送迎前の準備と確認
安全な送迎のためには、出発前の準備と確認がとても大切です。
以下のポイントをチェックして、万全の態勢で送迎に臨みましょう。
利用者さんの体調確認と事前準備
送迎に出発する前に、その日利用者さんの体調に問題がないか確認します。
ご家族や利用者さん本人にも協力してもらい、体温や血圧を測ってもらうなど健康状態を把握しましょう。
また、乗車前にトイレを済ませておいていただくと、移動中に急にトイレに行きたくなる心配が減ります。
あらかじめ水分補給もお願いし、車中での脱水や体調不良を防ぎます。
持ち物の忘れ物がないかもチェックし、必要な薬や補聴器など大事なものを持っているか確認してください。
送迎ルートと時間の確認
当日の送迎スケジュール(送迎表)を確認し、出発時刻と訪問順序、ルートを把握します。
初めて伺う利用者さんのご自宅は、事前に地図で場所を確かめておきましょう。
道中に工事や通行止めがないか、雨の日であれば迂回が必要な箇所がないかも考えておくと安心です。
時間に余裕を持って出発し、焦らず安全運転できるスケジュールを心がけます。
ドライバー自身の準備
運転を担当する職員は、必ず出発前にアルコールチェックを行いましょう。
前日の夜に深酒をした場合は翌朝まで残らないよう注意し、万一基準値以上のアルコールが検出されたら絶対に運転してはいけません。
また、運転免許証を携帯しているか改めて確認します。
体調が優れない日や服用した薬の影響で眠気がある場合などは、無理せず上司や同僚に報告し、必要に応じて他のスタッフに運転を代わってもらいましょう。
車両の安全点検
出発前に送迎車の安全点検を徹底します。
ガソリンの残量は十分か、タイヤの空気圧や損傷・摩耗はないか(溝がすり減っていないか)、ブレーキランプやヘッドライトがきちんと点灯するか、ウインカーやワイパーは正常に動くかなど、一通り確認しましょう。
また車内もチェックし、車いす用のリフトや固定ベルトが正しく動作するか、踏み台は積んだか、前日使った車椅子が置きっぱなしになっていないか、清掃は行き届いているか等を見てください。
車内は清潔に整え、感染症予防のためアルコール消毒液やマスクの予備なども載せておくと安心です。
持ち物の確認
送迎に出る前に必要な物品を揃えているか確認します。
具体的には車の鍵、先述の送迎表(利用者さんの氏名や住所、連絡先が載ったもの)、運行日誌(走行距離や時間を記録するノート)、ボールペン、携帯電話(緊急連絡用)などです。
車椅子を施設から持ち出す場合や、乗り降りの補助に踏み台が必要な場合はそれらも忘れずに準備しましょう。
こうした送迎前の準備を丁寧に行うことで、「うっかり忘れていた…」というミスやトラブルを未然に防げます。
特に朝は慌ただしいですが、出発前のひと手間を惜しまず、安全第一で臨みましょう。
送迎中の安全運転と心配り
送迎中は利用者さんの命をお預かりしています。
運転する際の安全確保と、利用者さんへの心配りの両方を意識しましょう。
安全運転のポイント
ハンドルを握ったら、「デイサービス・デイケアの看板を背負っている」という気持ちで丁寧な運転を心がけます。
乗車中の利用者さんは急な動きに踏ん張れず、転倒やケガの危険があります。
急発進や急ブレーキ、急ハンドルは避け、カーブもゆっくり安全な速度で曲がりましょう。
スピードよりも安全が最優先です。
万一渋滞などで予定より到着が遅れそうなときは、無理な速度を出さず、まず事業所(施設)に連絡して指示を仰いでください。
その上で、利用者さんご本人にも「少し到着が遅れます。申し訳ありませんが少々お待ちください。」と電話で伝えると安心です。
狭い道路よりも見通しの良い大きな通りを選ぶ、交差点や横断歩道ではしっかり停止線で止まる、細い道ですれ違い時は必ず一旦停止する、など基本を徹底しましょう。
出発前に「右よし、左よし、前よし、後ろよし、歩行者よし」といった唱和をし、安全確認も習慣づけます。
