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身体拘束

介護施設で身体拘束をなくす10のポイント【身体拘束の排除の為の取り組みに関する研修】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設で必須の【身体拘束の排除の為の取り組みに関する研修】をブログ記事にしました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

介護の現場では「身体拘束ゼロ」が強く求められるようになっています。

なぜなら、身体拘束は利用者さんの自由や尊厳を奪い、心と体に大きなダメージを与えるからです。

「転倒を防ぐため」「安全のため」と思っていた行為が、実は利用者さんの生活の質(QOL)を下げ、寝たきりや不安の原因になることもあります。

では、どうすれば拘束をせずに、安全で安心できる介護ができるのでしょうか?

本記事では、実際に現場で取り組める「身体拘束をなくすための10のポイント」を紹介します。

施設全体で方針を統一し、職員一人ひとりが「今できること」を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

この記事を読む価値

  • グループワープを入れると1時間程度の研修にすることもできます。
  • 施設のマニュアル作成にもお役立てできる内容です。
  • 難しい表現は省いているので、新人職員でも理解できる文章です。

 

早速、見ていきましょう。

なぜ身体拘束はだめなのか

拘束されて怒っている高齢者

介護の現場では、身体拘束をなくすことが強く求められています。

その大きな理由は、利用者さんの尊厳と自立を守るためです。

身体拘束は、本人の意思や自由を奪い、精神的・身体的に大きな負担を与えてしまいます。

安心して暮らせる環境をつくることが介護の基本であり、拘束はその理念に反する行為です。

身体拘束とは、行動の自由を制限する行為全般を指します。

たとえば、ベッドに縛りつける、つなぎ服を着せる、柵で囲って動けなくする、ミトンや拘束帯の使用、さらには「動かないで」といった言葉での制限(スピーチロック)も含まれます。

また、身体拘束には大きなリスクがあります。

筋力の低下や認知症の悪化、不安・ストレスによる精神的ダメージ、床ずれの発生、QOL(生活の質)の低下などです。

さらに、拘束をされていることで無理に動こうとして事故の危険が高まることもあります。

利用者さんの尊厳を守るためにも、身体拘束はできる限り行わず、他の方法を工夫して対応することが大切です。

身体拘束をなくす10のポイント

では、身体拘束をなくす10のポイントをお伝えしていきます。

①施設全体で「拘束をなくす」と決め、全職員で取り組む

介護施設で身体拘束をなくすためには、まず「施設全体で取り組む」と決めることが必要です。

そして、そのスタートには施設長や管理者など、組織のトップの決意と行動が欠かせません。

トップが「身体拘束はしない」とはっきり方針を示すことで、現場の職員も安心して取り組むことができるからです。

たとえば、朝の会議で身体拘束廃止の考えを話したり、「事故が起きたら責任は自分が持つ」とトップが宣言したりすることで、職員の不安が軽くなります。

このような姿勢を見せることで、「一部の職員だけが頑張る」という状態を防ぐことができます。

全員が同じ方向を向いてこそ、利用者さんにとって安心・安全な介護が実現できます。

②「身体拘束しないための話し合いチーム」を作る

「身体拘束しないための話し合いチーム」として「身体的拘束等適正化検討委員会」の設置をおすすめします。

この委員会には施設長や管理者、医師、看護師、介護職員、事務職員など、様々な立場の職員が参加し、現場の状況を共有したり、問題点を話し合ったりします。

これにより、全員が同じ方向を向いて、利用者さんの尊厳を守るケアを実現する土台が整います。

委員会では、身体拘束の現状を確認し、拘束を必要としないケア方法を検討したり、マニュアルの整備、職員体制やアクティビティの工夫など具体的な対策を話し合います。

また、「緊急やむを得ない場合」に拘束が必要となる場面でも、職員一人の判断ではなく、委員会で事前にルールや手続きを定め、カンファレンスなどを通じて組織的に判断することが求められます。

「緊急やむを得ない場合」の対応について詳しく知りたい方は、コチラの記事をご参照ください。

スピーチロック
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さらに、委員会での話し合いや判断内容は議事録として残し、職員や関係者全体で共有することが義務づけられています。

