とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。夜に徘徊する理由がわかれば、ムリに止めなくても事故は防げます
この記事はこんな方におすすめ
  • 夜勤で徘徊対応に悩んでいる介護職の方
  • 転倒や事故を防ぎたいと考えている方
  • 利用者さんの不安を落ち着かせたい方
  • 認知症ケア研修の資料をお探しの方
  • 現場の安全対策を見直したいリーダー・管理職

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護施設の夜勤では、認知症の方の徘徊が大きな負担になります。

スタッフが少ない中で「転倒したらどうしよう」「早く寝てもらわないと業務が回らない」という焦りは誰もが感じるものです。

でも無理に止めたり部屋へ戻そうとすると、不安やパニックを強め、重大事故につながる危険があります。

本記事では、限られた人数でも落ち着いて対応し、安全を守りながら不安を和らげる具体的な方法を解説します。

この記事を読むメリット

  • 徘徊の本当の理由が分かり、対応が楽になる
  • 事故につながるNG行動を避けられる
  • 夜勤でも実践できる具体的な対策が身につく

 

それでは早速みていきましょう。

夜勤帯の「徘徊」に潜むリスクと焦り

もうろうとしている高齢男性

静まり返った深夜のフロアで、幾度となく鳴り響く離床センサーの音。

そのたびに居室へ駆けつけ、「早く寝てください」とお願いするものの、またすぐに起き出して歩き始めてしまう。

夜勤スタッフの疲労と焦りはピークに達します。

でもプロとしてまず認識しなければならないのは、「徘徊」という言葉で一括りにされる行動には、必ず本人なりの『切実な理由』が存在するということです。

彼らはスタッフを困らせるために起きているわけでも、意味もなく歩き回っているわけでもありません。

不安、恐怖、痛み、あるいは過去の記憶からの強い使命感…。

「何かを探している」「どこかへ行かなければならない」という強い思い(SOS)が、行動として表れているに過ぎません。

この研修では、「どうすれば歩くのを止めさせられるか」ではなく、「どうすれば安全に歩いてもらい、安心して眠りについてもらえるか」という視点へ、リスクマネジメントの考え方をシフトさせます。

夜間帯にやってはいけない「3つのNG対応」

焦っている夜勤スタッフが無意識にやってしまいがちな、事故リスクを跳ね上げる「3つのNG対応」です。

❌ NG例1:部屋への閉じ込め・強い制止(スピーチロック)

「危ないから部屋から出ないでください!」「早くベッドに戻って!」と強い口調で制止する。

閉じ込められたという恐怖や、命令された屈辱感から激しいパニックを引き起こします。

無理に外へ出ようとして窓から転落したり、ベッド柵を乗り越えようとして頭から転落したりと、最も死亡・重傷リスクの高い事故を誘発します。

❌ NG例2:すぐ薬に頼る(過剰な服薬要求)

少し歩き回っただけで、「不穏なので眠剤(または不穏時薬)を飲ませていいですか?」とすぐに医療職へ指示を仰ぐ。

薬で無理やり動きを止めることは根本的な解決になりません。

むしろ、筋力が低下した高齢者に強い薬を使うと、翌朝まで薬の効果が持ち越され、日中のふらつきによる「大転倒」を引き起こす最大の原因になります。

❌ NG例3:暗闇での急な声かけ

暗い廊下を歩いている後ろから突然「〇〇さん!」と声をかけたり、懐中電灯の光を直接顔に向けたりする。

認知機能が低下している方にとって、暗闇での急な接触は「泥棒や暴漢に襲われた」という錯覚を生みます。

驚いた拍子にバランスを崩して転倒するか、身を守ろうとしてスタッフへの暴力行為に発展します。

「早く寝かせたい」という焦りが招いた転倒事故

私が過去にフロアリーダーを務めていた際、夜勤スタッフの「焦り」が招いた痛ましい骨折事故の事例をご紹介します。

ある夜、認知症の女性利用者さんが「家に帰る」と頻繁に居室から出てこられる状態でした。

夜勤スタッフはオムツ交換などの業務に追われており、「今は歩かれると危ないから、とにかく寝かせなければ」と考え、ご本人が出てくるたびに強引にベッドへ連れ戻し、布団をかけては急いで部屋を出るという対応を繰り返していました。

