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ノーマライゼーション(普通の生活の実現)の視点を取り入れることは、高齢者虐待防止につながります。
この記事では、高齢者虐待の基本と背景、ノーマライゼーションの理念、そして尊厳ある支援のポイントや具体的な実践例をわかりやすく解説します。
現場の実例を交えながら進めていきますので、自分のケアを振り返るヒントにしてください。
この記事を読むメリット
高齢者虐待とは?現場で起きやすい事例と背景

高齢者虐待とは、65歳以上の高齢者が家族や親族、介護施設の職員などから不適切な扱いを受け、権利や利益を侵害されたり生命・健康・生活が損なわれる状態を指します。
虐待には主に5つの種類があります。
身体的虐待:殴る・蹴るなど暴力行為でケガや痛みを与えたり、身体拘束など外部との接触を意図的に遮断する行為。例えば平手打ちや不要な身体拘束が該当します。
心理的虐待:脅しや侮辱、怒鳴り声、無視、子ども扱いする発言などで精神的苦痛を与える行為。利用者を人前で嘲笑したり、呼びかけを無視することも含まれます。
性的虐待:本人の同意なくわいせつな行為をしたり強要すること。介護中に不適切な接触をする、下品な冗談で羞恥心を与えることも含まれます。
経済的虐待:本人の資産を無断で使う、金銭管理を勝手に行い生活に必要なお金を渡さない等の行為。施設で利用者のお金を着服する、家族が年金を搾取するケースなどです。
介護・世話の放棄・放任:必要な世話を怠ること。食事や排泄介助をしない、薬を与えない、ケガを放置するといったネグレクト(介護放棄)が代表例です。
こうした虐待行為は、複数の種類が同時に起こることも少なくありません。
例えば「排泄の失敗を罰として着替えさせず放置し、さらに周囲に恥ずかしめるような悪口を言う」といったケースでは、身体的虐待(放置)・心理的虐待(暴言)・性的虐待(尊厳の侵害)が複合的に発生しています。
現場で起きやすい事例
忙しい介護の現場では、何気ない対応が虐待につながることがあります。
例えば、認知症の利用者さんにイライラして思わず強い口調で怒鳴ってしまったり、失禁した高齢者を不潔なまま長時間放置することは、尊厳を傷つける介護の典型例です。
また「どうせ分からないだろう」と決めつけて乱暴に着替えを行ったり、本人の前で悪口を言うことも心理的虐待にあたります。
介護スタッフが気づかぬうちにエスカレートしやすいのが、「この程度なら大丈夫だろう」という思い込みです。
「ちょっと叩いて注意した」「忙しいから後で世話しよう」といった小さな見過ごしが重なると、深刻な虐待状態になりかねません。
虐待が起きる背景
高齢者虐待は決して一部職員のモラルだけの問題ではありません。
現場では様々な要因が重なって虐待が発生しがちです。
厚生労働省の調査によれば、介護職員による虐待の原因は次のようになります。
教育・知識・介護技術の不足(56.8%)
職員のストレスや感情コントロールの問題(26.4%)
組織風土や人間関係の悪さ(20.5%)
人手不足や業務多忙さ(12.6%)
つまり、知識・研修不足や職場環境の問題が大きな原因なのです。
一例として、認知症の症状や対応方法を学んでいない職員が「嫌がらせをされている」と誤解して腹を立て、高齢者に暴言を吐いてしまうケースもあります。
あるいは自分の行為が虐待だと認識していないまま、不適切なケアを続けてしまう人もいます。
また、介護者自身の心身の疲弊も見逃せません。
慢性的な人手不足の中で、夜勤続きや重度の認知症ケアに追われてストレスが蓄積すると、心の余裕がなくなり不適切な対応に走りやすくなります。
利用者さんから暴言や抵抗を受けて感情的になる職員もいるでしょう。
こうした背景を理解し、職場ぐるみで支えることが虐待防止の第一歩です。
ノーマライゼーションの基本理念を理解する
ノーマライゼーションは、「障がいや高齢を理由に生活を分けず、誰もが当たり前の暮らしを送れる社会をつくろう」という考え方です。
1950年代にデンマークで始まり、今では介護や福祉の基本理念として広く知られています。
この考え方のポイントは以下の通りです。
- 高齢者や障がい者も、住み慣れた地域で自分らしく生活できること
- 健常者と同じように日常生活や文化を楽しめること(例:季節の行事や外出)
- 特別扱いではなく「普通の暮らし」を実現する工夫をすること
介護現場でも、「介護が必要=普通の暮らしを諦める」ではなく、「本人の意思決定を尊重する、残っている力を活かす、地域や人とのつながりを保つ」といった配慮が求められます。
ノーマライゼーションの根底にあるのは、「その人の尊厳を守る」という視点です。
この考え方は、虐待を防ぎ、より良いケアにつながる重要な土台になります。
