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ハラスメント防止

【介護施設】ハラスメント防止マニュアル【利用者やその家族からのハラスメント(カスタマーハラスメント)】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設で必ず必要な【ハラスメント防止マニュアル】を記事にしました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

本マニュアルは、利用者やその家族からのハラスメント、いわゆるカスタマーハラスメント対策のマニュアルです。

全介護サービス事業所で使用できるマニュアルです。

職場内でのハラスメント対策マニュアルは別の記事にしています。

参考にしている資料は【株式会社 三菱総合研究所】です。

このままコピペでマニュアルにすることもできます。

是非、参考にしてみてください!

この記事を読む価値

  • そのままマニュアルとして施設に保管できるような内容です。
  • 研修資料としても役立てれます。
  • 難しい表現は省いているので、誰でも理解できる内容です。

 

早速、見ていきましょう。

「介護現場におけるハラスメント」とは

紙に書いていいるところ

本マニュアルでは、身体的暴力、精神的暴力及びセクシュアルハラスメントをあわせて、介護現場におけるハラスメントとしています。

具体的には、介護サービスの利用者や家族等※からの、以下のような行為を「ハラスメント」と総称しています。

※利用者や家族等の「等」とは、家族に準じる同居の知人または近居の親族を意味します。

①身体的暴力

身体的な力を使って危害を及ぼす行為。

例:コップを投げつける/蹴られる/唾を吐く

②精神的暴力

個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為。

例:大声を発する/怒鳴る/特定の職員にいやがらせをする/「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する

③セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という)

意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為。

例:必要もなく手や腕を触る/抱きしめる/入浴介助中、あからさまに性的な話をする

認知症等の病気または障害の症状として現われた言動(BPSD※等)は、「ハラスメント」としてではなく、医療的なケアによってアプローチする必要があります。

認知症がある場合、もしくは、認知症の診断を受けていないが認知機能が低下している場合などは、BPSDである可能性を前提にしたケアが必要です。

例えば、認知症の「もの盗られ妄想」はハラスメントではなく、認知症の症状としてケアが必要です。

認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必
要があることには変わりありませんから、ハラスメント対策とは別に、対応を検討する
必要があります。

事前の情報収集等(医師の評価等)を行い、施設・事業所として、ケアマネジャーや医師、行政等と連携する等による適切な体制で組織的に対応することが必要です。

そのため、暴言・暴力を受けた場合には、職員が一人で問題を抱え込まず、上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切です。

報告・共有の場で対応について検討することはもとより、どのようにケアするかノウハウを施設・事業所内で共有できる機会にもなります。

ハラスメントか、BPSD等認知症等の病気または障害による言動かの判断は、施設・事
業所だけでなく、利用者の主治医(かかりつけ医)やケアマネジャー等の意見も確認し
ながら判断することが必要です。

※BPSD とは、認知症の行動症状(暴力、暴言、徘徊、拒絶、不潔行為等)・心理症状(抑うつ、不安、幻覚、妄想、睡眠障害等)のこと。

「利用料金の滞納」や「苦情の申立て」も、「ハラスメント」ではなく、別の問題として対
応する必要があります。

例えば、利用料金の滞納について、不払いの際の言動がハラスメントに該当することは
あり得ますが、滞納自体は債務不履行の問題として対応する必要があります。

介護現場におけるハラスメント対策の必要性

ハラスメントはいかなる場合でも認められるものではありません。

この職業を選択し、日々業務に従事する職員を傷つける行為です。

また、ハラスメントの中には、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強制わいせつ罪等の犯罪になりうる行為もあります。

しかし、介護現場でハラスメントを受けた職員や、ハラスメントによりけがや病気となった職員、仕事を辞めたいと思ったことのある職員は少なくない状況です。

事業者(事業主)は、労働契約法に定められる職員(労働者)に対する安全配慮義務等があることから、その責務として利用者・家族等からのハラスメントに対応する必要があります。

ハラスメントを行っている利用者・家族等の中には、著しい迷惑行為を行っていると認識していない人がいると考えられます。

また、疾患、障害、生活困難などを抱えており、心身が不安定な人もいることにも留意する必要があります。

しかし、ハラスメントの発生の有無は、利用者等の性格・状態像によって左右されるものではなく、客観的に判断し、再発防止策を講じることが必要です。

ハラスメント対策は介護職員を守るだけでなく、利用者にとっても介護サービスの継続的で円滑な利用にも繋がる重要な対策です。

認知症がある場合、もしくは、認知症の診断を受けていないが認知機能が低下している場合などは、BPSDである可能性を前提にしたケアが必要です。

例えば、認知症の「もの盗られ妄想」はハラスメントではなく、認知症の症状としてケアが必要です。

BPSDとしての暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必要があることには変わりがありませんから、ハラスメント対策とは別に対応を検討する必要があります。