何度目かにベッドへ戻された後、ご本人は「閉じ込められる」という恐怖から完全にパニック状態に陥りました。

そして、ベッドサイドに敷かれていた離床センサーマットを「踏んではいけない障害物」と認識してしまい、それを飛び越えようとして大きくジャンプし、バランスを崩して転倒。

大腿骨頸部骨折という重傷を負ってしまいました。

この事故の最大の原因は、センサーマットではありません。

「本人の歩きたいというエネルギーを、無理やりベッドに縛り付けようとしたこと(動線を塞いだこと)」にあります。

夜勤における最大の鉄則は、「歩かせない対策」は事故の衝撃を大きくするだけであるということです。

歩きたいエネルギーを安全に発散させる「歩いてもらうための環境整備」こそが、真の事故防止策です。

なぜ夜に歩き回るのか?認知症特有の「4つの理由」

夜間に起き出してしまう理由を推測できれば、対応の引き出しは格段に増えます。

主に以下の4つの理由が考えられます。

理由1:日内リズムの狂い(昼夜逆転)

日中、車椅子に座ったままウトウトして活動量が少なかったり、日光を浴びていなかったりすると、体内時計が狂い、夜間に脳が覚醒してしまいます。

これは夜勤帯の努力だけでなく、日勤帯の活動量調整という「チーム連携」で解決すべき問題です。

理由2:生理的欲求の訴え(排泄・渇き・痛み)

「おしっこに行きたい」「喉が渇いた」「便秘でお腹が張って苦しい」といった生理的な不快感を、言葉でうまく伝えられないため、歩き回ることで訴えようとします。

理由3:環境の違和感と見当識障害(夜の恐怖)

暗闇、静寂、カーテンの隙間から見える影。

これらが認知症の方には「見知らぬ怖い場所」に見えます。

「ここは自分の部屋ではない、自分の家に帰らなければ」という見当識障害からの逃避行動です。

理由4:かつての生活習慣の再現(役割の記憶)

「これから夜勤に行かなければならない」「子供のお弁当を作らなければ」と、過去の生活習慣や仕事の責任感が鮮明に蘇り、行動を駆り立てているケースです。

【実践】事故を防ぐ環境対策と見守りのステップ

夜間徘徊に対し、スタッフの疲労を最小限に抑え、かつ安全に事態を収束させるための4つのステップです。

ステップ1:「動線の確保」と環境の最適化

無理に止めるのではなく、「歩くこと」を前提に環境を整えます。

廊下や居室の障害物(ゴミ箱や椅子)を片付け、つまずきを防ぎます。

また、暗闇の恐怖を和らげるため、足元灯(間接照明)をつけたり、トイレのドアに目立つ目印を貼ったりして、「安全なルート」へ自然に誘導します。

ステップ2:生理的欲求のファーストチェック

歩いている方を見つけたら、まずは正面からゆっくり近づき、

「〇〇さん、夜分にお疲れ様です。お茶を一杯飲みませんか?」

「よろしければ、先にお手洗いを済ませておきましょうか」と、生理的欲求を満たすアプローチを最優先で行います。

これだけでスッと眠りにつく方は意外と多いです。

ステップ3:役割の付与と付き合い(並走)

どうしても落ち着かない場合、フロアの安全な場所(ナースステーションの横など)に椅子を用意し、「実は今、書類の整理で困っていまして…〇〇さん、少しだけ手伝っていただけませんか?」とタオル畳みなどの役割をお願いします。

