とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。日々の変化に気づくことが、利用者さんの安全を守ります。
この記事はこんな方におすすめ
  • 脱水の早期発見に自信がない介護職の方
  • 日々のケアでの観察ポイントを知りたい方
  • 利用者さんの急変を未然に防ぎたい方
  • 新人スタッフの教育に悩んでいる方
  • チームでリスク管理を強化したい方

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護現場で注意すべきリスクの一つが「脱水症」です。

特に夏や冬は発症しやすく、単なる水分不足ではなく、脳梗塞や意識障害など命に関わる危険につながります。

しかし高齢者は初期症状が分かりにくく、気づいた時には重症化していることも少なくありません。

本研修では、食事・排泄・入浴など日常ケアの中で気づける脱水サインに焦点を当て、現場ですぐ使える観察ポイントを解説します。

スタッフ全員で「隠れ脱水」を見抜く力を高めましょう。

この記事を読むメリット

  • 脱水の初期サインを見抜く力が身につく
  • 現場ですぐ使える観察ポイントが分かる
  • 重大事故の予防につながる気づきが得られる

 

それでは早速みていきましょう。

高齢者の脱水症は「気づいたときには重症化」している

上を向いてぐったりしている高齢女性

若いスタッフがよく陥る疑問に、「喉が渇いたら自分から『お茶を飲みたい』と言うのではないか?」というものがあります。

しかし、高齢者の身体メカニズムは若者とは根本的に異なります。

脱水が重症化しやすいのには、明確な理由が2つあります。

体内の水分量(貯水タンク)が圧倒的に少ない

人間の体は多くの水分で構成されていますが、若年層が体重の約60%を水分が占めるのに対し、高齢者は筋肉量の低下などに伴い、水分量が50%程度まで減少しています。

つまり、もともとの「貯水タンク」が小さいため、少し汗をかいたり尿を出したりするだけで、すぐに「枯渇」状態に陥ってしまうのです。

喉の渇きを感じるセンサーの機能低下

加齢により、脳にある水分不足を感知するセンサー(渇中枢)の働きが鈍くなります。

体がカラカラに乾いて脱水状態に陥っていても、ご本人は「喉の渇き」をまったく感じていないことが珍しくありません。

本人が不調を訴えない以上、脱水を早期発見できるかどうかは、一番近くにいる介護職の「観察力(気づき)」に100%かかっていると言っても過言ではありません。

日々のケアで見落とさない「脱水の初期サイン」

脱水のサインは、特別な検査をしなくても日々のケアの中で見つけることができます。

「いつもの業務」の中で意識すべき観察ポイントを場面別に整理しました。

場面1:食事・口腔ケアの場面

①口腔内の乾燥とネバつき

歯磨きやスポンジブラシでのケアの際、口の中が妙にネバネバしていたり、唾液が糸を引いていたりしませんか?舌の表面が白っぽく乾燥し、ひび割れている(亀裂がある)場合は、かなり水分が不足しているサインです。

②食欲の急な低下

「今日はなんだかご飯が進まないね」という時、単なる気まぐれではなく、脱水による胃腸機能の低下や、唾液が出ないことで飲み込みづらくなっている可能性があります。

場面2:排泄介助の場面(オムツ交換・トイレ誘導)

①尿の色と量

トイレやオムツを見たとき、尿の色が「濃い黄色」や「茶褐色(紅茶のような色)」になっていたら赤信号です。また、いつもより尿の量が明らかに少ない、あるいは回数が減っているのも、体が水分を外に出すまいと溜め込んでいる証拠です。

②便秘の急激な悪化・便の硬化

体が水分不足になると、大腸から無理やり水分を吸収しようとするため、便がウサギのフンのようにコロコロと硬くなります。急な便秘は脱水を疑う重要なサインです。

場面3:更衣・スキンケアの場面(着替え・入浴)

①皮膚のツヤと「ハンモックサイン」

脱水になると皮膚の水分が失われ、カサカサになります。手の甲(または鎖骨の下)の皮膚を親指と人差し指で軽くつまんで、パッと離してみてください。健康ならすぐに元に戻りますが、脱水状態だと皮膚が「富士山の形(テント状)」のまま、2秒以上戻りません(これをツルゴール低下、またはハンモックサインと呼びます)。

②脇の下の乾燥

高齢者でも、通常は脇の下には適度な湿り気があります。着替えの際に脇の下に触れ、カラカラに乾いている場合は重度の脱水を疑います。

バイタルサインと「活気」から見抜く急変の兆候

身体的なサインに加えて、バイタルサインの測定やご本人の「活気」にも、重大なヒントが隠されています。

血圧の低下と脈拍の増加(頻脈)

脱水が進むと血液量が減るため、血圧が普段よりスッと下がります。

すると、体は少ない血液をなんとか全身に回そうと心臓をフル回転させるため、脈拍が早く(1分間に90〜100回以上などに)なります。

「血圧低下+頻脈」は異常を知らせる強力なアラートです。

原因不明の微熱(うつ熱)

水分が不足すると汗がかけなくなり、体内に熱がこもります。

風邪の症状もないのに37℃台の微熱がダラダラと続く場合、「うつ熱」と呼ばれる脱水症状の可能性があります。

意識の異変(ぼんやり・傾眠)

「今日はやけに大人しいな」「ウトウトしていることが多いな(傾眠)」という時。

生あくびを連発したり、話しかけても辻褄の合わない返事が返ってきたりする場合、脳への血流が不足している危険な状態です。

「大人しく寝てくれている」という安心感に潜む罠

ここで私自身の経験から、非常に恐ろしかったヒヤリハット事例をご紹介します。

ある夏の日、担当していた女性利用者さん(80代)が、朝から車椅子に座ったままウトウトと眠っていらっしゃいました。

熱を測っても36.5℃と平熱。

食事の際も少しボーッとしていましたが、介助すれば全量召し上がり、お茶もむせることなく飲まれていました。

フロアがバタバタと忙しかったこともあり、私は「今日は発熱も不穏な様子もないし、大人しく寝てくれているから手がかからなくて助かるな」と、心の中で少し安心すらしていました。

