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【介護施設】BCPの義務化|減算対象になるケースとならないケース

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。「知らなかった」では通用しません。
この記事はこんな方にもおすすめ
  • すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
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筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護事業所にとってBCP(業務継続計画)は、非常時に利用者さんの命とサービスを守る“現場の設計図”です。

2025年4月以降は未策定・片面のみ・運用不備・届出漏れ等で1~3%の減算や遡及返還のリスクがあります。

本記事では、減算対象になるケース/ならないケースを整理し、今日から整備できる実務ポイント(策定・周知・訓練・届出)までをコンパクトに解説します。

この記事を読むメリット

  • 減算の「地雷」がわかる
  • いま取るべき実務が明確になる
  • 経営リスクを数値でイメージできる

 

では早速、みていきましょう。

BCP策定義務化の背景と目的

講義の様子

介護現場におけるBCP(業務継続計画)の策定義務化とは、災害や感染症など緊急事態が発生してもサービス提供を継続できるよう、介護事業所にBCPの作成を義務づける制度です。

背景には、近年の大規模自然災害の頻発や新型コロナウイルス感染症の流行による事業中断リスクの高まりがあります。

特に2020年前後のパンデミックでは多くの介護施設でクラスター発生やサービス停止が相次ぎ、高齢者の命を守るため介護サービスの継続性確保が改めて重要視されました。

厚労省の調査でも「BCPを策定していた施設は、未策定の施設に比べて平均サービス停止期間が2.3日短かった」とのデータがあり、BCPの有無で非常時の対応力に差が出ることが示されています。

こうした教訓から、2021年の介護報酬改定で介護事業所のBCP策定が制度化され(当初は努力義務)、さらに2024年度の介護報酬改定によって2025年4月から本格的に義務化されました。

BCP策定義務化により、各事業所は平時から災害・感染症発生時の対応策を準備し、非常時でも利用者さんのケアを継続できる体制整備が求められています。

介護施設には要支援高齢者が多く暮らしており、サービス中断は利用者さんの健康・生命に直結します。

BCPは単なる書類ではなく、利用者さんの命を守るための備えとして欠かせない取り組みとなっています。

非常時にいかにサービスを継続し利用者さんと職員の安全を守るか。BCPはその具体策を示すツールであり、利用者さんやご家族にとっても安心材料となります。

なお、介護事業所が策定すべきBCPの内容は大きく分けて「感染症発生時対応のBCP」と「自然災害発生時対応のBCP」の2種類があります。

新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症対策BCPと、地震・台風・水害等の自然災害対策BCPの両面で、非常時でも必要なサービスを提供・早期再開できる計画を立てておく必要があります。

この両方を網羅して初めて「業務継続計画が策定できている」と評価される点に留意してください。

BCP策定義務化の制度概要(介護報酬改定と減算措置)

2024年度の介護報酬改定で、新たに「業務継続計画未策定減算」が導入され、(介護予防)居宅療養管理指導および特定(介護予防)福祉用具販売を除く全ての介護サービス事業所が対象となりました。

つまり通所系・入所(施設)系・訪問系・居宅介護支援など、ほぼ全てのサービスがBCP義務化の範囲に含まれています。

一部サービス種別には経過措置(猶予期間)が設けられていましたが、それも2025年3月31日で終了し、同年4月以降は全事業所に完全適用となっています。

減算の具体的内容は以下の通りです。

基本報酬の減額率:

施設系・居住系サービスは所定単位数の3%減算、その他のサービス(訪問系・通所系等)は所定単位数の1%減算。

(例)特養など施設サービスで月額100万円の報酬の場合、月に約3万円、年間で36万円の減収となります。訪問介護事業所で月額基本報酬300万円の場合は月3万円の減収(300万円×1%=3万円)となり、年間では36万円のマイナスです。

対象となる条件:

感染症対応BCPと自然災害対応BCPのいずれか一方でも策定していない場合、またはBCPは作成したが計画に沿った必要な措置(非常時体制の整備や職員研修等)を講じていない場合に、基本報酬が減算されます。言い換えれば、感染症BCP・自然災害BCPの両方を策定し、かつ計画に従った備えをして初めて減算を免れることができます。

