とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。バイタルの数字だけに頼らず「違和感」に気づく力を養い、異常の見逃しを防ぐための実践的な方法をお伝えします。
この記事はこんな方におすすめ
  • バイタル測定が作業になっていると感じる方
  • 研修の資料をお探しの方
  • 新人・経験の浅い介護職員
  • 夜勤や少人数体制で働く方
  • ヒヤリハットを減らしたい現場リーダー

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護施設の朝、日勤スタッフは血圧や体温などのバイタル測定を行います。

日常的な業務ですが、慣れによって「状態の観察」よりも「記録を埋める作業」になりがちです。

本来、バイタルサインは高齢者が発する大切なSOS。

数字だけを見て判断するのではなく、表情や様子も含めて異変に気づくことが重要です。

今回は、急変のサインを見逃さないための視点と基本を分かりやすく解説します。

この記事を読むメリット

  • 見逃しやすい異常のサインが分かる
  • 数字に頼りすぎない観察力が身につく
  • 現場で使える判断と報告のコツが分かる

 

それでは早速みていきましょう。

「バイタル測定」ただの記録になっていませんか?

高齢者の血圧を測っている女性介護士

「早くバイタルを測り終えて、離床や排泄介助に入らなければ」という焦りから、利用者さんの顔をろくに見ず、腕にマンシェット(血圧計の腕帯)を巻き、指にパルスオキシメーターを挟んで、ピピッという音が鳴ったら手元の端末に入力して次へ行く……。

思い当たる節はないでしょうか。

バイタル測定が作業化すると、「異常値が出た時だけ対応すればいい」という極めて危険な思考に陥ります。

しかし、人間の身体は機械ではありません。

数字が正常値の範囲内であっても、身体の中では重大な異変が進行していることが多々あります。

リスクマネジメントにおけるバイタル測定の真の目的は、「数字を記録すること」ではなく、「今日の数字と本人の様子から、この後のケアを安全に提供できるか(入浴してもよいか、食事を提供してもよいか)を評価(アセスメント)すること」です。

最も見落としがちな「5つ目のバイタルサイン」

一般的なバイタルサインといえば、「体温」「血圧」「脈拍」「血中酸素飽和度(SpO2)」の4つが基本です。

しかし、実はもう一つ、医療・介護の現場で極めて重要な「5つ目のバイタルサイン」があります。

それが「呼吸(回数・深さ・リズム)」です。

なぜこれが介護現場で見落とされがちなのでしょうか。

理由は単純で、「機械が自動で測ってくれないから」です。

血圧やSpO2は機械を取り付ければ数字が出ますが、呼吸はスタッフ自身の目で見て、耳で聞いて数えなければなりません。

そのため、意識的に観察しようとしなければ、すっぽりと抜け落ちてしまうのです。

高齢者において、呼吸の異常は極めて重大な疾患のサインです。

呼吸回数が多い(1分間に20回以上、ハァハァと浅く早い):

肺炎や心不全、極度の脱水などが疑われます。

呼吸の深さ・リズムの異常:

肩を上下させて息をしている(肩呼吸)、息を吸うときに小鼻がピクピク動く(鼻翼呼吸)、喉元がペコペコへこむといった様子があれば、気道が閉塞しかけている、あるいは呼吸状態が限界に達しているサインです。

「SpO2が95%あるから大丈夫」と機械の数字だけで安心せず、胸の動きや呼吸音という「目と耳で得る情報」を絶対に怠らないでください。

バイタル異常を見逃してしまう3つのNGパターン

現場のスタッフが悪気なく陥ってしまう、バイタル異常を見逃す典型的な「3つのNGパターン」を共有します。

NGパターン1:ベースライン(普段の数値)の無視

「体温37.0℃、血圧130/80だから正常です」と報告してくるスタッフがいます。

確かに一般論としては正常値の範囲内です。

しかし、その利用者さんの普段の平熱が35.5℃だとしたらどうでしょうか。

37.0℃は「プラス1.5℃の高熱」であり、体内で何らかの感染症(尿路感染症や誤嚥性肺炎など)が起きている強力なサインです。

「一般論の正常値」ではなく、「その人にとっての正常値(ベースライン)」と比較しなければ、測定の意味がありません。

NGパターン2:機械のエラーへの慣れ(自分都合の解釈)

冬場など、パルスオキシメーターでSpO2が85%という異常値が出た時、「ああ、手が冷たいからうまく測れないだけだよね」と軽く指先をさすって、数字が90%台に上がるのを見て「よし、大丈夫」と自己完結してしまうケースです。

本当に末梢の冷えが原因であることも多いですが、「冷えのせいだろう」という思い込み(自分都合の解釈)は非常に危険です。

別の指で測り直す、耳たぶで測れる機器を使う、あるいは深呼吸を促しても数値が上がらない場合は、心疾患や呼吸器疾患を疑うべきです。

NGパターン3:報告の遅れ(自己判断)

