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認知症及び認知症ケア

BPSDとは?“困った行動”への正しい理解と接し方【認知症ケア研修の資料】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。【認知症及び認知症ケア に関する研修】を、タイトルのような内容でお伝えします。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護の現場では、認知症の利用者さんが突然立ち上がって出口に向かおうとしたり、職員に対して強い口調で怒鳴ったりする場面に出会うことがあります。

そんな時「どう対応したら良いのだろう?」と戸惑い、不安になるかもしれません。

しかし、こうした困った行動の多くは認知症に伴うBPSD(行動・心理症状)と呼ばれる症状です。

BPSDは認知症ケア研修でも重要なテーマの一つであり、正しい理解と接し方を身につけることで、利用者さんにも職員にも穏やかな時間が増えていきます。

この記事では、BPSDの定義と種類、行動パターン別の具体的対応例、ガイドラインに基づく対応方法、観察のためのチェックリスト、よくある誤解とその修正、そしてケアを行う職員の心構え・ストレスマネジメントまで、やさしい言葉で網羅的に解説します。

BPSDの定義と特徴

認知症で混乱しているおじいさん

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とは、認知症の中核症状に付随して現れる行動面・心理面の様々な症状のことです。

日本語では「認知症の行動・心理症状」とも呼ばれ、中核症状(記憶障害や見当識障害など脳の直接的な障害による症状)に対し、BPSDは周辺症状とも言われます。

例えば、徘徊(あてもなく歩き回る)、暴言・暴力(攻撃的な言動)、幻覚・妄想(見えないものが見える、「物を盗まれた」など根拠のない思い込み)といった症状がBPSDに含まれます。

BPSDには他にも、不安や抑うつ、昼夜逆転などの睡眠障害、意欲の低下(アパシー)や性的な問題行動など、実に様々な症状があります。

BPSDの大きな特徴は、症状の現れ方に個人差が大きいことです。

認知症の進行度合いや原因疾患の種類、さらにはその方の元々の性格や生活歴、環境、人間関係によって、出現するBPSDの種類や程度は異なります。

重度の認知症でもBPSDがほとんど見られない方もいれば、比較的初期の段階から強いBPSDが出る方もいます。

したがって「認知症になれば皆暴れる」わけではないですし、逆に軽度だから安心とも言えないのです。

またBPSDは時間帯や体調、周囲の状況に影響されて増減しうる点も覚えておきましょう。

例えば夕暮れ時になると「家に帰らなきゃ」と落ち着かなくなる(帰宅願望が強まる)のは夕暮れ症候群と呼ばれる現象で、中核症状による見当識の乱れに一日の疲れや不安が重なって起こるBPSDです。

環境の変化や人混みなどストレスを感じる状況ではBPSDが悪化しやすく、反対に安心できる雰囲気では和らぐこともあります。

このようにBPSDは本人の中核症状と環境や心理状態との相互作用で起こる二次的な症状であり、その意味では介護者の関わり方次第で症状の現れ方が変わる可能性があるのです。

BPSDの主な種類(行動症状と心理症状)

BPSDには非常に多くの症状が含まれますが、大きく行動症状(周囲に現れる行動の問題)と心理症状(感情や思考の変化による症状)に分類できます。

表1に主なBPSDの種類をまとめました。

行動症状(周囲に見える行動上の問題)心理症状(感情・思考の変化による症状)
徘徊(目的もなく歩き回る)不安感(理由のない強い不安に襲われる)
帰宅願望(「家に帰る」と訴える)抑うつ状態(意欲低下や落ち込みが続く)
介護拒否(入浴や食事、介助の拒否)睡眠障害(昼夜逆転など睡眠リズムの乱れ)
不潔行為(排泄物を触る・撒く等)幻覚(ないものが見える・声が聞こえる)
異食(食べ物でない物を口にする)妄想(被害妄想〈物盗られ妄想など〉)
暴言・暴力(暴言を吐く、叩く・噛む)せん妄(一時的な意識混濁に伴う混乱)
常同行動(同じ動作を繰り返す)感情失禁(怒りや涙が抑えられない)

表1:BPSDの主な症状カテゴリー(行動症状と心理症状)

このように多様な症状がありますが、現場で特によく問題となりやすいのは、表1の左列にある行動症状のほうではないでしょうか。

とりわけ暴言・暴力、徘徊(席を離れて歩き回る、帰宅したがる)、介護拒否(ケアの受け入れ拒否)、幻覚・妄想といった症状は、現場でも対応に苦慮しやすい代表例です。

次章以降では、こうした主要なBPSDについて、具体的な原因背景と対応方法を詳しく見ていきます。

BPSDの背景にある原因要因を理解する

BPSDへの正しい対応の第一歩は、「なぜその行動が起きているのか」を考えることです。

認知症の行動・心理症状には必ず何らかの理由や引き金があります。

本人に悪気があってわがままを言っているわけでは決してありません。

原因を大きく分けると、認知症による脳の変化そのものと、環境や体調、心理状態など後天的な要因の二つがあります。

まず脳の変化によるものとしては、認知症で前頭葉などが障害され感情の抑制が効かなくなることで怒りっぽくなったり、記憶障害や見当識障害のために「ここはどこだろう」「何か大事な用事を忘れているのでは」と不安になり落ち着かなくなったりすることが挙げられます。

