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プライバシー・個人情報

肖像権と個人情報保護法:介護施設で無断撮影が禁止される理由【プライバシー/個人情報の保護の取り組みに関する研修】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。同意がない利用者さんが映っている写真の使用は危険です。
この記事はこんな方におすすめ
  • すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
  • 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
  • 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
  • 去年と同じ内容じゃまずいよな…
  • 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

日常の何気ない場面にも、利用者さんの「プライバシー」と「尊厳」が関わっています。

スマートフォンで簡単に撮影・共有ができる時代だからこそ、写真や動画の扱いには特に注意が必要です。

善意で撮ったつもりの一枚でも、同意のない撮影やSNS投稿がトラブルや信頼低下を招くことがあります。

本記事では、介護施設における肖像権と個人情報保護法の基本をわかりやすく解説し、職員として守るべきルールや対応のポイントを紹介します。

利用者さんの安心と信頼を守るために、正しい知識と意識を身につけましょう。

この記事を読むメリット

  • 無断撮影がなぜいけないのか、法律と実例から理解できる
  • 介護現場で守るべきルールと具体的な対応がわかる
  • 信頼される施設づくりにつながる意識が身につく

 

早速みていきましょう。

写真や動画の取り扱いが重要な理由

高齢者を写真撮影している人

介護職員は利用者さんの身体や生活に深く関わるため、常にプライバシーや個人情報の扱いに注意を払う必要があります。

スマートフォンで日常の様子を手軽に撮影できるようになった一方で、個人情報の漏えいリスクも高まっています。

写真や動画には利用者さんの顔や生活の様子など、個人を特定できる情報が含まれており、不用意な扱いはプライバシー侵害につながる危険があります。

実際に、介護現場では無断撮影やSNS投稿によるトラブルが起きています。

利用者さんやご家族の同意を得ずに撮影・投稿すると、信頼を大きく損ね、施設運営にも影響を及ぼしかねません。

利用者さんの尊厳と安全を守ることが介護職員の最優先事項である以上、写真や動画の扱いには細心の注意が必要です。

無断で撮影や投稿を行うと、次のようなリスクがあります。

  • ご家族や地域からの信頼を失う
  • クレームや法的トラブルに発展する
  • 報道などで施設全体のイメージが低下する

こうした問題を防ぐためには、日頃から職員一人ひとりが「情報を扱う責任」を意識することが大切です。

撮影を行う際は必ず本人またはご家族の同意を得て、外部への共有や個人端末での保存は慎重に行いましょう。

肖像権とは?写真にうつるだけで「権利侵害」になる?

