- すぐに使える研修資料・マニュアル・事例などがほしい
- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
- 現場の職員が興味持ってくれるテーマって何?
- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
介護の現場では、「ヒヤリとした」「ハッとした」瞬間に出会うことは少なくありません。
実際に事故には至らなくても、その背後には大きなリスクが潜んでいます。
こうしたヒヤリハットを「誰の責任か」として隠してしまうのではなく、チームで共有し学び合うことで、重大事故を防ぐ手がかりになります。
本記事では、ヒヤリハットとインシデント・アクシデントの違い、報告を定着させるための仕組みづくり、心理的安全性の確保や多職種での連携方法を具体的に解説します。
ヒヤリハットを「失敗」ではなく「気づき」として捉え、職員全員が安心して声を上げられる職場づくりが、利用者さんの安全と私たち自身の安心につながります。
この記事を読むメリット
- ヒヤリハットの正しく理解できる
- 安全文化づくりの実践方法がわかる
- “責めない”職場づくりのヒントになる
では早速みていきましょう。
ヒヤリハット・インシデント・アクシデントとの違い
まずは、この3つの違いをおさえておきます。
ヒヤリハット:
「あと一歩で大事故・大ケガにつながったかもしれない事象」を指します。実際には事故になっていないものの、「ヒヤリ」「ハッ」と感じる危険な出来事で、重大事故の予兆とも言えます。例:浴室で滑りかけた、食事中に誤嚥しそうになったなど。
インシデント:
実際に事故が起きたが重篤な被害はなかった事例です。例えば転倒したが軽傷で済んだ、服薬ミスがあったが直前で気づいた、など。
アクシデント:
利用者さんや職員に実際に被害が生じた事故です。骨折や入院が必要なケガ、誤薬で重篤な状態になるなどが該当します。これらは一例で、施設ごとに定義やレベル分類が異なります。いずれも“事故の手前”であるヒヤリハットを共有・分析し対策することで、重大事故の発生を未然に防ぐことが重要です。
ヒヤリハットの具体例
介護現場では、移乗・入浴・食事などの場面でヒヤリハットが起こり得ます。
いくつか具体例を挙げてみます。
移乗介助(車椅子~ベッドなど):
車椅子のブレーキが甘く、移乗時に車椅子が動き出して利用者さんが転倒しそうになった。フットレストの固定ミスで足が滑り落ち、転落寸前になった。など例もあります。
歩行・移動援助:
立位・歩行時に不安定な支え方や固定されていない家具に手をかけたため、つまずきかけた事例があります。夜間に暗い廊下で歩いた際、つえのベースで転びそうになった例などもよくあります。
入浴・トイレ:
浴室内で床が濡れて滑りそうになった、トイレ内でマットにつまずきかけたなどの事例が多く見られます。入浴介助中の転倒は重大事故につながりやすいため特に注意が必要です。
食事・誤嚥:
包装紙ごと飲み込みかけた。硬いものを嚥下しそうになった。などの、食事時のヒヤリハットも多発しています。嚥下障害がある利用者さんが誤食しそうになるケースや、姿勢が悪く誤嚥しかけたケースもあります。
服薬:
他利用者さんの薬と間違えかける、服薬のタイミングを誤りそうになるなどのヒヤリハットがあります。日々の服薬管理の仕組みを見直し、チェック体制を強化しましょう。
見守り:
職員がそばにいる状態でも、ちょっとした油断で事故につながることがあります。例えば食事や移動の際に声掛けが遅れて転倒しかけた、排泄介助中にふらつきに気づくのが遅れた、などです。常時の「気づき」が大切です。
レクリエーション・日常生活場面:
レクリエーション中の転倒、体操中の足元不注意、通路でのつまずきなどもヒヤリハットにつながります。活動内容に合わせた環境整備や参加者の状態確認を徹底しましょう。
ヒヤリハット共有の意義と心理的安全性
ここでは、「ヒヤリハットの報告はどんな意義があるのか」「ヒヤリハット報告があがりやすい職場にするには何が大切か」を考えます。
事故防止のチャンス:
ヒヤリハットは重大事故の“サイン”であり、事例を蓄積・分析して対策を講じれば事故発生リスクを減らせます。施設内で問題を職員全体に広め、共有化して再発防止につなげる仕組みづくりが求められます。
組織の学びの機会:
共有することで全職員が同様の危険に気づけるようになり、類似事例の発生を防ぎます。例えば、ある職員が気づいたヒヤリハット体験を全員で確認し合うことで、新たな視点から改善策を検討できます。
心理的安全性の確保:
報告や共有に対し「責めない・罰しない」文化を作ることが前提です。報告者が「自分の評価が下がるかも」「叱られるかも」と感じてしまう職場では、情報が上がりません。逆に、報告しても不利益にならないと明確に示し、むしろ報告を評価することで、職員は安心して声を上げられるようになります。たとえば「報告すれば感謝される」「リスクに早く気づいてくれて助かった」と伝えることが、報告文化の定着に役立ちます。
これらを全職員が意識することで、ヒヤリハットの報告があがりやすい職べ環境を作ることができます。
チームで取り組むためのステップ
ヒヤリハットは「報告書を提出し、上司が読む」だけで終わるものではありません。
チームで取り組むことで、意味のあることになります。
ではどのようにチームで取り組んでいくか、4つのステップで解説します。
①朝礼・ミーティングで共有
朝礼や勤務交代時にヒヤリハット報告の時間を設けると、職員が報告を意識しやすくなります。定例会議や部門会議の冒頭で直近のヒヤリハット事例を共有し、全員で再発防止策を考えましょう。
②掲示・発信
事例をホワイトボードや掲示板、電子カルテ・SNSに掲示することで、日々の業務中にも目に入りやすくなります。重要事例や注意喚起事項は見やすい場所に掲示し、誰でもいつでも学べるようにしましょう。
③記録・振り返りの習慣化
ヒヤリハット報告書を簡潔で書きやすいフォーマットにし、報告時に5W1H(いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どうした)を記入します。定期的に報告書を集計・分析し、安全委員会や職場会議で振り返りを行い、原因究明と対策検討を全員で行います。
④研修・教育への活用
収集した事例は研修資料や事例会で紹介し、介護技術やリスク対応について学び合います。新任研修や定期研修で「気づきの共有」の場を設け、報告意識を高めましょう。
多職種連携による事故防止
介護施設では介護職だけでなく、看護師、機能訓練士、生活相談員、介護支援専門員、管理者など多様な職種が協働しています。
ヒヤリハットの分析や対策検討には、介護スタッフだけでなく他職種も積極的に参加させることが効果的です。
ヒヤリハットに関する会議やミーティングには必ず全員が参加し、職種にかかわらず事例を共有します。
他職種の視点から原因や対策を検討すると抜け漏れが減り、組織全体の安全対策が強化されます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ヒヤリハットは、現場で働く私たちにとって“失敗”ではなく“未来の事故を防ぐためのヒント”です。
大切なのは、一人の体験を職場全体の学びへと変えていくこと。
そのためには、報告を責めずに受け止め、安心して声を上げられる文化をつくることが欠かせません。
日々の業務の中で生まれる小さな気づきを共有し合い、改善策を積み重ねることで、安全で信頼される施設を築くことができます。
ヒヤリハットを組織の成長の糧とし、職員全員で“安心して働ける・安心して暮らせる”環境を育てていきましょう。
それではこれで終わります。
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