「血圧が上が90だけど、まあギリギリ正常値だし、様子を見よう」

「少し脈が速いけど、本人はケロっとしているから報告しなくていいか」

と、現場の介護職が自己判断で看護師への報告をストップしてしまうパターンです。

これは医療職と介護職の連携において最大のリスクとなります。

「迷ったら報告する」が鉄則です。

事例:数値が正常という安心が、ヒヤリハットを招く

ある日の朝のバイタル測定でのことです。

私が担当した〇〇様(80代男性)の測定結果は、体温36.5℃、血圧125/75、脈拍70、SpO2 96%でした。

数値上は「完璧な正常値」であり、介護ソフトに入力してそのまま朝食へご案内しても何の問題もないデータです。

しかし、私は〇〇様の顔を見た瞬間、強烈な「違和感」を覚えました。

普段は「おはよう!」と張りのある声で挨拶してくださるのに、その日は視線が少し虚ろで、生返事しか返ってきません。

さらによく見ると、額にうっすらと嫌な汗(冷や汗)をかいており、顔面がわずかに蒼白に見えました。

機械の数字はすべて正常。しかし、目の前にいる人間の状態は明らかに「異常」でした。

私は即座に朝食への誘導をストップし、看護師を呼びました。

看護師が駆けつけ、聴診器を当て、詳細な問診を行った結果、心筋梗塞の初期症状(胸の違和感を本人がうまく訴えられていなかった)であることが疑われ、すぐに救急搬送となりました。

結果的に、早期発見であったため大事には至りませんでした。

もしあの時、私が「数字が正常だから大丈夫」と機械を盲信し、そのまま食事を提供していたら…。

想像するだけで背筋が凍ります。

血圧計や体温計は、あくまで「点」の情報しか教えてくれません。

顔色、声のトーン、活気、皮膚の温度といった「面(全体像)」の情報を捉えることができるのは、私たち介護職の「目」と「直感」だけです。

異常を見逃さない!現場で守るケアの鉄則3つ

こうした見落としを防ぐため、現場ですぐに実践し、徹底すべき「3つの鉄則」を挙げます。

機械を見る前に、まずは利用者の「顔」を見る

病室や居室に入ったら、いきなり腕を掴んで血圧計を巻くのはやめましょう。

まずは「〇〇さん、おはようございます」としっかり顔を見て挨拶をしてください。

  • 顔色は悪くないか(チアノーゼ、蒼白、紅潮)
  • 表情に苦痛はないか、声に張りはあるか
  • 呼吸は荒くないか

機械のスイッチを押す前に、この数秒の「視診(目で見る観察)」を行うだけで、見逃しのリスクは激減します。

必ず「普段の数値(ベースライン)」と比較して評価する

毎日の業務に入る前、必ず担当利用者の「ベースライン」を頭に入れておきましょう。

「この方の平熱は36.0℃だから、37度を超えたら看護師に報告しよう」

「血圧はいつも150台で高めだから、逆に110を切ったら注意が必要だ」

数字は単体で見るのではなく、昨日までのデータと比較して初めて意味を持ちます。

報告は「数値+自分の観察(主観)」をセットで行う

看護師やリーダーに異常を報告する際、「血圧が140でした」という数字だけの報告では、緊急性が伝わりません。

必ず「現場での観察」をセットにして伝えます。

良い報告例:

「〇〇様の血圧が140/90でいつもより20高いです。それに加えて、顔面が紅潮しており、普段より口数が少なく『頭が重い』と仰っています」

客観的な数字に、現場でしか気づけない主観的な観察(違和感)を添えることで、医療職は正確なアセスメントを下すことができます。

おわりに

バイタルサインの測定は、決して単なる「数字の穴埋め作業」ではありません。

それは、利用者さんの命を守るための最前線の防衛線であり、介護職と医療職を繋ぐ最も重要な「共通言語」です。

私たち介護スタッフに求められているのは、正確に機械を操作できる「測る人」になることではなく、日々のささいな変化に気づき、「今日はいつもと何かが違う」と評価(アセスメント)できる「プロフェッショナル」になることです。

「機械の数字は正常だけれど、なんとなくおかしい」 この現場の直感は、時にどんな精密機械よりも正確に命の危機を知らせてくれます。

その「違和感」を自分の中だけで握り潰さず、チーム全体で共有し、確認し合える風通しの良い組織づくりこそが、最強のリスクマネジメントと言えます。

明日の朝のバイタル測定から、ぜひ機械の画面を見る前に、目の前の利用者さんの「顔」をしっかりと見つめることから始めてみてください。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有