介護施設では、高齢者が集団で生活しているため、ひとたび感染症が発生すると大きなリスクにつながります。
インフルエンザやノロウイルス、新型コロナウイルスなど、命に関わる感染症も少なくありません。
そのため、日頃からの予防と、もし感染が起きた場合の早期対応がとても重要です。
そうした感染症から入所者さんと職員を守るために、施設では「感染症対策委員会」が中心となって対策を進めています。
本記事では、感染症対策委員会の役割や活動内容、そして一般職員が日常業務で気をつけるべきポイントについて、わかりやすく解説していきます。
この記事を読む価値
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早速、見ていきましょう。
感染症対策はなぜ重要?介護現場でのリスクとは
介護現場における感染症対策は、入所者さんと職員の健康と命を守るために非常に重要です。
高齢者施設では、入所者さんは感染症に対する抵抗力が弱く、集団生活をしていることから、一度感染が広がると重症化や集団感染のリスクが高くなります。
そのため、感染症の発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合にも迅速に拡大を防ぐ体制が必要です。
感染症の多くは、新たに入所する高齢者や職員、面会に来たご家族など、外部から施設内に持ち込まれることで始まるとされています。
よって、「病原体を施設に入れないこと」が感染対策の基本になります。
そして介護施設には、感染症が広がりやすい特有のリスクがあります。
たとえば、食事やレクリエーションなど人が集まる機会が多いこと、認知症などで本人が体調不良をうまく伝えられないこと、排泄介助が必要な方が多く、排泄物を介した感染の危険性が高いことなどが挙げられます。
さらに、職員が日常的に入所者と密接に接しながら施設の外にも出入りしているため、感染を持ち込んだり、広げたりする可能性もあります。
介護施設で特に注意すべき感染症には、インフルエンザやノロウイルス、腸管出血性大腸菌、レジオネラ症、結核、疥癬、新型コロナウイルスなどがあります。
これらは集団感染の原因となりやすく、特に結核や疥癬は入所前に治療を済ませることが基本とされています。
こうしたリスクを抑え、入所者さんの命と安心を守るためには、職員全員が感染症への正しい理解を持ち、マニュアルに沿って日頃から対策を徹底することが何よりも大切です。
感染症対策委員会とは?設置の目的と基本の役割
感染症対策委員会は、感染症の予防と、発生時の拡大防止を目的に活動する、施設内での感染管理の中核を担う組織です。
入所者さんや職員の健康と安全を守ることを最優先に、日常の感染対策の質を高めるために設置されています。
感染症対策委員会は、災害対策委員会など他の委員会とは別に設けられ、専門的かつ実践的な活動を担います。
主な役割としては、つぎの5つです。
- 感染対策の方針や計画の立案
- マニュアルの作成や見直し
- 職員への研修・訓練の実施
- 施設内の感染リスク評価や健康観察
- 感染発生時の対応マニュアルの整備など
また、職員全体への情報の共有や、保健所・医療機関など外部との連携窓口の役割も担います。
委員会が主導する感染症対策の内容とは
この委員会は、運営委員会など他の委員会とは別に設置され、幅広い職種で構成されることが求められます。
一般的には、施設長が委員長を務め、感染対策担当の看護師を中心に、看護職員、介護職員、栄養士、事務職員、医師、生活相談員などがメンバーとして参加します。
各部門の代表を含むことで、現場全体の視点を取り入れた対応が可能になります。
また、感染対策を実務として担う専任の担当者をあらかじめ定めておくことも重要です。
委員会では、各職種がそれぞれの専門性を活かし、感染対策に取り組みます。
施設長は委員会全体を統括し、感染症発生時には関係機関との連携を指揮します。
看護職員は日常の健康観察や、感染疑いがあるケースへの早期対応、職員への指導を担い、委員会の中核となる存在です。
介護職員は、日々のケアを通じて利用者の体調の変化にいち早く気づく立場にあるため、感染の早期発見に大きく貢献します。
標準予防策の実践や、マニュアルに基づいた正しい対応も重要な役割です。
また、栄養士は、利用者の体力や抵抗力を高めるための栄養管理に加え、厨房や食堂の衛生状態の管理も担当します。
これにより、食中毒などの感染症の予防にもつながります。
このように感染症対策委員会は、複数の職種が連携しながら、日常的な感染予防から発生時の迅速な対応まで、施設全体の感染管理を支える要の存在です。
