- すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
介護の現場では「ヒヤッとした」「ハッとした」経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
普段は大事に至らなくても、放置すれば大きな事故につながる“事故の芽”です。
本記事では、入浴・移乗・食事・排泄・服薬といった日常場面で起こりやすいヒヤリハット事例を取り上げ、その背景と防止策を具体的に解説します。
また、共有や振り返りを通じてチーム全体で学び合う仕組みづくりの重要性についても触れます。
小さな気づきを組織全体で活かすことで、重大事故を未然に防ぐことができます。
本研修を通じ、現場での安全文化をさらに高めていきましょう。
この記事を読むメリット
- 幅広い事例から学べる
- 具体的な防止策をそのまま活用できる
- チーム全体の安全意識を高められる
では早速みていきましょう。
ヒヤリハット事例と防止策
介護現場で起こりやすい場面別のヒヤリハット事例とその対策例を紹介します。
現場で実際にありそうな状況を想像しながら、対策を自分ごととして考えましょう。
入浴時のヒヤリハット
①脱衣所での転倒
ある利用者さんが立ったままズボンを脱ごうとしてバランスを崩し、転倒しそうになりました。
原因は「立って着替えたこと」と「手すりが近くにないこと」です。
脱衣は必ず椅子に座って行い、手すりのある位置で脱衣させましょう。
滑り止めマットも活用し、職員がそばで声かけ・安全確認を行います。
②浴室内での滑り
脱衣所から浴室に移動した際、利用者さんが足を滑らせ転倒しそうになりました。
床に残った石鹸泡や水滴が原因です。
浴室の床には滑り止めマットを敷き、流し忘れたシャンプーはこまめに流します。
入浴中は利用者さんの脇に手を添え、ゆっくり移動を補助します。
③シャワー温度の管理
浴室で利用者Gさんにシャワーをかけたところ、冷水が出て冷たく驚いてしまいました。
前利用者さんも清掃時に温度が変わっていたことが原因です。
シャワーをかける前に職員が必ず自身の手で温度を確認しましょう。
出始めの温度変化にも注意し、入浴前には少量の湯をかけて確認する習慣をつけます。
移乗・移動時のヒヤリハット
①段差への注意不足
廊下で車椅子を押していたところ、小さな段差で車椅子がひっかかり、利用者さんが転倒しそうになりました。
原因は段差の確認不足と押す速度の出しすぎです。
移乗や移動の際は、マットや段差を事前に確認し、特に屋外では速度を落とすなど慎重に行動しましょう。
②車椅子の足元確認
フットレストに足が落ちたまま車椅子を移動させ、利用者さんの足が車椅子にひっかかりかけました。
職員が利用者さんの足元を十分に確認していなかったことが原因です。
車椅子使用時は移動前に必ず利用者の足がフットレスト内に収まっているか確認し、フットレストに簡易カバーをつけるなど工夫しましょう。
③一人介助の危険
朝食前、ベッドから車椅子に移乗させようとした際、職員が片手で靴を履かせていたため、シーツごとお尻がずれて転倒しそうになりました。
一人での無理な介助が事故を招く事例です。
転落の危険がある場合は必ず二人以上で介助し、職員は利用者さんの横に立つなど適切な姿勢で作業します。
食事中のヒヤリハット
①入れ歯の装着忘れ
ある利用者さんが入れ歯をはめ忘れたまま食事を始めてしまい、誤嚥(むせ)しそうになりました。
職員が入れ歯の有無を確認していなかったことが原因です。
食事前の確認事項として、入れ歯が必要な方は必ず装着しているかチェックし、口腔内を確認してから食事を始めましょう。
②誤嚥の危険
昼食時に利用者Cさんがむせてしまい、何を飲み込んだかわからないまま飲み込んでしまいました。
他スタッフがトイレ介助に行っており、食事中に目が届かなかったことが原因です。
誤嚥が疑われる場合は無理に飲み込ませず吐き出させ、口内の詰まりを確認します。
