『言い方がきつい職員』の心理と、介護現場を壊さないための対処法【ハラスメント防止研修】
- 言い方がきつい職員に悩んでいる方
- 新人が萎縮している現場に困っている方
- 人間関係のストレスを減らしたい方
- 研修資料をお探しの方
- トラブルを上手に対処したい方
「あの人がいるだけで空気がピリピリする」
「新人が怯えて質問できない」
「注意したいのに逆ギレが怖い」
そんな悩みを抱えていませんか?
言い方がきつい職員が一人いるだけで、現場の雰囲気は悪化し、情報共有が滞り、ミスや離職につながります。
介護はチームで支える仕事だからこそ、この問題は放置できない重要な課題です。
【若手スタッフの声】
「申し送りの時、特定の先輩に当たると『そんなことも見てないの?』『日本語通じる?』と冷笑されます。その人がいる日は、本来報告すべき小さな異変も『また怒られるかも』と躊躇してしまい、結果的に利用者さんの皮膚剥離の発見が遅れてしまいました。もう、この仕事を続ける自信がありません」
この記事では、彼らがなぜトゲのある言葉を発してしまうのか、その深層心理を読み解きながら、現場の空気を壊さずに、かつ毅然と対処するための「スマートな改善戦略」を徹底的に解説します。
この記事を読むメリット
「言い方がきつい人」の4つの心理

「性格が悪いから」と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、それでは根本的な解決には至りません。
彼ら(彼女ら)がきつい言葉を選んでしまう背景には、実は彼らなりの「防衛本能」や「歪んだ責任感」が隠れていることが多いのです。
まずは、その心理を4つのタイプに分けて深く理解しましょう。
① 「完璧主義」の裏返しと認知の歪み
仕事に対して非常に真面目であり、自分自身に高いハードルを課しているタイプです。
彼らにとって、マニュアル通りの動きや、迅速な対応は「できて当たり前」のこと。
そのため、自分の基準に達しない他人の行動が、怠慢や不誠実に見えてしまいます。
「なぜ、私ができることをあなたはできないの?」という純粋な疑問が、怒りと混ざり合い、「やる気がないなら帰れば!」といった過激な言葉に変換されます。
彼らは「相手にも事情や能力の差がある」という視点が欠落しており、自分の正解を押し付けることで、無意識に相手をコントロールしようとしています。
② 「余裕のなさ」の表れ(バーンアウトの予兆)
慢性的な人手不足や、責任の重い業務を一人で抱え込み、精神的なキャパシティを超えてしまっている状態です。
かつては優しかった職員が急にきつくなった場合、このケースが疑われます。
心に余裕がないと、脳の感情制御機能が低下し、普段なら流せるような些細なミスでも、ダムが決壊するように怒りが溢れ出してしまいます。
彼らにとっての攻撃的な物言いは、実は「誰か私を助けて!」「もう限界なんだ!」という無意識の悲鳴であることも少なくありません。
③ 「正義感」という名の免罪符
「利用者さんのため」「事故を防ぐため」という強い大義名分を持っているタイプです。
このタイプが最も厄介なのは、「正しいことを言っているのだから、どんな言い方をしても許される」と本気で思い込んでいる点です。
彼らの中では「厳しい指導=愛のムチ」という古い成功体験が更新されておらず、自分の言葉でスタッフが萎縮している現状を「緊張感があって良い」と誤認しています。
【きついと言われるベテランの声】
「最近の若い子は、ちょっと注意しただけで『パワハラだ』と騒ぐ。こっちは利用者さんの命を守るために必死なんです。命に関わる現場で、優しく丁寧に手取り足取りなんて言っていられません。私が厳しく言わなくなったら、この現場は事故だらけになりますよ」
④「自信のなさ」からくる過剰防衛
意外かもしれませんが、実は内面に強い劣等感を抱えている人が、自分を守るために攻撃性を発揮することがあります。
「舐められたくない」「バカにされたくない」という恐怖心が強く、先制攻撃として相手を威圧することで、自分の優位性を保とうとします。