また全席シートベルトを着用しているか発車前に確認し、後部座席の利用者さんにも「シートベルトおつけしますね」と一声かけて確実に装着してください。
雨天時の運転注意
雨の日は視界不良と路面の滑りやすさにより事故のリスクが高まります。
いつも以上に慎重な運転が必要です。
スピードを控えめにし、車間距離を普段より十分に取りましょう。
急ブレーキは特に危険なので、早め早めに減速し、ゆったりとした運転を心がけます。
他の車がはね上げる水しぶきでフロントガラスが見えにくくなることもありますから、ワイパーを早めに動かし視界を確保します。
車内が曇って前が見えづらくならないよう、エアコンや除湿機能を使ってフロントガラスの曇りを取ってください。
わずかな時間でも油断せず、常に「もし歩行者が飛び出してきたら…」など最悪のケースを考えながらブレーキに足を乗せておくくらいの気持ちで運転しましょう。
雨の日は到着に時間がかかる可能性がありますので、早めに出発する工夫も大切です。
利用者さんへの気配り
送迎中は運転だけでなく、後部座席の利用者さんの様子にも目配りしましょう。
信号待ちや他の方の乗降時にはバックミラーや振り向きで「お変わりありませんか?」と声をかけ、体調や表情に異常がないか確認します。
最近は車内の様子を映すドライブモニター(車内カメラ)を活用する施設もあります。
運転席から見えにくい後部座席の利用者さんの表情が確認でき、異変に早く気づけるメリットがあります。
運転手と同乗の職員がいる場合は、「〇〇さん少し顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」などと声をかけ合いながら、安全に配慮してください。
また、車内では利用者さんがリラックスできるよう明るい挨拶や会話を心がけましょう。
乗車時に「こんにちは!今日もお元気そうですね」と声をかけたり、「寒くありませんか?」「エアコンの温度は大丈夫ですか?」と気遣ったりすると、利用者さんも安心できます。
ただし運転中は前方に集中しつつ、無理のない範囲でお話ししてください。
会話から体調の変化に気づくこともありますので、ちょっとしたサインも見逃さないようにします。
雨の日の送迎で気をつけること
雨天時の送迎は普段以上に注意深く行う必要があります。
雨の日特有のリスクと対策を押さえておきましょう。
転倒と濡れ対策
雨の日は玄関先や道路が滑りやすく、利用者さんの乗り降り時に転倒する危険が高まります。
車の乗降場所はできるだけ水たまりのない平らな所を選びましょう。
マンホールや金属製の排水溝(グレーチング)は濡れると非常に滑りやすいので、停車位置を少し調整して避ける工夫をします。
車の乗り降りの際には介助者が傘をしっかり差し掛け、利用者さんの衣類や頭が雨で濡れないよう配慮しましょう。
事前に大きめの傘やレインコート、タオルなどを車に用意し、乗降時にサッと使えるようにしておくと便利です。
車いすの方には撥水性のあるレインポンチョやビニール製のひざ掛けをお貸しして、雨に濡れない工夫も必要です。
濡れた衣服のままだと利用者さんは不快ですし、体が冷えて風邪をひいてしまう恐れもあります。
雨天時は「濡らさない・滑らせない」を合言葉に、安全に乗り降りしていただきましょう。
車両のメンテナンス
雨の日の安全運転には日頃の車両管理も重要です。
特にタイヤは要チェックポイントです。
タイヤの溝が極端にすり減っていると雨の日にスリップしやすくなります。
一般的にタイヤ溝が1.6mm以下になると「スリップサイン」という目印が現れ、それ以上の使用は法律でも禁止されています。

画像引用サイト:タイヤ良販本舗
日頃からタイヤの溝の深さやヒビ割れがないか確認し、必要なら早めに交換しましょう。
また、タイヤの空気圧が低いとタイヤがたわみ、雨の日の制動距離が伸びてしまいます。
定期的に空気圧も適正値に調整してください。
ワイパーの劣化やウォッシャー液不足も雨天時の視界不良につながりますので、こちらも日常点検で見落とさないようにします。
送迎ルートの見直し