また幻覚・妄想は脳の情報処理の混乱によって生じる面があり、特にレビー小体型認知症の方は幻視の症状が顕著です(ただしレビー小体型認知症では抗精神病薬への過敏性が高く薬剤による対応は慎重さが求められます)。

一方、周囲の環境や心理状態もBPSDの重要な誘因です。

身体の不調や痛みがあるとそれを訴えられず行動が荒くなることがありますし(便秘や膀胱不快感が原因で落ち着かないケース等)、騒がしい環境や急な環境変化は認知症の方に強いストレスを与えます。

例えば引っ越しや慣れないデイサービス通所を始めた直後など、新しい環境に慣れるまでは不安や混乱からBPSDが出現・悪化しやすいことが知られています。

また介護者の接し方も大きな要因です。

高圧的な態度で指示したり叱責したりすると、相手はプライドを傷つけられ反発心や悲しみから更に強い拒否や攻撃行動で返すことがあります。

研修でも「作られたBPSD」という言葉が出てきますが、これは介護者側の関わりが引き金となって起こってしまったBPSDを指し、まさに介護はお互いに反応し合うプロセスであることを示す概念です。

逆に言えば、介護者の工夫次第で防げるBPSDもあるということです。

このように原因を探っていくと、「なぜ今この人はこんな行動をしているのだろう?」という問いに対して、認知症による能力低下に本人の不安やストレス、周囲の状況が重なった結果だと理解できるでしょう。

次章からは具体的なBPSD場面ごとに、その背景にある心理や原因と適切な対応例を見ていきます。

原因に思い当たることがあれば、ぜひ対応のヒントにしてください。

BPSD対応の基本原則(厚労省ガイドラインに基づく)

具体策を見る前に、厚生労働省など公的機関が示しているBPSD対応の基本的な考え方を、4つ押さえておきましょう。

これはどんな症状に対しても共通する原則で、現場で判断に迷ったときの指針になります。

①非薬物的な介入をまず試みること

BPSDへの対応は、いきなり薬に頼るのではなく、まず環境調整やケア方法の工夫、心理的アプローチなど薬を使わない方法を検討・実施するのが原則です。

厚労省のガイドラインでも「家族や介護スタッフと検討し、まずは環境調整やケアの変更、心理的介入、通所リハ等の非薬物的介入を行い、それでも改善しない場合にのみ薬物療法を検討する」と明記されています。

どうしても危険な行為が続き、専門医の判断で薬を使う場合も、できるだけ低用量から開始し、長期連用を避けることが求められています。

現場の介護職員としては、まずケアの工夫で何とかできないかをチームで話し合う姿勢が大切です。

②せん妄や体調不良の有無をチェックすること

急に問題行動が出現・悪化した場合、まず一過性の「せん妄」ではないか確認が必要です。

感染症(尿路感染など)、脱水、便秘、痛み、薬の副作用等が原因で一時的な混乱状態に陥ることがあり、それがBPSDと紛らわしい場合があります。

こうした身体要因の除外は医療的ケアと連携して行う必要があります。

日頃からバイタルチェックや食事・排泄状況の観察を行い、異変があれば看護職や医師に相談しましょう。

また、難聴・視力低下による誤認知(見間違い・聞き間違い)も幻覚のような行動につながるため、補聴器や眼鏡の使用状況にも気を配ります。

③緊急時は専門機関と連携すること

利用者さんや周囲に危害が及ぶ恐れが高い暴力行為や、重度のうつ状態など緊急性の高いケースでは、無理に介護施設内だけで抱え込まず医療機関へ繋ぐ判断が必要です。

地域の認知症疾患医療センターやかかりつけ医、認知症専門医とあらかじめ連携体制を築いておき、早めに相談しましょう。

介護施設では常に医師がいるわけではないので、「これは危険だ」と感じたら躊躇なく119番や専門機関への連絡を行うことも職員の安全管理の一部です。

④チームで情報共有し一貫した対応をとること

BPSD対応は職員一人ひとりの工夫とチーム全体の連携が両輪です。

ある職員には怒っていた利用者さんも、別の職員には穏やかに応じるということもあります。

「今日は入浴を拒否されたけど、後でAさんが声かけしたら入ってくれた」などの成功パターンや失敗例をチームで共有し、誰が対応してもできるだけ一貫した関わりができるようにしましょう。

ケアカンファレンスでBPSDについて話し合う際は、後述するチェックリストを参考に「どういう状況で何が起きたか」「何が効果的だったか」を具体的に持ち寄ると対策を立てやすくなります。

