介護現場では、高齢者や抵抗力の弱い方々を守るため、感染症や食中毒の予防がとても大切です。
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、多くの事業所で衛生管理の重要性が再確認されるようになりました。
本記事では、介護職員向けの感染症・食中毒研修の内容や、実践で役立つ知識・技術をわかりやすくまとめています。
また、研修後に使える感想レポートの例文も紹介し、立場ごとにどのような学びや気づきがあるのかを具体的に伝えます。
新人からリーダー職まで、すべての職員が現場で活かせる内容です。
研修の目的と概要

介護施設や在宅介護では、高齢者や障がい者が共同生活し、抵抗力が低下している利用者sさんが多いため、感染症が発生すると重症化しやすく集団で広がるリスクがあります。
そのため研修では職員が最新の感染症・食中毒に関する基礎知識を学び、日々の業務で感染経路を断つ意識・技術を高めることを目的とします。
たとえば研修内では「持ち込まない・拡げない・持ち出さない」という基本原則を徹底学習します。
また、令和3年度の介護報酬改定で全ての介護サービスに感染症対策が義務付けられ、感染対策委員会や指針の整備、定期的な研修実施が法律で求められています。
研修によってこれら法令対応と感染防止の意識向上を図り、利用者さん・職員双方の生命と健康を守る体制づくりを目指します。
感染症対策研修で学ぶこと
感染症対策研修では大きく2つのことを学びます。
- 感染症や食中毒の基礎知識
- 現場で実践する感染症対策・食中毒予防のポイント
感想レポートを書く前にまずは、ここを抑えておきましょう。
どんな感染症対策研修にも出てくる内容です。
感染症や食中毒の基礎知識
基本的な感染症と食中毒について、簡単にお伝えします。
新型コロナウイルス感染症
大半は軽症で経過しますが、季節性インフルエンザと比べ死亡リスクは高く、特に高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすいと報告されています。
飛沫・接触・エアロゾルを介して感染し、発熱や呼吸器症状などを起こします。
ワクチン接種によって重症化リスクや感染拡大を減らせるため、介護現場では定期的な予防接種やマスク着用、換気を推奨します。
季節性インフルエンザ
冬期に流行し、高熱・咳・関節痛などを引き起こします。
高齢者はやはり重症化しやすいため、毎年のインフルエンザワクチン接種が勧められます。
感染経路は主に飛沫感染・接触感染です。
ノロウイルス感染症(ウイルス性胃腸炎)
冬場を中心に流行し、嘔吐・下痢・腹痛などを起こします。
ノロウイルスは手指や汚染された食品を介して経口感染し、糞便や嘔吐物から二次感染が起こりやすいです。
ワクチンや特効薬はなく、乳幼児・高齢者では重症化や誤嚥による死亡例も報告されています。
その他
利用者ケアではRSウイルス、マイコプラズマ肺炎、結核、梅毒なども知識として抑えます。
また、感染症の発生状況は保健所や保健所サイトで常に把握し、地域での流行情報を共有します。
食中毒(食中毒菌・ウイルス)
年間を通じて発生し、近年は700~1100件台で推移しています。
令和6年の発生件数は1,037件(患者:14,229人)と報告されており、家庭や施設内でも注意が必要です。
主な原因菌・ウイルスはノロウイルス、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどで、牡蠣など二枚貝由来のものもあります。
これらは加熱不十分や二次汚染で増殖・感染するため、調理前後の手洗い、食品の十分な加熱(中心部75℃以上)、清潔な器具・環境管理が予防の基本です。
現場で実践する感染症対策・食中毒予防のポイント
感染対策の基本は「標準予防策」です。
手洗い・手指消毒は最重要で、ケアの前後・排泄介助後・調理前後などに必ず行います。
手指に目に見える汚れがないときはアルコール消毒薬を使うと効果的です。
また、身体から出る血液・体液・嘔吐物・排泄物などに触れる際は手袋と防護用エプロンを必ず着用します。
標準予防策では、全ての人に対して「汚染があるかもしれない」と想定し、マスクやゴーグルで飛沫・エアロゾルも遮断します。
では、具体的にみていきます。
手指衛生の徹底
前述の通り、あらゆるケアの前後・食事前後・環境清掃後に必ず手洗い・消毒を行います。
石鹸で20秒以上かけて洗い流し、流水で十分すすぎます。
手袋や消毒薬使用後も手洗いを行い、感染経路を遮断します。
個人防護具(PPE)の使用
血液や体液、吐物、排泄物を処理する際は使い捨て手袋と防護用ガウンを着用し、処理後は使った物を速やかに廃棄します。
使用後は石鹸・流水で手洗いし、汚染を拡大させません。感染性廃棄物は専用袋に密封し廃棄します。
環境・器具の消毒
嘔吐物や排泄物で汚染した場所は、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液で清拭して消毒します。
ベッドや手すり、ドアノブなど共有部位は定期的に消毒用エタノールや次亜塩素酸で清掃し、病原菌の持ち込み・拡散を防ぎます。
調理器具や食器類は十分な洗浄・熱湯消毒(80℃以上10分以上)を行います。
食品衛生管理
調理前には必ず手洗いし、清潔な包丁・まな板を使用します。
生肉・生魚・生卵は特に加熱処理し、中心部が75℃以上になるよう調理します。
二枚貝類は生食せず十分に加熱します。
また、調理後の食品はなるべく早く冷却し冷蔵保存し、室温放置は避けます。
残った食品は浅い容器に小分けして冷蔵庫に保存し、再加熱時にも十分に加熱します。