しかし夕方、夜勤者への申し送りの直前、その利用者さんの顔色が土気色になり、声をかけても目を開けなくなりました(意識レベルの低下)。

救急搬送された結果、診断は「重度の脱水症とそれに伴う脳梗塞の疑い」でした。

この事例の最大の罠は、「記録上の数字(イン)に安心し、見えない水分喪失(アウト)を見落としていたこと」です。

食事もお茶も規定量は摂取(イン)していました。

しかし、その日は春にしては気温が高く、エアコンもつけていませんでした。

そのため、汗などによって体から失われる水分がいつもより多くなっていたのです。

「今日はやけに大人しい」「なんとなく元気がない・表情が暗い」という介護職の直感は、たいてい当たっています。

「大人しくて手がかからない」と放置するのではなく、「なぜ今日に限ってこんなにウトウトしているのか?」と疑う視点を持つことが、命を救う分岐点になります。

現場の介護職がとるべき3つのアクション

もし、ケアの中で「あれ?脱水かもしれない」というサインを一つでも見つけた場合、現場の介護スタッフはどう動くべきでしょうか。

以下の3つのアクションを徹底してください。

経口摂取の確認と「経口補水液(ORS)」の活用

意識がはっきりしていて、むせ込まずに飲める状態であれば、すぐに水分を提供します。

この時、大量の「ただの水」や「お茶」を飲ませるのは逆効果になることがあります。

体液が薄まり、余計に尿として排出されてしまうからです。

脱水が疑われる場合は、塩分や電解質が体液に近いバランスで含まれている「経口補水液(OS-1など)」やスポーツドリンクを提供してください。

普段は「美味しくない」と経口補水液を嫌がる方が、ゴクゴクと飲むようなら、体が脱水状態にある証拠でもあります。

看護師への「ベースライン(普段)」を交えたスピード報告

すぐさま看護師やリーダーに報告します。

前回のバイタル研修でもお伝えした通り、「おしっこが少ないです」という単発の報告ではなく、「〇〇様ですが、普段は午前中にパッドが重くなるほどの尿量があるのに、今日はほとんど出ていません。

それに加え、口腔内が乾燥し、生あくびを繰り返しています」と、普段の様子(ベースライン)と比較し、複数のサインをセットにして報告してください。

環境因子のチェック(室温・衣服)

利用者さんの居室に急いで向かい、環境を確認します。

「エアコンが送風になっていないか(高齢者は寒がって自分で消してしまうことが多いです)」「真夏なのに冬用の厚手の肌着やカーディガンを着込んでいないか」。

熱がこもる原因を物理的に取り除きます。

おわりに

施設において、「お茶配り」や「水分提供」はルーティンワークとして軽視されがちです。

しかし、水分補給は決して単なる業務ではありません。

それは、利用者さんが明日も無事に生きるための「命のインフラ」を支える、極めて専門的なケアなのです。

「飲んでくれないから仕方ない」と諦めるのはプロの仕事ではありません。

水やお茶を嫌がる方には、スポーツドリンクやリンゴジュースを勧めてみる。

飲み込みが悪い方には、水分量の多いゼリー飲料や、おやつに水分の多いフルーツ(スイカや梨など)を提供する。

食事の味噌汁やスープを確実に飲んでいただく。

あの手この手で水分を体に入れてもらう「工夫」こそが、介護の専門性です。

そして何より、脱水予防は個人の頑張りではなく「チーム力」です。

「今日の〇〇さん、朝から全然お茶を飲んでいないから、午後の入浴後は絶対にスポーツドリンクを飲んでもらおう」と、申し送りで情報を共有し、チーム全体で一人ひとりの水分量に目を光らせる体制を作ることが不可欠です。

利用者さんの「なんとなく元気がない」という声なきSOSを見逃さず、私たちが提供する一杯の水で、重大な事故を未然に防いでいきましょう。

お知らせ①【介護事業所の必須研修資料一覧(2026年度版)】

介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。

また、それに応じた研修資料もあげています。研修資料を探している方は、ぜひ参考にしてください。

テレビ会議
介護事業所の必須研修資料一覧【2026年度版】介護事業所や施設には、いろいろな研修が必要です。でも「あれは必須研修だった?」、「あの研修は情報公表調査にのっていたっけ?」など忘れてしまうことがあります。そんな方の為に、介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。また、それに応じた研修資料もあげています。...

お知らせ②【介護職の方へ!老後とお金の不安を解消する方法!】

介護職の仕事をしていると、低賃金や物価の高騰、そして将来に対する漠然とした不安がついて回ります。

特に独身の方は老後の生活費や年金に対する不安が大きいのではないでしょうか?

下記のブログは、そんな不安を解消するために実践すべき7つの方法です。

少しの工夫と努力で、将来の不安を減らし、安心した未来を作るための第一歩を踏み出してみましょう! 詳しくはこちらの記事をご覧ください。

悩んでいる中年女性
このままじゃヤバい!介護職が抱える老後とお金の問題【不安解消の為の7つの方法】低賃金での生活が続き、物価は上がり続ける一方、将来に対する漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事は、そんな悩みを少しでも解消できるように節約・資産運用(iDeCo、NISA)・お金に関するセミナーの受講・ポイ活・中高年の婚活・副業・転職の7つについてお伝えします。...
ABOUT ME
tomoblog
介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有