ハラスメントか、BPSDによる言動かの判断は、施設・事業所だけでなく、利用者の主治医(かかりつけ医)やケアマネジャー等の意見も確認しながら判断することが必要です。

ハラスメントのリスク要因

ハラスメントのリスク要因として、大きく「環境面でのリスク要因」、「利用者に関するリスク要因」、「利用者の家族等に関するリスク要因」、「サービス提供側(施設・事業所)のリスク要因」が挙げられます。

ハラスメント対策や事案が発生時に背景を分析する際の、参考としてください。

ただし、ハラスメントの背景には、利用者や家族等の置かれている環境やこれまでの生活歴、職員との相性や関係性の状況など、様々な要素が絡み合うことがあります。

一律の方法では適切に対応できないケースもあるため、事案の背景を分析する際は、発生した状況やその時の対応等をできるだけ正確に捉えましょう。

では以下、4つの要因を具体的に解説します。

ハラスメントのリスク要因
  1. 環境面でのリスク要因
  2. 利用者に関するリスク要因
  3. 利用者の家族等に関するリスク要因
  4. サービス提供側(施設・事業所)のリスク要因

①環境面でのリスク要因

1、1対1や1対多の状況

ケアを行う場所の構造(例:出口が遠い、鍵がかかる、近くに他の職員がいない、訪問
先の近隣に住宅等がないといった助けを求めても声が届きにくい状況)やケアを提供す
る体制により、職員と利用者やその家族等が1対や1対多の状況になることが、ハラスメントのリスク要因になることがあります。

2、サービス提供時に身近にある物品

利用者や家族等の状態(攻撃的な言動、怒り等の興奮状態 等)によっては、身近にあ
る物品が思わぬ使われ方をする恐れがあります。

目に付くように(意識的に)アダルトビデオが置いてあることがハラスメントの予兆で
ある可能性と考えられます。

3、訪問先でペットの保護がされていない。

サービス提供時の安全確保のため、ゲージに入れる、首輪をつける等をお願いしている
にも関わらず、放し飼いになっている場合は、予期せぬ噛みつき等の可能性が考えられ
ます。

②利用者に関するリスク要因

1、生活歴に起因するリスクの例

違法行為や暴力行為がある(過去にあった)、攻撃的な言動がある、家族関係や人間関係
でトラブルを抱えている(過去に抱えていた)、訪問時に酒に酔っていることがある等。

2、病気又は障害に対する医療や介護等の適切な支援を受けていないことに起因するリスクの例

アルコール依存症、薬の副作用等。

3、提供サービスに対する理解に起因するリスクの例

利用者がサービスの提供範囲を理解していない、サービスへの過剰な期待がある。

③利用者の家族等に関するリスク要因

1、生活歴に起因するリスクの例

違法行為や暴力行為がある(過去にあった)、攻撃的な言動がある、家族関係や人間関係
でトラブルを抱えている(過去に抱えていた)、訪問時に酒に酔っていることがある等。

家族介護の負担が重く、心身の疲労等から、自身の言動に配慮する余裕がなくなってい

2、病気又は障害に対する医療や介護等の適切な支援を受けていないことに起因するリスクの例

アルコール依存症、薬の副作用等。

3、提供サービスに対する理解に起因するリスクの例

家族等がサービスの提供範囲を理解していない、サービスへの過剰な期待がある。

④サービス提供側(施設・事業所)のリスク要因

1、施設・事業所内で、サービス範囲やルールの徹底を統一しきれていない。(例:契約範囲外のサービスの提供事例がある、面会時間等のルールを家族が守らないことを容認してしまう等)

2、重要事項説明書の説明等によって、利用者や家族等から、提供するサービスの目的、範囲及び方法に関して十分な理解を得ていない。提供するサービスに関して誤った期待を生じさせている。

3、サービスを提供する上での規則やマナーに関する指導・教育ができていない。(例:時間通りにサービスが提供できていない、サービスを提供する上で不適切な服装をしている等)