大雨のときは、普段通る道が冠水して通れなかったり見通しが悪かったりする場合があります。
事前に地域の水たまりができやすい道路やぬかるみやすい場所を把握し、必要に応じて安全な迂回ルートを検討しておきましょう。
特に川沿いの道や低い土地の道路は大雨で使えなくなることがあります。
代わりの道を通るときは所要時間も変わるため、「このルートだと通常より5分多くかかる」など、時間配分も考えて計画します。
利用者さんの安全確保を最優先に、無理のない範囲で予定時間内に送迎を終えられるよう工夫しましょう。
天気が悪い日は早め早めの準備と判断が大切です。
利用者さんの乗り降りの介助方法
利用者さんが安全に車に乗り込み、降りることができるよう、適切な介助を行います。
乗降時は思わぬケガが起きやすい場面でもあるため、ゆっくり慌てずサポートしましょう。
乗車時のポイント
ご自宅を出発する際、利用者さんとご家族に明るく挨拶を交わし、「さあ、行きましょうね」と声をかけて車まで誘導します。
玄関から車まで段差がある場合や長い距離の場合は、手すり代わりに腕を貸したりしながらゆっくり歩きます。
車に乗るときは、利用者さんには荷物や杖を一旦お持ちいただき、手ぶらの状態で乗り込みをしてもらいます。
荷物や杖は介助するスタッフが預かり、安全に座席に着くまで持っていてあげましょう。
車に足を踏み入れる際は、基本的に利用者さんの強いほうの足(健側)からステップに乗せてもらうと安定しやすいです。
必要に応じてポータブルの踏み台を使い、足の上がらない方でも無理なく昇降できるようにします。
そして、次に弱いほうの足(患側)をゆっくりと引き入れてもらいます。
このとき服や杖がドアに引っかからないよう見守りましょう。
車内に腰を下ろしたらシートに深く腰掛けるよう促し、シートベルトを装着します。
車いすご利用の方の場合、スロープやリフトを使用しますが、車いすの車輪は必ずロック(固定)してからリフトを動かします。
固定を忘れると車いすが動いて事故につながる恐れがあるので、声に出して確認すると確実です(「車いすロックOK」など)。
乗車後は体が傾かないようシートベルトや固定ベルトをしっかり締め、必要ならクッションなどで姿勢を安定させます。
介助が一人で難しい場合は遠慮せず他のスタッフに応援を頼み、安全第一で乗車介助を行いましょう。
降車時のポイント
施設に到着したら、利用者さん一人ひとり慎重に車から降りていただきます。
降車時は怪我を防ぐため、弱いほうの足(患側)からゆっくり地面に下ろしてもらうと良いです。
これは、仮に膝折れ(膝に力が入らずガクッとなること)が起きても、残った強い足で支えやすいためです。
車内に取り付けてある手すりや吊り革があれば利用してもらい、必要なら介助者が体を支えます。
踏み台を用意していた場合は降りる際も使い、段差を小さくしてあげてください。
利用者さんが不安そうな場合は、後ろ向きに降りる方法も有効です。
お尻からゆっくり降りてもらうと転びにくく、安全に着地できます。
いずれにせよ、急がせず「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけながらサポートしましょう。
車いすの方はリフトで降ろしますが、このときも車いすのロックを忘れず、ゆっくりと操作します。
地上に降りたら安全な場所まで車いすを誘導し、利用者さんの体調に変化がないか確認します。
雨の日であれば傘をさしたり、滑りやすい路面に注意を払って、玄関先までお送りします。
乗り降りの介助は、利用者さんにとって送迎サービスの中でも不安を感じやすい部分です。
ですから、笑顔で優しく声をかけ、安心してもらうことが何より大切です。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」「痛いところはないですか?」といった一言で、利用者さんもリラックスできます。
慌てず一人ずつ丁寧に対応し、安全に施設内までお連れしましょう。
万が一の緊急時対応