施設運営上の対策
体調不良の職員は出勤を控え、免疫力低下時は特に警戒します。
手洗いの徹底や手袋・マスクの着用、適切な換気や加湿(湿度40%以上推奨)も継続します。
職員・利用者が感染を疑う症状を示したら、速やかに保健所・医療機関と連携し、必要に応じて検査・隔離を行います。
緊急時にはBCP(事業継続計画)に基づき、食事提供の変更や隔離対応訓練などを実施します。
感想レポート例文
それでは感想レポートの例をお伝えしていきます。
感想レポートは、皆が同じような内容ではいけません。
それぞれの立場にあった感想にしておく必要があります。
ここでは、新人職員、中堅職員、パート職員、リーダー職員に分けた感想をお伝えしていきます。
新人職員(ヘルパー1年目)の例
私は今回の研修を通じて、感染症や食中毒がどれほど身近なリスクであるかを改めて実感しました。
とくに印象に残ったのは、「感染症は“防ぐことができる災害”である」という講師の言葉です。
これまで自分の中では「マスクをする」「手を洗う」などの対策は当たり前だと思っていましたが、手洗いのタイミングや方法、手袋の着脱など、細かいところまできちんとできていたかと言われると自信がありませんでした。
今回、正しい手洗いの手順を再確認し、ただ“やっているつもり”ではなく、“意識して丁寧に行うこと”の大切さに気づきました。
また、ノロウイルスやサルモネラなど、名前は知っていても、具体的にどんな食品や状況が原因になるのか、どれくらい加熱が必要かなど、今回の研修で詳しく知ることができました。
日々のケアでは、食事介助や排泄介助など、感染源になり得る場面が多くあります。
私は新人でまだまだ経験が浅いですが、だからこそ基本を徹底し、自分が感染源にならないように意識を持ち続けていきたいです。
この学びを明日からの現場で即実践し、安心・安全な介護につなげていけるよう努力します。
中堅職員(経験3~5年・介護福祉士)の例
感染症や食中毒の研修には毎年参加していますが、今回は「感染症BCP」や「クラスター発生時の初動対応」など、より現実的・実務的な視点の内容が多く、改めて緊張感を持って受講することができました。
特に印象に残ったのは、研修中に紹介された実際の介護施設でのクラスター発生事例でした。
感染源が“職員の手指衛生の甘さ”や“調理場の消毒不足”だったこと、それによって施設全体が運営停止に追い込まれたという話を聞き、「現場の一人ひとりの意識と行動が、どれほど大きな影響を持つのか」を身をもって感じました。
私自身、忙しい時には“省略”してしまいそうになる工程もあります。
例えば「手袋をしたまま次の作業に移ってしまう」「使い捨てのガウンを惜しんでしまう」など、時間や手間を理由にしてしまいがちです。
でも、その“ちょっとしたこと”が、大きなリスクになるということを肝に銘じ、後輩たちにも注意喚起していきたいと思います。
また、食中毒対策では、調理担当と介護職の連携の重要性も学べました。
配膳前に体調確認や保管温度の確認をするなど、情報共有や連携強化にも取り組んでいきます。
パート職員(週3勤務)の例
短時間勤務の私でも参加しやすい研修だったので、ありがたく感じました。
感染症に関する内容は少し難しい部分もありましたが、具体的な事例や写真を交えて説明してもらえたことで、すぐに現場で活かせそうだと感じました。
とくに参考になったのは、「標準予防策」や「感染症が発生した際の初期対応」です。
普段、私は食事介助や排泄介助を担当していますが、嘔吐や下痢の対応に自信がなく、いつも不安を抱えていました。
今回の研修で、マスク・手袋・ガウンの使用方法や、嘔吐物の処理手順、消毒液の濃度や使い分けなどがしっかり学べてとても安心しました。
また、調理室での食中毒対策についても学び、自宅での食事づくりにも役立てられそうです。
今後は、短時間勤務でも「感染を広げないためのキーパーソン」になれるよう、責任ある行動を心がけていきたいと思います。
リーダー職員(サービス提供責任者・ユニットリーダー)の例
今回の研修は、ただ知識を得るだけでなく「施設全体で感染症にどう備えるか」という組織的な視点を持つことの重要性を強く感じました。
クラスター発生時の対応手順や、感染症BCPの策定義務、職員間の役割分担など、これまでマニュアルでは形式的に記されていた内容が、より現実味をもって理解できました。
とくに、研修の中で紹介された「感染発生直後の48時間が鍵」という言葉は印象的で、初動の遅れがその後の被害拡大につながることを痛感しました。
私は今後、ユニット内で「感染症対応ミニ訓練」を定期的に行いたいと考えています。
例えば、嘔吐物が出たと仮定して誰が対応し、誰が報告するか。
感染疑いの利用者が出たとき、職員動線やゾーニングをどうするかなど、具体的に話し合う機会を持つことで、現場の即応力を高めていけると思います。
また、今回の研修を新人教育にも組み込み、全職員が同じレベルの意識で感染症予防に取り組めるよう環境づくりをしていきたいと感じました。
おわりに
いかがだったでしょうか。
感染症や食中毒は、正しい知識と日々の小さな心がけで予防できるものです。
介護職員一人ひとりの行動が、利用者さんの命を守る第一歩になります。
今回ご紹介した研修内容や感想例文は、現場での実践力を高め、チーム全体の感染症対策力の底上げにもつながります。
ぜひ職場での研修や振り返りの際にご活用ください。
今後も継続的に学びを深め、「感染を広げない・持ち込まない」安全な介護現場を一緒につくっていきましょう。
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