スタッフ間の連携が取れていないと対応がバラバラになり、職員自身にもストレスとなるので注意が必要です。

以上が基本原則です。

まとめると「尊重」「安心」「適度な刺激」「理解」「自分を守る」というキーワードになります。

つまり、本人の尊厳とプライドを尊重し、安心できる環境を整え、閉じこもりがちな場合は適度に刺激を提供して、行動の背景にある本人の想いを理解する努力をする。

そして介護者自身の安全と心の余裕も確保する

この姿勢が何より大切です。

次に、具体的な症状別にもう少し踏み込んだ対応例を見ていきましょう。

行動パターン別:困った行動への具体的な接し方

では「困った行動への具体的な接し方」を5つ紹介します。

  1. 暴言・暴力への対応策
  2. 徘徊・帰宅願望への対応策
  3. 介護拒否への対応策
  4. 幻覚・妄想への対応策
  5. その他のBPSDへの対応のヒント

それぞれ、具体的に解説していきます。

暴言・暴力への対応策

認知症が進行すると感情のコントロールが難しくなり、介護者や周囲の人に対して暴言を吐いたり、時には叩く・物を投げるといった攻撃的行動が現れることがあります。

これは脳の前頭葉の働き低下に加え、不安・混乱・怒りなど様々な負の感情が抑えきれず噴出してしまうためです。

突然大声で「バカヤロー!」などと罵られたり物を投げられたりすると、介護する側もショックを受けたり腹を立てたりしてしまいがちです。

しかし、介護者まで感情的にエスカレートしてしまうと事態はさらに悪化します。

暴言・暴力への基本対応は、まず相手の話に耳を傾け、受容的な姿勢で接することです。

具体的には、相手が怒りをぶつけてきても、こちらはできるだけ冷静な態度を保ち、「そんなこと言わないで!」と叱り返したり論争しようとしたりしないようにします。

胸にグッときてもグッとこらえ、相手の言い分を一旦受け止めるよう心がけましょう(受け入れ難い内容の場合でも、一度最後まで言わせて発散させるイメージです)。

例えば暴言の背景に「自分の思い通りにいかない悔しさ」があるなら、「困っているんですね」「思うようにならなくて嫌ですよね」と感情に共感する声かけをします。

興奮して会話にならない場合は、無理に言葉を返さず、相手のそばに静かに寄り添うだけでも構いません。

怒りのピークが過ぎるまで傾聴と受容に徹することで、本人の気持ちが徐々に落ち着いてくることがあります。

それでもこちらの我慢が限界になりそうなときは、一度距離を置くことも有効です。

トイレに行くふりをしてその場を離れ、数分クールダウンしたり、他のスタッフと交代したりしましょう。

しばらく時間をおいて再度穏やかに話しかければ、先ほどより冷静に応じてくれる場合も多いものです。

人によっては特定の職員にだけ攻撃的になるケースもありますから(同性の介護者には怒りやすい等)、チーム内で「誰が対応すると落ち着きやすいか」情報共有し担当を工夫するのも一つの手です。

なお、暴言・暴力が続いてケアが困難な場合、前述のような薬物療法で症状が和らぐこともあります。

専門医と相談し必要に応じて検討します。

ただし薬「薬さえ飲めばすぐ治る」というものではありません。

根本には不安やフラストレーションがあることを忘れず、環境調整や信頼関係づくりといった非薬物介入を並行して行うことが重要です。

対応のポイントをまとめると、次のようになります。

傾聴と受容:

相手の訴えや感情を否定せず「そう感じるんですね」と受け止める姿勢を示します。

危険回避:

叩く蹴るなどの暴力がある場合、安全確保を最優先に。周囲の利用者を離す、自分も距離を取りつつ見守る等、まずけがを防ぐ行動を。

時間を味方に:

興奮が激しいときは無理にケアせず少し時間を置いて再トライします。

チームで分担:

うまくいかない時は他の職員にバトンタッチし、適材適所で対応します。

医療との連携:

必要なら専門医に相談し、薬物療法や入院も含め適切な支援を仰ぎます。

徘徊・帰宅願望への対応策

まだ施設に慣れていない利用者さんの場合、自分の居場所がわからなくなって落ち着かず歩き回ったり、「もう家に帰る時間だ」「○○駅に行かなきゃ」と訴えたりする方がいます。