送迎業務では、どんなに気をつけていても万が一の事態が起こりえます。
利用者さんの体調急変や交通事故など、緊急時の対応手順を事前に知っておくことで、いざというとき落ち着いて行動できます。
ここでは2つの場面に分けて、対応の流れを説明します。
利用者さんの体調が急変した場合
走行中や停車中に、利用者さんが急に具合が悪くなることがあります。
顔色が悪くなった、意識がもうろうとしている、呼吸がおかしい、など異変に気づいたら迅速かつ冷静に対応しましょう。
対応の基本手順は次のとおりです。
①安全な場所に停車
運転中に異変に気づいたら、まずハザードランプを点けて道路脇など安全な場所に速やかに車を停めます。
急ブレーキや急ハンドルは避け、周囲に注意しながらゆっくりと止めましょう。
他の利用者さんも乗車している場合は、「少し体調の様子を確認しますのでお待ちくださいね」と落ち着いた声で伝え、不安にさせないよう配慮します。
②利用者さんの状態確認
停車したら体調不良を訴えている利用者さんの様子をチェックします。
名前を呼んで意識がはっきりしているか確認し、反応がなければ肩を軽く叩くなど刺激を与えてみます。
同時に呼吸や脈拍の有無も確認しましょう。
胸やお腹の動きで呼吸しているか、手首や首筋で脈が感じられるかを見ます。
もし意識がなく呼吸もない場合は、ただちに「119番」に通報して救急車を呼びます。
意識がある場合でも明らかに様子がおかしければ、ためらわず専門家(救急隊や医師)の判断を仰ぎます。
必要に応じて応急手当(例えば嘔吐しそうなら横向きにする、意識があるなら楽な姿勢にしてあげる等)を行いながら次のステップに移ります。
③事業所への連絡
利用者さんの緊急事態を確認したら、すぐに施設の管理者や責任者に電話連絡します。
伝える内容は、「誰が」「どんな症状で」「119番通報したか否か」です。
例えば「○○さんが意識を失い呼吸がないので119番しました」といった具体的な情報を迅速に伝達します。
管理者にはご家族への連絡依頼も合わせて行いましょう。
「○○さんのご家族に連絡をお願いします」とお願いすれば、現場対応に専念できます。
④ご家族への連絡(施設側で対応)
通常、管理者から連絡を受けた職員が利用者さんのご家族に電話をします。
そして、「今、送迎中に○○さんの体調が急変し、現在対応中であること」「これから救急車で医療機関に搬送予定であること」をお伝えします。
搬送先(受け入れ先の病院)が決まり次第改めて連絡する旨も伝達します。
また、この時点で他の利用者さんを送迎中で待たせている場合には、施設から待機中の他の利用者さんのご家族にも「送迎が遅れていますが安全に対応していますのでご安心ください」と遅延連絡とお詫びの連絡を入れてもらえると望ましいです。
そうした配慮があると、ご家族も不安が和らぎます。
⑤救急対応と搬送準備
救急車が到着したら、救急隊員に状況を引き継ぎます。
いつ頃からどんな様子だったか、意識や呼吸の有無、持病や飲んでいる薬の情報がわかれば伝えましょう。
利用者さんのお薬手帳や健康保険証、診察券などが車内にあれば一緒に渡します。
また、施設で預かっている利用者記録(カルテファイル)が車内に積んであれば持参します(通常は持ち歩かないかもしれませんが、必要な情報があればメモしていくと良いでしょう)。
職員が救急車に同乗する場合は、他の利用者さんは一旦施設の応援スタッフに迎えに来てもらうなど、事前に取り決めた対応をとります。
搬送先の病院が決まったら、ご家族に「○○病院に向かっています」と再度連絡し、施設の管理者にも状況を報告します。
⑥残りの送迎の再開
体調不良の利用者さんを救急隊に引き継いだ後、落ち着いて車内を整えます。
他の乗車中の利用者さんが動揺している場合は「大丈夫ですよ」「もうすぐ施設に着きますからね」と声をかけ、不安を和らげます。
車内の安全を確認し、全員がシートベルトを締め直したら、改めて気を引き締めて送迎を再開します。
遅れてしまった他の利用者さんについては、施設に着いてからスタッフ総出でフォローし、体調急変があった事情を説明してお詫びしましょう。
