なぜまだ終わらないの?介護記録に時間がかかる理由と時短のコツ
- 介護記録に時間がかかり毎日残業している方
- 何を書けばいいか迷って手が止まる方
- 記録の質を落とさず効率化したい方
- 新人スタッフの記録指導に悩んでいる方
- 現場改善や業務効率化を進めたい管理職
この記事を読むメリット
「介護記録」は現場の大きな負担になってしまう

管理職としてスタッフの動きを観察していると、ある重要な事実に気づきます。
それは、スタッフが疲弊している原因は「介護の仕事そのもの(直接介助)」ではなく、「付随する書類業務(間接業務)」であるケースが非常に多いということです。
「今日も記録のせいで残業だ……」「もっと利用者さんとゆっくりお話ししたいのに、記録に追われてフロアに出られない」 こうした不満は、現場スタッフのモチベーションを低下させ、最悪の場合は早期離職の引き金にもなります。
しかし、介護記録は施設運営における「命綱」です。
事故やトラブルが起きた際、適切なケアを行っていたことを証明する法的証拠(監査・裁判対策)になるだけでなく、チーム内で正確な情報を共有するためのインフラでもあります。
つまり、私たちが目指すべきは、記録の手を抜いて短くすることではなく、「プロとしての質を維持したまま、無駄な執筆時間を半分にする」という業務効率化です。
記録の作成に時間がかかる「4つの根本的な理由」
なぜ、介護記録にはこれほど時間がかかってしまうのでしょうか。
現場を10年以上みてきて確信した、4つの大きな理由(原因)を挙げます。
理由1:記憶の掘り起こし(夕方のまとめて一気書き)
時間がかかる最大の原因は、実はタイピングの遅さではなく「思い出す時間」の長さにあります。
日中は忙しいため、夕方になってから「ええと、今日の午前中の〇〇さんの様子はどうだったっけ……」と、数時間前の記憶を必死に手繰り寄せながら書いているスタッフが非常に多いのです。
理由2:文章の迷子(フレームワークの欠如)
「何からどう書き始めればいいか」の型が決まっていないため、パソコンの前でフリーズしてしまうパターンです。
頭の中で文章を組み立てながら書くため、一行書くのにも膨大な時間が費やされます。
理由3:完璧主義の罠(作文化)
「丁寧にたくさん書いたほうが、良い記録である」という間違った思い込みです。
起きた事実だけでなく、スタッフ自身の感想や、その時のフロアの雑多な状況までダラダラと書き連ねてしまい、結果として大作の「作文」が出来上がってしまいます。
理由4:ハード・ソフト面の使いづらさ
そもそもフロア内のパソコンの台数が足りず、順番待ちが発生している。
あるいは、導入している介護ソフトの入力項目が多すぎて、直感的に操作できないといったシステム側の問題です。
「後でまとめて書く」が招いた、時間ロスと誤記録
ここで、私が今の施設で管理職に着任したばかりの頃に直面した、記録業務にまつわる苦い事例をお話しします。
当時、うちの施設では「記録は日勤の最後にまとめて書くもの」という悪しき風潮が常態化していました。
夕方の事務所では、4〜5人のスタッフがパソコンの前に並び、無言で頭を抱えながら記録を入力していました。
当然、毎日全員が30分〜1時間の残業です。
ある日、夜勤帯の忙しさに追われ、朝方に2日分の記録を一気書きしたスタッフがいました。
その記録の中に、以下のような重大なエラー(誤記録)が発生したのです。
「〇〇様、朝食時の配薬(降圧剤)を拒否されたため、破棄した。」
この記録を見た看護師が青ざめました。
なぜなら、その日に薬を拒否したのは〇〇様ではなく、隣の部屋の⬜︎⬜︎様だったからです。
人間の記憶は、驚くほど簡単に書き換わります。
特に何十人ものケアを同時並行でこなす介護現場において、「数時間前の記憶」や「前日の記憶」を頼りに記録を書くことは、時間のロスだけでなく、このような「誤記録による医療事故リスク」を直結させてしまいます。
でもこれはスタッフの要領が悪いのではなく、「まとめて書かざるを得ない仕組み」を放置していた施設側の責任です。