呼吸状態をよく観察し、いざというときの対応方法(背中を叩く、嘔吐を誘導するなど)を職員間で確認しておきましょう。
③食品の持ち込み管理
利用者Nさんの冷蔵庫に、ご家族の手作り料理が入っていたが、何日前のものかわからず職員がご家族に確認したうえで廃棄しました。
日付や状況が共有されておらず、食中毒のリスクにもなり得る事例です。
厨房や施設内で使用する食品や、ご家庭からの持ち込み食品には日付や内容を記入し、スタッフ全体で情報共有を徹底しましょう。
排泄時のヒヤリハット
①一人でのトイレ介助
トイレ介助中にスタッフの目を離したすきに、認知症の利用者さんが一人で立ち上がろうとして便座から転落しそうになりました。
独り立ちが困難な方を一人にしてしまったことが原因です。
排泄介助中は必ず職員がそばに付き添い、利用者さんが座ったまま安全に動けるよう支えます。
②床の水濡れによる滑落
トイレで尿が床に飛び散り、濡れた床で移乗中に滑って転倒しそうになりました。
介助前に床の状況を点検せず、手すりも使っていなかったことが原因です。
トイレ使用前後は床面が濡れていないか確認し、万が一濡れていたらすぐに清掃します。
移乗時には利用者さんにも手すりや車椅子の肘掛けに手を添えてもらい、安定させながら介助しましょう。
③トイレコールの見逃し
夕方、利用者Iさんのトイレコールに駆けつけたところ、同時に利用者Jさんもボタンを押していたのに気づかず対応が遅れてしまいました。
他の業務に気を取られて、待機中のコールに注意が向いていなかったことが原因です。
トイレ待機中は視野を広く保ち、可能な範囲で目を離さないようにします。
他スタッフと声を掛け合い、複数のコールが重なったときは協力して対応しましょう。
服薬(薬)管理のヒヤリハット
①投薬時間の取り違え
朝食時に本来朝に飲ませる薬が誤って夜用のものと混ざってしまい、誤ったタイミングで服薬するところでした。
薬のセットを管理する方法が不十分で、看護師の確認も行き届いていなかったことが原因です。
薬箱や服薬管理ボックスを時間帯ごとに色分けするなどして、誰が見ても区別しやすい工夫を行いましょう。
②他の利用者への誤投薬
服薬準備中に他の利用者さんの薬も混入し、誤って渡しかけた事例がありました。
これは管理を一人だけで行っていたことが原因です。
薬を取り扱うときは必ず複数名でダブルチェックを行い、渡す前に利用者さん本人にも名前や薬の確認をしてもらう習慣を徹底しましょう。
③服薬タイミングの確認不足
食前薬が必要な利用者Dさんに対して、別の職員が食事を配膳してしまい、薬の服薬前に食事が出ていることに気づかないまま食事を始めてしまいました。
伝達ミスが原因です。
服薬が必要な利用者のテーブルには専用のカードを置く、チェックリストにタイミング欄を設けるなどして、複数人で飲み忘れや順番違いを防ぎましょう。
④誤嚥のリスク(入れ歯など)
利用者Fさんの歯磨きをしていると、入れ歯の隙間に前に飲ませた錠剤が挟まっているのを発見しました。
これは「食後の薬を飲ませた後に口腔内を確認しなかった」ことが原因です。
入れ歯をしている方には、飲む前に入れ歯を外すか装着状態を確認し、飲み込み忘れや誤嚥を防ぎます。
入れ歯がぴったり合わない場合は歯科で調整してもらい、誤飲リスクを減らしましょう。
コミュニケーション・声かけ編
①適切な距離とタイミングでの声かけ
廊下で利用者Aさんに遠くから大声で声をかけたところ、Aさんが驚いてバランスを崩し、転倒しそうになりました。
背後や遠方から不意に声をかけることは、利用者さんを驚かせて転倒や動揺の原因になります。
声かけは必ず近づいて静かなトーンで行い、相手に気づいてもらってから話しかけましょう。
声かけの前に「声をかけていいですか?」と一声かけるだけでも危険回避につながります。
②情報共有不足
具合の悪い利用者さんがいたのに、連絡が他スタッフに十分伝わらず、後から介助に入ったスタッフが状況を把握していなかった……といった例があります。
情報共有や伝達漏れもヒヤリハットにつながります。