以上が送迎中に利用者さんの具合が悪くなった場合の対応の流れです。
ポイントは「安全確保」と「報告・連絡の迅速さ」です。
焦る気持ちを抑えてまず安全に停車し、しかるべき所(救急・警察・上司・家族)への連絡を順に行うことで、スムーズに対応できます。
日頃から手順をスタッフ同士で確認し、シミュレーションしておくと良いでしょう。
送迎中に交通事故が起きた場合
毎日運転していると、どれだけ注意していても交通事故に遭遇してしまう可能性はゼロではありません。
万一送迎中に事故が発生したとき、運転者はパニックになりがちですが、落ち着いて次の対応を行いましょう。
①負傷者の確認と救護
まず最優先すべきは、人命の安全です。
乗っている利用者さんや相手の車の方、歩行者などケガをした人がいないか確認します。
自車の乗員にケガ人がいる場合は、安全な場所に避難させつつ応急手当をします。
重傷者がいる、意識がないなどの場合はすぐに「119番」して救急車を呼びましょう。
救急隊には「救急です。○○市○○町○丁目付近で交通事故、負傷者がいます。意識は…(ある/ない)、呼吸は…(している/していない)、出血が…(ある/ない)」といった状況を落ち着いて伝えます。
幸い大きなケガがない場合も、念のため体調を確認し、必要なら病院に行けるよう準備します。
②二次事故の防止
事故車両が道路上に停まったままだと、後続車との追突など二次被害の危険があります。
可能であれば車を道路の端に寄せ、ハザードランプや三角表示板を使って後続車に注意喚起します。
ただし重傷者の救命が優先なので、動かせない場合は無理に車をどかそうとせず、周囲に手を振って合図するなどできる範囲で安全確保します。
夜間であれば発煙筒を焚くことも有効です。
他の職員が同乗している場合は、協力して周囲の安全を確保してください。
③警察への通報(110番)
救急の要請とほぼ同時進行で構いませんが、必ず警察にも連絡します。
事故の大小に関わらず、警察を呼ばないと「事故証明」が取れず後々保険も使えませんし、逃げたと誤解されてトラブルになります。
電話で「交通事故が発生しました。場所は○○市○○町○丁目付近、車と車の接触事故です(あるいは電柱に衝突など具体的に)」と伝えます。
相手のある事故の場合、当事者間でその場で示談しようとせず警察を呼ぶことが大切です。
人身事故で相手に怪我を負わせた場合など、自己判断で「大したことない」と現場を離れると「ひき逃げ」扱いになる可能性もあります。
どんな軽微な事故でも警察官の指示に従って処理しましょう。
④事業所への連絡
事故発生後、救急・警察への連絡が済んだら、速やかに自施設の管理者や上司に連絡します。
「○時ごろ、どこどこで接触事故を起こしました。今警察と救急を呼んで対応中です。」と状況を報告しましょう。
同乗者や相手のケガの有無、車の損傷具合(自走可能かどうか)、残りの送迎を引き継ぐ必要があるかなども伝えます。
例えば「利用者さんにケガはありませんが車の前が大きく壊れて動かせません。
他の利用者さんの送迎をお願いできますか?」と依頼すれば、事業所で代替車やスタッフを手配してくれるはずです。
後続の利用者さん宅には事業所から遅延の連絡を入れてもらうなど、現場と施設で連携して対応します。
⑤相手および目撃者の情報確認
事故の相手がいる場合、お互いの氏名、住所、連絡先(電話番号)を交換します。
相手車両のナンバープレートも念のため控えます。
相手が業務中の車(タクシーや業者の車等)なら勤務先や保険会社も確認します。
また事故の目撃者がいれば、可能な範囲で連絡先を聞いておくと後で心強い証言が得られます。
停車中の車や壁などにぶつかった場合も、持ち主が分かれば連絡先を確認しておきましょう。
人がいない物損事故でも必ず警察に届出をし、相手がいない場合は後日でも警察経由で持ち主に連絡が行きます。
⑥現場の記録(写真撮影)
スマホなどが使える状況であれば、事故車両や現場の写真を撮っておきます。