日本には「肖像権」を直接定めた法律はありませんが、裁判の判例では「勝手に撮影されない権利」や「撮られた写真を無断で公表されない権利」が法的に守られています。

つまり、肖像権とは本人の許可なく写真を撮られたり、公表されたりしない権利のことです。

介護施設では、利用者さんの写真を扱う際にもこの権利を尊重しなければなりません。

たとえ善意であっても、無断で撮影や投稿を行うことはトラブルの原因になります。

【肖像権の基本】

  • むやみに撮影されない権利
  • 撮影された写真を無断で公開されない権利

この2つが肖像権の基本となります。

本人やご家族の許可があれば撮影や公開は可能ですが、同意がない場合は避けるのが原則です。

どうしても撮影が必要な場合は、撮影状況や写真の使い方に細心の注意を払いましょう。

背後姿やぼかしなどで本人が特定できない写真であれば、肖像権の侵害とまではみなされない場合もあります。

肖像権の侵害は刑事罰にはあたりませんが、民事上の不法行為として損害賠償を求められる可能性があります。

一方で、人混みの中など「社会通念上やむを得ない範囲」で他人が写り込む程度なら、侵害と判断されない場合もあります。

しかし、介護現場では利用者さんの尊厳と信頼を守るためにも、「必ず同意を得てから撮影する」ことが最善策です。

写真・動画は個人情報?~個人情報保護法の視点から~

写真や動画には、顔・声・体型・しぐさなど「個人を特定できる情報」が含まれています。

そのため、これらは個人情報保護法上の「個人情報」として扱われます。

介護施設で利用者さんの写真や動画を扱う際は、法律に基づいた慎重な対応が求められます。

個人情報保護法では、事業者(施設や職員など)に対して、次のようなことが義務づけられています。

  • 利用目的をあらかじめ明確にすること
  • その目的を本人に伝え、同意を得ること
  • 取得した情報は、目的の範囲内でのみ利用すること

たとえば、「施設だより用」に撮影した写真を、許可なくSNSに投稿するのは違反になります。

これは利用目的を超えた使用にあたり、個人情報の漏えいとみなされるおそれがあります。

また、利用者さんが亡くなった後でも、その写真や動画は個人情報として保護される点も重要です。

写真や動画は一度拡散されると取り戻すことが難しく、慎重な管理が求められます。

さらに、撮影データの保管にも注意が必要です。

アクセス権を限定したり、スマートフォンやパソコンにはロックや暗号化を設定したりして、外部流出を防ぎましょう。

2022年の法改正では、個人情報の漏えいが起きた際の「報告義務」や「罰則」も強化されました。

つまり、写真や動画の安全管理は、法的にも厳しく求められる時代になっています。

施設の信頼を守るためにも、「撮影前の同意」「目的の明確化」「安全な管理」の3つを基本として、慎重な取り扱いを徹底しましょう。

無断撮影・無断使用がもたらすリスク

無断で写真を撮ったり、SNS・ブログなどに公開したりすることには、さまざまなリスクがあります。

主なものを整理すると次のとおりです。

個人情報保護法違反のリスク:
本人の同意を得ずに写真をインターネット上に公開すると、個人情報を勝手に第三者に提供したことになり、個人情報保護のルールに反するおそれがあります。

肖像権・人権侵害のリスク:
了解なく撮影・公開された場合、肖像権やプライバシーを侵害したと見なされる可能性があります。精神的な苦痛を与えたとして、損害賠償を求められることもあります。

施設・職員への処分リスク:
無断撮影は就業規則や施設のルール違反となり、注意・指導だけでなく懲戒処分の対象になる場合があります。利用者さんの顔写真をSNSに載せれば、事業者としての義務違反と見なされるおそれもあります。

高齢者虐待と疑われるリスク:
利用者さんの尊厳を傷つけるような写真・動画は、人格を尊重していない行為と判断されることがあります。場合によっては虐待と同様に、厳しい指導や処分につながる可能性があります。

施設の信頼失墜・行政上のリスク:
写真・動画の漏えいが起こると、施設への信頼は大きく下がります。クレームや賠償請求だけでなく、行政指導や報酬面での不利益につながることもあります。

さらに、プライバシーに配慮しない行為は、利用者さんやご家族に深い不信感や屈辱感を与えます。

一度トラブルになると、信頼を取り戻すには多くの時間と労力が必要です。

このように、無断撮影・無断使用には法律的にも業務的にも重大なリスクがあります。

「これくらいなら大丈夫」と考えず、決して軽い気持ちで行わないことが大切です。

撮影・利用するには「同意」が必須

多くの介護施設では、サービス契約時に「個人情報の取り扱いに関する同意書」を交わし、行事や広報用写真の掲載可否を確認しています。

同意を得る際は、次の点を明確にしましょう。

  • 「どのような目的で撮影するのか」(例:行事記録・広報誌掲載など)
  • 「顔が写ってもよいか」や「SNS・ホームページに掲載してよいか」など、公開範囲を具体的に説明する
  • 同意した人のみ写真を使用し、同意のない方の写真は公開しない

本人が認知症などで判断が難しい場合は、ご家族や成年後見人が同意を判断します。

また、撮影後に確認を取る場合でも、同意を得られなかった方の顔にはモザイク処理を行うなど、特定できない工夫が必要です。

同意は一度得たら終わりではなく、いつでも撤回できることを説明しておくことも大切です。

定期的に確認・更新を行い、内容が古くならないようにしましょう。

さらに、写真を外部に配布・掲載する前には、上司や広報担当者の承認を得るなど、複数人でチェックする仕組みを整えておくと安心です。

施設で守るべきルールとチェック体制

写真や動画の取り扱いに関するルールを明確に定め、全職員が共通の意識で行動できる体制づくりが重要です。

まずは、個人情報保護のルールを文書化し、全職員に周知しましょう。

次のような仕組みづくりが効果的です。

撮影時の確認体制:
撮影の目的を事前に報告し、必要に応じて許可を取得。顔出しNGの方は後ろ姿やぼかしで対応。

職員教育の実施:
定期的に研修を行い、肖像権や個人情報保護の基本を学ぶ。SNS利用時の注意点も共有。

情報管理の徹底:
撮影データや同意書は安全な場所で保管し、外部流出を防止。撮影日や撮影者を記録した「撮影記録簿」を整備しておく。

定期的な見直し:
ルールの運用状況を定期的にチェックし、問題があれば速やかに改善。

違反時の対応:
ルール違反が起きた場合はすぐに上司へ報告し、原因を調査して再発防止策を検討する。

また、施設内には個人情報保護を担当する委員会や責任者を設け、方針を定期的に見直す仕組みを整えておくとより安心です。

これらの取り組みを通じて、職員全員が「写真や動画も利用者さんの大切な情報である」という意識を持ち、組織全体で安全な管理を実現していきましょう。

職員が気をつけたい場面別の注意点

では場面別に注意点をお伝えしていきます。

どのような場面でも、「撮影前に同意を得る」「必要最小限にとどめる」「用途外で使わない」という基本を徹底しましょう。

行事・イベントでの撮影

イベント写真は楽しい思い出を残せる一方で、無断投稿などのトラブルが起こりやすい場面です。

  • 撮影前に参加者全員の同意を得る
  • 同意していない方は映らないように配慮
  • 顔が特定できる写真は、モザイク処理や後ろ姿での撮影にする

日常ケアの記録

転倒やケガの状況を記録するための撮影では、利用目的を明確にして説明することが大切です。

  • 同意を得たうえで撮影し、記録データは安全に保管
  • 入浴・排泄などプライバシーの高い場面では原則撮影しない
  • やむを得ず撮影する場合は、できるだけ距離を取り、写る範囲を限定する

