筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
高齢者は気温や気圧の影響を受けやすく、介護サービスの利用中に急変することがあります。
また運動機能の低下によって転倒し、怪我を負うこともあります。
このような緊急時に備えて定期的に研修を実施しておくと、職員は慌てることなく適切に対応することができます。
年に1度はこの研修を実施しておくことをおすすめします。
この記事を読む価値
- この記事のまま進めることで、研修にできます。
- 施設のマニュアルとして役立てることもできます。
- どんな介護サービスにも使えます。
それでは早速、見ていきましょう。
緊急時への準備
マニュアルの整備:
応急処置の方法やAED (自動体外式除 細動器)の使い方、骨折への対応などを含めた緊急時の対応について、日頃から訓練し、全職員で共有します。
詳しくはコチラの記事をご覧ください。
また、緊急時・急変時の対応マニュアルがまだ準備できていない方は、コチラの記事を参考にし、自社独自のマニュアルを作成してください。
緊急時の連絡先を把握しておく:
かかりつけ医や関係機関、ご家族などへすぐに連絡できるよう、緊急連絡表を作成しておきます。
ご家族やキーパーソンの電話番号や住所が、知らない間に変更していることもあります。
年に1度は更新するようにしましょう。
協力体制を構築しておく:
緊急時は、対象の利用者さんへの処置はもちろん、ほかの利用者さんへの対応、救急車の要請、ご家族への連絡など、すべきことがたくさんあります。
職員がそれぞれの役を瞬時に把握し、実行できる体制を作っておくべきです。
定期訓練などを通して、指示系統や役割を把握しておく必要があります。
利用者さんのリスクを把握しておく:
既往歴や身体状況(下肢筋力の低下など)、服用している薬などが事故や急変につながることもあります。
よって各利用者さんのリスクを把握しておく必要があります。
また、顔色や声などで「いつもと違うかも…」と気づけるよう、普段から利用者さんの観察をしておくことも重要です。
物品の把握:
緊急対応には、必要なものが揃っていなければいけません。
例えば、AEDや応急処置セット(絆創膏、ガーゼ、包帯、ハサミなど)はすぐ使える状態なのか、定位置に保管してあるのかは、定期的に確認しておきましょう。
そして全職員が保管場所を把握しておくことも重要です。
緊急時対応の手順
症状が重篤なときなどは、119番通報して救急隊を呼んだり、AEDを使わなければならないこともあります。
いざというときに落ち着いて対応できるよう、定期的に練習しておくとよいでしょう。
① 利用者さんの意識の有無を確認する
- 声かけ
- 肩を軽くたたく
- つねる等の痛み刺激を与える、などして反応を確認
② 利用者さんの状態を確認する
- バイタル(体温、血圧、呼吸、脈拍)
- 顔色
- 呼吸状態
- 痛みの有無
- 外傷(出血)の有無
こんなときはすぐに119番
- 意識がない、またはもうろうとしている
- 呼吸が早い、または遅い
- 激しい痛みを訴える
- 骨折している可能性がある
- 大量に出血している
③ 119番通報する
- 救急であることを伝える
- 利用者さんの年齢・性別・症状を伝える
- 事業所の所在地を伝える
④ 応急処置や心肺蘇生等を実施する
救急隊が到着するまでの間、利用者さんの予後を考え、できる限りの対応をしましょう。
詳しくはコチラの記事をご覧ください。
⑤ 救急隊に引き継ぐ
- 道路沿いまで出て、救急車を利用者さんのところまで誘導する
- 救急隊が到着するまでの利用者さんの様子や変化、行った処置、 バイタル、既往歴、服用している薬などの情報を伝える
⑥ ご家族へ連絡する
- 経緯や利用者さんの状況などを伝える
- 必要物を伝える(健康保険証、診察券、お薬手帳現金(帰りのタクシー代)など
「いつもと様子が違うな」と感じた場合
「ぼんやりしている」「傾眠が長い」「いつもよりしんどそう」など、緊急性は判断できないものの、いつもと違う様子を感じたときは、看護師に報告しましょう。
看護師に伝えること:
- いつもとどのように違うか
- いつから今のような状態になっているか
- 何をしてからそうなったか
- バイタル
- 既往歴
- 服用した薬とその時間
もし介護施設に看護師が不在である場合、かかりつけ医に連絡して相談します。
また、救急車呼ぶか判断に迷った際は「#7119」にかけます。
「#7119」にかけると医師・看護師・相談員が対応してくれて、病気やけがの症状を把握した後、傷病の緊急性や救急車要請の要否の助言、応急手当の方法、適切な診療科目及び医療機関案内等を行っていくれます。
詳しくはコチラをご覧ください。総務省消防庁HP
記録
緊急事態が起きたときは、その内容や対応を記録する必要があります。
記録は5W1Hで情報を整理しましょう。
【5W1H】
- When:いつ(時間)
- Where:どこで(場所)
- Who:誰が(当事者)
- What:何をしたか(行動)
- Why:なぜ起きたのか(原因)
- How:どのように対応するか(対策)
5W1Hを使うことで、客観的な事実を具体的に他者へ伝えることができます。
記録は細かく具体的に
状況と結果を端的に書くのではなく、できるだけ具体的に5W1Hを意識しながら記録しましょう。
適切に記録することで、予防対策や発生時の対応の見直し、利用者さん本人・ご家族とのトラブル防止などに役立ちます。
昼食後、Aさんに意識がなく、救急搬送となった。
昼食後、Aさんをトイレにお誘いしようと声をかけると、いつもは笑顔で返事をしていただけるが、今日は目をつむったまま返事がない。
起こそうとしても反応が鈍く、顔色も悪いため看護師を呼んだ。
看護師が痛み刺激を与えても反応が鈍く、バイタルは〇〇/△△まで低下していた。
1分間の呼吸数も〇〇回と低下。
職員2人でベッドへ移動し、足を上げた状態で仰向けになり、3分経経過したが様子が変わらないため、救急車を要請。
メモをとる
緊急時は誰もが動揺します。
後ほど記録をしようとしても、記憶があいまいになること生じます。
よって看護師・医師から受けた指示なども含めてメモを取っておくと、後から記録しやすくなります。
振り返る
緊急事態に対処した後は、記録とともにミーティングで全職員で振り返ります。
- 対応はスムーズで抜けなどはなかったか
- 他の職員と連携をとれていたか
- 発生を予防する方法はないか
などを考えていきます。
振り返りをすることで、利用者満足度が上がり、その施設のレベルも上がっていきます。
ワーク
研修に時間の余裕があれば、ワークをすることをおすすめします。
お題は2つです。
まずは個人ワークで思いつく限りを書き出します。
そしてグループワークをします。
グループワークでは、個人ワークで書き出した内容をシェアしましょう。
個人ワークを5分、グループワークを10分程度とると、良いかと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。
緊急時の対応は、ベテラン職員でも慌ててしまうものです。
緊急時にスムーズに対応するには、定期的に研修を行うことが大切です。
知識や技術を養うことで、利用者さんの命を守れる介護士を目指しましょう。
この研修資料が、御社の運営にお役立ていただければ幸いです。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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