自車・相手車の損傷箇所、ブレーキ痕や道路の状況などです。
これは後で事故状況を振り返るのに役立ちますし、保険会社への説明もスムーズになります。
慌ただしい状況ですが、忘れずに行いましょう。
⑦利用者さんと車両の移動
警察官の現場確認が終わり、車が動かせる場合は安全な場所へ移動させます。
自走不可能ならレッカーを手配します。
利用者さんたちは無事であっても動揺しているかもしれません。
一旦事業所のスタッフに迎えに来てもらう手配がついたら、車内で待機いただきましょう。
毛布をかける、水を飲んでもらうなど落ち着けるよう配慮します。
「怖い思いをさせて申し訳ありません。もう少しで他の者が参りますので安心してくださいね。」と声をかけ、安心してもらうことも大事です。
⑧帰所後の報告と記録
事故対応が一段落したら、施設に戻って上司や管理者に改めて詳細を報告します。
社内で定められた事故報告書に、発生日時、場所、状況、原因と思われる事柄、怪我人の有無、対応内容などを記入し提出します。
保険会社への連絡も管理者と連携して行いましょう。
今後の再発防止策も一緒に考え、必要なら運転者への指導や研修を実施します。
補足:物損事故でも必ず報告
走行中に壁やポールに接触して車に傷をつけてしまった、駐車の際に縁石に乗り上げてしまった等の小さな物損でも、「これくらい大丈夫だろう」と自己判断で黙っていてはいけません。
後から問題が大きくなるケースもありますし、修理が必要なのに放置すると安全性に関わります。
必ず上司や車両管理担当者に報告し、適切な対処を仰ぎましょう。
もし報告せずに後で発覚した場合、最悪修理費を自己負担しなければならなくなる可能性もあります。
職員全員が「報告・連絡・相談」を徹底し、事故やヒヤリハット(ヒヤッとした出来事)を共有することで、安全意識が職場全体に広がります。
事故時の対応は普段経験しないだけに難しく感じますが、「けが人の救護」→「安全確保」→「警察・救急への連絡」→「職場への報告」→「記録」という流れを頭に入れておけば落ち着いて対処できます。
事務所に事故対応マニュアルを貼っておくのも良いでしょう。
事故後は当事者の職員も精神的ショックを受けています。
管理者や周囲のスタッフはしっかりメンタルサポートし、萎縮せず今後も安全運転できるようフォローしてあげてください。
送迎後の確認と車両管理
全ての利用者さんを送り届けたら、送迎業務は終わり…ではなく最後の仕上げがあります。
送迎後に行うべきことと、日常の車両管理について確認しましょう。
車内の確認
利用者さんが降車した後、車内に忘れ物が残っていないかチェックします。
席の周りやシートの隙間などを見て、落とし物や持ち帰る荷物(例えば利用者さんのお弁当箱を預かった場合など)がないか確認します。
同時に車内にゴミや汚れがないかも点検し、必要があれば簡単に清掃しておきます。
特に嘔吐などの汚染があった場合は速やかに消毒・清掃し、次の送迎に影響が出ないようにします。
到着後の車両点検
施設に戻ったら、車両の状態をもう一度確認します。
新たに傷やへこみがついていないか、ライトやウインカーが事故等で壊れていないか、タイヤの空気圧は問題ないかなど、一周ぐるっと見て回ります。
出発前と比べて異常があれば必ず報告します。
併せてガソリン残量もチェックし、明日の送迎に備えて給油が必要なら済ませておきましょう。
運行日誌の記入
その日の走行距離や所要時間、出発・帰着の時刻、利用者さんの乗車人数などを運行記録(日誌)に記入します。
最近はデジタルで記録する場合もありますが、紙でも電子でも毎回きちんと記録を残すことが大切です。
運転者自身の体調や、送迎中に起きたヒヤリハット(ヒヤッとしたこと)、車の様子で気づいた点(ブレーキの効きが甘かった等)もあればメモしておきます。
これを怠ると、万一問題が起きたとき原因究明が難しくなりますし、車両管理者から「○○さん、日誌が抜けてますよ」と注意されてしまいます。
鍵の管理
