この記事を読む価値
- ベテラン職員から新人職員まで学べる内容です。
- 読み進めるだけで研修にできます。
- 極力、難しい表現は避けてあります。
早速、見ていきましょう。
そもそも「倫理」ってなに?
「倫理」とは、善い行い・悪い行いを判断するための心のルールであり、人が社会で正しく生きるための“道しるべ”です。
法律のように罰則はありませんが、人として・専門職としてどうあるべきかを考えるための大切な基準です。
介護の現場では、利用者さんの人生に深く関わる仕事だからこそ、倫理観をもって行動することが求められます。
介護職に必要な倫理の基本には、
- ルールを守る
- 人の役に立つ
- 責任ある行動をとる
- 人として成長する
- 良いコミュニケーションを心がける
などがあります。
倫理と法律の違いは、法律が外側からの強制力を持つのに対し、倫理は内側から自分を律する考え方です。
ただし、介護福祉士にも「誠実義務」「秘密保持義務」「信用失墜行為の禁止」など、法的に定められた倫理的義務があります。
これらは罰則のためだけでなく、利用者さんとの信頼関係を築き、良いケアを行うための基盤となります。
現場では、教科書通りにいかないことや、判断に迷う場面が日常的にあります。
たとえば、自立支援を重視したいけれどご家族の希望を優先せざるを得ないときや、利用者さんの希望と施設の運営が合わないときなど、ジレンマが生じやすい状況です。
こうしたとき、倫理綱領を基に話し合い、共通の価値観を持って対応できるチームづくりが重要です。
倫理を意識して行動することで、利用者さんの尊厳と権利、プライバシーを守り、質の高い介護を提供できます。
倫理は、介護職が信頼され、誇りをもって働くための土台です。
忙しい日々でも、定期的に自分の行動を振り返り、「これは正しい対応だったか?」と問い続ける姿勢が、より良いケアにつながっていきます。
介護における「倫理」の基本5原則
では、介護における倫理の基本となる5つの原則をご紹介します。
1. 利用者の尊厳と自立を守る
介護の基本は、どんなときでも利用者さんを一人の人として尊重することです。
たとえ障害や認知症があっても、「その人らしく生きる権利」があります。
私たちは、差別せず、心身の状態に合わせた支援で自立を後押しすることが求められます。
2. 自己決定を尊重する
利用者さんが「自分で選ぶこと」は、とても大切な権利です。
私たちは、利用者さん本人の意志を尊重し、その判断を支えるために情報をわかりやすく伝える必要があります。
自分の価値観を押しつけることなく、利用者さんの「こうしたい」という思いに寄り添った支援が大切です。
3. プライバシーと個人情報を守る
介護では、利用者さんの身体や生活に深く関わるため、個人情報やプライバシーの扱いには特に注意が必要です。
業務で知ったことは職場の外で話さない、記録の管理も慎重に行うなど、信頼を損なわない行動が求められます。
4. 公平・公正なケアを行う
すべての利用者さんに対して、平等にケアを提供する姿勢が大切です。
性別や家庭環境、性格にかかわらず、誰もが同じように尊重され、必要な支援を受けられるよう心がけましょう。
私情をはさまず、公平な判断で対応することが求められます。
5. 専門職としての責任と誠実さ
私たち介護職は専門職です。
日々のケアが利用者さんの生活に大きな影響を与えるため、知識や技術の習得はもちろん、自分の行動に責任を持つことが求められます。
他職種との連携や、課題への柔軟な対応も重要です。
この5つの原則を意識することが、信頼される介護職への第一歩です。
日々のケアの中で、自分の行動が倫理的であるかを振り返りながら、質の高い支援を心がけましょう。
日本介護福祉士会の「倫理綱領」って?