こうした体制があることで、現場の職員も安心して身体拘束廃止に取り組むことができるのです。

③なぜ拘束が必要になるのかを考え、先に防ぐケアをする

身体拘束をなくすためには、「なぜ拘束が必要になったのか」という原因を深く考え、その原因を取り除くケアを事前に行うことがとても大切です。

これは、問題行動を抑えることだけが目的ではなく、その人の気持ちや体の状態、生活環境を理解し、根本から支援していくことにつながります。

例えば、「オムツをいじる」といった行動の背景には、不快感や伝えたい気持ちがあるかもしれません。

排せつケアを丁寧に行い、快適に過ごせるようにすることが、行動の予防につながります。

また、認知症の方が混乱して大声を出す場合も、「なぜそうなるのか」を探ることで、安心できる環境づくりができるのです。

環境面でも工夫が必要です。

ベッドを低くしたり、手すりをつけたり、転倒を防ぐためのマットを敷いたりといった調整が有効です。

さらに、点滴チューブが気になる方には位置を変えたり、触れにくくすることで、拘束せずに安全を守ることができます。

④転倒しそうな人には、安全な環境を整える

身体拘束をなくすためには、「転倒しそうだから縛る」のではなく、「転倒しないように安全な環境を整える」という考え方がとても大切です。

これは、本人の尊厳を守りながら事故を防ぐための、現場でできる具体的なアプローチの一つです。

介護の現場では、転倒や転落を防ぐ目的で身体拘束を行うケースがありますが、実際には、身体拘束が逆に事故を引き起こすリスクを高めることもあります。

無理に立ち上がろうとしたり、混乱して動こうとする中で、かえって転倒の危険が増すのです。

また、拘束によって筋力が落ち、体が動かなくなり、寝たきりになるケースもあります。

つまり、「転ばないようにする」のではなく、「転べない状態にしている」だけなのです。

そのため、身体拘束を使わずに転倒を防ぐには、環境を工夫することが重要です。

たとえば、手すりの設置や足元の片づけ、ベッドを低くする、車椅子を体に合わせて調整するなどがあります。

また、ジョイントマットやクッションを使って転倒時のけがを軽減したり、落ち着ける場所にソファを設置することも有効です。

⑤認知症の症状に合わせたケアを行う

認知症の方の中には、自分がなぜ動けないのか分からず、不安や混乱から大声を出したり、落ち着かなくなったりすることがあります。

こうした行動を理解するためには、「アセスメント(観察と分析)」が大切です。

たとえば、「陰部に物を入れる」といった行動には、「汚してしまって恥ずかしい」「トイレに行きたい」というサインが隠れていることがあります。

このように行動の背景にある思いをくみ取ることで、適切なケアにつなげることができます。

具体的な工夫としては、本人の話を否定せず、不安な気持ちに寄り添った対応をすることが大切です。

また、生活リズムを整えるために、「起きる」「食べる」「排せつする」「清潔にする」「活動する」といった基本的なケアを、その人に合った方法で丁寧に行うことも重要です。

たとえば、昼間にしっかり活動することで、夜間の徘徊が減ることもあります。

さらに、手すりの設置やベッドの高さ調整、落ち着ける空間づくりなどの環境整備も効果的です。こうした工夫を積み重ねることで、身体拘束を使わずに安心して過ごせるケアが可能になります。

認知症ケアについての研修資料をお探しの方は、コチラの記事をご参照ください。

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⑥その人らしさを大事にしたケアをする

身体拘束をなくすためには、「その人らしさを大事にしたケア」がとても大切です。

これは、利用者さんの思いや生活に合わせて、一人ひとりに合った関わり方を工夫するという考え方です。

介護の基本である「尊厳を守る」「自立を支える」ことにもつながります。

認知症の方などが不安になって大きな声を出したり、落ち着かなくなったりする背景には、伝えられない思いや体の不調があることが多いです。

そういった「声なき声」をくみ取るために、「アセスメント(観察と理解)」が欠かせません。

その人の生活歴や性格、好みをよく知ることで、必要なケアも見えてきます。

たとえば、基本的な生活のリズムを整えることはとても効果的です。

「起きる・食べる・排せつ・清潔・活動」をその人に合ったやり方で丁寧に行うことで、心と体が安定し、夜間の徘徊や問題行動が減ることがあります。

おむつの不快感が原因で落ち着かないこともあるため、こまめな交換も大切です。

このような工夫を続けていくことで、身体拘束に頼らなくても、安全で安心できるケアが可能になります。

⑦拘束の代わりになる方法をいつも考えておく

身体拘束をなくすためには、「拘束しない別のやり方を考える」ことがとても重要です。

これは、安易に身体拘束に頼るのではなく、常に他の方法で対応できないかを考える姿勢のことです。

身体拘束は、原則として法律で禁止されており、利用者さんの自由や尊厳を奪う行為です。

どうしても必要な場合でも、「他に方法がないとき(非代替性)」という厳しい条件を満たす必要があります。

そのため、普段から「他にできることはないか?」を考えることが、拘束を防ぐ第一歩となります。

⑧ご家族とよく話し合って、考えを共有する

身体拘束をなくし、その人らしい尊厳ある生活を支えるためには、「ご家族としっかり話して、同じ考えを持つ」ことがとても大切です。

これは、施設や職員だけが方針を決めるのではなく、本人のことをよく知るご家族と一緒に考え、理解し合いながら、より良いケアを目指すという意味です。

身体拘束は、本人の自由や尊厳を奪ってしまう行為です。

たとえ「安全のために」と思っていても、その背景には本人なりの思いや不安、体の状態があります。

だからこそ、ご家族とよく話し合い、「なぜその行動が起こるのか」「他の方法で対応できないか」を一緒に考えることが重要です。

施設からは、身体拘束のリスクや代わりにできるケアについて、わかりやすく説明し、ご家族の不安や疑問にも丁寧に寄り添うことが必要です。

また、ご家族の気持ちや生活状況も理解しながら、共に支える関係を築いていくことが理想です。

たとえば、認知症の方の行動に困っているご家族が、「玄関に鍵をかけるしかない」と思っていたところを、地域の見守りサービスや福祉用具の活用で解決できた事例もあります。

