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- 資料作成を急いでいる、でもちゃんと伝わる内容にしたい
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- 去年と同じ内容じゃまずいよな…
- 研修担当じゃないけど、あの人に教えてあげたいな
ヒューマンエラーとは?介護現場における定義と特徴

まず、「ヒューマンエラー(human error)」とは、人間の不注意や判断ミスによって意図せず発生するミスや事故のことを指します。
わざとではなく「ついうっかり」起きてしまう失敗全般を意味し、もちろん介護の現場でも起こり得ます。
ヒューマンエラーには、大きく分けて次の2種類があります。
ついつい・うっかり型:
無意識のうちに起こるミス。手順を飛ばしたり、注意がそれてしまうなど。
意図的な手抜き型:
本来やるべき手順を省略するミス。ただし介護現場で多く見られるのは「うっかり型」です。
では、介護におけるヒューマンエラーには具体的にどんなものがあるでしょうか。
代表的な例を挙げると次のとおりです。
- 誤薬:別の利用者に誤って薬を渡してしまう
- 食事介助ミス:誤嚥や窒息を引き起こしてしまう
- 身体介助ミス:移乗の際に利用者を落下させてしまう
- 記録漏れ:体調変化の記録を忘れ、対応が遅れてしまう
いずれも悪意のない小さなミスですが、高齢の利用者さんにとっては重大な事故につながることがあります。
人間は誰でもミスをする生き物です。
どんなに注意しても、ヒューマンエラーを完全になくすことはできません。
しかし大切なのは、ミスが起きたときにどう対処し、どう教訓として生かすかです。
介護現場でもヒューマンエラーを正しく理解し、チームで向き合うことで、利用者さんの安全と安心を守ることができます。
なぜヒューマンエラーは起きるのか?
ヒューマンエラーが起きる背景には、さまざまな要因があります。
介護の現場では、次のような原因が重なってミスが発生することが多いです。
思い込み・先入観
「きっと大丈夫」「今まで問題なかったから今回も平気」といった思い込みは危険です。
先入観によって正しい判断ができなくなり、確認を怠る原因になります。
無意識のうちに起きることが多く、後から「なぜあのとき確認しなかったのか」と振り返っても理由がはっきりしないケースが多いのが特徴です。
確認不足・うっかりミス
いつもと同じ流れで作業していると、「今回も同じだろう」と油断して確認を省いてしまうことがあります。
その結果、小さな見落としが大きなミスにつながることもあります。
知識・経験不足
新人職員の場合、正しい方法を知らずに誤ったやり方を続けてしまうことがあります。
また、経験豊富な職員でも新しい介護機器やケア手法への理解不足からエラーを起こす場合があります。
教育体制の整備と、継続的な学びが欠かせません。
連絡ミス(情報共有不足)
スタッフ間の申し送りや報告が不十分だと、重大な見落としにつながります。
たとえば、体調が悪化した利用者さんの情報が夜勤者に伝わっていなければ、転倒や誤嚥などの事故を招く恐れがあります。
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の徹底が大切です。
慣れによる気の緩み
仕事に慣れるほど、「これくらい大丈夫」と過信しがちになります。
その結果、チェックを省いたり、基本手順を飛ばしてしまうことがあります。
ベテラン職員ほど「初心に戻る意識」を忘れないようにしましょう。
疲労・ストレス
介護現場では心身の疲れが蓄積しやすく、集中力の低下を招きます。
特に夜勤明けや連勤が続くと、普段ならしないようなミスを起こしやすくなります。
十分な休息とサポート体制の確保が必要です。
ヒューマンエラーは職員の注意力だけでなく、環境的な要因も影響します。
利用者さんの体調変化や認知症の症状、施設内の照明・動線、人手不足による見守り不足など、複数の要素が重なって事故が起きることも少なくありません。
つまり、ヒューマンエラーは「人の問題」だけでなく「環境と体制の問題」でもあるのです。
職員一人ひとりが注意するのはもちろん、現場全体でエラーを減らす仕組みを整えることが大切です。
実際にあった事例から学ぶエラーとその影響
食事介助中に利用者さんが突然むせ込むなど、「ヒヤリ」とする場面は介護現場では珍しくありません。
日常のケアの中でも、ちょっとした油断が思わぬ事故につながることがあります。
ここでは実際に起きた事故の事例をもとに、ヒューマンエラーがどのような影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
厚労省の調査では、介護施設で起きた事故のうち「誤嚥」が約2割、「転倒・転落」が約6割を占めるとされています。
特に転倒事故は発生件数が多く、現場でも注意が必要です。
以下に代表的な事例を紹介します。
ケース1:誤薬事故
新人職員が誤って別の利用者さんの薬を渡してしまい、服用した利用者さんが高熱とショック症状を起こして入院した事例です。原因は、複数の職員が同時に投薬準備をしていたことや、確認体制の不備でした。新人への教育不足も課題として挙げられています。