ノーマライゼーションの視点で見る虐待防止
ノーマライゼーションの視点を持つことで、利用者さんを「当たり前の生活を送る一人の人間」として捉え、虐待を防ぐ意識が自然と高まります。
具体的には、次のような効果があります。
対等な人としての接し方が身につく:
利用者さんを同僚や家族のように考え、「自分がされたらどう感じるか」を基準に接するようになります。
例:食事を無理に口へ運ぶ、強い口調で急かすなどが不適切だと気づける。
生活視点で環境やルールを整える意識が生まれる:
「みんな21時就寝」ではなく、個々の生活リズムや希望を尊重する姿勢が育まれます。「効率優先」から「本人にとって自然かどうか」に考え方が変わるだけで、画一的・抑圧的なケアを減らせます。
権利擁護の意識が高まる:
入浴・排泄介助時に配慮した声かけや同意確認、プライバシー保護の大切さを実感できるようになります。認知症の方に対しても「意志を持った一人の人」として関わる意識が育ちます。
職場内で虐待につながる行為に気づきやすくなる:
スタッフ同士が「それって普通の生活から外れてない?」と声をかけ合い、不適切ケアを見逃さない風土が生まれます。
このように、ノーマライゼーションは「尊厳を守るケア」の土台です。
迷ったときは「これは利用者さんにとって当たり前の生活か?」と問い直すことが、虐待の芽を摘む大切な一歩になります。
職員が意識したい「尊厳ある支援」のポイント
事例紹介:ノーマライゼーションを意識したケアの実践
では、ノーマライゼーションを意識した事例を2つご紹介したいと思います。
グループホームに暮らす80代のAさん(要介護3・中等度認知症)は、もともと朝寝坊の習慣がある方でした。しかし、施設では一律に7時起床・8時朝食と決まっていたため、無理に起こされることがストレスとなり、不機嫌になったり朝食を拒むことが続いていました。職員も対応に困り、「わがままな人」という認識になりかけていました。
そんな中、ケアカンファレンスでノーマライゼーションの視点を取り入れて話し合いを行い、Aさんにとって「普通の生活」とは何かを見直すことに。以下のような取り組みが導入されました。
- Aさんの自然な起床時間まで無理に起こさない
- 朝食は起床後30分ほどゆっくりしてから提供
- 食事は好みのパンや果物を選べるように配慮
- 状況に応じて居室での朝食も可能にし、他の介助とのバランスを調整
- 起床時には「おはようございます」と笑顔で挨拶し、温かい雰囲気づくり
この対応により、Aさんは表情が穏やかになり、食事も自ら口にするようになりました。「全部食べられた」と笑顔で報告する日も出てきました。職員も気持ちに余裕ができ、チームで声を掛け合いながら介助の流れを調整するようになり、職場全体に良い変化が生まれました。
この事例から見えてくる大切な視点は、「これはその人にとって当たり前の生活か?」という問いかけです。従来の一律なやり方はスタッフの効率のためであり、利用者本人には大きなストレスを与えていた可能性があります。本人のペースや習慣に沿った支援は、尊厳を守るだけでなく、職員のストレス軽減にもつながるのです。
また、別の施設では、長年畑仕事をしていた利用者さんのために中庭に花壇をつくり、一緒に水やりを日課に取り入れました。体力的には難しい作業もありますが、「役に立てて嬉しい」「昔を思い出して楽しい」と利用者さんの表情が明るくなり、生きがいを取り戻すきっかけに。職員も「今日もお願いしますね」と頼る声掛けをすることで、その人の経験を尊重する関係が生まれています。
このような取り組みは、利用者さんの「生活者としての姿」を大切にする実践です。
無気力や問題行動の予防にもつながり、結果として虐待のリスクも減らすことができます。
ノーマライゼーションの視点を持ち、一人ひとりに合ったケアを考えることが、尊厳ある支援の第一歩です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ノーマライゼーションの視点で考える「尊厳ある支援」は、特別な魔法ではなく利用者さん一人ひとりにとっての“当たり前”を大事にすることだと分かります。
忙しい日々の中でも、「これは本人にとって尊厳が守られている対応か?」と問い続ける姿勢が、高齢者虐待の防止につながり、ひいては介護の質向上にも結びつきます。
ぜひ現場で日々のケアを振り返りながら、チームのみんなで尊厳ある支援を実践していきましょう。
利用者さんの笑顔と安心した表情が増えることが、何よりも私たち介護職員の喜びとなるはずです。
共により良いケアを目指して頑張りましょう!
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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