このように、外部の支援や専門機関と連携することも有効です。

ただし、家族の同意があったとしても、それだけで身体拘束が正当化されるわけではありません。

どうしても必要なときは「切迫性・非代替性・一時性」の3つの条件をすべて満たし、関係者全員で慎重に判断する必要があります。

「同じ考えを持つ」というのは、情報を一方的に伝えるのではなく、本人の尊厳を守るという共通の目標に向けて、ご家族と施設が信頼関係を築き、一緒に最善のケアを探していくことです。

⑨外部の専門機関に相談してアドバイスをもらう

「地域の専門機関に相談して協力してもらう」ことがとても大切です。

この考え方には、「ご家族や施設職員だけで悩みを抱え込まず、地域にいる多くの専門家と協力して、より良いケアを一緒に考えていこう」という意味が込められています。

介護をしているご家族の中には、認知症の進行や本人の行動にどう対応していいかわからず、悩んでいる方もたくさんいます。

そんなとき、地域の相談窓口や「認知症カフェ」などに参加することで、同じ立場の人と話し、不安が軽くなったという声もあります。

たとえば、玄関の鍵で本人の行動を制限していたご家族が、地域の見守りサービスを使うことで鍵を外し、本人の状態が改善した事例もあります。

また、外部の専門家に相談することで、身体拘束以外の対応方法やケアの工夫を教えてもらえることもあります。

さらに、施設だけでなく、主治医やケアマネジャー、訪問看護師、理学療法士など、さまざまな立場の人が関わることで、より安心できる在宅生活を支える体制が整います。

大切なのは、みんなで「同じ考え」を持ち、尊厳を守るケアを目指すことです。

⑩職員みんなで「拘束ゼロ」を目指す空気をつくる

介護の現場で身体拘束をなくすためには、「職員みんなで『拘束ゼロ』を目指す空気をつくる」ことがとても大切です。

つまり、介護をする一部の人だけが頑張るのではなく、施設全体の職員が声をかけ合い、協力して進めていく姿勢が必要だということです。

その為の一つの手段としては、定期的に学習会で知識を深めたり、ワークで知識を共有することが有効です。

また、身体拘束をしてしまいそうな状況でも、「他に方法はないか?」とチームで検討することも重要です。

こうした体制が整うと、職員は安心して代替ケアを考えられるようになります。

このように、「みんなで声をかけ合って協力する」ことは、身体拘束を防ぐだけでなく、食事やレクリエーション、口腔ケア、生活リズムの見直しなど、利用者さんの毎日をより良くする取り組みにもつながります。

「拘束ゼロ」を目指す空気づくりは、全員の意識と行動によって実現されるものです。

それが、本人の尊厳を守り、その人らしい生活を支える大きな力になります。

グループワーク

ではグループワークをしていきましょう。

グループワークは、施設職員全員で認識や知識を共有する上で非常に役立ちます。

【題】:自分の施設で“身体拘束ゼロ”を実現するには?

まず、10のポイントを読み直し、自分ができていること・できていないことをメモします。(「先に防ぐケア」はできているが、「代替手段を考える」は難しい、など)

次にグループに分かれ、「できている取り組み」「難しいと感じている取り組み」「工夫している例」を話し合います。

実際に困っている場面やご家族対応の難しさについても共有しましょう。

そして「自分たちの施設では、どのポイントから始めると効果的か?」「どんなサポートや工夫があれば、身体拘束を減らせそうか?」を話し合います。

最後に発表し合い、実際の現場にどう落とし込んでいくかを決め、明日からの実践に役立てます。

おわりに

いかがだったでしょうか。

身体拘束をなくす取り組みは、決して特別なことではありません。

大切なのは、「なぜこの行動が起きるのか」を考え、その人に合ったケアを工夫する日々の積み重ねです。

一人では難しいと感じる時もあるかもしれませんが、職員同士で声をかけ合い、ご家族や地域とも連携しながら取り組むことで、少しずつ「拘束しないケア」が当たり前の風土になっていきます。

施設全体が「利用者さんの尊厳を守りたい」という共通の想いを持ち、学びと実践を続けることで、安心と信頼のある介護環境はきっと実現できます。

この記事が、その第一歩となれば幸いです。

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