これが徘徊や帰宅願望と呼ばれる症状です。

背景には見当識障害(時間や場所の感覚がわからなくなる)があり、目の前の状況を正しく認識できずに「ここではないどこかに行かなければ」と感じてしまうのです。

また、本人なりの目的や不安があって歩き出す場合もあります。

例えば「子どもが心配だから迎えに行かないと」という昔の記憶や、「仕事に行かねば」という責任感が蘇っているケースです。

決して“意味もなくウロウロしている”わけではなく、本人には本人の理由があります。

では、私たちができる対応策を順にお伝えしていきます。

環境と見守りの工夫

施設側は安全確保のためにも出口や危険な場所への移動は、穏やかに制止する必要があります。

しかし頭ごなしに「ダメですよ!座ってて!」と制止すれば、本人は余計に不安や反発心を募らせてしまいます。

環境面の工夫として、出口付近に職員を配置してソフトに声掛けをする、人手が足りない場合はセンサーやベルで動きを察知できるようにする、といった対策が有効です。

また屋内を歩き回りたがる方には、できる範囲で歩ける環境を提供しましょう。

危険物を片付け、ある程度歩いても支障のない導線を確保した上で、「ご一緒に歩きましょうか」と声をかけて付き添い同行することも大切です。

無理に座らせ続けるより、安全に歩ける発散の場を作る方が落ち着くこともあります。

帰宅願望への対応

「家に帰る」「ここは私の家じゃない」と訴える場合、頭から否定せず気持ちに寄り添う対応を心がけます。

「今日はこの後ご自宅にお送りするので大丈夫ですよ」と安心させたり、「おうちが心配なんですね。大切な家ですもんね」と不安に共感する声かけをします。

それでも立ち上がって出て行こうとする場合は、「じゃあ少し歩きましょうか。ご一緒しますよ」と一旦受け入れて歩くことも有効です。

数分歩いて施設内を一周したら、「おつかれになったでしょう。ちょっとこちらでお茶でも飲みませんか」と別の提案をして注意を逸らす作戦もあります。

実際に外に出てしまうと危険なので、施設内で“帰る行動”を完結させるイメージです。

また、昔の記憶に基づく帰宅願望の場合には、アルバムや昔の写真を一緒に見て「○○さんのおうちは立派なお庭があったんですよね」などと回想法的に話題に出すことで安心につなげることもできます。

昔の家に「帰りたい」という気持ちに対して、「そうですね、懐かしいですね」と共感しつつ写真を見る時間を作れば、少し気持ちが落ち着くかもしれません。

原因を探り対応する

徘徊には何らかの目的や原因が潜んでいることがあります。

対応策としてまずその人が歩き回る理由や目的を探り、それに応える方法を考えることが重要です。

例えば「昔の家に帰りたい」と言う場合には、前述のように昔の写真を見て一緒に懐かしむ時間を作ることで安心感を与えられるでしょう。

また、徘徊の背景に退屈さや刺激不足があるケースでは、日中のレクリエーションや趣味活動への参加を促すことでエネルギーを発散でき、結果として歩き回る行動が減ることもあります。

実際、レクレーション等に集中している間は落ち着いて過ごせる方も多いものです。

逆に暇になるとソワソワ立ち上がる傾向があるなら、塗り絵や体操などその方の好きそうなプログラムへ積極的にお誘いしてみましょう。

安全対策:

どうしても外に出て行ってしまう場合も考え、事前の安全策を取っておきます。

例えば、ご家族の協力を得て名前や連絡先を書いた名札やGPSタグを身につけてもらう、靴に目立つ印をつけておくなどです。

さらに「○時頃になると玄関に向かいやすい」などパターンが掴めれば、その前後は特に注意して見守るようにします。

どうしても危険な場合には、ご家族と相談して専門の介護サービスへの利用変更も検討する必要があるかもしれません。

介護者だけで無理をせず、地域包括支援センターやケアマネジャーにも早めに相談しましょう。

対応のポイントをまとめると、次のようになります。

否定しない:

「帰らなきゃ」に対し「ここが家でしょ!」など否定せず、「心配なんですね」「大丈夫ですよ」と安心させる言葉をかける。

付き添い・誘導:

すぐ制止するより「一緒に行きましょう」と歩調を合わせて付き添い、タイミングを見て別の場所や話題へ誘導する。

目的への対応:

徘徊の目的を推測し、それに対応する(例:「トイレ探してる?」→トイレへ案内、「誰か探してる?」→一緒に探すフリをする)。

活動性の確保:

日中適度に身体活動や刺激を与え、退屈やエネルギー過多を解消する。

環境整備:

出口に職員配置、施錠やセンサー活用、安全に歩けるスペース確保など環境面の安全対策を講じる。

事前対策:

名札・GPSの利用、行動パターンの把握、家族や関係機関との連携で万一の備えをしておく。

介護拒否への対応策

入浴や着替え、食事介助などをしようとすると「やらなくていい!」「放っといて!」と強く拒否される介護拒否も、現場で頭を悩ませるBPSDの一つです。

介護拒否はその名のとおり、介助や指示に協力せず反発する行動で、理由としては自分の能力低下を認めたくないプライドや、介護者への不信感・不満が指摘されています。

また、介護者の関わり方(命令口調・高圧的態度)が引き金となって拒否を強めてしまう場合もあります。

認知症初期~中期に多く見られる症状で、比較的意志のはっきりした方ほど強く拒否する傾向があります。

介護拒否への対応の基本は、本人の自尊心を尊重し、できる限り本人のペースや意思を尊重したケアを行うことです。

具体的なポイントを5つ挙げます。

①押し付けない・選択肢を与える

介護者が何でも一方的に進めようとせず、本人の意思決定を尊重します。

たとえば着替えを嫌がるとき、「はい服を替えますよ」ではなく「お洋服汚れていますが着替えますか?それともこのまま休みますか?」と選択肢を提示します。

自分で選べると感じるだけで、受け入れてもらえる可能性が上がります。

②自立心・プライドの尊重

できることは本人にしてもらう姿勢も大切です。

全部介助しようとすると「子ども扱いするな」という思いにつながりがちです。

「ここは少しお手伝いしますね。あとはお願いします」と役割を分担し、本人が主体的に行える余地を残しましょう。

できたことは大げさなくらい褒め、「助かりました」と感謝を伝えることで自尊心を満たします。

③タイミングと声かけの工夫

嫌がることは無理強いしないのが鉄則です。

例えば入浴を断固拒否されるなら、その日は無理に入れようとせず時間を置いて再提案します。

「お風呂入りませんか?」でダメでも、しばらくして「足湯だけでもどうですか」「今日はタオルで拭くだけにしましょうか」と代替案を出すのも手です。

声かけも命令調ではなく丁寧に、「〜しませんか?」「〜して頂けると助かります」などお願いする形にするだけで印象が変わります。

④信頼関係を築く

普段から寄り添う会話やスキンシップで安心感を持ってもらえると、介助も受け入れやすくなります。

拒否の強い方ほど、一人の職員が粘るより信頼している別の職員に交代した途端に応じてくれることもあります。

日頃から「この人なら嫌じゃない」と思ってもらえるような関係づくりが大切です。

例えば笑顔での雑談、相手の趣味嗜好を話題にする、傍に寄り添うだけの時間をとる等、ケア以外でのコミュニケーションも意識しましょう。

⑤環境を整える

入浴拒否であれば浴室の照明や室温、プライバシー確保(他人と一緒が嫌なら個浴にする)など環境要因もチェックします。

食事拒否の場合は料理の匂い・硬さ・量など嗜好に合っているか、トイレ拒否なら便座の冷たさや羞恥心への配慮など、嫌がる要因を取り除く工夫ができないか考えます。

以上のような対応により、「自分のことを尊重してくれている」という安心感が生まれると、少しずつ拒否が和らぐことがあります。

例えば、「入浴しましょう」→「嫌だ!」だった利用者さんに対し、「今日は湯船ではなくシャワーだけにしましょうか。それならさっぱりしますよ」と提案したところ受け入れられ、以後シャワー浴は拒否なくできるようになった…というケースもあります。

ポイントは本人の気分やこだわりを尊重し、代替案や工夫で折り合い点を見つけることです。

それでも全く介護を拒否され手が付けられない場合、周囲の協力を得ることも考えましょう。

例えばご家族に来所時付き添ってもらい説得してもらう、介護職ではなく看護師や主治医から声をかけてもらうと聞き入れるケースもあります(医師の「入浴しないと皮膚が危ないよ」の一言で渋々同意、など)。

多職種連携や家族の力も活用しながら、安全に生活できるラインを探っていきます。

対応のポイントをまとめると、次のようになります。

①本人のプライドを大切に

「自分のことは自分で決めたい」気持ちを尊重し、選択の余地を与える。

②Noと言える安心感

無理強いしないことで「嫌なら断れる」という安心感ができ、かえって次は受け入れてもらいやすくなる(断る自由も尊重)。

③言葉遣いと態度

命令ではなくお願い・提案口調で。上からではなく対等な立場で接する(敬意を込めた言葉遣いで)。

④時間をおく・譲歩案

その場にこだわらず後回しや代替案で切り抜ける。「今日はやめて明日に」「全部でなく一部だけ」といった譲歩も試す。

⑤協力者を増やす

他の職員や家族、専門職にも協力を仰ぎ、本人が受け入れやすい人に声かけしてもらう。

⑥成功体験を重ねる

少しでも受け入れられたら大いに褒めて感謝し、本人に「できた」「喜ばれた」という成功体験を持ってもらう。それが次の協力意欲につながる。

幻覚・妄想への対応策

幻覚(周囲に実際にはないものが見える・聞こえる)や妄想(事実と異なる思い込み、例:「財布を盗まれた」)は、認知症中期以降によく見られる症状です。

被害妄想の典型が「物盗られ妄想」で、しまい忘れた財布や通帳を誰かに盗まれたと思い込むケースです。

幻覚では、亡くなった家族が部屋に来ている、虫が壁にびっしりいる、といった幻視や、誰もいない所から声が聞こえる幻聴など様々です。

これら幻覚・妄想は、本人にとっては紛れもない現実の体験です。

そのため周囲が「そんなの嘘ですよ」「ここに虫なんていないでしょ!」と頭から否定すると、本人は強い不信感や怒りを抱き、訴えがますます激しくなる恐れがあります。

対応の原則は、否定も肯定もしないことです。

つまり、「そういう事実はない」と突き放すのではなく、しかし安易に「そうですね本当ですね」と話を合わせるのとも違います。

大切なのは本人の不安な気持ちに寄り添うことです。

例えば物盗られ妄想で「泥棒に盗まれた!」と怒っている場合、「盗まれていませんよ」と論破するのではなく、「それは大変!心配ですよね」と気持ちを受け止めます。

「一緒に探してみましょうか」と提案し、実際に部屋を探すフリをするのも有効です。

探す過程でたまたま別の話題にそれたり、疲れて休憩したりしているうちに、本人の関心が薄れることもあります。

ポイントは、妄想の内容そのものより、背景にある不安感を和らげることです。

「通帳が盗まれた」は裏を返せば「お金が無くなったらどうしよう」という不安ですから、「お金のこと、ご心配なんですね。でも大丈夫ですよ、ちゃんと安全に保管されていますからね」と安心させる声かけをします。