職員個人のSNS投稿

スタッフ個人のSNSに利用者さんの写真を載せることは禁止です。

  • SNS投稿は個人情報漏洩・肖像権侵害につながる
  • 職員にはSNS利用ルールを明確に周知
  • 私的な写真でも、背景に施設関係者が写っていないか常に確認する

来訪者・家族による撮影

来訪者が無断で撮影しないよう、施設の入口や待合室に掲示を設置しましょう。

  • ご家族であっても、無許可で撮影・投稿するのは避ける
  • 撮影目的を確認し、できれば同意書を取るなどルール化する

トラブル・緊急時の撮影

暴言や暴力などのトラブル発生時には、証拠として撮影することがあります。

  • 撮影前に「撮影します」と伝える
  • 必要最小限の時間・範囲で撮影する
  • 撮影データは厳重に管理し、外部提供はしない

緊急事態での撮影

転倒や急変時の記録も、本人またはご家族への説明と同意が必要です。

  • 監視カメラ映像などと同様、必要最低限の利用にとどめる
  • 外部流出を防ぐため、安全な管理を徹底する

通院や外出時

施設外では、場所ごとに撮影の可否を確認します。

  • 医療機関や公共施設では撮影禁止の場合が多い
  • 外出先のルールを必ず事前に確認

職員間の会話

引き継ぎや業務連絡で利用者情報を話すときは、個人が特定されない工夫を。

  • 名前をイニシャルや記号に置き換える
  • 事例はできるだけ抽象的に伝える

認知症の利用者を撮影するとき

認知症の方は、撮影されたことを後から忘れてしまうことがあります。

  • 事前にご家族へ相談
  • 撮影後も本人の様子を確認し、不安がないか配慮

撮影機器の管理

業務で使用する端末は、個人のスマートフォンではなく施設の公式機器を使用しましょう。

  • 撮影データはクラウドや共有フォルダに移して管理
  • 端末内に長期間保存しない

繰り返しにはなりますが、どの場面でも共通するのは、

  1. 本人への同意
  2. 目的の明確化
  3. 安全なデータ管理

の3点です。

この基本を守ることが、利用者の尊厳と施設の信頼を守る第一歩です。

【事例紹介】実際に起きたトラブルとその教訓

では実際の事例を2つ紹介します。

事例1:職員による無断投稿トラブル

2024年、ある介護施設でスタッフが入居者の介護中の様子を無断で動画サイトに投稿しました。

映像には入居者の顔や職員の発言(愚痴など)が含まれており、ご家族から強い抗議を受けました。

この行為は、本人やご家族の同意を得ずに撮影・公開したもので、肖像権やプライバシーの侵害と判断され、施設の管理体制の不備も問われる結果となりました。

事例2:家族による無断撮影とSNS投稿

別の施設では、利用者のご家族が施設内で無断で録音・録画を行い、その映像をSNSに投稿したケースがありました。

裁判では、これがプライバシー侵害にあたると認定され、投稿の削除と損害賠償が命じられました。

このケースからも、ご家族であっても無断撮影は許されないこと、また施設側がご家族にもルールを丁寧に説明しておく必要があることが示されました。

教訓と対策

これらの事例から学べるポイントは次の通りです。

  • 撮影・公開の前には、必ず本人やご家族の同意を得ること
  • 同意があっても、利用目的を超えた使用はしないこと
  • 写真や動画の取り扱いルールを職員全体で再確認すること
  • 万一誤って撮影してしまった場合の対応手順を事前に定めておくこと

写真や動画の扱いには、法的責任と倫理的責任の両方が伴います。

何か迷いや不安がある場合は、上司や専門家に相談して確認を取り、誤解やトラブルを未然に防ぐ姿勢が大切です。

おわりに

いかがだったでしょうか。

写真や動画は、利用者さんの大切な「個人情報」であり「人生の一部」です。

無断での撮影や公開は、法律違反となるだけでなく、信頼関係を深く傷つける結果にもつながります。

小さな配慮の積み重ねが、利用者さんの安心を守り、施設全体の信頼を築きます。

日々の業務の中で「これは大丈夫かな?」と感じたときこそ立ち止まり、確認と報告を忘れないようにしましょう。

プライバシーを尊重する姿勢が、より良い介護につながります。

それではこれで終わります。

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