「自分は頼りにされている」という安心感が、徘徊の衝動を和らげます。

ステップ4:眠気を誘う「入眠の演出」

ある程度歩いてエネルギーが発散されてきたら、副交感神経を優位(リラックス状態)にするケアを取り入れます。

温かいホットミルクや白湯を提供する、背中をゆっくりと一定のリズムでさする(軽擦法)、おしぼりで温かい手浴をするなど、体が自然と「眠り」に向かう演出を行います。

夜勤スタッフを救う「魔法のフレーズ」

夜間の緊迫した場面で、ご本人のパニックをスーッと鎮めるプロのフレーズです。

ケース1:「仕事に行かなきゃいけないの!」と深夜に靴を履こうとする時

NG:「今は夜中の2時ですよ!仕事なんてとっくに退職してるでしょ!」

⭕️ プロ:「〇〇さん、こんな夜中からお仕事なんて本当にご苦労様です。でも、外は真っ暗で危ないですから、社長さんにお電話して、今日は朝までここで休ませてもらうように私が伝えておきますね。さぁ、暖かいお茶を飲みましょう」

本人の世界(仕事に行く使命感)を完全に肯定し、「私が代わりに手配する」と安心させます。

ケース2:何度も起きてきて「ここは自分の家じゃない、帰る!」と興奮している時

NG:「ここは〇〇さんの家ですよ!どこにも行けませんよ!」

⭕️ プロ:「自分の家に帰りたいですよね、よく分かります。でも今は夜遅くてバスも終わってしまったので、今夜だけはこの旅館(またはホテル)に泊まっていきませんか? 明日の朝、明るくなったら一緒に帰り支度をしましょう」

「帰れない」と否定するのではなく、「明日になったら帰れる」という未来の希望にすり替えます。

ケース3:他の方の部屋に入ろうとしてしまう(他室侵入)時

NG:「そこは他人の部屋だから勝手に入らないで!」

⭕️ プロ:「〇〇さん、お手洗いをお探しでしたか? こちらの部屋は物置になっていて危ないので、お手洗いは私がご案内しますね。こちらです」

「悪いことをしている」と責めず、「トイレを探していたんですよね」と理由を肯定して別の場所へ誘導します。

おわりに

夜間徘徊の対応において、夜勤スタッフが持つべき最も大切なマインドセットは、「早く寝かせようとするのをやめる」ことです。

認知症の利用者さんが歩き回るエネルギーは、言葉にならない「不安」の塊です。

それを力や薬で抑え込もうとすれば、必ず事故や不穏という形でしっぺ返しが来ます。

孤独で不安な夜のフロアで、彼らにとって唯一の頼みの綱は、私たち夜勤スタッフだけなのです。

「夜中に起きても、この人は怒らずに優しく声をかけてくれる」

「ここには自分の居場所があるんだ」

そういった安心感を1回1回のケアで積み重ねることこそが、最強の事故防止策になります。

「一歩も歩かせないこと」ではなく、「安全な環境で歩いてもらい、怪我をさせないこと」がプロのリスクマネジメントです。

チーム全体で情報を共有し、誰もが安心して朝を迎えられる夜間ケアを実践していきましょう。

お知らせ①【介護事業所の必須研修資料一覧(2026年度版)】

介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。

また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。

テレビ会議
介護事業所の必須研修資料一覧【2026年度版】介護事業所や施設には、いろいろな研修が必要です。でも「あれは必須研修だった?」、「あの研修は情報公表調査にのっていたっけ?」など忘れてしまうことがあります。そんな方の為に、介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。また、それに応じた研修資料もあげています。...

お知らせ②【介護職の方へ!老後とお金の不安を解消する方法!】

介護職の仕事をしていると、低賃金や物価の高騰、そして将来に対する漠然とした不安がついて回ります。

特に独身の方は老後の生活費や年金に対する不安が大きいのではないでしょうか?

下記のブログは、そんな不安を解消するために実践すべき7つの方法です。

少しの工夫と努力で、将来の不安を減らし、安心した未来を作るための第一歩を踏み出してみましょう! 詳しくはこちらの記事をご覧ください。

悩んでいる中年女性
このままじゃヤバい!介護職が抱える老後とお金の問題【不安解消の為の7つの方法】低賃金での生活が続き、物価は上がり続ける一方、将来に対する漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事は、そんな悩みを少しでも解消できるように節約・資産運用(iDeCo、NISA)・お金に関するセミナーの受講・ポイ活・中高年の婚活・副業・転職の7つについてお伝えします。...
ABOUT ME
tomoblog
介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有