日本介護福祉士会の倫理綱領は、介護福祉士が専門職として業務を行ううえでの基本的な価値観や行動の指針を示すものです。
1995年に制定されて以降、介護現場での判断基準や行動のよりどころとして活用されており、「介護のプロとしてどう行動するか」を支える“心の土台”ともいえる存在です。
この綱領の前文では、「誰もが安心して地域で暮らし続けられる社会の実現」を目指す姿勢がうたわれています。
そして、介護福祉士には専門知識・技術だけでなく、倫理的自覚をもって最善のサービスを提供することが求められています。
綱領の中では、特に以下の点が強調されています。
利用者の尊厳と自立を守ること
差別せず、尊厳を大切にしながら、できることはできるように支援する。
自己決定の尊重
本人の意思を尊重し、その人らしい生活が送れるよう支援する。
プライバシーと個人情報の保護
職務上知り得た情報を守り、記録や対応にも十分に配慮する。
公平・公正なケアの提供
すべての利用者に対して公平な態度で接し、偏りのない支援を行う。
専門職としての責任と誠実さ
常に学び続け、根拠に基づいた質の高いケアを提供する姿勢を持つ。
加えて、他職種との連携、地域福祉への貢献、後進の育成など、社会的な責任にも言及されています。
現場では、「忙しさ」や「人手不足」で倫理が後回しになりがちですが、だからこそ倫理綱領に立ち返る姿勢が必要です。
自分の言動を振り返ることが、利用者さんの安心につながり、介護職としての誇りを支えるのです。
こんなときどうする? 現場で迷いやすい事例
介護現場では、日々の対応の中で「これは本当に正しかったのだろうか?」と迷う場面に多く直面します。
特に、入浴の拒否やご家族との意見の食い違い、認知症の方への対応など、正解が一つではない問題が多くあります。
そんなとき、まず押さえておきたいのが「倫理的判断の4つの視点」です。
これは、介護職が判断に迷ったときに、どこに視点を置いて行動を決めればよいのかを考える“ものさし”になります。
1、自律尊重の原則
利用者さん本人の意志や選択をできる限り尊重するという視点です。
2、善行の原則
利用者さんやご家族にとって最良の結果になるように配慮する考え方です。
3、無危害の原則
利用者さんに害を与えず、できるだけ危険を避けること。
4、正義・公平の原則
すべての人に対して平等で公正なサービスを提供することが求められます。
たとえば、入浴を拒否された場合、まずはその理由を聞くことが大切です。
「入りたくない」という利用者さんの気持ちを尊重する(自律尊重)一方で、清潔保持の必要性や健康への影響を考慮する(善行)、無理に入浴させて心身に害を及ぼさないように配慮する(無危害)といった視点をバランスよく検討します。
「今日は体を拭くだけにする」「時間帯を変えてみる」など、選択肢を広げることで、本人の意向を尊重しつつ必要なケアにつなげることが可能です。
また、ご家族と利用者さんの意見が違う場面では、誰の意志を優先すべきかというジレンマに直面します。
基本は本人の意思を尊重する(自律尊重)ことですが、ご家族の支援状況や意見も無視はできません。
このようなときは、ケアマネジャーや看護師などと連携し、本人のニーズや生活の希望を丁寧に聞き取り、全員で納得できる落としどころを探ることが求められます。
こうしたプロセスも私たちの重要な役割です。
さらに、認知症の方に対して「方便(嘘)」を使うべきかという難しい課題もあります。
本人に事実を伝えることで混乱や不安を招く場合は、あえて事実とは異なる対応を取ることが「善行」や「無危害」に沿うこともあります。
例えば、末期がんであることを知らない利用者さんの希望に寄り添い、その気持ちを否定せずに穏やかに対応するという事例がそれにあたります。
ただし、こうした判断は一人で行わず、チームやご家族としっかり話し合いながら方針を決めることが必要です。
悩んだときは、「状況の把握 → 倫理的課題の特定 → 4つの視点からの検討 → チームでの話し合い → 実践 → 振り返り」というプロセスで判断を深めることが大切です。
介護の現場では、法律だけでなく、介護職としての高い倫理観と専門性が必要です。
日々の業務の中でも、「これは誰のためのケアか?」と立ち止まり、最善を考える姿勢が、信頼される介護につながります。