ケース2:誤嚥事故
嚥下機能が低下している利用者さんへの食事介助中、食事形態や見守りが不十分だったため、食べ物を喉に詰まらせて誤嚥性肺炎を発症した事例です。対応策として、ミキサー食への変更や、職員がそばで観察を続ける体制の強化が求められました。食事介助時の慎重な観察が命を守ります。
ケース3:転倒・転落事故
移乗介助の際に職員が誤った方法でサポートし、利用者さんが床に落ちて骨折した事例です。施設内で移乗に関するマニュアルが整備されておらず、職員研修も不足していたことが要因とされています。正しい介助技術とマニュアル整備の重要性が改めて示されたケースです。
これらの事例はどれも利用者さんの命や健康を脅かすだけでなく、施設の信頼低下や職員の精神的ダメージにもつながります。
介護現場では、ヒヤリとした体験や実際の事故を「教訓」として共有し、同じミスを繰り返さない仕組みを整えることが何より大切です。
介護職ができるヒューマンエラーの“未然防止”習慣
ヒューマンエラーを未然に防ぐためには、日々のちょっとした心がけが大きな差を生みます。
ここでは、今日から現場で実践できる習慣を紹介します。
①「これくらい大丈夫」は禁物。確認を省略しない
慣れていても、確認作業は必ず行いましょう。薬の名前や量、食事形態、車いすのブレーキ位置などを「たぶん合っている」と思わず、一つずつ確実にチェックすることが大切です。指差し呼称(指差し確認)を取り入れて、ダブルチェックを徹底しましょう。
②報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底する
「自分の判断で大丈夫」と抱え込まず、気づいたことはすぐ共有しましょう。利用者さんの体調や転倒リスクに関する情報を早く伝えることで、チーム全体の対応がスムーズになります。小さなことでも報告し合う文化が、事故を防ぐ土台になります。
③利用者さんの“いつもと違う”に敏感になる
毎日接していると変化を見落としがちです。表情、声のトーン、食事量、歩行の様子などに注意を払い、少しでも違和感があればすぐに報告しましょう。小さな気づきが大きな事故を防ぐ第一歩です。
④心と体の余裕・振り返りの習慣を持つ
介護職自身が疲れていては、注意力も低下します。十分な休息と自己管理を意識し、ヒヤリとした経験はチームで共有・振り返りましょう。「なぜヒヤリとしたのか」「どう防げたか」を考える習慣が、安全で安心な介護につながります。
チームで取り組む!職場全体のエラー防止体制
ヒューマンエラーを防ぐには、個人の努力だけでなく、職場全体での仕組みづくりが欠かせません。
事故を完全にゼロにするのは難しいものの、チームで情報を共有し、安全対策を徹底することで重大な事故を防ぐことができます。
特に効果的なのは、次のような取り組みです。
ヒヤリハットや事故事例の共有:
日々の業務で起きた「ヒヤリ」とした出来事を持ち寄り、原因を分析して共通認識を深めます。学びを全員で共有することで、「次は起こさない」意識が育ちます。
定期ミーティングや研修の実施:
実際の事例をもとに原因と対策を話し合う研修は、理解を深め、現場での応用力を高めます。お互いに意見を交わすことで、エラー防止の意識が浸透します。
仕組みとツールの活用:
服薬のダブルチェック制度や見守りセンサーなど、機器やICTを活用して「人の注意に頼らない体制」を整えましょう。
また、職場の雰囲気づくりも大切です。
新人でも遠慮なく発言できる環境があれば、違和感をすぐに報告できます。
管理者はシフトや人員配置を見直し、特定の職員に負担が集中しないよう配慮することも重要です。
チーム全員で支え合い、情報と意識を共有することで、うっかりミスを防げる安全な職場づくりが実現します。
失敗を責めず、学びにつなげる「再発防止」の考え方
どんなに注意していても、ヒューマンエラーが起きることはあります。
大切なのは、失敗した人を責めるのではなく、そこから何を学び、どう改善するかという姿勢です。
個人の責任を追及するだけでは、施設全体の課題は解決しません。
「なぜ起きたのか」「どう防げたのか」をチーム全員で考えることが再発防止の第一歩です。
スタッフが安心して報告できる職場環境を整えることも重要です。
ミスを隠さず報告できれば、早期対応ができ、同じ失敗を繰り返さずに済みます。
事故の経緯や原因を共有し、必要に応じてマニュアルの改善や研修の実施につなげましょう。
ポイントは“人を責める”のではなく、“仕組みを見直す”ことです。
また、日頃から報告や相談がしやすい風通しの良い職場づくりを意識しましょう。
お互いを責めるのではなく、支え合って成長できるチームこそ、安全で安心な介護を実現できます。
失敗は責めるものではなく、学びのチャンスです。
共有と改善を重ねながら、事故を減らす職場を目指しましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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