日報や申し送りで利用者の状態を細かく伝え合い、「こうしているつもり」と思う前に、必ず相手に確認する習慣をつけましょう。
その他の場面でのヒヤリハット
①送迎・車内移動
利用者Mさんが送迎車のステップから降りるとき、支えきれずに体が座席下に落ちてしまいかけました。
利用者さんの状態や筋力低下を把握せず、支え方を誤ったのが原因です。
利用者さんの調子に応じて「降りるときは必ず補助席から降りる」など工夫し、必要に応じて補助具や二人以上での対応を行いましょう。
また運転中も、いつも通る道だからと気を緩めず、飛び出しなどイレギュラーにも注意して運転します。
②厨房・調理場での安全
調理スタッフは熱湯や油、包丁を使います。
作業中の火傷や切創のリスクがあります。
調理器具の置き場に注意し、料理の温度を確認する、滑りやすい床にはマットを敷くなどして安全を確保しましょう。
また、食材管理では、持ち込まれた食材にラベルをつけたり期限を確認して、食中毒や異物混入を未然に防ぎましょう。
③看護・医療的ケア
注射や点滴、吸引など医療行為もケア現場に含まれます。
薬剤や器具の取り扱いミス、無理な体位でのケアで利用者に負担をかける例があります。
注射針の取り扱いやアレルギーチェックは二人でダブルチェックし、バイタルサインは時間を守って確認・記録しておくなど、常に注意深く行いましょう。
小さな見落としを見逃さない
ヒヤリハットには小さなミスや日常の「見過ごし」が多く含まれています。
「些細なミスを見逃すことで重大な事故に繋がりかねない」という意識を持つことが大切です。
一回の転倒で骨折する重傷事故が起きる前には、数多くの小さな転倒やつまずきが潜んでいます。
職員一人ひとりが常に「もし今のままだと事故につながらないか?」と考え、普段から危険個所のチェックや利用者状態の観察を心がけましょう。
報告・共有・振り返りの重要性
ヒヤリハットは「報告して終わり」ではなく、組織全体で学び取ることが肝心です。
ここでは「報告・共有・振り返り」の重要性についてお伝えします。
再発防止のための報告:
ヒヤリハット報告は決して罰や反省だけを目的としたものではありません。
報告書を書くことで事故につながりかねない要因を明確にし、次回以降同じ状況を回避できます。
また、記録を蓄積すれば新入職員の教育にも役立つ教科書になります。
何よりも事故防止が目的であることを全員で確認しましょう。
情報共有とチーム連携:
ヒヤリハット事例は組織で共有し、対策を考えることが重要です。
一人だけが経験しても活かせない情報も、スタッフ全体に共有すれば他の職員が同じ危険に気づくきっかけになります。
また、事故は人的・環境的・物理的・手順的な要因が重なって起こることが多いため、4つの観点(人・環境・物・マニュアル)から振り返り、チームで改善策を検討しましょう。
失敗から学ぶ文化づくり:
「ミス=悪いこと」という先入観から報告しにくい雰囲気があっては、本当の問題は見過ごされてしまいます。
ヒヤリハットは誰にでも起こり得る「気づき」のきっかけです。
職場全体で気軽に報告し合い、「なぜ起きたのか・どうすれば防げるか」をともに考えましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ヒヤリハットは、ただの「小さな出来事」ではなく、大事故を防ぐための大切な“警鐘”です。
現場で起こった体験を報告・共有し合うことで、同じ危険を仲間が繰り返さずに済みます。
また、個人の責任を追及するのではなく、チーム全体で原因を振り返り、環境や手順を改善していく姿勢が重要です。
本研修を通じて、「失敗から学び合う文化」を職場に根付かせれば、安全意識は自然と高まり、利用者の安心と職員自身の働きやすさにつながります。
小さな気づきを大切にし、チームで守り合う安全文化を築いていきましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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