幻覚に対しても、例えば「部屋に虫がいる!」と言われたら、頭ごなしに「いません」ではなく「嫌ですね、それは困りましたね」と共感しつつ一緒に確認する仕草をします。

「どこにいますか?教えてください」と尋ね、一緒に壁を見るふりをして、「今はもういなくなったみたいですね、良かったですね」と穏やかに伝えるなどの対応が考えられます。

怖い幻覚(「黒い人が睨んでいる」等)の場合は、「それは怖いですね。でも私がいますから大丈夫ですよ」と安心させることが大事です。

手を握ったり背中をさすったりといったスキンシップも効果があります。

要は、本人の感じている現実を否定しないまま、不安を取り除く方向へ導くことが目標です。

ただし稀に、妄想の内容によっては周囲の安全管理も必要です。

たとえば「○○さんが悪さをしている」と特定の他者に害意を抱く妄想が強い場合、その対象者との距離を取るなどトラブル予防も検討します。

対応のポイントをまとめると、次のようになります。

①否定も説得もしない

幻覚・妄想の内容を無理に訂正しようとしない。一方で「そうだね」と深く迎合する必要もなく、事実認定はあいまいにしておく。

②感情に着目

妄想の裏にある不安・怒りなど感情を読み取り共感する。「それは心配ですね」「怖かったですね」と気持ちに寄り添う言葉を。

③安心材料を提示

「大丈夫ですよ」「私が一緒にいますよ」「ちゃんと見ていますから安心してください」等、安心感を与えるフレーズを繰り返し伝える。

④一緒に対応する

妄想に対して共に対処する姿勢を示す(探す、確認する、警察に電話するフリをする等)。「放っておく」のではなく寄り添って問題解決に当たるふりをする。

⑤話題転換

適切なタイミングで注意を他にそらすことも有効。疲れたり一段落したところで、お茶やおやつに誘導する、別室に移動するなど環境を変えて気分転換を促す。

⑥医療相談

幻覚・妄想が強く本人が苦しんでいる場合、抗精神病薬等の薬物治療で緩和されることもあります。専門医に相談し、薬の助けも借りつつ心理療法(回想法など)を取り入れることも検討します。

