は、医療・リハビリとの連携による個別ケア、職員のメンタルサポート、ご家族への継続的な支援が求められます。
感染症対応は感染症法や行政通知に沿って変化します。
常に厚労省や自治体の最新情報を確認し、事業継続計画を更新して、利用者と職員の安全を守りながらサービスを継続できるよう備えましょう。
それではこれで終わります。
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