4、個人情報の取り扱いに関する指導・教育ができていない。(例:職員が自身や他の職員の個人情報を不用意に伝えてしまう等)

5、利用者や家族等から意見・要望・苦情等があった際の対応(態度や姿勢、やりとり)が十分ではなかった、不適切だった。

6、事故等の問題が発生してしまった後の施設・事業所としての対応(姿勢、応対、対応者を当事者から本部等に移すまでの時間等)が不適切だった。

7、コミュニケーション不足等により利用者が言葉にできない気持ちやニーズをうまく汲み取れていない。

ハラスメント対策の基本的な考え方

ハラスメント対策の基本的な考え方は以下の7つです。

ハラスメント対策の基本的な考え方
  1. 組織的・総合的にハラスメント対策を行うこと
  2. ハラスメントは初期対応が重要と認識すること
  3. ハラスメントが起こった要因の分析が大切であること
  4. 介護サービスの質の向上に向けた取組が重要であること
  5. 問題が起こった際には施設・事業所内で共有し、誰もが一人で抱え込まないようにすること
  6. 施設・事業所ですべてを抱え込まないこと
  7. ハラスメントを理由とする契約解除は「正当な理由」が必要であることを認識すること

それでは個別に解説します。

①組織的・総合的にハラスメント対策を行うこと

ハラスメントは介護現場における職員への権利侵害と認識すること。

ハラスメントであるか否かは客観的な判断が求められます。

特にセクシュアルハラスメント又は「精神的暴力」の場合は、基本的には一般の介護職員の感じ方を基準にその有無を判断しますが、当該言動を受けた職員の感じ方にも配慮して判断する必要があります。

ハラスメントの発生の有無は、利用者や家族等の性格・状態像等によって左右されるもので
はありません。

BPSDによる暴言、暴力、性的行動はハラスメントではないため、ハラスメント対策の取組ではなく、認知症ケアによって対応する必要があります。

適切なケアのためにも、BPSDによる暴言、暴力、性的行動を受けた場合に職員が一人で問題を抱え込まず、上長や施設・事業所内で適切に報告・共有できるようにすることが大切です。

報告・共有の場で対応について検討することはもとより、どのようにケアするかノウハウを施設・事業所内で共有できる機会にもなります。

そのうえで、組織的に対応することが重要です。

②ハラスメントは初期対応が重要と認識すること

不適切な初期対応を行った結果、言動や関係性が悪化してしまうケースや、さらなるハラスメントを誘発してしまうケースがあると認識すること。

③ハラスメントが起こった要因の分析が大切であること

できるだけ正確な事実確認を行う等して要因分析を行い、施設・事業所全体でよく議論して、ケースに沿った対策を立てていくこと。

※一方で、ハラスメントが発生する状況によっては、正確な事実確認には限界があるということを前提に、必要な対策を講じることも必要です。

ハラスメントのリスク要因を参考に、事前に実施可能な対策がないかを検討しましょう。(例:事前に収集した利用者や家族等に関する情報を元に適切なサービス提供体制、シフトを検討する。危険性のある物品(例:刃物やはさみ)の整理収納等、安全なサービス提供のためにご協力いただきたい事項を利用者や家族等に事前にお伝えし、理解を得る。 等)

④介護サービスの質の向上に向けた取組が重要であること

利用者の状況等に応じたサービスの提供(質の確保)が、ハラスメントを含めた様々なトラブルの防止につながります。

安心して介護サービスを受けられるように、技術や知識の習得が重要です。

例:

  • 適切なケア技術の習得に向けた研修への参加
  • BPSD 等疾病や障害等に関する共同学習、勉強会の開催
  • 個別ケースのケアや応対(コミュニケーション)の検証
  • 主治医(かかりつけ医)との連携
  • 組織的な虐待防止対策の推進

⑤問題が起こった際には施設・事業所内で共有し、誰もが一人で抱え込まないようにすること

問題が起こった際には、施設・事業所内で問題を共有する場を設け、対応方法を皆で議論する場を設けること。

ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が、一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん、相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないようにすることが大切です。

⑥施設・事業所ですべてを抱え込まないこと

自らの施設・事業所内で対応できることには限界があるため、地域の他団体・機関とも必要に応じて連携すること。

利用者や家族等の個人情報の提供にあたっては、第三者提供することに対する同意の有無又は個人情報の保護に関する法律の例外要件の充足の有無を確認することが必要です。

特に、セクシュアルハラスメントの事例の場合は、第三者提供することによって、ハラスメントを受けた職員が、新たな精神的な苦痛等を受けることがないよう、十分な配慮をすることが不可欠です。

