【介護施設BCP】システム障害への対応│介護ソフトが使えない時を想定する
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介護施設では、記録や申し送り、利用者さんの情報管理、請求業務など、毎日の仕事の多くを介護ソフトに頼っています。
そのため「介護ソフトが使えなくなる」ことは、現場にとって大きな不安につながります。
しかし、地震や水害、停電、通信障害、サイバー攻撃などによって、システムが突然止まることは、決して特別なことではありません。
BCPでは、こうした事態を「起きてから考える」のではなく、「起きる前提で備える」ことが求められています。
この記事では、介護ソフトが使えなくなった場合を想定し、現場で迷わず動くために何を決めておくべきかを、できるだけ分かりやすく整理します。
この記事を読むメリット
システム障害をBCPで扱うべき理由

私たちは日々、介護ソフトを使って記録を書いたり、申し送りをしたり、利用者さんの情報を共有したり、請求の手続きをしたりと、介護ソフトは欠かせない存在です。
その一方で、災害や事故が起きて電気やインターネット、サーバが止まると、仕事が一気に進まなくなる危険があります。
厚労省の自然災害BCPガイドラインでは、連絡手段の確保だけでなく、「電気が止まってサーバが使えなくなった場合」も想定するよう示されています。
その場合に備えて、次のようなことをBCPに書いておく必要があります。
- パソコンが使えないときの手書き対応の方法
- サーバが置いてある場所の安全性(浸水しないか)
- データが消えないためのバックアップの取り方
想定すべきシステム障害のパターン
「介護ソフトが使えない」と言っても、原因は一つではありません。
止まった理由によって、最初に取る行動(初動対応)が変わります。
そのためBCPでは、原因ごとに分けて想定しておくことが大切です。
まず多いのが、停電や機器の故障によるものです。
地震や事故で電気が止まると、サーバやパソコンが動かなくなり、介護ソフトが使えなくなります。
この場合は、すぐに紙で記録するなど、手書き対応へ切り替える準備が必要になります。
次に考えておきたいのが、通信が使えなくなるケースです。
インターネット回線が切れたり、回線が混雑したりすると、クラウド型の介護ソフトは使えなくなります。
このためBCPでは、
- 電話以外の連絡方法(メールやSNSなど)
- 連絡先リストの定期的な見直し
- 被災していない遠くの施設を中継点にする考え方
などを決めておくことが勧められています。
三つ目は、外部のトラブルです。
施設の機器が無事でも、介護ソフトの会社やクラウドのシステムに障害が起きると、ログインできなくなることがあります。
この場合は、復旧を待つだけでなく、「復旧するまで紙で運用する」とすぐ判断できる仕組みが重要です。
最後に、サイバー攻撃も無視できません。
ウイルス感染などでデータが暗号化され、ファイルが開けなくなる被害は、医療や介護の現場でも実際に起きています。
介護ソフトが使えなくなる原因として、「攻撃される可能性」も考えておく必要があります。
平時に作っておくダウンタイム運用
BCPで最も大切なのは、システムが止まっている間でも、最低限の介護を続ける方法を決めておくことです。
これを「ダウンタイム運用」と呼びます。
システムが止まると、現場でまず困るのは、「誰に何をしたか分からない」「申し送りが伝わらない」「薬や注意点が確認できない」といったことです。
そのため、あらかじめ紙で持つ情報を決めておく必要があります。
介護施設では、次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
①利用者の安全に直結する情報
利用者一覧、緊急連絡先、持病やアレルギー、服薬内容、食事形態、転倒の注意点など
②ケアを回すための情報
申し送り用紙、その日の職員配置、食事・排泄・清拭のチェック
③あとで戻すための記録
いつ止まったか、何をしたか、連絡の記録、紙記録の番号
大切なのは、紙を用意するだけでなく、どこに置くか・誰が管理するか・いつシステムに戻すかまで決めておくことです。
また、データのバックアップも欠かせません。
バックアップは、別の場所に保管し、何日分残すか、誰がどの順で復旧するかを決めておきます。
ときどき実際に戻せるか確認することも大切です。
さらに、介護ソフトの会社(ベンダ)への連絡先や、復旧が分からない場合に紙へ切り替える判断基準をBCPに書いておくと、現場が迷いにくくなります。
発生時の初動対応
実際の現場では、次の順番で動くのが安全です。
あわてて復旧を急ぐほど、ミスや混乱が広がりやすくなります。
- まず「紙運用」に切り替える
- 次に「原因を分けて考える」
- その後で「復旧の方針」と「外部への連絡」を進める
最初に行うのは、紙での対応です。
記録、申し送り、服薬確認など、命と安全に関わる業務を最低限回すことを優先します。
パソコンが直るまで待つのではなく、「使えない前提」で動きます。
次に、何が原因で止まっているのかを整理します。
たとえば、停電なのか、ネットが切れているのか、端末の故障なのか、ソフト会社側の問題なのか、といった切り分けです。
この整理ができると、次に何をすべきかが見えやすくなります。
復旧の進め方と個人情報対応
システムが止まったあとの対応で大切なのは、「元に戻す」だけでなく「安全に戻す」ことです。
急いで復旧すると、データが壊れたり、情報が外に漏れたりする危険があります。
BCPでは、次のような流れを決めておくと現実的です。
- 利用者の安全に関わるものから復旧する
- 介護ソフトが直るまで紙での対応を続ける
- 復旧後は、紙の記録を入力し直し、内容を確認する
特に、食事や服薬などに関わる記録は、間違いが起きないようダブルチェックが必要になります。
また、システム障害では個人情報の扱いにも注意が必要です。
介護ソフトには、病気の情報や介護記録など、とても大切な情報が入っています。
もし情報が外に漏れた可能性がある場合は、決められたルールに沿って報告が必要になります。
- 早めの報告(数日以内が目安)
- 状況が分かった後の正式な報告
- 本人への連絡が必要な場合がある
復旧と個人情報対応をセットで考えておくことが、利用者さんと施設の両方を守ることにつながります。
実例から学ぶ「止めない」ための要点
BCPの大切さは、実際に起きた事例を見ると分かりやすくなります。
A病院の調査報告では、サイバー被害が分かった直後に対策本部を立ち上げ、BCPに沿って対応しました。
そのとき最初に決めた基本方針は、「今いる利用者を守る」ことでした。
そのため、記録や事務作業よりも、利用者さんの安全確保を優先し、当日から会議を開いて情報共有と連携を行いました。
- まず守るのは「今、施設にいる利用者」
- 記録や請求などは後回しにしてよい
- 職員同士で情報を集め、判断材料をそろえる
「仕事を止めない」とは、すべてを続けることではなく、守る順番を間違えないことです。
別の事例を紹介します。
子会社のパソコン1台がサイバー攻撃を受けたことがきっかけで、グループ全体の多くのファイルが開けなくなる被害が起きました。
暗号化されたファイルの中には個人情報も含まれていましたが、専門機関の調査で外部への流出は確認されなかったとのことです。
この事例から分かるのは、「たった1台の感染でも、仕事全体が止まる可能性がある」ということです。
介護施設でも、1台のパソコンから介護ソフトが使えなくなり、記録や情報共有ができなくなる事態は十分に考えられます。






