宗教的背景を理解した看取りケアとは?信仰に寄り添う最期の支援│ターミナルケアに関する研修資料
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人生の最終段階のケアでは、利用者さんやご家族の宗教的背景に配慮することは、とても重要です。
宗教ごとに死生観や儀式が異なるため、その考え方を理解し、信仰に沿った支援を行うことで、穏やかな旅立ちをサポートできます。
また、ご家族が安心して過ごせる環境を整えるためにも、文化的・宗教的な思いを尊重する姿勢が欠かせません。
この記事では、仏教・キリスト教・神道の背景に合わせた看取りケアのポイントを紹介します。
この記事を読むメリット
- 宗教ごとの看取りケアの違いが分かる。
- 適切な声かけや配慮が身につく。
- 信仰に寄り添った支援ができるようになる。
それでは早速、みていきましょう。
仏教の看取りケアのポイント

仏教では、生と死は輪廻転生(りんねてんせい)という循環の中にあると考えられ、死は終わりではなく新たな始まりと捉えられます。
その背景から、「無常を受け入れる」という静かな姿勢が大切にされ、日本では葬儀の多くが仏式で行われるほど深く根づいた考え方となっています。
以下、仏式による「看取り期の基本的なケア」「ご家族への寄り添いと配慮」「エンゼルケアへの配慮」の3点を具体的にお伝えします。
看取り期の基本的な支援
仏教徒の利用者さまは、臨終が近づくと「枕経(まくらぎょう)」を希望する場合があります。
これは僧侶が枕元でお経を唱え、安らかな旅立ちを願う儀式です。
臨終後には「末期の水」と呼ばれる、唇を潤す行為が一般的に行われます。
この際の介護職のサポートとしては、次のようなものがあります。
- ご家族が行いやすいよう水や綿を準備する
- 静かな環境づくりを整える
- ご家族が声をかけやすい雰囲気をつくる
ご家族がかける言葉は、
「ありがとう」
「お疲れさまでした」
といった感謝や労いがよく用いられ、故人の安心につながるとされています。
また、宗派によっては念仏を唱えることもあり、不安の軽減に役立ちます。
ご家族への寄り添いと配慮
仏教の儀式や習慣は宗派・家庭によって異なるため、まず希望をしっかり確認することが大切です。
たとえば、浄土真宗では末期の水を行わない家庭もあります。
介護職は、
- 無理に儀式を勧めない
- 僧侶を呼びたい場合は早めに手配をサポート
- 読経やお焼香がしやすい静かな環境を整える
といった細かな配慮が必要です。
お線香が使えない施設では、電池式ローソクや香りのスプレーなど代替案を提示するのも良いでしょう。
声かけは宗教的な表現を避け、基本はご家族の気持ちに寄り添った言葉が適しています。
- 感謝
- 労い
- 静かな共感
といった言葉は、どの家庭にも受け入れられやすいものです。
エンゼルケアでの配慮
死後の清拭や整えは、故人の尊厳を保つだけでなく、ご家族の心の整理にもつながる大切な時間です。
可能な範囲でご家族に参加してもらうとよいでしょう。
仏教では、
- 手を合掌に組む
- 数珠を持たせる
といった所作が用いられます。
介護職は丁寧に行いながら、「とても安らかな表情ですね」など温かい言葉を添えることで、ご家族の心を支えることができます。
キリスト教の看取りケアのポイント
キリスト教では、死は終わりではなく「永遠の命への旅立ち」と考えられます。
神のもとに帰ること、天国で再び会えるという希望が根底にあり、旅立ちを祝福するような祈りや儀式が行われます。
カトリックでは「死者のためのミサ」、プロテスタントでは「召天式」が行われるなど、死生観には共通点と宗派ごとの特徴があります。
以下、キリスト教による「看取り期の支援」「臨終後の配慮」「ご家族への配慮」の3点を具体的にお伝えします。
看取り期の支援
終末期には、希望に応じて宗教者を呼ぶことがあります。
カトリック:司祭による「病者の塗油の秘跡(ひせき)」
プロテスタント:牧師による「聖餐式(せいさんしき)」
いずれも、罪のゆるしや救い、天国での平安を祈る大切な儀式です。
介護職は次の点を意識します。
- ご家族の希望を確認し、司祭や牧師への連絡を手伝う
- 宗派を事前に確認して適切な宗教者につなぐ
- 祈りや朗読が行われる際は静かに見守り、敬意ある態度で寄り添う
看取りの場では、
- 聖書朗読(詩編23編など)
- 賛美歌の合唱
- 十字架やロザリオを手に持つ
といった習慣が見られます。
病院・施設では、ロウソクの代わりに電池式キャンドルを使うなど配慮をすると安心につながります。
臨終後の配慮
キリスト教では仏教のような読経や通夜はなく、亡くなった後は簡素な祈りの場が設けられます。
- 枕元に十字架の飾りを置く
- ご家族が祈りを捧げる時間を確保する
- 故人の遺体は清潔に保ち、信仰の象徴(十字架のペンダント等)は外さない
葬儀(告別式)は数日以内に教会で行われるため、安置までの準備を丁寧にサポートします。
