介護施設が停電したときの対応【緊急時の対応に関する研修】
- 介護施設で働く介護職の方
- 停電が起きたときの対応に不安がある方
- 夜勤中の突然の停電に備えておきたい方
- 停電による事故や利用者さんへの影響を防ぎたい方
- 緊急時の対応やBCP研修について学びたい方
この記事を読むメリット
- 介護施設が停電したとき、まず何をする?
- 停電したときに想定されるリスク
- 停電直後に行いたい5つの対応
- 夜間に停電した場合は特に注意
- エレベーターが止まったときの対応
- 電気を使う医療・介護機器への対応
- 認知症の利用者さんへの対応
- 停電中のトイレ・排泄介助はどうする?
- 空調が止まったときの注意点
- 水道・給湯が使えない場合
- 食事・水分補給はどうする?
- 電話・インターネットが使えない場合の連絡方法
- 非常用電源・発電機を使うときの注意点
- 「停電したら誰が何をするか」を決めておく
- 停電時に確認するチェックリスト
- 事例で考える「夜間に突然停電したら?」
- 停電に備えて普段から準備しておくもの
- 施設で決めておきたい停電時の対応ルール
- 停電後に行う確認と記録
- おわりに
介護施設が停電したとき、まず何をする?

停電が起きた直後に大切なのは、原因を探すことよりも、利用者さんと職員の安全を確保することです。
特に夜間は、突然施設内が暗くなることで利用者さんが不安になったり、立ち上がって移動しようとしたりすることがあります。
まずは職員同士で声を掛け合い、利用者さんの安全を確認します。
「大丈夫ですよ。現在、停電しています。すぐに復旧しますからね。」
などと落ち着いて声をかけることも重要です。
厚生労働省のBCPガイドラインでも、災害発生時には安否確認や応急救護など、通常時とは異なる「災害時業務」が発生するため、あらかじめ役割や体制を決めておくことが重要とされています。
停電したときに想定されるリスク
停電は「電気がつかない」だけの問題ではありません。
照明が消えることで転倒リスクが高くなるほか、エレベーターが停止すると移動が制限されます。
また、空調が停止すれば夏場は熱中症、冬場は低体温などのリスクにもつながります。
さらに、施設によっては水道ポンプ、給湯設備、電話、インターネット、電子錠、ナースコールなどにも影響が出ることがあります。
そのため、停電時には「電気」だけを見るのではなく、電気が止まることで何が使えなくなるのかを考える必要があります。
停電直後に行いたい5つの対応
次の5つの対応は必ず必要です。
覚えておきましょう。
①利用者さんの安全確認
まず、利用者さんにケガがないか確認します。
特にトイレへ移動しようとしている方、歩行が不安定な方、夜間に起きることが多い方には注意が必要です。
②転倒・転落を防ぐ
暗い状態では、普段なら問題なく歩ける場所でも危険になります。
懐中電灯や非常灯を使用し、必要に応じて利用者さんを居室や安全な場所で待機してもらいます。
③非常灯・懐中電灯を確認する
「どこにあるかわからない」では、緊急時に役に立ちません。
普段から保管場所を全職員が把握しておくことが大切です。
④医療機器・介護機器を確認する
酸素濃縮器、吸引器、電動ベッド、電動車いすなど、電気を必要とする機器を使用している利用者さんを優先して確認します。
どの機器を非常用電源につなぐのか、代替方法は何かを、施設のBCPや機器の取扱説明書に沿って確認します。
⑤施設内の被害状況を確認する
電気だけでなく、水道、電話、インターネット、エレベーターなども確認します。
厚労省のガイドラインでも、復旧時に確認する項目として「電気・水道・電話・インターネット・エレベーター」などを整理する例が示されています。
夜間に停電した場合は特に注意
夜間の停電は、日中よりも危険が増します。
施設内が暗くなることで、利用者さんが不安になり、普段と違う行動をとる可能性があるからです。
認知症の利用者さんの場合は、環境の変化によって混乱が強くなることも考えられます。
「何が起きたのかわからない」という不安を少しでも減らすため、職員が落ち着いて声をかけ、できるだけ普段と同じような安心できる環境をつくります。
エレベーターが止まったときの対応
停電するとエレベーターが停止することがあります。
利用者さんや職員が閉じ込められていないか確認し、閉じ込めが発生した場合は、施設の手順に従って対応します。
また、エレベーターが使えない状態では、車いすや歩行器を使う利用者さんの移動が大きく制限されます。
「階段を使えばいい」と簡単に考えるのではなく、誰を、どこへ、どの方法で移動させるのかを施設として決めておく必要があります。
電気を使う医療・介護機器への対応
介護施設には、電気が止まることで使用できなくなる機器があります。
特に生命や健康に直結する機器については、優先順位を決めておくことが重要です。
厚労省のBCPでは、災害時に「食事・排泄・与薬」などを重要業務の例として挙げており、医療依存度の高い利用者が多い施設では「医療的ケア」も重要業務に含める必要があるとしています。
「停電したら何を止めてよいか」だけではなく、「何を絶対に止めてはいけないか」を決めておくことがポイントです。
認知症の利用者さんへの対応
停電によって急に環境が変わると、認知症の利用者さんが不安になったり、普段とは違う行動をとったりすることがあります。
そのため、
「停電していますが、大丈夫ですよ」
「職員がそばにいます」
など、安心できる言葉をかけます。
大切なのは、職員自身が慌てないことです。
職員が不安そうにしていると、その雰囲気が利用者さんにも伝わります。
停電中のトイレ・排泄介助はどうする?