経過措置:

2024年度中(~2025年3月末)については、各事業所が「感染症の予防及びまん延防止のための指針」(感染症対策マニュアル)と「非常災害に関する具体的計画」(非常時対応計画)を整備している場合、減算は適用されませんでした。ただし2025年4月以降は経過措置が終了し、正式なBCP(感染症・災害両対応)を策定していなければ減算対象となりますす。

サービス種別ごとの適用時期:

訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については当初経過措置により2025年3月31日まで減算が適用猶予されました(=2025年4月から適用開始)。施設系や通所系サービスについては2024年4月の制度施行時から減算対象サービスとなっています(ただし上記指針等の整備により猶予可能でした)。最終的に全サービスで2025年4月から減算措置が全面適用となった形です。

上記のように、BCP未策定による減算は介護事業所の収入に直接影響します。

「わずか1~3%」と思うかもしれませんが、年間で数十万円規模の減収となり得ます。

この減算は事業経営上無視できない額であり、「減算されても仕方ない」と放置することは極めて危険です。

さらに厄介なのは、BCP未策定が後日発覚した場合の遡及適用です。

例えば2025年10月の実地指導でBCP未策定が判明した場合、2025年4月まで遡って減算が適用され、過去半年分の報酬を返還しなければならなくなる可能性があります。

減算を回避するため、該当事業所は2025年3月15日までに「業務継続計画策定の有無」を所管行政へ届出(体制状況一覧表で“基準型”として報告)する必要がありました。

この期限までに届出がない場合、自動的に「未策定=減算型」とみなされ報酬がカットされます。

減算対象になるケース

次に、どのような場合に減算の対象となってしまうのかを具体的に整理します。

以下のケースに該当すると、介護報酬の基本部分が減額されます。

BCPを策定していない場合:

感染症時用・自然災害時用のいずれか一つでもBCPが未策定である事業所は減算対象です。両方とも未策定なのは論外ですが、片方だけでも欠けていれば「業務継続計画未実施」と見なされ減算されます。

策定したBCPが机上のみで実効性を欠く場合:

BCPを作成しただけで計画に沿った必要な措置を講じていない場合も減算対象となります。例えば「計画は作ったが、非常時用の備蓄品や発電機の用意を全くしていない」「職員に内容を周知せず訓練も実施していない」等、BCPの実施体制が伴っていない場合です。策定と運用は一体で求められるため、「作ったけど現場が何も知らない・動けない」状況では減算を免れません。

行政への届出上「未策定」と扱われる場合:

前述の通り、2025年4月の適用にあたって各サービス種別ごとにBCP策定状況の届出が求められました。指定権者(自治体等)への報告で「基準型」(BCP策定済)として届出をしていない事業所は自動的に「減算型」(未策定扱い)と見なされます。期限までに届出書類を提出しなかった、提出内容に不備があった等で未策定扱いとなった場合も減算が適用されます。

後日の監査で未策定が判明した場合:

仮に2025年4月時点では減算を免れていても、実地指導や監査でBCP未策定・未運用が発覚すると減算適用となります。しかも発覚時点からだけでなく初回適用時点(2025年4月)まで遡って減算されるため、過去にさかのぼって報酬を返還しなければなりません。一度減算対象となれば、その是正(BCP策定)が確認されるまで減算が続くことになります。こうした事態を避けるためにも、未策定の事業所は一刻も早くBCPを策定・運用開始することが肝心です。

減算対象とならないケース

逆に、適切に対応していれば減算を受けずに済むケースについて整理します。

ポイントは「BCPの策定・周知・訓練まで含めた包括的な実施」ができているかどうかです。

具体的には次の条件を満たしていれば、基本報酬の減算は適用されません。

感染症・自然災害それぞれのBCPを両方策定済み:

先述のように二種類の計画が求められるため、双方について自事業所のBCPを作成している必要があります。各BCPには非常時に提供サービスを継続・早期再開するための体制(優先業務の選定、代替手段、職員配置計画など)や手順を定めておきます。なお、施設によっては感染症編・災害編を一つにまとめた包括的BCPを作成している場合もあります(共通部分を一体化しつつ、初動対応等は事象ごとに記載)。形式はともかく、両リスクへの備えが網羅されていることが重要です。

BCPの内容が現場に周知され必要な準備が講じられている:

策定した計画を職員に周知し、必要な研修・訓練を定期的に実施していることが求められます。具体的には、職員全員が緊急時の自分の役割や初動対応手順を理解していること、非常時に備えた物資の備蓄や連絡体制の整備がなされていること、非常電源・非常食や感染防護具などの必要物資の用意も含め、計画に沿った備えが実行されている必要があります。計画の内容を平時から訓練し、非常時に机上の計画が実際に機能する状態にしておくことで減算を回避できます。

定期的な研修・訓練の実施と計画の見直しが行われている:

BCP策定後も年1~2回程度の訓練や研修を通じて計画の実効性を検証し、課題があれば改善していくPDCAサイクルを回していることが理想です。例えば机上訓練(シミュレーション)や実地訓練(避難誘導、感染発生を想定した対応訓練、安否確認の練習等)を定期的に行い、訓練後には職員で振り返り(反省会)を実施してBCPを更新・改善します。このように計画を定期的にアップデートしていれば、非常時にも有効に機能する「生きた計画」となり、運営指導などでも減算対象とはみなされません。厚生労働省も「策定したBCPの内容を従業員に周知し、必要な研修・訓練を定期的に実施すること」を義務の一環として明示しています。

行政への必要な届出を行っている:

各自治体(指定権者)へBCP策定の届出が必要なサービス種別では、所定の様式で期限までに「BCP策定済(基準型)」の届出を済ませていることも条件となります。該当サービス(多くの訪問系サービスなど)では、この届出をもって減算適用の有無が判断されるため、期限内に正しく提出していれば減算を回避できます。なお、居宅介護支援など一部サービスは届出不要ですが、その場合でも実態としてBCP策定・実施ができていなければ指導等で減算指摘を受ける可能性があるため安心は禁物です。

BCP策定・運用のポイント

BCP義務化に対応するには、単に計画書を作成するだけでなく策定から運用・見直しまで一連のプロセスを適切に回す必要があります。

研修資料的に、BCPの基本的な流れと重要ポイントを整理します。

BCP策定準備(リスク分析・方針決定):

まず自事業所を取り巻くリスクを洗い出します。地震・風水害など地域特有の自然災害リスクや、新型インフルエンザ等の感染症リスク、さらには大規模停電や職員の大量欠勤など様々な事態を想定し、業務への影響度や発生確率を分析します。その上で「非常時に何を最優先で守るか(優先業務の選定)」「どのような体制で最低限のサービスを維持するか(役割分担や代替手段)」など、BCPの基本方針を決めます。経営陣や管理者だけでなく現場職員も交えて検討し、実情に合った現実的な計画の骨子を作りましょう。

BCPの策定(計画書の作成):

厚生労働省が公開している「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン」や各サービス種別向けBCPひな形を参考に、具体的な計画書を作成します。ガイドラインには、平時の備えや緊急時の初動対応・連絡体制など盛り込むべき項目が詳しく示されています。また自治体のマニュアルや他事業所の事例も参考になります。計画には次の7項目のような内容を盛り込みます。