特に、高学歴の新人や、ITスキルが高い後輩、あるいは自分より人望がある同僚に対して、そのトゲはより鋭くなります。
攻撃は最大の防御である、という歪んだ信念に基づいた行動です。
「あの人はああいう性格だから」「仕事のスキルは高いから」と、リーダーが事なかれ主義で見て見ぬふりをするのは、組織にとって最もリスクの高い選択です。
思考停止と情報の遮断(心理的安全性の崩壊)
きつい言葉を浴びせられ続けると、人間は脳の機能を守るために「思考停止」に陥ります。
スタッフの目的は「良いケアをすること」から「あの人に怒られないこと」に変質してしまいます。
「これを報告したらまた否定される」「相談しても無駄だ」という空気が蔓延すると、ヒヤリハット報告は激減し、重大な事故の予兆が隠蔽されるようになります。
新人の早期離職と採用コストの浪費
せっかく入職した新人が、わずか数ヶ月で「一身上の都合」で辞めていく。
その真の理由は、ほぼ間違いなく人間関係です。
特に、期待に胸を膨らませて入ってきた新人が、教育担当者のきつい物言いに直面すると、「この業界はこれが普通なのか」「この人と一生働くのは無理だ」と絶望し、静かに去っていきます。
これは、施設にとって数百万円単位の採用・研修コストをドブに捨てることに等しい損失です。
リーダーであるあなたへの不信感
他のスタッフは、リーダーがその状況をどう処理するかを、言葉に出さずとも鋭く観察しています。
「あの人が好き勝手暴れているのに、リーダーは守ってくれない」「結局、声の大きい人の意見が通る職場なんだ」 そう思われた瞬間、あなたの求心力は失われます。
「誠実に働く者が損をする現場」からは、優秀で倫理観の高い人材から順番に、他施設へ引き抜かれていくことになります。
現場を守るスマート対処3ステップ
感情的に「その言い方はやめてください!」とぶつかっても、相手は「現場のことを分かっていない」と反発し、火に油を注ぐだけです。
リーダーには、カウンセリングとコンプライアンス遵守の両面を併せ持った、戦略的なアプローチが求められます。
ステップ①:面談で伝える「事実」と「影響」
まずは、その職員と1対1で、遮るもののない静かな場所で話す場を設けます。
この際、最も重要なのは「性格」や「人格」を否定しないことです。
✕ 性格を否定する:
「あなたの性格、きつすぎるから直してよ。みんな怖がってるよ」
〇 事実と影響を伝える:
「昨日の夕食介助の時、新人Bさんに『何回言えばわかるの!』と大きな声を出していたよね(事実)。その直後、Bさんが動揺して手が震え、配膳ミスをしてしまったんだ(影響)。この状況を、あなたはどう捉えているかな?」
このように、ビデオカメラで撮影したかのような客観的な出来事(事実)として提示することで、相手の防衛本能を和らげ、対話のテーブルにつかせることが可能になります。
ステップ②:相手の「正論」を一度だけフルに受け止める
言い方がきつい職員の根底には、「自分は頑張っているのに報われない」という承認欲求の飢餓状態があることが多いものです。
まずは、相手の言い分を「あー、そうなんですね」と、一度全て出し切らせてください。
「利用者さんの安全を考えてのことなんだね」
「〇〇さんが現場を良くしようとして、人一倍責任感を持って動いてくれているのは、私も本当によく分かっているし、感謝しているよ」
このように、まずは相手の「善意の意図」を100%承認します。
自分の想いがリーダーに伝わったと感じると、相手の心のトゲは驚くほど丸くなります。
その上で、こう切り出します。
「ただ、その熱意が今の伝え方だと、相手に恐怖心として伝わってしまっている。結果として、あなたが望んでいる『ミスをなくす』という目的とは逆の結果(萎縮によるミス)を招いているとしたら、すごくもったいないと思わない?」
ステップ③:Iメッセージと組織の期待を伝える
「あなたは〜だ(Youメッセージ)」という言い方は、相手に責められている感覚を与えます。
「私は〜と感じている(Iメッセージ)」を使いましょう。
「〇〇さんの高い介護技術は、後輩たちに継承してほしい宝物だ。でも今のままだと、言葉の壁に阻まれてそれが伝わらない。私はそれがすごく悔しいし、もったいないと感じているんだ」