そこから私は、現場の記録方法を根本から変える改革に着手しました。
時間を劇的に減らす「3つの解決策(仕組み編)」
管理職の視点から現場に導入し、劇的な残業削減に成功した「3つの仕組み」を共有します。
解決策1:直後記録(リアルタイム入力)の徹底
「後でまとめて書く」を禁止し、「ケアの直後の5分、または1行」の入力を徹底させました。
例えば、排泄介助が終わったらその場でインカムを使い「〇〇さん排泄終了、軟便あり」とメモを残す、あるいはフロアに配置したタブレットからその場で数字を入力する。
記憶が鮮明な「直後」であれば、思い出す時間は「ゼロ秒」です。
夕方のパソコン前のフリーズはこれで一気に解消されます。
解決策2:選択式・定型文(テンプレート)の活用
介護ソフトのカスタマイズを行い、自由記述(文章を打ち込む箇所)を極限まで減らしました。
「食事量:全量 / 8割 / 半量」「排泄:普通便 / 軟便 / 水様便」
「活気:あり / いつも通り / 傾眠傾向」など、
基本項目はすべて画面を1タップするだけで完結する仕組みを作ります。
文章を書くのは、「選択肢にない特記すべき異変があった時だけ」にするのです。
解決策3:インフラの整備(端末の増設と音声入力)
パソコンの順番待ちをなくすため、スタッフ1人に1台のスマートフォン型端末(またはタブレット)を支給しました。
また、キーボード入力が苦手なシニア層や外国人スタッフのために「音声入力」を導入。
これにより、「喋るだけで記録が終わる」環境を整え、入力スピードを劇的に向上させました。
5分で書ける!「文章作成のショートカット術」
仕組みを変えるのと同時に、スタッフ一人ひとりの「文章の書き方」をスリム化する研修を行いました。
文字数を減らしつつ、質を高めるショートカットの技術です。
「感想(主観)」をすべて削り、文字数を半分にする
多くのスタッフが「文字数をたくさん書かないと怒られる」と思っていますが、逆です。
短い方が、次のシフトのスタッフも読みやすいため「良い記録」です。
❌ 長くてダメな例:
「夕方頃からなんだか機嫌が悪そうな様子が見られ、ソワソワして落ち着きがなく、フロアを何度も歩き回って他の利用者様の迷惑になりそうだったので、声をかけてお茶を勧めたら少し落ち着いたように思われる」(101文字)
⭕️ 短くて良い例(事実のみ):
「16:00、フロア内を徘徊。「家に帰る」との発言あり。水分補給を促すと着席され、その後は穏やかに過ごされる」(50文字)
「〜の様子」「〜と思われる」といった曖昧な文末を廃止し、事実だけで言い切る。
これだけで文字数は半分になり、作成時間も半分になります。
申し送りと介護記録の「二重入力」を廃止する
「記録ソフトに入力した内容を、わざわざ手書きの申し送りノートにもう一度同じことを書く」という二重の手間が発生していませんか?
管理職が主導し、情報は「介護ソフトを見れば全員が共有できる」というルールに一本化し、無駄な転記作業を完全に排除することが重要です。
おわりに
介護記録の時間を短縮することは、決して「手抜き」でも「サボり」でもありません。
無駄な事務作業を極限まで削ぎ落とし、そこで生まれた時間を、「利用者さんのそばに寄り添い、笑顔で向き合う時間」に変えるための、極めて前向きでプロフェッショナルな業務改善です。
記録に追われてピリピリしているスタッフの空気は、利用者さんにも確実に伝わります。
記録がパッと終わり、スタッフの心に余裕が生まれれば、フロア全体の空気は驚くほど穏やかになります。
「長文=良い記録」という古い思い込みを、まずはチーム全体で捨てましょう。
「直後に、短く、事実だけを書く」。
この鉄則をスタッフ全員で共有し、残業のない、そして利用者さんとの笑顔にあふれたフロアを一緒に作っていきましょう。
お知らせ①【介護事業所の必須研修資料一覧(2026年度版)】
介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
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