そのためにも地域で問題意識を共有する体制の構築や意識づくりに向け、協力あるいは自らの施設・事業所がリーダーシップを発揮すること。

ハラスメントは状況、程度、要因が多様で、個々の施設・事業所だけで適切かつ法令に即して対応することが困難な場合もあります。

医師等の他職種、保険者、地域包括支援センター、保健所、地域の事業者団体、法律の専門家又は警察等との連携が大切です。

⑦ハラスメントを理由とする契約解除は「正当な理由」が必要であることを認識すること

前提として、利用者やその家族等に対して、重要事項説明書の説明等によって、提供するサービスの目的、範囲及び方法に関して十分に説明を行い、その理解していただくこと、契約解除に至らないような努力・取組を事業所としてまず行うことが必要です。

このような努力や取組を行っていても、やむを得ず契約解除に至るケースもあるかもしれません。

しかし、施設・事業所側からする契約解除には「正当な理由」(運営基準)が必要です。

「正当な理由」について

「正当な理由」の有無は個別具体的な事情によりますが、その判断にあたっては、

  • ハラスメントによる結果の重大性
  • ハラスメントの再発可能性
  • 契約解除以外のハラスメント防止方法の有無・可否及び契約解除による利用者の不利益の程度

等を考慮する必要があります。

「正当な理由」に基づき契約を解除した場合であっても、契約解除に至った原因及び経緯を
検討し、同様の事態を防止するための対策を講じましょう。

ア)「正当な理由」が肯定される可能性のある場合

利用者が職員に対し身体的暴力をふるい、他の施設・事業所及び関係機関の担当
者とともに利用者と話し合った。

しかし、再発の可能性があり、かつ、複数名訪問等の再発防止策の提案も拒否されたとき、契約解除の予告期間を置き、後任の施設・事業所の紹介その他の必要な措置を講じて契約を解除した場合。

イ)「正当な理由」が否定される可能性のある場合

職員の不適切な言動に立腹した家族が暴言を口にし、以下のような必要な措置を講じることなく、直ちに契約を解除した場合。

  • その家族との話し合いにより信頼関係の回復に努めて再発防止を図る
  • 担当職員を変更する
  • 後任の施設・事業所の紹介 等

紹介等によって、後任の施設・事業所に介護サービスの提供を引き継ぐ場合には、これまでの施設・事業所で発生したハラスメントと同様の事態が、後任の施設・事業所で再発生しないように防止策を講じることが重要です。

例えば、セクシュアルハラスメントが原因となって、後任の施設・事業所に介護サービス
の提供を引き継がざるを得ない場合には、利用者や家族等と話し合い、セクシュアルハラ
スメントの再発防止の必要性について十分な理解を得たり、同性介護を実施できる体制が
整っている施設・事業所を紹介したりする等して、その再発を防止することが必要です。

再発防止策を講じるに当たっては、ケアマネジャー、医師等の多職種、保険者、地域包括
支援センター、保健所又は法律の専門家等とできるだけ相談・連携することが必要です。

ただし、セクシュアルハラスメント等のハラスメントに係る利用者や家族等の個人データ
を、後任の施設・事業所等の第三者に提供するに当たっては、第三者に提供することにつ
いての同意の有無又は個人情報の保護に関する法律が定める同意がなくても第三者提供が
可能な例外要件(同法第23条第1項。令和4年4月1日以降は、同法第27条第1項)
の充足の有無を確認することが必要です。

同条は、介護記録等として整理されている個人データ(同法第2条第6項。同日以降は、同法第16条第3項)のみを対象としていますが、各種の資格を定めた法令等における守秘義務との関係では、介護記録等として整理されていない段階の個人情報を第三者に提供するに当たっても、同意等の正当な理由の有無を確認することが必要です。

また、ハラスメントに係る情報には、事実を十分に確認できないものがあることからも、提供する情報を客観的で必要なものに限り、提供する先も必要な範囲の関係者に限定し、提供する先に情報の適切な取扱いを求める等の注意も必要です。

さらに、特に、セクシュアルハラスメントの場合は、第三者に提供することによって、ハラスメントを受けた職員が、新たな精神的な苦痛等の不利益を受けることがないよう、提供する情報の内容等について十分に配慮をすることが不可欠です。