委員会で決まった内容は、全職員にしっかり共有され、現場で実践されてはじめて意味を持ちます。
一般職員が意識しておくべきポイント
介護施設における感染症対策は、感染対策委員会のメンバーだけが行えば良いというものではありません。
実際には、施設で働くすべての職員が日頃から意識し、実際に行動することが不可欠です。
職員は、施設の外部との接点が多く、病原体を施設内に持ち込む可能性が高い立場にあります。
さらに、日々の介護業務では入所者さんと密接に関わることが多く、知らず知らずのうちに病原体を媒介してしまう恐れもあります。
だからこそ、一人ひとりの行動が、入所者さん全体の安全を守る大きなカギになります。
ここでは、一般職員が意識しておくべき感染症対策のポイントを5つ紹介します。
- 「標準予防策」を理解する
- 感染対策マニュアルや指針の内容を把握する
- 日頃の観察が重要
- 自分自身の体調管理
- 研修への参加
それぞれ具体的にみていきます。
①「標準予防策」を理解する
まず大切なのは、感染症予防の基本である「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」を正しく理解し、日常業務で実践することです。
これは、「すべての人の血液や体液、排泄物などには感染性があるかもしれない」と考えて対応する方法です。
具体的には、手洗いや手指消毒をケアの前後や汚染の恐れがある場面できちんと行い、手袋やマスク、エプロンなどの個人防護具を必要に応じて正しく使用します。
また、汚染されたリネンや器具の取り扱いにも注意し、交差感染を防ぐことが求められます。
特に排泄物は感染源となることが多く、おむつ交換の際は手袋やエプロンの着用、1ケアごとの交換、手袋を外した後の手指衛生が必須です。
②感染対策マニュアルや指針の内容を把握する
次に、施設ごとに用意されている感染対策マニュアルや指針の内容をしっかり把握し、業務の中で確実に守ることが求められます。
マニュアルには、感染症発生時の対応方法だけでなく、日常的なケアの手順や施設としての感染対策の考え方がまとめられています。
「いつ、誰が、どのように対応するのか」といった実務的な内容が記載されているため、常に確認しながら実践することが大切です。
もし疑問があれば、遠慮せずに委員会メンバーや責任者に確認することも必要です。
③日頃の観察が重要
また、感染症の兆候を早く察知するためには、日頃の観察が欠かせません。
介護職員のように日常的に入所者と接する時間が長い職種は、発熱、咳、下痢、嘔吐、発疹などの体調の変化を早期に見つけやすい立場にあります。
そうした異常に気づいた場合には、速やかに看護職員や医師に報告し、記録することが感染拡大を防ぐ第一歩となります。
④自分自身の体調管理
さらに、自分自身の体調にも常に注意を払いましょう。
体調がすぐれないときに無理をして出勤すれば、自分が感染源となってしまう恐れもあります。
発熱や咳などの症状がある場合は、出勤前に必ず相談し、必要に応じて休養を取る判断が大切です。
予防接種や定期健康診断への協力も、感染予防の一環として重要です。
⑤研修への参加
感染対策に関する研修や訓練への参加も欠かせません。
定期的な研修や新人研修などで、感染対策の基本やマニュアルの内容を再確認するとともに、実技の練習やシミュレーション訓練を通じて、いざというときに備えておきましょう。
こうした学びは、日々のケアの質を高めることにもつながります。
このように、感染対策は委員会だけの仕事ではなく、施設で働くすべての職員が関わる日常の業務の一部です。
一人ひとりの確かな意識と丁寧な行動こそが、入所者さんと職員の安全を守る力になります。
感染症が発生したとき、現場で何が求められる
まず大切なのは、入所者さんの異常にいち早く気づく「早期発見」と、最初の段階で正しく動く「初期対応」です。
発熱や咳、下痢、嘔吐、発疹、食欲の低下、元気がないなどの体調変化はもちろん、「いつもと違う」声の調子や反応、動きの鈍さといった細かい変化にも敏感になることが求められます。
そうした異常を確認した場合は、速やかに看護職員または医師へ報告し、症状や対応内容を記録します。
同時に、感染の疑いがある場合は、施設の管理者へも報告し、連携体制を整えることが重要です。
感染発生時には、施設で策定されたマニュアルや指針に沿って行動することが基本となります。