ご家族への配慮
声かけでは、仏教的な表現は避け、キリスト教に合う言葉を選ぶことが大切です。
避けたい表現:「ご冥福をお祈りします」
適切な表現:「安らかな眠りをお祈りします」「神様のもとで平安でありますように」
前向きな励まし:「天国でまた会えますね」
祈りの時間を邪魔しない、静かに同席する、必要なときだけそっと手を貸すなど、穏やかな寄り添いが求められます。
キリスト教の看取りケアでは、希望・祈り・敬意が大きな柱となります。
介護職が信者でなくても、ご家族の想いに寄り添い、その時間を共に大切にする姿勢が何よりの支えになります。
神道の看取りケアのポイント
神道では、死は「穢れ(けがれ)」とされ神聖な場所から遠ざけるべきものと考えられています。
一方で、一定の期間が過ぎると故人の魂は家を守る祖霊となり、家族を見守る存在になるという側面もあります。
死は「忌むべき別れ」であると同時に「守り神となる旅立ち」と捉えられているのが特徴です。
葬儀後には五十日祭や一年祭など、祖霊を慰める儀式が続きます。
以下、キリスト教による「看取り期の支援」「儀式・声かけのポイント」「ご家族への配慮」の3点を具体的にお伝えします。
看取り期の支援
神道には仏教の枕経のような儀式はありませんが、臨終直後に行う風習があります。
神棚封じ:自宅の神棚を白紙で覆い、穢れが神に触れないようにする
塩による清め:ご家族が退室する際に塩を用いて身を清める習慣がある
在宅看取りでは、神棚封じの準備を手伝ったり、塩を用意するなどのサポートが求められます。
さらに、亡くなってから五十日間は忌中として静かに過ごす習慣があるため、ご家族の気持ちを乱さないよう落ち着いた環境づくりが大切です。
儀式・声かけのポイント
神道には読経の習慣はありませんが、葬儀や霊祭では玉串奉奠(たまぐしほうてん)や祭詞奏上(さいしそうじょう)が行われます。
介護職はご家族の希望があれば、早めに神職への連絡を手伝いましょう。
声かけの際は次の点に注意します。
避けるべき表現:「成仏してください」「ご冥福をお祈りします」
適切な表現:「御霊のご平安をお祈りいたします」「安らかにお眠りください」
他宗教の概念を持ち込まず、神道の死生観に沿った言い回しを心がけます。
ご家族への配慮
神道では死を「穢れ」と感じるため、介護職はより丁寧な気配りが必要です。
- 遺体に触れた手でご家族に触れる前に清める
- ご家族が静かに故人に寄り添う時間をしっかり確保する
- 泣き崩れるご家族にはそばで静かに見守り、落ち着いてから声をかける
また、故人を清める湯灌(ゆかん)を重視するご家庭もあり、清拭の際には「清らかにお送りしましょうね」と声を添えながら丁寧に行います。
葬儀は通夜祭、葬場祭と続くため、看取り後は神式に対応できる葬儀社へ速やかに引き継ぎます。
「神式でお送りされるとのことですので、葬儀社にお伝えしておきますね」と一言添えると安心が生まれます。
3宗教の看取りケア【比較表】
簡単な比較表は次の通りです。
ぜひ、参考にして下さい。
| 宗教 | 死生観の特徴 | 看取り期の主な行為・儀式 | 家族への声かけのポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 仏教 | 死は無常の一部・輪廻転生の中にある | 枕経、末期の水、念仏など | 感謝・労いを伝える言葉が好まれる | 宗派により儀式の可否が異なる(例:浄土真宗は末期の水なし) |
| キリスト教 | 天国への旅立ち・永遠の命への希望 | 病者の塗油の秘跡、聖餐式、聖書朗読、賛美歌 | 「平安」「神のもとで安らかに」など前向きで温かい表現 | 「ご冥福」など仏教用語は使用しない |
| 神道 | 死は穢れだが、後に祖霊となり家を守る存在へ | 神棚封じ、塩での清め、玉串奉奠 | 「御霊の平安」「安らかに」など穏やかな表現 | 成仏・天国など他宗教の言葉は避ける |
おわりに
いかがだったでしょうか。
看取りの場面では、利用者さんやご家族が大切にしてきた宗教的な思いや価値観が、人生の最終局面でも深く影響します。
だからこそ介護職は、その背景を理解し、できる限り信仰に寄り添った支援を行うことが求められます。
仏教・キリスト教・神道それぞれに固有の儀式や言葉があり、適切な配慮ができることで、ご家族は安心して大切な時間を過ごすことができます。
また、宗教的な作法そのものよりも、相手の気持ちを尊重しようとする姿勢こそが、もっとも心に届く支援になります。
宗教の違いを理解することは、介護職がより深く寄り添うための大切な視点です。
これからの看取りケアに、ぜひ今日学んだ知識を生かしていただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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