ハラスメント対応として施設・事業所が具体的に取り組むべきこと

介護現場におけるハラスメントの予防や対策においては、個々の努力や対応に任せるのではなく、組織として対応するための必要な体制を構築し、予防や対策に向けた基本方針や具体的な対応を検討すること、基本方針や具体的な対応策を周知し、これに基づき職員1人1人が日々の予防や対応を行うことが重要です。

また、施設・事業所内だけで対応することが難しい場合には、地域の関係者と連携して対策や対応をとることが必要です。

では、「ハラスメント対応として施設・事業所が具体的に取り組むべきこと」を3つに分けて解説していきます。

施設・事業所が取り組むべきこと
  1. 施設・事業所自身として取り組むべきこと(1~11項目)
  2. 職員に対して取り組むべきこと(1~6項目)
  3. 関係者との連携に向けて取り組むべきこと(1項目のみ)

①施設・事業所自身として取り組むべきこと

1、ハラスメントに対する施設・事業所としての基本方針の決定・周知

施設・事業所の、ハラスメントに対する基本的な考え方やその対応について事業運営の基本方針として決定するとともに、それに基づいた取組等を行うことが重要です。

具体的には、例えば、「ハラスメントは組織として許さない」、「職員による虐待と職員へのハラスメントはどちらもあってはならない」といった考え方です。

こうした基本方針を職員と共有するとともに、職員が、管理者等に相談した場合に、誰に相談しても、施設・事業所として同じ対応ができるように、施設・事業所内での意識の統一が必要です。

2、マニュアル等の作成・共有

ハラスメントを未然に防止するための対応マニュアルの作成・共有、管理者等の役割の明確
化、発生したハラスメントの対処方法等のルールの作成・共有などの取り組みや環境の整備を図っていくことが求められます。

3、相談しやすい職場環境づくり、相談窓口の設置

ハラスメントの発生に限らず、様々なトラブルやリスクを職員が抱え込むことなく、管理者に相談したうえで、施設・事業所の事案として捉えて対応することが重要です。

施設・事業所として、職員の相談を受け付けるフローを明確にし、相談窓口の設置等体制を整え、職員に周知しましょう。

相談しやすい職場環境づくりのために、管理者等は、職員の変化を的確に把握できるように、日頃から職員との良好な関係を築いていくことが重要です。

職場の風通しを良くするための取組を行うとともに、相談しやすい場を定期的に設けることなども必要です。

4、介護サービスの目的及び範囲等へのしっかりとした理解と統一

介護サービスの目的、範囲及び方法についての誤った認識や理解不足が、利用者や家族等とのミスコミュニケーションにつながる恐れがあります。

施設・事業所による契約締結時の説明や、利用者やその家族等の理解が不十分だったことが原因となり、苦情に発展し、さらには暴言にエスカレートすることも考えられます。

そのため施設・事業所は、介護サービスの目的、範囲及び方法を理解し、施設・事業所内で対応や説明方法の統一等の取組を図ることも重要です。

また、介護サービスの目的、範囲及び方法に係る契約内容の理解を図り、契約範囲外のサービスが強要されないようにすることも重要です。

重要事項説明書や契約の説明時に留意すべき点の例

利用者が受けられる介護サービスに係る契約内容について、利用者(家族等)と施設・事業所の認識が合っているか確認する。

ハラスメントは職員の安全を損なうものであると同時に、介護サービスの提供を困難にすることで、場合によっては契約解除となる可能性があることを明確に伝える。

5、利用者・家族等に対する周知

介護現場における職員へのハラスメントの予防に向けて、また、介護サービスの継続的かつ円滑な利用に向けて、利用者・家族等に対し、理解を求めておきたい事項、ご協力いただきたい事項を周知します。

例えば、重要事項説明書や契約書により、どのようなことがハラスメントに当たるのか、
ハラスメントが行われた際の対応方法、場合によっては契約解除になることを適切に伝え
ていくことが重要です。

職員の安全確保、トラブル防止のためにご協力いただきたい事項(例:ペットがいる場合
にはゲージに入れる等)がある場合には、適切に分かりやすく伝えることが必要です。

6、利用者や家族等に関する情報の収集とそれを踏まえた担当職員の配置・申送り

ケアマネジャーや他に利用している施設・事業所等を通して、また、施設・事業所が行うアセスメントにより、利用者・家族等の情報を施設・事業所として可能な範囲で適切に収集することが必要です。