送迎に使った車の鍵は、業務終了後決められた保管場所に戻します。
共有の鍵を各自が持ち歩いてしまうと紛失のもとですし、緊急時に他の人が使えません。
鍵を返却して戸締りを確認し、車上荒らし防止のためにも車両は施錠された屋内外の駐車場に停めます。
エンジンを止めた後、ヘッドライトの消し忘れや窓の閉め忘れがないかも忘れず確認しましょう。
日常的な車両管理の体制
安全な送迎を続けるには、日々の車両メンテナンスと管理体制が重要です。
事業所によっては「車両管理者」という担当者を定めているところもあります。
車両管理者は毎日車の点検を行ったり、各運転者の運行記録をチェックしたりして、車の異常や書類の不備を見つけたらすぐに改善する役割です。
一人の職員が車両管理の責任者になることで、「いつの間にか車に傷がついている」「運転が荒いと苦情が来た」「運行記録が未記入だった」といった問題が減るという効果があります。
送迎車の台数が多い施設では車両管理担当を置くことを検討しても良いでしょう。
その際、担当者だけに負担が偏らないよう手当(例えば月々数千円の手当)を支給するなどの配慮をする施設もあります。
いずれにせよ、全スタッフが車両を大切に扱い、安全運転を心がける意識を持つことが大前提です。
車両管理者がいる場合はその指示に従い、いない場合も各自が「自分が使った車は自分で責任を持って点検・清掃する」くらいの気持ちで管理しましょう。
日常点検の励行
法律でも事業用車両には日常点検が義務づけられています。道路運送車両法第47条の2
難しく構える必要はありませんが、「車に異常がないかを毎日目で見てチェックする」ことを習慣にしましょう。
具体的にはエンジンオイルや冷却水などの油量、ライト類の点灯確認、タイヤの空気圧・摩耗、ブレーキの効き具合など15項目ほどがあります。国土交通省資料
特に送迎車は毎日フル稼働しますから、少しの不調も見逃さないことが安全運行につながります。
「最近ブレーキのききが甘い気がする」「発進時に変な音がした」など感じたら、そのままにせずすぐ整備工場や詳しい人に相談しましょう。
日々の小さな点検と早めの整備が、大事故を防いで利用者さんの命とスタッフ自身の命を守ります。
おわりに
以上、デイサービス/デイケアにおける送迎業務のポイントを総まとめしました。
送迎前の準備では利用者さんの体調と車両チェック、送迎中は安全運転と利用者さんへの目配り、乗り降りの介助では焦らず丁寧に、雨の日は普段以上の注意と工夫、そして緊急時には落ち着いて所定の手順で対処することが大切です。
最後の送迎後の点検や記録まで徹底することで、安心・安全な送迎サービスが提供できます。
送迎業務は一見運転が主体のようですが、実はチームで支える仕事です。
ドライバーだけでなく、他の介護職員も利用者さんの体調変化に気づいたり、ご家族との連絡をとったりと、それぞれ役割があります。
全スタッフが送迎マニュアルの内容を理解し共有することで、現場でスムーズに連携でき、万一の時にも落ち着いて対応できるでしょう。
高齢者の皆さんにとって、送迎車は施設に行くための大切な移動手段です。
安全で快適な送迎が提供されることで、利用者さんは安心してデイサービスまたはデイケアを利用できます。
日々の送迎業務でも「利用者さんの安全と安心が第一」であることを忘れず、時間に追われても焦らず、安全運転・安全介助を心がけてください。
本マニュアルの内容が、皆さんの現場で少しでもお役に立てば幸いです。
【介護事業所の必須研修資料一覧(2025年度版)】
お知らせ①介護サービスごとにわかりやすく、情報公表調査で確認される研修と、義務づけられた研修を分けて記載しています。
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お知らせ②介護職の仕事をしていると、低賃金や物価の高騰、そして将来に対する漠然とした不安がついて回ります。
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