「チーム一丸となってこのフロアを良くしたいと思っている。だからこそ、〇〇さんには『教えるプロ』としての言葉遣いも身につけてほしいと期待しているんだ」
「注意」ではなく「期待」として伝えることで、相手のプライドを傷つけずに、行動変容を促します。
言い方をルール化し仕組みにする
個人の努力や性格改善に頼るのは限界があります。
「この施設では、こういう言葉遣いをするのがルールである」と、仕組み化してしまいましょう。
「プロの言葉遣い」の明文化と共通言語化
「忙しい時はお互い様」という甘えを排除し、「どんな状況下でも、感情を相手にぶつけるのはプロの仕事ではない」と、会議やマニュアルで明文化します。
具体的には、以下の3つを「不適切な関わり」として定義します。
- 大声で威圧する(心理的虐待に準ずる行為)
- 相手の人格や能力を否定する言葉(「バカ」「向いてない」など)
- ため息、無視、物の扱いを荒くするなどの非言語的攻撃
これを「スタッフ間の虐待防止研修」として実施することで、特定の個人を攻撃することなく、全体の意識を底上げできます。
ポジティブフィードバックの義務化
「注意をするなら、その3倍は褒める・認める」というルールをリーダー自らが実践し、スタッフにも共有します。
「加点方式」のコミュニケーションを評価軸に取り入れることで、現場のピリピリした空気は徐々に緩和されます。
多面的な人事評価制度の導入
「仕事が早い」「夜勤を多くこなす」といった目に見える貢献だけでなく、「周囲への声かけ」「後輩の育成成功率」「チームの雰囲気作り」を正式な評価項目に加えます。
「言い方がきつくても、仕事さえできれば評価される」というこれまでの歪んだメッセージを断ち切り、「周囲と協調できない人は、プロとしての評価は低くなる」という明確な基準を組織として示しましょう。
リーダーが自分自身を守るために
最後に、最も大切なことをお伝えします。
それは、「他人を変えることは、エベレストに登るくらいエネルギーが必要なこと」だと認めることです。
リーダーであるあなたが、責任感のあまり「私がこの人を完璧に変えなければならない。それができないのは私の指導力不足だ」と思い詰めると、あなた自身が先に燃え尽きてしまいます。
「現場リーダーの役割は、野球の審判のようなものです。ルールを提示し、反則があれば笛を吹く。場を整え、必要な注意を伝える。そこまではリーダーの職務です。しかし、そのアドバイスを受け入れてバッターボックスでどう振る舞うかは、最終的には選手(職員)自身の選択であり、責任です。他人の人生まで背負いすぎてはいけません」
もし、数ヶ月にわたる丁寧なアプローチや指導を行っても改善が見られず、組織に害を及ぼし続ける場合は、さらに上の役職者に相談し、配置転換や、場合によっては厳しい労務対応(懲戒等)を求めることも、リーダーとしての正当な、そして勇気ある職務です。
「一人で抱え込まず、組織の力を使って解決すること」に、決して罪悪感を持たないでください。
おわりに
いかがだったでしょうか。
「言い方がきつい職員」への対応は、介護現場のリーダー業務の中で、最も神経を使い、胃が痛くなる仕事かもしれません。
しかし、あなたが勇気を持ってそのトゲに向き合い、丁寧に取り除くことができれば、現場は見違えるように変わります。
スタッフが安心して発言でき、新人がのびのびと育ち、その結果として利用者さんに最高の笑顔が伝染していく…。
そんな「本当の意味で質の高いケア」ができるチームは、リーダーであるあなたの、一歩踏み出す勇気から始まります。
あなたは一人ではありません。まずは今日、その職員の良いところを一つ見つけ、承認することから始めてみませんか?
あなたの誠実な向き合い方は、必ず他のスタッフにも伝わり、チームを支える大きな力になります。
応援しています。一緒に、もっと働きやすく、誇りを持てる現場を作っていきましょう!
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