その情報に基づき、ハラスメント発生の可能性が高いと考えられる場合などには、担当職員の配置や申し送りなどを的確に行うことが求められます。

例えば、訪問系サービスでは、訪問先である利用者宅等において身体等の危険を回避するために速やかに外に出ることができる経路等を確認し、担当職員間で共有することも重要です。

7、サービス種別や介護現場の状況を踏まえた対策の実施

ハラスメントのリスク要因としてどのようなものがあるかを踏まえた上で、対策を講じることが必要です。

例えば、1対1や1 対多の関係や状況といった環境面のリスク要因に対し、訪問系サービス
であれば、利用者や家族等の居住場所で1対1や1対多の状況にならないような職員の安全
確保、精神的負担の軽減のための対策を予め講じることが求められます。

また、施設系サービスや通所系サービスについても、ケアの内容、提供場所、時間帯によっては、1対1や1対多の関係や状況になる可能性があるため、そのようなリスク要因をできるだけ回避するための環境整備や対策を講じることが求められます。

8、利用者や家族等からの苦情に対する適切な対応との連携

利用者や家族等からの苦情は、サービス提供の改善を図るうえで必要な情報でもあります。

しかし、こうした苦情に対し不適切な対応を行ってしまったために、不信感を募らせ、暴言等のハラスメントに発展するケースがあります。

このため、職員個々人に対応を委ねるのではなく、組織として迅速かつ統一的な対応を図るための体制構築が必要です。

また、苦情に対し、統一的に対応するための窓口や担当者を設置する際は、ハラスメント対策の窓口等と連携して的確に対応していくことが重要です。

組織として迅速かつ適切に苦情対応を行ったにも関わらず、解決しない場合は、市町村だけでなく、国保連に苦情を申立てることができる旨を事業者から利用者に情報提供して、国保連の苦情対応を通じて、言動の激化を防止することが考えられます。

また、事故が発生した場合も、不適切な対応をとってしまったために暴言等のハラスメントに発展するケースがあります。

苦情対応と同様、組織として迅速かつ適切に対応する体制を構築する他、損保会社への連絡等によって解決の道筋を速やかにつけることが、言動がエスカレートすることの防止につながると考えられます。

9、発生した場合の対応

ハラスメントが発生した場合、職員の安全を第一に、即座に対応をすることが必要です。

そのために、「初動マニュアル」のようなものを事業所として用意し、管理者が責任をもって職員とともに対応する体制を整備することも有効な対策です。

職員の安全を確保した後、管理者等はハラスメントの状況を確認し、ハラスメントを受けた職員への対応、行為者への対応等を指示します。

必要に応じて外部の関係者、例えば、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医師、行政、警察などに連絡・通報します。

的確に状況を判断した上で、できる限り早く、職員はもとより、関係する利用者や家族等
に対しても、対応していくことが求められます。

早期に対応することは、状況のさらなる悪化を防ぐことにもなります。

ハラスメントが発生した際は、経緯を把握し、問題の原因を分析し、明らかにすることに
努めます。

介護業務は利用者と職員が1対1となる場面が多いことから、ハラスメントかどうかの判断が難しいケースが数多く生じています。

具体的には、例えば「言ってない」、「やってない」等の事実の否定、「そんなつもりではない」等の言動の正当化、「受け止めの問題」、「その前に失礼なことをした」等の責任転嫁等が発生するケースもあります。

発生状況の把握や対策の検討と合わせて、ハラスメントを受けた職員に対する心のケアや従業上の配慮等もしっかりと行うことが必要です。

10,管理者等への過度な負担の回避

ハラスメントが生じた場合には、管理者等が、ハラスメントの当事者と相対することになります。

なかには、ハラスメントを生じたあるいは生じる懸念のある利用者や家族等を、管理者等
が担当することになるケースもあります。

職員が一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん、相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないよう、また、ハラスメント対応で過度の負担がかかることのないよう、各事業を統括する法人の代表や法人本部が組織的に関与する体制を構築することが重要です。