倫理は私たち介護職の土台であり、利用者さんの尊厳を守るための心の支えなのです。
明日からできる!倫理を活かした関わり方
私たちの仕事は、利用者さんの生活に深く関わり、身体に直接触れる機会も多いため、倫理が欠けてしまうと、相手を不利益な状況に追い込んでしまうリスクがあります。
だからこそ、倫理の理解と日々の実践が欠かせません。
では、明日からでも実践できる、倫理を活かした関わり方を3つ紹介します。
丁寧な言葉遣い・声かけの工夫
倫理の乱れは、まず「言葉」に表れやすいものです。
たとえば、「早くして」「なんでできないの?」といった乱暴な口調や、「さっきもトイレ行ったでしょ」「動かないでって言ったよね」などの命令的な声かけは、利用者さんの心に大きなダメージを与える可能性があります。
日本介護福祉士会の倫理綱領でも、利用者さんの基本的人権の尊重と、尊厳を大切にする姿勢が強調されています。
言葉遣いはまさに、その人の尊厳を直接守る手段です。
介護を受ける側の立場で「どう感じるか」を常に想像し、「大切にされている」と感じてもらえるような配慮ある声かけを意識しましょう。
これは「利用者本位」や「無危害の原則」にも通じる実践です。
倫理観は、特別なことではなく、日常の中の“ちょっとした配慮”から始められるのです。
チーム内での相談・共有のすすめ
倫理的な判断は、一人で抱え込むものではありません。
介護の現場ではマニュアル通りにいかない場面が多く、迷いやジレンマがつきものです。
そんなときは、周囲と相談し、チームで考えていくことが重要です。
他の職員の意見や視点を知ることで、自分だけでは気づけなかった考え方に触れられることもあります。
職場全体で共通の認識や倫理観を育てていくことが、質の高いケアの基盤になります。
日本介護福祉士会倫理綱領でも、他職種との連携・協力が重視されており、チームで支えるケアの中にこそ倫理の実践があります。
日々の振り返りで倫理観を育てる
倫理は「当たり前のこと」と思われがちですが、忙しい日々の中で意識し続けるのは簡単ではありません。
だからこそ、定期的に立ち止まり、自分の行動を振り返る時間が必要です。
たとえば、次のようなことが重要です。
定期的な自己チェック
「この対応は倫理綱領に沿っていたか?」「利用者さんの意思を尊重できていたか?」と、自律尊重・善行・無危害・正義の4原則に照らして振り返ってみましょう。
自己覚知の大切さ
自分の感情や思い込みが判断に影響を与えていないかを確認します。
無意識の偏りに気づくことが、より客観的で柔軟な対応につながります。
研修やグループワークへの参加
他の職員と考えを共有し合うことで、自分の考えに新たな視点を加えることができます。
実際の事例を用いた討議は、判断力の向上に効果的です。
倫理は「心のコンパス」
介護職にとって倫理は、単なるルールではなく「よりよいケア」を実現するための“心のコンパス”です。
特に新人の方にとっては、この倫理観を早い段階から意識することが、今後のケアの質に大きく影響します。
介護現場では、利用者さんの不自由な部分に直接関わり、身体に触れる場面も多いため、倫理観が欠けていると相手を傷つけたり、不利益な状況を招くおそれがあります。
丁寧な言葉遣いや声かけを心がけることは、利用者さんの尊厳を守るだけでなく、「利用者本位」や「無危害の原則」といった基本的な倫理の実践にもつながります。
新人のうちからこうした倫理を意識することで、ケアの中で何が大切なのかを考える力が育ちます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
忙しい現場でも、倫理を意識することで、利用者さんの尊厳や安心、安全な暮らしを支えることができます。
特に新人の方は、最初から倫理的な視点を持つことで、ケアの質や判断力を大きく伸ばすことができます。
迷ったときこそ、自律尊重・善行・無危害・公平という視点を思い出し、チームと連携しながらよりよいケアを目指しましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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