停電すると、電動トイレや照明、給水設備などに影響する場合があります。
「排泄は普段どおりできる」と決めつけず、施設の設備がどこまで使用できるのかを確認します。
水が使えない場合には、簡易トイレやおむつなど、代替手段が必要になることがあります。
「食事・排泄・水分補給」などを重要業務として、施設ごとに継続方法を検討しておきましょう。
空調が止まったときの注意点
停電によって空調が使えなくなる場合があります。
夏場なら熱中症、冬場なら低体温への注意が必要です。
室温だけを見るのではなく、利用者さんの顔色、発汗、寒気、意識状態、体調変化なども確認します。
特に体温調節が苦手な高齢者や、体調を崩しやすい利用者さんについては、優先的に観察することが大切です。
水道・給湯が使えない場合
停電によって、建物の給水ポンプや給湯設備が止まることがあります。
ただし、停電したから必ず断水するわけではありません。
施設の構造によって異なるため、実際に水が使えるか確認する必要があります。
水が使用できないことを想定して、飲料水や生活用水、簡易トイレなどの備えも必要です。
厚労省のBCPガイドラインでは、水について「1人1日3L、3日で9L」を目安とする例も示しています。
食事・水分補給はどうする?
厨房設備や冷蔵庫などが使えなくなる可能性があります。
その場合でも、水分補給や食事を完全に後回しにするわけにはいきません。
ライフラインが停止した場合を想定して、飲用水、栄養補助食品、簡易食品などの代替手段を準備しておきましょう。
普段から「電気がなくても提供できる食事は何か」を考えておくと、いざというときに動きやすくなります。
電話・インターネットが使えない場合の連絡方法
停電によって固定電話やインターネットなどが使えなくなる可能性もあります。
そのため、連絡手段を一つだけに頼るのは危険です。
厚労省のガイドラインでも、災害時には複数の連絡手段を準備しておくことや、緊急連絡網を定期的にメンテナンスすることが示されています。
施設の電話が使えないときに、職員同士、管理者、家族、関係機関へどのように連絡するのかを事前に決めておきます。
非常用電源・発電機を使うときの注意点
非常用発電機がある施設では、誰が操作するのか、どの設備を優先して電源につなぐのかを決めておきます。
介護職が独断で電気設備を操作するのではなく、施設の手順や設備担当者の指示に従うことが基本です。
また、燃料を使用する発電機などは、一酸化炭素中毒や火災にも注意が必要です。
「停電したら誰が何をするか」を決めておく
実際の現場では、「停電しました。さて、誰が何をしますか?」となると、対応が遅れてしまいます。
そのため、次のような役割をあらかじめ決めておきます。
- 利用者さんの安否確認
- 設備確認
- 非常用電源
- 情報収集
- 家族や関係機関への連絡
停電時に確認するチェックリスト
停電したら、次のような項目を順番に確認できるようにしておくと便利です。
□ 利用者さんにケガはないか
□ 夜間の場合、居室内の安全は確保できているか
□ 非常灯・懐中電灯は使用できるか
□ エレベーターに閉じ込められた人はいないか
□ 医療・介護機器は正常に動いているか
□ 空調は使用できるか
□ 水道・給湯は使用できるか
□ 電話・インターネットは使用できるか
□ 非常用電源は使用できるか
□ 飲料水・食料・衛生用品は足りているか
□ 管理者への報告はできているか
□ 必要な外部連絡ができているか
こうしたチェックリストは、施設の設備や利用者さんの状況に合わせて作成することが大切です。
事例で考える「夜間に突然停電したら?」
たとえば、夜間に突然施設全体が停電したとします。
そのとき、最初から「原因は何だろう」と考えるのではなく、
「利用者さんは安全か?」
「転倒している人はいないか?」
「医療機器を使っている人は大丈夫か?」
「エレベーターの中に人はいないか?」
という順番で確認していきます。
その後、管理者へ報告し、施設のBCPや停電時のマニュアルに沿って対応します。
ここで重要なのは、停電対応を一人の職員の判断だけに任せないことです。
停電に備えて普段から準備しておくもの
停電は、起きてから準備することができません。
懐中電灯、乾電池、飲料水、簡易トイレ、食料、衛生用品などの備蓄だけでなく、医療・介護機器の代替方法や連絡手段も確認しておきます。
厚労省は、自然災害BCPについて、備蓄品をリスト化し、期限や在庫を定期的に確認することも示しています。
施設で決めておきたい停電時の対応ルール
停電時の対応は、施設によって大きく異なります。
そこで、
「停電発生時の第一報は誰にするのか」
「誰が利用者さんの安全確認をするのか」
「非常用電源をどの設備に使うのか」
「電話が使えないときはどう連絡するのか」
「停電が何時間続いたらBCPを本格的に発動するのか」
などを施設ごとに決めておきます。
すでにBCPがある施設でも、実際に職員が迷わず動ける内容になっているか確認することが重要です。
停電後に行う確認と記録
電気が復旧したからといって、すぐに通常業務へ戻せるとは限りません。
設備に異常がないか、水道や電話が復旧しているか、医療・介護機器が正常に動作しているかなどを確認します。
また、停電中に起こった事故や利用者さんの体調変化、対応内容なども記録します。
おわりに
いかがだったでしょうか。
介護施設の停電対応で一番大切なのは、「停電したときに慌てないこと」です。
そのためには、停電した場合にどのようなリスクが起こるのかを職員全員が知り、誰が何をするのかをあらかじめ決めておく必要があります。
停電は、いつ起こるかわかりません。
「懐中電灯はどこ?」
「発電機は誰が使う?」
「電話が使えなかったらどうする?」
「電気が止まったら、まず誰を確認する?」
こうしたことを、平常時から職員同士で確認しておくことが、利用者さんの安全を守ることにつながります。
今回の記事を、施設のBCPや災害訓練を見直すきっかけとして活用してみてください。
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