対応チームを作る等、組織として問題に対応する体制作りをしましょう。

多職種から構成される施設・事業所であれば、多職種で相談対応のチームを作ることも一例です。

マニュアルでは、ケアマネジャーや地域包括支援センター等に相談する等、管理者等の負
担感に寄り添った指針・対応方法を示しましょう

11、PDCA※サイクルの考え方を応用した対策等の更新、再発防止策の検討

施設・事業所として、ハラスメントの未然防止等に対し取組体制の構築や対策を実施している場合でも、ハラスメントが発生することが考えられます。

このため、発生したハラスメント事案について、背景(発生の原因)などをできるだけ把握し、それを踏まえて、体制や対策等を適宜見直していく、PDCA サイクルの考え方を応用していくことも重要です。

また、普段のサービス提供を通して、ハラスメントの現状やその対応などの事例を組織として蓄積し、二度三度と同じようなハラスメントが発生しないよう、再発防止の取り組みを行っていくこと、再発を防ぐため、あるいは再発した場合を考慮したマニュアルやフローチャートが適切に作成されているか、点検することも重要です。

※PDCA サイクル:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を継続的に行い改善すること。

②職員に対して取り組むべきこと

1、組織としての基本方針や必要な情報の周知徹底

職員に、施設・事業所としてのハラスメントに対する基本的な考え方をわかりやすく、適切に伝えることが重要です。

あわせて、施設・事業所として整備している未然防止や発生時の対応等のマニュアル、設置している相談窓口などの情報などを伝えます。

施設・事業所としての基本的な姿勢や取り組みを職員に伝えることにより、職員が安心して働ける環境であると感じられるようにすることが重要です。

特に、精神的なハラスメントは各人で受け止め方も異なり、声をあげにくいことがあります。まずは些細なことでも相談を受け付ける姿勢を示すことが大切です。

重要事項説明書や契約書の内容を十分に理解できるように伝えるとともに、特に、ハラスメントに関連した内容をどのように記載しているのか、その背景と目的などについても、的確に伝えることが重要です。

日々の業務が忙しく、情報の周知に十分な時間を確保できない場合でも、職員の安全を確保する観点から日々の業務に優先して周知することが必要です。

資料を配布するだけでなく、基本的には対面で説明を行い、質疑や意見交換を十分に行うことが重要です。

※ハラスメント対策を考える上では、利用者や家族等に対して、相手を尊重しつつケアを行うこと、今までの生活をできるだけ続けられるように自立支援を促すサービス提供を意識すること等、基本的な対応方法を心がけることも忘れてはいけません。

ハラスメントに対する基本的な考え方と同様に、職員に周知し、施設・事業所内での認識の統一を図りましょう。

※適切なサービスの提供、質の高いサービスの提供に向けては、例えば、以下のような取組があります。

BPSD 等疾病に起因する暴力・暴言もあることから、職員の安全確保の観点で、BPSD 等に関する勉強会の開催、研修会への参加、主治医(かかりつけ医)との連携も、取組の1つとして検討し得ます。

  • 適切なケア技術の習得に向けた研修への参加
  • BPSD 等疾病や障害等に関する共同学習、勉強会の開催
  • 個別ケースのケアや応対(コミュニケーション)の検証
  • 主治医(かかりつけ医)との連携
  • 組織的な虐待防止対策の推進

2、介護保険サービスの業務範囲の適切な理解の促進

介護保険サービスの業務範囲の誤った認識や理解不足が、利用者や家族等とのミスコミュニ
ケーションにつながる恐れがあります。

施設・事業所による契約締結時の説明や、利用者やその家族等の理解が不十分だったことが
原因となり、苦情に発展し、さらには暴言にエスカレートすることも考えられます。

契約締結時や事前の説明時に留意すべき点などとして、例えば以下が考えられます。

利用者が受けられる介護保険のサービスの範囲(契約内容)について、利用者や家族等と
施設・事業所の認識が合っているか確認する。

ハラスメントは職員の安全を損なうものであると同時に、介護サービスの提供を困難にす
ることで、場合によっては契約解除となる可能性があることを明確に伝える。

3、職員への研修の実施、ハラスメントに関する話し合いの場の設置

職員を対象としたハラスメントの予防や対策に関する研修を実施することが求められます。

また、一過性に終わらせることなく、職員のハラスメントへの意識を喚起するためにも定期
的に行っていくことが重要です。

研修の一環として、ハラスメントに関する話し合いの場を職場内に設置し、定期的に開催す
ることも必要です。

ハラスメントは許されない行為であり、職員が我慢するべきものではないこと、ハラスメントを受けたらすぐに報告・相談のできる職場の雰囲気をつくっていくことが重要であることを、みんなで確認していくことが大切です。