①重要業務の優先順位

どのサービス・業務を最優先で継続するか(例:入所施設なら利用者さんの食事介助や排泄支援を最優先等)。

②非常時の指揮命令系統と役割分担

緊急連絡網の整備、誰が指揮を執り誰が何を担当するか(代替要員のリスト含む)。

③非常時に必要な物資・設備の備蓄管理

食料・飲料水、簡易トイレ、常備薬、感染防護具、発電機・燃料などの備蓄方法と保管場所。

④複数の連絡手段の確保

固定電話不通時に備えて携帯電話、メール、SNS、災害伝言ダイヤルなど連絡手段を多重化する計画。

⑤ライフライン途絶時の対応手順

停電時の発電機使用方法、断水時の給水方法やトイレ処置、通信障害時の情報収集手段。

⑥利用者・家族対応計画

非常時の利用者避難誘導方法、安否確認の手順、ご家族への連絡方法。受け入れ先(他施設や病院)との連携計画。

⑦平時の体制整備

平時からの職員教育計画、訓練計画、物資点検スケジュール、定期的な計画見直し方法(後述のPDCA)など。

上記は一例ですが、自事業所の規模・サービス内容に応じて必要事項を取捨選択し、具体的かつ実行可能な計画書を作成することが重要です。

職員への周知・教育

完成したBCPは全職員に対して周知徹底します。単に文書を配布するだけでなく、平時から非常時の各自の役割を理解させる研修を行いましょう。例えば朝礼やミーティングで計画の概要を説明したり、非常時対応マニュアルを常に閲覧できるよう共有したりします。新人職員にもオリエンテーション等で教育し、誰もが緊急対応手順を知っている状態を作ります。また非常連絡網の情報(職員の緊急連絡先や家族連絡先など)は常に最新に保つよう心掛けます。

定期的な訓練・演習の実施:

厚労省は「必要な研修及び訓練を定期的に実施すること」を義務づけており、一般的には年1回以上、可能なら年2回程度の訓練実施が推奨されます。訓練は次の3つのパターンで実施します。

①机上訓練

災害発生を想定したケーススタディを職員で検討する(○月○日午後に震度6の地震発生との想定で、初動対応を時系列で書き出す等)。非常時に誰が何をすべきかを頭でシミュレートし、計画の妥当性を確認します。

②実地訓練

実際に避難誘導や非常連絡、安否確認の手順をやってみる。夜間想定訓練や、感染症発生を仮定した対応訓練(防護具の着脱演習やゾーニング設置訓練等)も有効です。訪問介護なら安否確認の電話訓練、通所介護なら送迎中に災害発生を想定した対応訓練など、サービス特性に応じた演習を実施します。

③他機関との連携訓練

地域の他施設や医療機関、行政と連携した合同訓練も有益です。他事業所への利用者受け入れ訓練や、自治体の防災訓練への参加などを通じ、地域全体で支え合う体制づくりにも努めましょう。

訓練実施後は必ず結果を記録し、参加者で振り返り(レビュー)を行います。「うまく機能しなかった手順はないか」「想定漏れの事態はなかったか」など課題を洗い出し、次回までにBCPやマニュアルを修正・改善します。この訓練 → 評価 → 計画修正というPDCAサイクルを回すことで、BCPはより実践的で“使える”ものになっていきます。

計画の維持・更新と継続的な改善:

BCPは「作って終わり」ではなく定期的に見直してアップデートすることが前提です。年次の事業計画見直しや介護報酬改定のタイミング、あるいは実際に災害・事故が発生した後など、折に触れてBCPを点検しましょう。組織変更や人事異動があれば連絡網や担当者の役割を更新し、設備の増設・移転があれば新たなレイアウトに即した避難計画に修正します。厚労省のガイドラインや業界団体から最新の知見が公表された場合には自施設の計画へ反映します。常に最新かつ最良の計画を維持することで、非常時にも迷わず行動でき減算も防ぐことができます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

BCP義務化は、単なる「減算を避けるための義務」ではなく、利用者さんの命と生活を守り、事業の継続性を確保するための投資と考えることが大切です。

策定や運用を怠れば、報酬減算など経営面での不利益だけでなく、災害や感染症時にサービスが止まり利用者さんを危険にさらすリスクがあります。

職員一人ひとりが趣旨を理解し、計画づくりに関わることで強い組織を育てられます。

厚労省などが提供する支援資料を活用し、研修や訓練を通じて計画を実効性あるものに磨き上げましょう。

BCPは緊急時の備えであると同時に、平時の業務改善や意識改革にもつながります。

減算回避の基本は「策定・訓練・見直し」。

前向きに取り組み、安心と信頼の介護体制を築くことが求められます。

それではこれで終わります。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有