その他のBPSDへの対応のヒント

上記以外にも、介護現場で遭遇しうるBPSDとして、抑うつ・アパシー(無気力)、不適切な性行動、常同行動・反復行為、大声や奇声を発する行為などがあります。

それぞれ詳細な対応法がありますが、ここではポイントをかいつまんで紹介します。

①抑うつ・無気力への対応

何事にも興味を示さず塞ぎ込んでいる利用者さんには、まずじっくり話を聞いて共感し励ますことが基本です。

気分が沈んでいるときは否定せず「そう感じるんですね」と受け止め、「少し歩きませんか」「これ好きでしたよね」と軽い働きかけを続けましょう。

できたことを褒め自信を取り戻してもらう工夫(小さな役割をお願いする等)も有効です。

無理に明るくさせようとするより、寄り添いながらゆっくりペースを上げていくイメージで接します。

②性的異常行動への対応

異性の職員の体を触ろうとする、わいせつな言葉を発する等の性に関する問題行動も、中期以降見られることがあります。

原因として寂しさや愛情欲求、不安の裏返しなどが考えられます。

対応策はまず毅然と「ダメなものはダメ」と伝えることです。

しかし叱責ではなく恥をかかせないよう配慮しつつ、「そういうことはできません」ときっぱり伝え、すぐに別の話題や作業に注意をそらす(気をそらす)ことが大切です。

またスキンシップの不足から来る場合は、普段から手を握るなど穏やかな触れ合いを意識的に行い安心感を与えるのも一つの方法です。

男性利用者の場合、できるだけ男性職員がケアに当たる、人前で羞恥心を刺激しないようトイレや更衣はプライバシーに配慮する、といった環境面の配慮も重要です。

③常同行動・多動への対応

同じ質問を何度も繰り返す、延々と手を叩き続ける、部屋をぐるぐる歩き回る等の反復行為に対しては、基本的には危険がない限り無理にやめさせようとしないことです。

質問の反復には初めて聞かれたように答えるか、メモに書いて渡すなど対処します。

同じ動作を続ける場合、それを日課に組み込んでしまうのも手です。

例えば毎日決まったコースを歩き続ける人には、その習慣に合わせてトイレ誘導や食事時間を組み込むなど、本人のペースに沿ったケア計画を立てます。

どうしても周囲に影響がある場合は、代わりの動作(ハンドタオルを畳む等の作業)を提案してみるのも良いでしょう。

④大声・奇声への対応

突然「あー!」と奇声を上げる、長時間大声で叫ぶといった行為は、何らかの強い不快感や要求不満のサインです。

まず体調不良や痛みがないか確認します。

異常がなければ、周囲が騒がしかったり照明が明るすぎたりと環境要因を疑います。

静かな個室に移動すると落ち着くケースもあります。

それでも収まらないときは、音楽を流す・好きなおやつを提供するなど別の刺激で上書きする方法も試みられます。

介護者は驚いて駆け寄りがちですが、大声に過敏に反応しすぎると本人もエスカレートするので、落ち着いた態度で「大丈夫ですよ」と繰り返し安心させることも大切です。

BPSD観察のチェックリスト

BPSDへの対応を考えるには、その行動が「いつ・どこで・どのように」起きているか詳細に観察することが欠かせません。

ここでは現場で役立つ観察ポイントをチェックリスト形式で示します。

問題行動が起きた際やケアプラン検討時に、このリストを参考に要因分析してみてください。

①時間帯・きっかけ

その症状は特定の時間に起こりやすいですか?