4、職員のハラスメントの状況把握のための取組

ハラスメントの有無やその影響を把握するため、例えば、職員を対象にアンケートやストレ
スチェックなどを行うことも考えられます。

5、職員自らによるハラスメントの未然防止への点検等の機会の提供

ハラスメントの未然防止には、職員一人ひとりが、利用者・家族等に対し、的確な基本的対
応をしっかりと行っていくことが重要です。

そのために、研修等を行う一方で、職員が自ら点検する、振り返ることのできる機会を提供
することも重要です。

6、管理者等向け研修の実施、充実

管理者等を対象としたハラスメントに関する研修を実施することが求められます。

管理者等向け研修では、職員に対する未然防止のための指導内容やハラスメントが発生した場合の対応、ハラスメントを受けた職員への対応、利用者・家族等の事前の情報収集の必要性、疾病によるまた、関係団体、自治体等が実施するハラスメント防止に向けた研修に参加します。影響などに関する専門的な知識の習得などの内容が考えられます。

また、関係団体、自治体等が実施するハラスメント防止に向けた研修に参加します。

③関係者との連携に向けて取り組むべきこと

行政や他職種・関係機関との連携(情報共有や対策の検討機会の確保)

サービスの提供を開始する前に、過去に利用者が利用していた施設・事業所、ケアマネジャ
ー、主治医(かかりつけ医)等の関係者から情報を収集します。

生活歴に起因するリスク、病気又は障害に対する医療や介護等の適切な支援を受けていないことに起因するリスク等、何らかのリスク要因を抱えている、あるいは、その可能性がある場合には、関係者と相談しながら、適切なケアの内容や体制、リスクをできるだけ回避するための対策等について検討します。

ハラスメントを繰り返す利用者や家族等に対し、特定の事業者のみがその影響を過度に受けることは望ましくありません。

ハラスメントの背景には、利用者や家族等の置かれている環境や状況、施設・事業所との関係性等、様々な要素が絡み合います。

このため、個々の施設・事業所だけで適切に対応することが困難な場合もあります。

事案に対して適切に対応するためにも、ケアマネジャー、近隣の他の施設・ 事業所との情報共有の機会を作る、地域ケア会議で共有する、医師等の他職種、保険者、地域包括支援センター、保健所、地域の事業者団体、法律の専門家又は警察等へ相談・連携する等、日頃から地域の関係者と連携し、相談や地域全体で対応できる体制を築いておくことが重要です。

ハラスメントが発生した世帯が複合的な課題を抱えている場合には、その状況や課題を行
政等に連絡することも必要です。

その上で、利用者・家族等にどのように対応・支援を進めていくのか、関係機関が連携して共通理解と方針を検討し、対応することが大切です。

可能な場合には、ハラスメントにより対応が困難な事例などについて、例えば、地域ケア
会議等でケースワークとして取り上げるように働きかけ、状況を共有していくことも考え
られます。

利用者又はその家族等の個人データ又は個人情報を第三者に提供するに当たっては、第三者に提供することについての同意の有無又は個人情報の保護に関する法律が定める同意がなくても第三者提供が可能な例外要件の充足の有無を確認すること等が必要です。

地域におけるハラスメント対策の取組に対しては、都道府県に設置する地域医療介護総合確保基金が活用できます。

ハラスメント実態調査、各種研修等の取組に対して費用が助成されますので、詳しくは施設・事業所の所在する都道府県へ問い合わせましょう。

おわりに

ありがとうと書かれたプレート

いかがだったでしょうか。

ハラスメントは介護職員の尊厳や心身を傷つけるものであり、あってはならないことです。

だれもが安心して住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、介護現場の職員が適切なケア技術を発揮し、利用者・家族等から尊重され、安心して働ける職場環境を構築するこ
とが不可欠です。

本マニュアルは、ハラスメント対策の第一歩であり、引き続き、介護事業者におけるハラスメント対策の実施が進むよう必要な検討を行っていく必要があります。

介護事業者のハラスメント対策の実践が進む中で、その取り組みの知見のフィードバックを得て、マニュアル自体の改善を図っていくことも必要です。

本マニュアルを1つの参考として、すべての介護事業者やその関係者のハラスメントに対する理解が促進され、介護現場のハラスメントの防止と適切な対応に活用されることを願っています。

参考資料:株式会社 三菱総合研究所

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