マニュアルには、「どの場面で」「誰が」「何を」「どうするか」が明確に記されており、落ち着いて対応できるように事前に内容を理解しておくことが必要です。
感染が疑われる入所者さんへのケアは、決められた対応手順に沿って、感染拡大を防ぐ形で行います。
現場での感染拡大防止には、日常的に行っている基本の感染対策を、より徹底することが求められます。
手洗いや手指消毒は、ケアの前後や汚染の恐れがある場面で確実に行いましょう。
個人防護具(PPE)の使用についても、手袋、マスク、エプロン、ガウン、ゴーグルなどを状況に応じて適切に選び、正しい着脱手順を守ることが必要です。
また、感染が疑われる入所者さんは必要に応じて、医師や看護職員の指示を受けながら、環境消毒や感染者の隔離などを行っていく体制が大切です。
外部機関との連携も大切です。
施設管理者は、感染症の発生状況を行政(例:市福祉課)や保健所、協力医療機関へ報告し、対応を相談します。
医師は感染症法などに基づいて、必要な届け出を行います。
これらの関係機関との連携体制は、いざというときに慌てないためにも、日頃から構築しておくことが重要です。
また、入所者さんやその家族に対しても、感染状況や対応について丁寧に説明し、協力を得ることが求められます。
これら一連の報告ルートや対応の流れは、すべて施設のマニュアルや連絡系統図に定められています。
発生時に正しく動けるようにするためには、平常時からその内容を理解し、シミュレーション訓練などを通じて実践的に学んでおくことが大切です。
訓練に参加することで、自分がどの場面でどう動けばよいかを体感でき、現場対応への不安も軽減されます。
研修を活かすには?日常業務とのつなげ方
感染症が発生したときに現場で混乱せず、職員一人ひとりが適切に対応できるようにするためには、研修で得た知識や技術を日常業務にしっかりと結びつけていくことが重要です。
安心して業務にあたるためにも、研修内容を「知って終わり」にせず、日々の仕事にどう活かすかを意識することが求められます。
研修では、感染対策に関する正しい知識とともに、実際のケア場面で「どのタイミングで」「何をすべきか」を明確に学ぶことが大切です。
たとえば、手指消毒のタイミングや個人防護具の正しい使い方などは、排泄介助や食事介助など、日常の業務と密接に関係しています。
実技やシミュレーション訓練を通して学ぶことで、いざというときにも迷わず動けるようになります。
研修の参考となる資料をお探しの方は、コチラの記事をご参照ください。
さらに、研修後の実践を定着させるためには、日常業務での確認も欠かせません。
朝礼での体調確認や感染対策用品の点検、健康観察の視点を共有することなど、小さな取り組みの積み重ねが感染防止につながります。
体調不良時には無理をせず、報告と休養が取れる環境も大切です。
こうした取り組みを施設全体で共有し、継続的に見直しながら進めていくことが、入所者さんと職員の安心・安全を守る感染対策の基盤となります。
グループワーク
グループワークには、「自分ならどうする?」という視点で実践的な判断力を養うことねらいです。
また、「委員会と現場のつながりを理解する」「チームで協力する大切さを体感する」という実感を養う効果も期待できます。
ぜひ、取入れてみてください。
題:もし施設で感染症が発生したら、あなたはどう動く?
「ある日の夕方、入所者Aさんに発熱と下痢の症状が出ました。職員Bさんは、日中にAさんの排泄介助をしていました。その翌日、Bさんも発熱。感染症が疑われます。」
おわりに
いかがだったでしょうか。
感染症対策は、特別な場面だけの話ではなく、毎日の仕事の中でこそ大切になります。
感染症対策委員会は施設全体の安心を守る中心的な存在ですが、実際に感染症を「持ち込まない・広げない」ためには、現場で働くすべての職員の協力が不可欠です。
手洗いや消毒、体調の変化への気づきなど、日々の小さな行動が大きな予防力になります。
また、研修で学んだことを実際の業務にどう活かすかも重要です。
「何のためにやっているか」を意識しながら、一人ひとりができる感染対策を丁寧に続けていきましょう。
入所者さんと自分自身を守るために、これからも正しい知識と連携を大切にしたケアを心がけてください。
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
お知らせ①介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
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