夕方~夜間、食後すぐ、あるいは家族と離れた直後など、発生しやすい時間や状況を記録しましょう。

毎日同じ頃に起きるなら、その前後に見守り強化や対応策を講じることができます。

②環境要因

周囲の環境の変化や刺激が影響していないか確認します。

騒音・人混み・照明・温度など不快な環境ではないか、引っ越しや施設利用開始など最近環境が変わったことはあるか。

環境因があれば調整が効果を発揮するでしょう。

③身体の状態

痛みや体調不良はないでしょうか。

便秘や尿意の訴え、脱水症状、感染症の兆候(発熱・頻尿など)にも注意します。

聴力・視力低下で誤解を生んでいないか(見間違い・聞き間違い)もチェックし、必要なら補助具を使用してもらいます。

④心理状態・感情

当人がどんな感情を表出しているか観察します。

不安そうか、怒っているのか、悲しそうか。BPSDの裏には必ず何らかの感情があり、それを理解することで適切な声かけが見えてきます。

「なぜ怒っているのか」「何を不安に感じているのか」を推測してみましょう。

⑤前兆や予兆

行動が起きる前にどんなサインがあったかも見逃さず記録します。

そわそわ立ち上がる、独り言が増える、表情がこわばる、など前兆が掴めれば早期介入が可能です。

「夕暮れ時に落ち着かなくなる」「職員が交代すると怒り出す」など傾向を把握します。

⑥その人の履歴・習慣

生活歴や性格もヒントになります。

元々几帳面な方は環境の乱れに過敏かもしれません。

朝は弱い人だったら早起き介助が不機嫌の原因かもしれません。

昔の職業や役割が幻覚・妄想に出ている場合もあります(元教師の方が「授業に行かなきゃ」と徘徊する等)。

その方のバックグラウンドに照らして行動の意味を考えます。

⑦周囲の対応

行動が起きた際、職員や周囲の人がどう対応したかも記録しましょう。

「大声を出したとき職員が慌てて駆け寄ったら余計興奮した」「静かに手を握ったら落ち着いた」等、何が状況を改善・悪化させたかを分析します。

これはチームで対応策を検討する際の重要な資料になります。

⑧本人の訴えの内容

可能であれば、本人が発する言葉にも耳を傾けます。

妄想の具体的内容、怒鳴る時に繰り返す言葉、拒否するときの決まり文句などに、その人の本音やニーズが表れていることがあります。

それをヒントに原因を推理できるかもしれません。

以上のチェックポイントをエピソード記録として残し、ケア会議で共有することで、BPSDの原因分析と対応の効果検証がしやすくなります。

「○月○日14時頃、デイルームで突然立ち上がり出口へ。スタッフが大声で制止したら『うるさい!』と怒鳴り10分ほど興奮。朝は水分摂取少なめ。前日家族来訪あり」

このように具体的な状況を記録し、原因と対策の仮説を立てていくことが大切です。

BPSDケアに関するよくある誤解とその修正

BPSDへの対応で陥りがちな誤解や間違った思い込みと、その正しい理解について整理します。

もし可能なら、施設の休憩室等に貼っておくことをお勧めします。

❌ 誤解・ミス✅ 正しい理解・対応
「認知症になれば皆BPSDは出る」
「症状が重い人ほど暴れたりする」
認知症の中核症状の程度とBPSDの強さは比例しません。個人差が大きく、穏やかなままの方もいます。環境や対応次第でBPSDは予防・軽減可能です。
「困った行動は本人の性格やわがままのせい」
「叱れば分かってくれるはず」
BPSDは脳の障害と不安などが原因の症状であり、本人の意志や性格だけで起こしているのではありません。叱責や説教は状況を悪化させるだけで逆効果です。感情に共感し受容する対応が必要です。
「現実に沿った訂正をすべき」
(妄想・幻覚に対して)
認知症の人にとってその幻覚・妄想は現実です。頭ごなしの否定や論理的説明は通じず、逆に不信感を招きます。否定せず不安を和らげる関わりを優先します。
「すぐ薬で落ち着かせるしかない」薬物療法は最後の手段です。まずは非薬物的なケア改善で対応し、それでも危険・困難な場合に専門医の指示で最小限用います。薬は副作用やリスクもあり、漫然使用は避けるべきです。
「拘束すれば安全に対処できる」身体拘束は原則禁止されており、一時的な安全確保以外では用いてはいけません。拘束は本人の尊厳を傷つけ、かえって強い不穏や攻撃を招くこともあります。安全確保は環境整備や人的見守りで行い、どうしてもの場合は許可手続きを踏み短時間に留めます。
「プロなら一人で対処できて当然」BPSD対応はチーム戦です。どんなベテランでも対応に苦慮する場面はあります。困ったら抱え込まず相談・連携するのが賢明です。様々な視点からアプローチを変えることで道が開けます。

介護職員の心構えとストレスマネジメント

BPSDへの対応は、介護する職員にとっても大きな負担やストレスを伴います。

暴言を浴びせられたり拒否されたりすれば、誰でも落ち込んだりイライラしたりするのは当然です。そこで最後に、ケアにあたる職員側の心構えとストレス対策について触れておきます。

まず心構えとして大切なのは、「BPSDは病気による症状であって、本人が自分でコントロールできないもの」と理解することです。

決して「自分の介護が気に入らないのでは?」「わざと困らせようとしているのでは?」と個人的に受け取らないでください。

例えば物盗られ妄想で責められても、それは介護者個人への悪意ではなく、不安からくる訴えなのです。

そう理解すれば、怒りの矛先は自分ではなく病気に向けることができます。

人格否定の暴言を受けても、「病気が言わせているんだ」と捉えれば冷静さを保ちやすくなります。

次に完璧を目指さないこと。

BPSD対応に「これをすれば必ずうまくいく」という魔法の方法はありません。

どんなベテランでも失敗や試行錯誤を重ねています。

一人で抱え込まず、うまくいかないときはチームや上司に助けを求めて当然です。

新人ならなおさら、「暴言を言われて怖かった」「どう対応すれば良いかわからない」と感じたら遠慮なく周囲に相談しましょう。

介護はチームで行うものです。

対応を交代したり休憩をもらったりしてリセットする勇気も必要です。

自分が限界なのに無理に粘ることは、結果的に本人にも良いケアができなくなります。

ストレスマネジメントの具体策としては、まず職場内で話し合える場を持つことです。

日々のケアで感じた悩みや葛藤を同僚と共有しましょう。

「自分だけじゃない」と知るだけでも楽になりますし、先輩からアドバイスをもらえるかもしれません。

また、施設内で定期的にケース検討会を開き、BPSDへの対応策を議論することは職員のメンタルヘルスにも役立ちます。

ケア方針が定まらず各自バラバラの対応だと職員同士の不協和音も生じかねません。

統一方針を持てればチームの安心感が生まれます。

さらに自分自身のケアも忘れずに。

勤務時間中は難しくても、休憩中に深呼吸をする、水分をとる、同僚と言葉を交わすなど小休止で気分転換を図りましょう。

勤務外では趣味や運動でストレス発散することも大切です。

「仕事のことを忘れてリラックスする時間」を意識的に作ってください。

必要なら専門の相談機関(産業医やカウンセラー)に話を聞いてもらうのも有効です。

心と身体の健康が保ててこそ、良いケアを継続できます。

最後に、介護職員として誇りとやりがいを持つことも心の支えになります。

BPSDケアは確かに大変ですが、対応次第で利用者さんの笑顔や穏やかな時間を増やせる非常にやりがいのある仕事です。

うまくいかない日もあるでしょう。

しかし、小さな工夫で利用者さんが落ち着きを取り戻した瞬間や、ご家族から「ありがとう、助かりました」と言われた時の達成感は、この仕事ならではのものです。

困難な行動の背景にはその人の人生や想いが隠れています。

それを理解しようと努め、寄り添い続けることで、信頼関係が築けたときには大きな喜びが得られるでしょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。

BPSD(認知症の行動・心理症状)への対応について、定義から具体策、心構えまで幅広く解説しました。

介護現場は認知症の方にとっては生活の場であり、職員との関わりがその方の一日の心穏やかさを左右します。

正しい理解と適切な接し方を身につければ、「困った行動」に振り回されるのではなく、「その人らしさ」に寄り添ったケアができるようになります。

研修で学んだ知識を現場で実践するのは簡単ではありません。

ですが、困った行動の裏には必ず理由があること、その理由を探り対応することで症状は和らぐ可能性があることを忘れずに、チーム一丸となって取り組んでいきましょう。

利用者さんの笑顔が少しでも増え、職員自身も「うまくいった!」という経験を重ねられるよう、本テキストの内容がヒントになれば幸いです。

みんなで支え合い、学び合いながら、より良い認知症ケアを実践していきましょう。

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